発表日 : 11月12日(水)
タイトル : 11/12付:行政改革会議提出資料−情報通信行政の在り方−
情報通信行政の在り方について
情報通信は、政治、経済、生活、文化等社会経済全般の基盤として、世界各
国において21世紀の根幹となるべき最重要分野と位置づけ。
我が国の情報通信行政についても、総合的、戦略的、機動的な対応を確保す
るため、国の行政組織の基本である「省」において一体的行政を行うことが必
要。
*別添1「21世紀に向けた情報通信行政の課題」参照
|
1 行政委員会(三条委員会)が情報通信行政を行うことについて
|
(1)行政委員会は、米国と異なり、議院内閣制の下で大臣を長とする独任制
機関が基本の我が国において、例外的存在。GHQの占領下で戦後設立さ
れた行政委員会の多くも、責任の不明確さや非能率により昭和27年に原
則廃止。
当事者間の利害調整等、公正中立的な立場において特に慎重な判断が求
められる分野について存置。
(2)情報通信分野は、急速な技術革新を背景として、各国の浮沈をかけた厳
しい国際競争が行われており、我が国としても国際対応、制度改正、世界
標準を目指した研究開発等、国としての総合的、戦略的、機動的対応が求
められる。
このような分野には、内閣からの独立性を有する合議制の行政委員会は
馴染まないと考える。
(3)郵政大臣による災害時における重要通信確保や、自衛隊法に基づき行う
緊急通信の確保等のための迅速かつ能動的な意思決定は、現在のように大
臣を長とする独任制機関が適切と考える。
(4)なお、米国のFCCは、米国型三権分立を背景として、大統領ではなく
議会に対し直接責任を負う制度であり、我が国とは制度の基盤を異にする
もの。
2 情報通信行政を通信放送委員会と産業省に分断することについて
|
(1)各国が情報通信分野でしのぎを削っている状況の中で、情報通信行政を
分断することは、我が国の相対的地位の低下につながるおそれ。
米国において2千人の要員を擁するFCCに規制と振興の権限を集中し
つつあるように、欧米等においても、情報通信行政は一元化、統合化する
方向。
(2)情報通信行政を分断することは、他の行政分野が大括りされる中にあっ
て、新たな二重行政、縦割り行政をもたらし、国民、企業の負担増となる
おそれ。
(3)「情報通信産業の振興」を特に切り出すことは、大競争時代の中で特定
産業の育成政策・保護助成行政からの撤退を進めようとしている国際的潮
流にそぐわない。
なお、「情報通信産業の振興」が「産業の情報化」を念頭に置いたもの
であれば、それは金融業、運輸業等各産業を担当する省が責任を持つべき
もの。
(4)情報通信行政においては、「規制」と「振興」を一体的に行ってはじめ
て、効率的かつ効果的に行政目的の実現が可能。携帯電話の普及・発展が
一例。
他の行政分野においても、「規制」と「振興」は一体。
*別添2「情報通信行政の在り方について」参照
【別添1】
21世紀に向けた情報通信行政の課題
(1)情報通信は、憲法が保障する思想・表現の自由、通信の秘密という基本
的人権に深く係わっており、民主主義の基盤である。
(2)情報通信は、政治、経済、生活、文化等社会経済全般を支える基盤であ
る。
(3)情報通信は、21世紀に向けた社会経済システム改革の原動力である。
情報通信行政の目的は、情報の自由な流通を確保するために、誰もがいつでも
どこでも安心して情報通信を利用できるような環境を整備することである。
(1)21世紀に向け、国民がより高度な情報通信をあまねく利用できるよう
にするため、情報通信行政には具体的には以下の課題がある。
[1]明確なビジョンの提示
行政として明確なビジョンを提示し、国民的な共通認識の下に政策を
推進する。
[2]次世代の情報通信基盤の整備
民間の活力を最大限活用することにより、光ファイバ、移動通信等の
次世代情報通信基盤整備を促進する。
[3]情報通信市場の発展のための環境整備
規制緩和の一層の推進、公正有効競争のための環境整備、通信・放送
の融合に対応した制度整備を図る。
[4]全国どこでも誰もが安心して情報通信サービスを利用できる環境の整
備地域間・個人間情報格差の是正や、利用者保護等、市場機能の補完を
図る。
[5]全ての国民が安心して利用できる電波社会の実現
混信のない電波を広く利用できるように電波監理、電波資源の開発等
を行う。
[6]情報通信利用の普及による社会経済の情報化の推進
次世代の情報通信基盤の効果を最大限発揮させるアプリケーションの
開発・普及、放送番組ソフト等コンテントの高度化・充実を図る。
[7]グローバル化に対応した戦略的な国際調整
電波資源確保等を巡る国際的利害対立が増大・先鋭化する中で、機動
的・戦略的な国際調整を行う。
[8]世界共通の情報通信を実現するための戦略的研究開発
国際的な標準化における競争が激化する中で、世界標準を目指した標
準化を推進する。
(2)技術革新が激しく、グローバルな政策展開が求められる情報通信行政に
おいては、上記課題の取組に当たり、能動的・機動的な政策の企画立案機
能がきわめて重要である。
21世紀に向けた情報通信行政の主要課題
情報通信行政の課題
|
企画立案
|
実施1
|
(振興的)
|
(規制的)
|
次世代の情報通信基
盤の整備
【主な法律】
○電気通信基盤充実
臨時措置法
○有線電気通信法
○電波法
○電気通信事業法
|
<次世代ネットワークイン
フラの整備>
◆ネットワークインフラ整
