平成11年10月20日           接続料算定の在り方についての意見                         東京通信ネットワーク株式会社 <要旨> 1. 総論  (1)インターネット普及を背景として市内競争の促進に配慮すべきである。  (2)NTTの非効率性の排除を最重点に考えるべきである。  (3)接続料は高止まり、利用者料金は大幅値下げという構図は、公正競争     を妨げる。  (4)利用者料金の低廉化はNTTの経営保護によりではなく競争により進     められるべきである。 2.各論 (1) き線点RTはGC接続料から除外すべきである。 (2) 基本料の引上げをもたらす可能性は無い。 (3) 施設設置負担金の控除方法は現行ISDN契約約款におけるタイプ1    /タイプ2の差額を準用することを提案する。 (4) 付加機能使用料の控除方法は現行接続会計における控除率と同比率で    行うことを提案する。 (5) NTTトップダウンモデルは今回の長期増分費用方式導入における参    照モデルとして不適切である。 (6) 平成10年度トラヒックデータへの更新を早急に行うべきである。 (7) 長期増分費用方式による新しい接続料はNTT地域網に接続する全事    業者に対し発着信を問わず等しく適用されるべきである。 (8) 平成12年度精算料金から郵政省モデルケースB算定値(施設設置負    担金/付加機能使用料相当コスト控除後)を適用すべきである。 (9) 郵政省長期増分費用モデルの見直し時期について、トラヒック等のデ    ータ更新は毎年、ロジックの見直しは隔年で行うことを提案する。 1. 総論  (1)インターネット普及を背景として市内競争の促進に配慮すべきである。      市内競争の分野においては、従来からNTTの接続料負担が原因で      NTTの利用者料金に対抗できない現象が生じていましたが、昨今、      ますますこうした状況が助長される傾向にあります。     (例1)ISDNユーザーに対して市内競争が阻害されている。           現行のNTTGC(ISDN)接続料水準では、NTTの3分           10円あるいはタイムプラス5分10円に対抗できる料金           設定が不可能。     (例2)インターネット通信料の定額制に関する競争が阻害されている。           現行のNTTGC接続料では、NTTの1,200円/3,000円           という市内定額型割引サービスに対抗できる料金設定が不           可能。      特に、インターネット通信料の低廉化を望む社会の声が高まってき      ており、市内競争の促進は焦眉の急であると考えます。その際、市内      競争は直収サービス等の設備ベースでという反論が予想できますが、      即効性のある競争創出をのぞむなら、直収サービスよりも中継サービ      スの方が有効と考えます。     (例3)TTNetの直収電話サービスは約10年かかって3万回線。         一方、TTNetの中継電話サービスは2年で約200万回線         以上を獲得。      したがって、長期増分費用方式による新しいNTTGC接続料水準は、       ・ ISDN中継サービスでの市内競争を可能とする水準であること       ・ NTTの市内定額型割引サービスへの対抗メニューが設定可能な        水準であること      を念頭に議論すべきと考えます。     (例4)郵政省モデルケースAなら、ISDN中継サービスでの市内競争         が可能。          ただし、NTTの市内定額型割引サービスへの対抗メニューは          郵政省モデルケースBでないと設定困難。  (2)NTTの非効率性の排除を最重点に考えるべきである。      NTTは経営の効率化によりZC接続料を4年間で40%下げたと主張      されていますが、実際には接続料算定対象の費用範囲が狭められたこと      が大きく作用したものと認識しています。       また、GC接続により4年間で70%強下げたと主張されていますが、      GC接続はNTTの経営効率化によるものではなく、接続点の変更によ      るものです。       したがって、過去の接続料値下げによりNTTの非効率性が排除され      たとは認識できず、現行の接続料水準にはNTTの非効率性が相当程度      温存されていると考えます。       郵政省長期増分費用モデルは、こうしたNTTの非効率性を排除する      ものであり、NTTの経営に配慮する余り、郵政省モデル算定値に手心      を加えることは行うべきでないと考えます。  (3)接続料は高止まり、利用者料金は大幅値下げという構図は、公正競争を妨     げる。      先頃公表されたNTTの平成10年度接続会計結果によれば、指定設備     管理部門が4665億円の営業黒字であるのに対し、指定設備利用部門は     2336億円の営業赤字となっています。この結果から、NTTは接続事     業者に割高な接続料を課しながら、自らの利用者料金を出血サービスして     いる可能性が高いのではないかと考えられます。      こうした構図からは有効な競争が生まれないことは明白であり、このよ     うな反競争的構造を是正することが必須であると考えます。  (4)利用者料金の低廉化はNTTの経営保護によりではなく競争により進めら     れるべきである。      「既存の地域電話会社の利用者料金及び経営に破壊的な影響を与えない     よう適切に配慮する」旨が表明されていますが、競争促進という観点から、     NTTの経営に配慮する余り、接続事業者側が閉塞状況に陥り有効な競争     が働かなくなることの無いよう配慮すべきであると考えます。現行の電気     通信事業法の主旨は、NTTの保護育成ではなく、競争を通じて利用者料     金の低廉化をはかることにあると認識しています。      インターネット通信料を筆頭にした利用者料金の低廉化はあくまで競争     を通じて行われるべきであり、NTTの経営保護により進められるべきも     のではないと考えます。インターネット通信料の低廉化をはかるためにN     TTの経営に配慮することは、競争を通じて利用者料金の低廉化をはかる     という電気通信事業法の精神に反するものと考えます。競争が進展しNT     Tが赤字になるという事態を憂慮して、接続料水準を高止まりさせ接続料     収入によりNTT経営の安定をはかるという考え方は反競争的であると考     えます。      