3 経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針 近年の不況から脱却した後の我が国経済のあるべき姿  90年代以降に経験した厳しい不況から立ち直った後の我が国の経済社会の「あるべき姿」とそれに至る政策を長期的視点に立脚して明確に提示しておくために、政府は、11年7月、「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」を閣議決定、公表した。  同方針では、2010年頃における経済社会のあるべき姿を「新しい多様な知恵の社会」であるとし、90年代の不況は、近代工業社会の規範が人類の文明的な流れにそぐわなくなってきたという根本的な問題から生じていると考えられることから、戦後から80年代までに形成されてきた「最適工業社会」から移行する必要性を指摘している(図表1))。そして、「新しい多様な知恵の社会」において、情報通信技術の発展が重要な役割を果たすとしている(図表2))。  また、「経済社会のあるべき姿」の実現に向けた重要な政策方針として、1)多様な知恵の社会の形成、2)少子高齢社会、人口減少社会への備え、3)環境との調和、4)世界秩序への取り組み、5)政府の役割の5点に言及し、このうち1)多様な知恵の社会の形成においては、透明で公正な市場において、消費者が自己責任による自由な選択を行い、それが財・サービスの生産にも反映されることから、「透明性」「説明責任」「経済社会情勢の変化への適合性」を重視した規制改革や「魅力ある事業環境の整備と創業・起業の促進」等が必要であるとされている。こうした中、情報通信分野においても透明で公正な市場と消費者主権の確立、科学技術の振興及び多様な知恵の社会を支える社会資本整備等の観点から様々な方針が示されている(図表3))。