(2)電子署名・電子認証制度 電子署名の円滑な利用の確保による、電子商取引をはじめとするネットワークを通じた社会経済活動の発展に向けて  近年のインターネットの急速な普及に伴い、電子商取引をはじめ、金融、教育、医療・福祉、行政等、様々な分野における重要な活動が急速にインターネット上で行われるようになりつつあるが、インターネットは、従来用いられてきた専用線等と異なり、一対一の通信経路が確保されないオープンなネットワークであるため、1)相手方が本当に本人であるかどうか、2)情報内容が途中で改変されていないかどうかが明らかではない。  これらを確認する機能を果たすものとして、電子署名及び民間認証機関による電子認証が利用されはじめているが、我が国では電子署名・認証の法的な取扱いについては明確なルールが存在しないため、仮に紛争が起きた場合にこれらの電子署名・認証がどれだけ証拠として評価を受けるのかが必ずしもはっきりとしていない。このため、電子商取引をはじめとするネットワークを通じた社会経済活動の発展のためには、電子署名・認証の法的位置づけを明確化することが急務であるとの認識が国際的にも強まっており、米国やEUをはじめ、アジア諸国でも法制度整備が進んでいる。  このような状況を踏まえ、「高度情報通信社会推進に向けた基本方針-アクションプラン」(11年4月高度情報通信社会推進本部決定)において、郵政省、通商産業省、法務省を連絡省庁とし、「我が国における認証業務の健全な発展を促し、また電子署名が少なくとも手書き署名や押印と同等に通用する法的基盤を確立するため、国際的な整合性に配慮しつつ、11年度中に認証業務に関する制度整備に着手する」とされ、我が国における早急な制度整備の必要性が盛り込まれたことを受け、郵政省、通商産業省、法務省の三省により法制度の検討を行ってきた。  11年11月に1)認証業務の健全な発展の促進、2)電子署名のある電子文書の取扱いについての規定の整備、3)国際整合性の確保を柱とする基本的な論点を三省共同で公表してパブリックコメントを募集したところ、内外の産業界や個人利用者等から概ね賛同のコメントが多数寄せられた。これらを踏まえつつ法律案の策定作業を進め、1)電磁的記録の真正な成立の推定(電磁的記録に記録された情報について本人による一定の電子署名がなされているときは真正に成立したものと推定する旨の規定)、2)一定の要件をみたす認証業務についての主務大臣(三大臣)の認定(認定の要件、認定を受けた認証業務を行う者の義務、外国の認証事業者等に関する取扱い等の規定)、3)その他必要な事項(主務大臣による情報提供等の援助、国民への教育・広報活動、重大な被害防止のための国家公安委員会による主務大臣に対する必要な措置の要請、罰則等)を主な内容とする「電子署名及び認証業務に関する法律案」を12年4月、第147回国会に提出している。