また、ユニバーサルサービスの確保という観点からNTTの経営に配慮     するという考え方は、接続料問題と切り離して議論すべき課題と考えます。     ユニバーサルサービスの確保を、今回の接続料水準と関連づけて同時に議     論することは接続料の不透明さを増すことにつながると考えます。 2. 各論  (1)き線点RTはGC接続料から除外すべきである。      長期増分費用モデル研究会報告書に述べられているように、き線点RT     の費用を端末回線伝送路に帰属させるべきという考え方は、経済理論上も、     米欧における実務上も支持されると考えます。なお、基本料の引上げをも     たらす可能性については次項で述べます。  (2)基本料の引上げをもたらす可能性は無い。      今回の郵政省長期増分費用モデルでは施設設置負担金相当のコスト控除     が為されていませんが、このコスト控除を行えば、き線点RTの費用を端     末回線伝送路に帰属させても基本料の引上げをもたらす可能性は無いと考     えます。      具体的には、以下の試算が参考になると考えます。       ・ NTTのISDN基本料金は、施設設置負担金を支払う場合には月        額640円割安となっている。       ・ この640円を施設設置負担金相当の控除コストと仮定すると、郵        政省長期増分費用モデルにおける端末回線(PHS用)コストは、ケ        ースBの場合でも1102円となり、現行の1631円を上回ること        は無い。  (3)施設設置負担金の控除方法は現行ISDN契約約款におけるタイプ1/タイ     プ2の差額を準用することを提案する。      上記(2)の通り、施設設置負担金相当の控除コストとして、NTTのI      SDN契約約款における基本料の差額640円を準用することを提案しま      す。  (4)付加機能使用料の控除方法は現行接続会計における控除率と同比率で行うこ     とを提案する。      現行接続会計における付加機能使用料の控除は、収入=コストとみなして     行われているものと認識していますが、この考え方を準用し、郵政省長期増     分費用モデルにおける付加機能使用料の控除方法は、現行接続会計における     付加機能使用料の控除率と同比率で行うことを提案します。  (5)NTTトップダウンモデルは今回の長期増分費用方式導入における参照モデル     として不適切である。      NTTトップダウンモデルは9月2日に説明会が行われただけであり、その     後関係事業者を含めた具体的な検証作業は何も行われていません。また、モデ     ルのプログラムや入力値が開示されておらず、具体的な検証を行える段階にも     ありません。      一方、郵政省モデルは、約1年間にわたりNTTを含めた関係事業者が共同     作業を行いコンセンサスを得ながら策定してきたものであり、かつ海外の専門     家によるワークショップやパブリックコメント等の過程を経てきており、NT     Tトップダウンモデルと比較してはるかに透明度の高いモデルとなっています。      したがって、NTTトップダウンモデルを今回の長期増分費用方式導入にお     ける参照モデルとすることは不適切であり、郵政省モデルこそを参照モデルと     すべきであると考えます。  (6)平成10年度トラヒックデータへの更新を早急に行うべきである。      現在公開されている郵政省モデル算定値は平成9年度トラヒックデータに基      づいており、プライシングの議論を進めるには速やかに平成10年度トラヒ      ックデータへ更新することをお願いします。  (7)長期増分費用方式による新しい接続料は、NTT地域網に接続する全事業者に     対し、発着信を問わず等しく適用されるべきである。      現在、NTT接続料は各アンバンドル単位の設備毎に設定されており、接続     事業者は利用した設備毎の接続料を負担しています。今回の郵政省モデルにお     いても各アンバンドル単位の設備コストが算定されています。      したがって、長期増分費用方式による新しい接続料も、接続事業者は利用し     た各アンバンドル単位の設備毎による接続料を負担するという原則を堅持すべ     きと考えます。呼種別や用途等により、同一設備に対して料金差が与えられる     ような措置は避けるべきと考えます。  (8)平成12年度精算料金から郵政省モデルケースB算定値(施設設置負担金/付     加機能使用料相当コスト控除後)を適用すべきである。      総論で述べたインターネット普及を背景とした市内競争の促進のためには、郵     政省モデルケースB算定値から施設設置負担金ならびに付加機能使用料相当のコ     スト控除を行った後の接続料金の早期適用が必須であり、こうした接続料水準を     適用することはインターネット通信料の低廉化を望む社会的ニーズにマッチする     と考えます。      段階的な値下げでは、インターネット通信料の低廉化はNCCによる直収サー     ビスの展開を待つことになり、即効性に欠けることになります。インターネット     通信料の低廉化はNTTの裁量によってではなく競争により進められるべきであ     り、広い範囲(地域)で有効な競争を喚起しインターネット通信料の低廉化を速     やかに進めるには、郵政省モデルケースB算定値の即時適用が最も効果が期待で     きるものと考えます。  (9)郵政省長期増分費用モデルの見直し時期について、トラヒック等のデータ更新は     毎年、ロジックの見直しは隔年で行うことを提案する。      郵政省長期増分費用モデルは、現在と同じ加入者数規模とトラヒックに対する     処理能力を備えたネットワークを現時点での利用可能な最も低廉で最も効率的な     設備技術で新たに構築した場合の費用額に基づいて算定する方式と定義されてい     ます。      したがって、加入者数規模、トラヒック、設備技術、投資額、年経費等の変化     に応じて、適宜、モデルの見直しを行うことは必須であると考えます。      その場合、トラヒック等の単なるデータ更新で済むものと、設備技術等のロジ     ック変更を伴うものとがありますが、前者のデータ更新は毎年、後者のロジック     変更は隔年程度行うことが適切であると考えます。                                      以 上