(3)ITSの推進 ITS関連の情報通信技術の研究開発・標準化を推進  ITS(高度道路交通システム:Intelligent Transport Systems)は、最先端の情報通信技術を用いて「人」と「道路」と「車」とを一体のシステムとして構築することにより、安全性・輸送効率・快適性の向上、さらに環境保全にも大きく寄与する次世代の交通システムである。  電気通信技術審議会は、11年2月に「高度道路交通システム(ITS)における情報通信システムの在り方」を答申したところであるが、この中で、ITSは日本全国に網目のように整備された道路の利用と全国7,000万台にも上る自動車の運行に関する施策であることから、自動車、情報通信機器等、関連産業の発展を通じて大きな経済波及効果が期待されており、ITS情報通信関連分野の市場規模は12年度〜27(2015)年度の市場規模累計で約60兆円、同じく全産業への経済波及効果は約100兆円と試算されている。また、17(2005)年度(単年度)の雇用創出効果は約33万人と試算されている。  現在、既にITSの一部のシステムは実用化されており、交通渋滞情報等をドライバーにリアルタイムで提供する「道路交通情報通信システム(VICS:Vehicle Information and Communication System)」については、本格的なサービスが8年度から開始されている。11年度末現在、16都道(札幌地区)府県において提供されており、出荷累計ではVICSユニットは181万台を超えた。また、カーナビ全体に対するVICSユニットの装着率は、56.0%になっている(図表1))。高速道路等で車両を停止することなく料金徴収を可能とする「ノンストップ自動料金収受システム(ETC:Electronic Toll Collection System)」については、東京湾アクアラインの木更津料金所及び小田原厚木道路の小田原料金所で9年度から実験を行っていたが、12年4月に実運用を開始する。  政府としては、8年7月、ITS関係5省庁(郵政省、警察庁、通商産業省、運輸省及び建設省)において「高度道路交通システム(ITS)推進に関する全体構想」を策定し、ITS開発の展開目標について、今後15年間のビジョンとして取り組んでいるところである。  11年8月には、ITS関係5省庁は、ITSの統合的なシステムの効率的な構築、システムの拡張性の確保及び国内・国際的な標準化の促進等を目的とし、「ITSに係るシステムアーキテクチャ」(ITS概略設計図)の素案を公表して、広く意見を募集し、提出された意見を踏まえ、11月にシステムアーキテクチャを完成した。  他方、ITSの早期実現を図るためには、ITS実現の鍵となる情報通信分野における研究開発や標準化への積極的な取組を広範な分野での連携・協力において図ることが急務となっている。このため、ITS情報通信システム推進会議が11年7月に設立された。様々な業界から約200団体が参加し、ITS関係5省庁も特別会員として参画している。今後、本会議によりITS情報通信システムの研究開発・標準化が加速され、また世界へ向けての日本のITS情報通信技術の成果が発信されることが期待されている(資料6参照)。  郵政省では、ITSの更なる普及を目指し、以下の施策に取り組んでいる。 1)車を「動くオフィス」に変えるための研究開発  11年10月、通信・放送機構が横須賀リサーチパーク内に横須賀ITSリサーチセンターを設置し、車を「動くオフィス」に変えることを目指して、ワイヤレスエージェント技術、光無線融合システム技術、ワイヤレスマルチモード端末技術等の研究開発を開始した。 2)未来型駐車場実験とDSRCシステムの実用化  ETCを発展させることにより、入出場処理サービス、自動誘導サービス等を行う車載型無線ICカードを利用した未来型駐車場を実現するための研究開発を11年度に行った。  さらに、ETCにかかる無線通信技術をより多目的に利用するためのDSRC(狭域通信:Dedicated Short Range Communications)システムの実現に向けて、12年1月に「DSRCシステムの無線設備等における技術的条件」について電気通信技術審議会に対し諮問した(図表2))。 3)スマートゲートウェイ技術の研究開発  緊急経済対策(10年11月)において、15(2003)年をめどに、モデル道路で世界初のスマートウェイ(知能道路)、スマートカー(知能自動車)の走行実験に取り組むこととされていることから、スマートウェイとスマートカーの間の情報伝達を円滑に行うための情報通信技術であるスマートゲートウェイ技術(知能通信)の実現を目指して、建設省、運輸省と連携し、12年から研究開発を推進している。 4)ITS分野の国際標準化  11年11月にITU(国際電気通信連合)において、日本及びアジア・太平洋地域が共同提案したETC及び自動車レーダーシステムの無線方式が国際標準として採用されることになり(12年5月のRA(無線通信総会)において正式承認予定)、今後も、我が国主導によるITS分野の国際標準化が大いに期待される。