備に係る総合的な政策の
企画立案(有・無線一体
となった総合的なネット
ワークの整備)
◆インターネットの高度化
のための企画立案
◆宇宙通信の高度利用のた
めの企画立案
<ネットワークの安全性・
信頼性の確保>
◆ネットワークの安全性・
信頼性確保のための企画
立案
◆災害に強い情報通信網の
構築のための企画立案
|
◇ネットワーク
インフラ整備
促進のための
支援(財政・
税制支援等)
◇電気通信事業
者に対する公
益事業特権の
賦与等
◇ネットワーク
の安全性・信
頼性確保のた
めの支援(財
政・税制支援
)
|
◇災害時にお
ける重要通
信の確保
◇国の安全の
ための緊急
通信の確保
|
情報通信市場の発展
のための環境整備
【主な法律】
○電気通信事業法
○日本電信電話株式
会社法
○国際電信電話株式
会社法
○放送法
○有線テレビジョン
放送法
○有線ラジオ放送業
務の運用の規正に
関する法律
|
<電気通信市場の発展のた
めの環境整備>
◆電気通信市場における競
争環境整備(規制緩和の
推進、接続ルールの策定
(ルールの見直し)、N
TT再編成、加入者無線
アクセスの整備導入、新
たな番号制度の導入等)
<放送市場の発展のための
環境整備>
◆放送普及の展開に向けた
企画立案(放送普及基本
計画の策定等)
◆放送のデジタル化の促進
(マスメディア集中排除
原則の見直し、免許制度
の見直し、ハード・ソフ
ト分離等)
<通信・放送の融合>
◆通信と放送の融合に対応
した制度の整備
◆ネットワーク・端末の共
用化の推進(技術基準の
策定等)
|
◇接続の円滑化
のための支援
(接続設備に
対する財政・
税制支援等)
◇デジタル放送
の導入促進(
共用デコーダ
ーの開発支援
、地方局に対
する財政・税
制支援等)
|
◇電気通信事
業の許可・
届出受理、
接続ルール
の運用等
◇放送局の免
許、委託放
送業務の認
定等
|
全国どこでも誰もが
情報通信サービスを
利用できる環境の実
現
【主な法律】
○身体障害者の利便
の増進に資する通
信・放送身体障害
者利用円滑化事業
の推進に関する法
律
○日本電信電話株式
会社法
○放送法
○放送大学学園法
○民活法、地方拠点
都市地域の整備及
び産業業務施設の
再配置の促進に関
する法律
|
<情報格差の是正>
◆地域間情報格差の是正(
ユニバーサルサービス確
保のための企画立案)
◆個人間情報格差の是正(
字幕放送等の普及、情報
バリアフリーな環境の整
備等)
◆誰もが使いやすい情報通
信端末の普及のための企
<地域情報化の推進>
◆地域における情報通信の
高度化のための企画立案
<セキュリティ対策>
◆ネットワーク利用の安全
性・信頼性の確保のため
の企画立案
<利用者保護>
◆違法・有害な情報流通へ
の対応、消費者問題への
対応、プライバシー保護
のための企画立案(各種
ルール、基準、ガイドラ
イン等の策定)
◆放送の多チャンネル化に
対応した視聴者政策の企
画立案(放送番組審議機
関の在り方等)
|
◇電気通信格差
是正事業の実
施
◇放送難視聴解
消事業の実施
◇字幕番組制作
等の助成
◇地域情報化支
援(CATV
の高度化、パ
イロットタウ
ン構想支援等)
◇暗号技術・不
正アクセス防
止技術の開発
支援
|
◇ユニバーサ
ルサービス
確保のため
の基準・ル
ールの実施
◇情報弱者対
策のための
基準・ルー
ルの実施(
字幕番組普
及のための
ルール等)
◇通信の秘密
の確保(個
人データ保
護のための
ガイドライ
ンの実施等)
◇利用者から
の苦情受付
・処理
|
全ての国民が安心し
て利用できる電波社
会の実現
【主な法律】
○電波法
|
<電波監理>
◆周波数割当て計画、チャ
ンネルプランの策定
◆無線設備等に関する技術
基準等の策定
<電波資源の開発>
◆電波資源の開発に関する
企画立案
<電波利用環境の整備>
◆電波利用環境の整備(免
許手続きの簡素化、電波
混信の排除等)
◆電磁環境の改善のための
企画立案(電磁波の人体
・各種機器への影響への
対策のための基準策定等
|
◇電波資源開発
のための研究
開発の実施(
財政・税制支
援)
|
◇無線局免許
・検査等の
実施
◇電波の監視
・不法無線
局対策等の
実施
|
情報通信利用の普及
による社会経済の情
報化の推進
【主な法律】
○特定通信・放送開
発事業実施円滑化
法
○通信・放送機構法
○放送番組素材利用
促進事業の推進に
関する臨時措置法
○有線テレビジョン
放送番組充実事業
の推進に関する臨
時措置法
○受信設備制御型放
送番組の制作の促
進に関する臨時措
置法
○電気通信基盤充実
臨時措置法
|
<先導的アプリケーション
の開発・普及>
◆行政、教育、医療、労働
等各分野の情報化を先導
するアプリケーションに
関する企画立案
<コンテントの高度化・充
実>
◆放送番組ソフトの制作・
流通環境の整備(権利処
理の円滑化のための制度
整備等)
◆放送番組素材の多角的利
用のための企画立案
<人材育成>
◆情報通信技術者の育成の
ための企画立案
◆コンテント制作者の育成
のための企画立案
<地球環境問題への対応>
◆地球環境問題の解決に資
する情報通信の利用に関
する企画立案(テレワー
ク、テレビ会議の普及、
地球環境計測の充実等)
|
◇先導的・汎用
的アプリケー
ション普及支
援(技術開発
、施設整備支
援等)
◇コンテント制
作、コンテン
トビジネス、
人材育成等に
対する支援(
財政・税制支
