3 国際標準化機関の取組 ITU-Tでは、標準策定の手続の短縮化に着手  電気通信分野の国際標準化には、国際電気通信連合(ITU:International Telecommunication Union)が中核的な役割を果たしている。ITUにおいては、電気通信標準化部門(ITU-T:ITU Telecommunication Stanardization Sector)及び無線通信部門(ITU-R:ITU Radiocommunication Sector)が標準化活動を行っている(資料56参照)。 1)ITU-Tにおける取組  現在、ITU-Tの標準化作業(勧告の策定)においては、承認手続だけで、概ね9か月程度を要しており、この作業速度が現在の電気通信技術の発展には十分対応しきれていない。  一方、国際的な標準化活動において、企業グループのフォーラム活動の成果である事実上の標準(デファクト標準)が、重要な役割を担うようになってきており、こうした活動との比較においてもITU-Tを介した公的標準(デジュール標準)の策定作業の迅速化が求められている。  こうした中、ITU-Tでは、勧告の策定に要する時間を短縮するための手続についての検討が進められている。1999年10月には、電気通信標準化アドバイザリーグループ(TSAG:Telecommunication Standardization Advisory Group)第5回会合において、現行の勧告承認手続を、技術的な内容のものに限り、3か月程度に短縮可能とする手続(代替承認手続(AAP:Alternative Approval Process))の枠組みを取りまとめ、2000年9月に開催される世界電気通信標準化総会(WTSA:World Telecommunication Standardization Assembly)での承認を目指すこととしている(図表)。現在のITU-T勧告は、90%程度が技術的な内容といわれていることから、代替承認手続が導入されれば、ほとんどのITU-T勧告が3か月程度で採択可能となる。  一方、ITU-Tでは、他の標準化機関等との積極的な連携も進めている。例えば、インターネットの標準化については、1998年9月から、インターネット標準作成フォーラムであるIETF(Internet Engineering Task Force)と共同して標準化作業に取り組んでいる。また、インターネットのドメインネームの管理に寄与するため、1999年7月にオスロで開催された第45回IETF会合において、IETF、W3C、ETSI、ICANNとの間で覚書(MoU)を締結し、プロトコルについて検討を行う組織であるICANN PSO(Protocol Supporting Organization)に参加することとした。さらに、IMT-2000の標準化については、地域標準化機関等により組織された3GPP/3GPP2(Third-Generation PartnershipProject/ Third-Generation Partnership Project 2)において策定された標準仕様を勧告作成の際に参照していく予定である。 2)ITU-Rにおける取組  放送分野では、1999年6月の放送関係会合(SG10.11関係会合)で審議されていた我が国の衛星(BS)デジタル放送方式(ISDB-S方式)が勧告として同年10月に承認された。  また、同年10月から11月にかけて開催された第18回TG8/1会合では、IMT-2000の無線伝送方式に関する詳細規格等の勧告案が策定され、世界無線通信会議(WRC-2000)に向けたIMT-2000用追加周波数帯の検討が行われた。  なお、IMT-2000の無線伝送方式に関する規格については、ITU-T同様、3GPP/3GPP2と協調が図られている。  1999年11月に開催された第8研究委員会(SG8)会合では、TG8/1会合(第18回)で承認された勧告案のほか、高度道路交通システム(ITS)関連のノンストップ自動料金収受システム(ETC)や小電力自動車ミリ波レーダシステムの無線伝送方式の勧告案、5GHz帯高帯域移動アクセスシステムと移動衛星間の周波数共用条件に関する勧告案等の承認が行われWRC-2000に向けた検討が行われた。  今後、これらの承認事項は、2000年5月に予定されている無線通信総会(RA:Radiocommunication Assembly)に提出され最終勧告化される見込みである。