援)
◇テレワークセ
ンター施設整
備事業の実施
|
|
グローバル化に対応
した戦略的な国際調
整
【主な法律】
○国際電気通信連合
憲章・国際電気通
信連合条約
○国際電気通信衛星
機構協定
○国際海事衛星機構
条約
○世界貿易機関・サ
ービス貿易
一般協定
○放送法
|
<国際的な政策調整>
◆各国通信政策当局との政
府間交渉、国際機関にお
ける調整(WTO交渉・
電気通信サービス等)
◆周波数・軌道位置の確保
のための国際調整
◆国際的番組ガイドライン
、情報コンテントに関す
る規律のための国際調整
<我が国の情報発信力の向
上>
◆映像国際放送の促進・普
及のための企画立案
◆情報通信ハブの構築に関
する企画立案
<国際的な情報通信基盤整
備への貢献>
◆グローバルな情報通信基
盤整備・国際共同プロジ
ェクト・人材育成への支
援に関する企画立案
|
◇命令放送の実
施に対する交
付金
◇国際協力・国
際交流支援(
財政・税制支
援、ODA等)
|
◇WTO協定
に基づく紛
争解決手続
き
◇国際的番組
ガイドライ
ンの周知
◇NHKに対
する命令国
際放送
|
世界共通の情報通信
を実現するための戦
略的研究開発
【主な法律】
○通信・放送機構法
○基盤技術研究円滑
化法
○宇宙開発事業団法
|
<重点的・計画的な研究開
発の推進>
◆通信・放送・電波利用に
係る研究開発に関する企
画立案
<世界標準を目指した標準
化の推進>
◆標準化政策に関する企画
立案
◆国際標準化活動の推進
(ITU標準制定、AT
SI設立に向けての国際
調整等)
◆技術基準の策定
|
◇研究開発の実
施
◇民間における
研究開発の支
援(財政・税
制支援等)
|
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【別添2】
情報通信行政の在り方について
1 行政委員会(三条委員会)が情報通信行政を行うことについて
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(1)行政委員会は、米国と異なり、議院内閣制の下で大臣を長とする独任制
機関が基本の我が国において、例外的存在。GHQの占領下で戦後設立さ
れた行政委員会の多くも、責任の不明確さや非能率により昭和27年に原
則廃止。
当事者間の利害調整等、公正中立的な立場において特に慎重な判断が求
められる分野について存置。
[1]戦後GHQの指導により設置された行政委員会については、「行政制
度の改革に関する答申(昭和26年8月・政令改正諮問のための委員会
報告)」において責任の不明確さ、非能率を理由に原則廃止の方向が打
ち出され、昭和27年にその多くが廃止。
|
(参考)「行政制度の改革に関する答申」(抜粋)
「4 行政委員会
行政委員会制度は、(中略)もともと、アメリカにおけると異なり、
わが国の社会経済の実際が必ずしもこれを要求するものでなく、組織と
しては、徒らに厖大化し、能動的に行政目的を追求する事務については
責任の明確化を欠き、能率的な事務処理の目的を達し難いから、原則と
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄
してこれを廃止すること。但し、公正中立的な立場において慎重な判断
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
を必要とする受動的な事務を主とするものについては、これを整理簡素
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
化して存置するものとすること。」
(政令改正諮問のための委員会報告(昭和26年))
|
|
[2]電波監理委員会廃止(昭和27年)の際にも、国会において「独任制
によってその責任の所在を明確に」することにより、「事務の処理も一
層明確になり、簡素化される」と答弁(昭和27年6月18日 参議院
内閣委員会・佐藤栄作郵政大臣)。
|
(参考)参議院内閣委員会(昭和27年6月18日)議事録抜粋
「・・・電波行政という(中略)重大なる国策遂行という点になります
 ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
れば、(中略)むしろ独任制によつてその責任の所在を明確にする、か
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ようにすることが事務の処理も一層明確になり、簡素化されるのではな
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
いか、かような考えを持つておるのであります。」
(佐藤栄作郵政大臣答弁)
|
|
[3]また、行政委員会は、内閣からの独立性を有するため、国会を通じて
国民の意思を行政に反映させることは、独任制機関よりも難しい。
国民生活、企業活動、学術文化等社会経済全般に深く係わる情報通信
については、民意を反映した行政展開が不可欠であり、大臣を長とする
独任制機関が適切と考える。
[4]なお、情報通信行政においても公正な判断が欠かせないが、平成6年
に制定された行政手続法に基づき、行政の透明性、公平性の確保に努め
ているところ。
(2)情報通信分野は、急速な技術革新を背景として、各国の浮沈をかけた厳
しい国際競争が行われており、我が国としても国際対応、制度改正、世界
標準を目指した研究開発等、国としての総合的、戦略的、機動的対応が求
められる。
このような分野には、内閣からの独立性を有する合議制の行政委員会は
馴染まないと考える。
[1]情報通信は、技術革新が急速に進展する中で、米国をはじめとした各
国が戦略的取り組みを強化しており、サービスの国際展開、世界標準を
めざした技術開発等様々な面で国際的な競争が激化している。
[2]こうした状況を反映し、国内におけるネットワークインフラの高度化、
新たな通信・放送サービスの普及等の面においても、先行的な整備・普
及の重要性が指摘されている。(参考1)
[3]我が国としても、このような国際状況の中で、世界情報通信基盤の構
築のための貢献、電波資源の確保や自由化交渉のための国際的対応、世
界標準を目指した研究開発等、国として総合的、戦略的、機動的な対応
が求められている。
[4]また、国内的にも高度情報通信社会の構築のための環境整備等、関係
省庁との連携を通じた政府全体としての取り組みが益々重要になってお
り、内閣からの独立性を有する行政委員会では十分な対応は難しい。
[5]制度改正の面においても、行政委員会は、個別の法律に基づき確立さ
れた制度の枠内で業務を遂行することを基本としており、激しく変化す
る状況に応じての制度的枠組み自体の見直し等が必要となる情報通信分
野には馴染まないと考える。
(参考)行政委員会と省(大臣)との比較
|
|
行政委員会(合議制)
|
省(大臣)
|
業務の特性
|
紛争の処理
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国民生活全般に係わる行政
|
公正な裁き
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民意の反映
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慎重な判断
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迅速な判断
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個別判断
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総合的判断
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受動的対応
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能動的対応
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制度に基づく対応
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制度自体の変革
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分野の特徴
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静態的
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動態的
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国内/国際
|
国内対応が中心
|
戦略的国際対応
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内閣との関係
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内閣からの独立性
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内閣との一体性
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責任の所在
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合議体としての委員会
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国務大臣
|
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(3)郵政大臣による災害時における重要通信確保や、自衛隊法に基づき行う
緊急通信の確保等のための迅速かつ能動的な意思決定は、現在のように大
臣を長とする独任制機関が適切と考える。
|
[1]情報通信網は、国の神経系統であり、その寸断は、国民生活、経済活
動に多大な支障を及ぼす。このため、自然災害、事故等様々な危機管理
の局面において、重要通信、緊急通信の確保等、迅速かつ能動的な行政
対応が必要不可欠。
[2]他方、行政委員会は、合議制機関であるため、迅速かつ能動的な意思
決定が必要となる行政分野には適しておらず、情報通信行政にあっては、
大臣を長とする独任制機関が適切と考える。
(4)なお、米国のFCCは、米国型三権分立を背景として、大統領ではなく
議会に対して直接責任を負う制度であり、我が国とは制度の基盤を異にす
るもの。
|
[1]FCC(連邦通信委員会)をはじめとする米国の独立委員会(Independent
Commission)は、19世紀に設立された州際通商委員会に起源を有し、
現在、連邦政府における様々な分野に存在。米国では一般的な行政組織。
|
(参考)米国連邦政府における独立委員会の例
原子力規制委員会、連邦準備制度、証券取引委員会、連邦通信委員会
、運輸安全委員会、国家調停委員会、国家労働関係委員会、首都計画委
員会、連邦商業委員会、商品先物取引委員会 他(合計27)
|
|
[2]米国の独立委員会は、議会、大統領がそれぞれに国民に責任を負うと
いう米国型三権分立制を背景にした、米国固有の制度。議会の権能の一
部と司法の権能の一部を基に設立され、「議会の腕」、「第4権」とも
呼称される。
[3]こうした特色を反映して、FCCは、大統領ではなく、議会に対して
直接責任を負っている。この点、我が国の行政委員会とは基本的性格を
異にしている。
(参考)FCCと連邦議会との関係
・FCCは、連邦議会に対して、直接報告義務あり
・FCCは、連邦議会に対して立法勧告権を保有
・連邦議会は、FCC委員の罷免権を保有(大統領にはない)
2 情報通信行政を通信放送委員会と産業省に分断することについて
|
(1)各国が情報通信分野でしのぎを削っている状況の中で、情報通信行政を
分断することは、我が国の相対的地位の低下につながるおそれ。
米国において2千人の要員を擁するFCCに規制と振興の権限を集中し
つつあるように、欧米等においても、情報通信行政は一元化、統合化する
方向。
|
[1]情報通信は、国民生活、企業活動、学術文化等、社会経済全般を支え
る基盤であり、21世紀に向けた社会経済システム改革の原動力。(参
考2・3)
諸外国においては、この分野への取り組みが国力の消長に関わるもの
と捉え、情報通信高度化を国家戦略として位置付けている。
・米 国 … 情報スーパーハイウェイ構想
・欧 州 … TEN(汎欧州ネットワーク)構想
・マレーシア… MSC(マルチメディア・スーパー・コリドー)計画
[2]各国は、情報通信分野の権限を一元化、統合化し、総合的な情報通信
行政を展開している。
・米 国 … 96年通信法改正により、過疎地域等へのサービスを確保
するユニバーサルサービス基金、技術開発等を補助する電
気通信開発基金等の振興権限をFCCに追加
(参考)FCCの予算・職員数(1997年)
予 算 経常経費 2.2億ドル(約 264億円)
ユニバーサルサービス基金 14.0億ドル(約1680億円)
電気通信開発基金 0.2億ドル(約 24億円)
職員数 2000人(本部1700人、地方局300人)
・欧 州 … 欧州連合(欧州委員会)にEU全体の情報通信に関する
政策立案機能を統合した上で、電気通信市場統合のための
各国への指令や域内における高度通信技術開発のための補
助等を実施
・韓 国 … 逓信部(省)に情報通信関連の権限を統合し、情報通信
部(省)に改組
[3]各国が情報通信分野においてしのぎを削っている状況の中で、情報通
信行政を分断することは、我が国の相対的な地位の低下につながるおそ
れがある。
(2)情報通信行政を分断することは、他の行政分野が大括りされる中にあっ
て、新たな二重行政、縦割り行政をもたらし、国民、企業の負担増となる
おそれ。
|
[1]情報通信行政を分断することは、他の行政分野の大括り再編成が進め
られる中で、新たな二重行政、縦割り行政をもたらし、円滑で整合性の
ある行政運営に支障が生ずるおそれがある。
[2]また、国民、企業にとっても、行政に関する窓口が二元化され、責任
の所在が不明確となる等、負担が増大するおそれがある。
(3)「情報通信産業の振興」を特に切り出すことは、大競争時代の中で特定
産業の育成政策・保護助成行政からの撤退を進めようとしている国際的潮
流にそぐわない。
なお、「情報通信産業の振興」が「産業の情報化」を念頭に置いたもの
であれば、それは金融業、運輸業等各産業を担当する省が責任を持つべき
もの。
|
[1]今後の産業行政は、行政改革会議中間報告や行政改革委員会報告で指
摘されているように、民間の競争を促進し、特定産業の保護助成行政か
らは撤退する方向に転換していくのが大きな流れであると認識している。
|
(参考)行政改革会議「中間報告」
「産業省
・なお、今後の産業行政の転換(市場原理の徹底、個別介入の排除、
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
保護助成行政からの撤退)の必要については、基本的な合意があり
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
、産業省設置の前提とされている。」
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|
|
|
(参考)行政改革委員会「行政関与の在り方に関する基準」
(平成8年12月)
「III.判断基準
2.行政の関与の可否に関する基準
(6)公平の確保
b.産業間の所得再分配
[1]…産業保護的な施策から原則として撤退する。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
[3]特定産業の育成政策からは撤退する。… 」
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|
|
[2]特に、情報通信分野は、WTOにおいて電気通信サービスの自由化が
合意される等世界的な大競争の時代を迎えており、行政が特定産業の振
興に関わることは、国際的な潮流にそぐわないものと考えられる。
[3]なお、米国でも、情報通信分野の研究開発等に対して国が積極的に支
援しているが、これは国防政策、科学技術政策等の一環として行われて
いるものであり、情報通信産業という特定産業の振興として行っている
ものではない。
[4]また、「産業の情報化」は、あらゆる産業の生産性向上、高付加価値
化に不可欠であり、21世紀に向けた我が国の社会経済システムの変革
につながるものであり、重要な課題。
[5]しかし、「産業の情報化」は、基本的に民間企業が、経済性を勘案し
つつ独自性を発揮しながら取り組むべきものであり、こうした民間企業
の活動を行政が支援する場合にも、個々の産業の特性に配意して行われ
るべきである。
例えば、金融業の情報化は金融行政、運輸業の情報化は運輸行政のよ
うに、各産業を担当する省が責任を持つべきもの。
(4)情報通信行政においては、「規制」と「振興」を一体的に行ってはじめ
て、効率的かつ効果的に行政目的の実現が可能。携帯電話の普及・発展が
一例。
他の行政分野においても、「規制」と「振興」は一体。
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[1]行政において、特定の行政目的を実現するためには、法令等により権
利義務に直接関与する「規制」的手段と、インセンティブ等により誘導
する「振興」的手段があり、両者は表裏一体の関係にある。
[2]情報通信行政においては、「規制」と「振興」の両方の手段に加えて、
その基礎となる「技術開発」とこれら全般に関わる国際調整を一体的に
行い、効率的かつ効果的に行政目的の実現を図っている。(参考4)
行政目的
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規制
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振興
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技術開発
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携帯電話の
普及・発展
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・事業者への無線局免
許、事業許可
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・新規参入者に対する
開銀等融資の推薦
・過疎地域における移
動通信用鉄塔整備の
ための電気通信格差
是正事業
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・新たな周波数帯の
利用技術の開発
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字幕放送の
普及状況改
善
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・放送法改正による字
幕放送努力義務規定
の整備
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・字幕番組制作への助
成
|
・字幕制作システム
の研究開発への支
援
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[3]他の行政分野においても、行政目的を実現するため、「規制」と「振
興」と「技術開発」等を、同一行政組織が一体的に行うのが一般的であ
る。
行政目的等
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規制
|
振興
|
技術開発
|
【電力行政】
電気事業の健
全な発達等
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・電気事業許可、料
金認可
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・電源立地の促進のた
めの交付金の交付
・新規参入者に対する
開銀等融資の推薦
|
・海水揚水発電シス
テム等の研究開発
|
【航空行政】
航空の発達等
|
・定期航空運送事業
の免許、料金認可
|
・空港整備事業の実施
・航空機輸入に対する
輸銀・開銀融資の推
薦
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・電子航法、交通管
制等の研究開発
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[4]なお、情報通信行政における「振興」は、情報通信が社会経済全般を
支える基盤であることに鑑み、誰もがいつでもどこでも安心して利用で
きるような情報通信の普及・高度化を目的とするものであり、特定産業
の振興自体を目的とするものではない。(参考5)
参考1:情報通信分野の日米比較例
参考2:電気通信市場の拡大と雇用の拡大
参考3:情報通信は日本経済の牽引車
参考4:規制、振興、技術開発の一体的実施【携帯電話の例】
参考5:情報通信行政における振興の例
(参考1) 情報通信分野の日米比較例
1 ネットワークインフラの高度化状況
○光ファイバ網整備、デジタル化の進捗状況
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日本
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米国
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光ファイバ化率(94年)
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15.1%
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9.3%
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デジタル化率(95年)
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90.4%※
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89.8%
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※我が国は97年に100%を達成 (日本は年度末、米国は年末の数値)
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2 新たな通信・放送サービスの普及状況
(1)携帯・自動車電話の普及状況
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日本
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米国
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人口普及率 (96年末)
加入者数
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18.5%
2,311万加入※
(PHSを含む)
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16.7%
4,404万加入
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※我が国の加入者数は世界第2位 96年度末の人口普及率は25.6%
(2)インターネットの普及状況
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日本
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米国
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インターネット・ホスト数(97年7月)
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96万台※
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1,183万台
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ホスト数の伸び率(92年7月〜97年7月)
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60倍※
|
16倍
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※我が国のホスト数は世界第2位、92年7月〜97年7月の伸び率はG7中ト
ップ
(3)衛星放送、CATV普及状況
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日本
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米国
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衛星放送世帯普及率(97年3月)
普及世帯数
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21.3%
853万世帯
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5.0%
485万世帯
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CATV世帯普及率
(日本:97年3月、米国:97年1月)
普及世帯数
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12.5%
500万世帯
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66.1%
6,408万世帯
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【参考1 パソコン出荷台数(95年)】
日本:570万台 米国:2,285万台
【参考2 データベース売上高(94年)】
日本:2,000億円 米国:1兆3,220億円



