国際協力の今

生末 明宏(平成14年入省)
総合通信基盤局国際部国際協力課アジア太平洋地域係
アジア太平洋地域に対する国際協力等


  はじめまして。私は平成14年に総務省に入省し、昨年7月から現在の総合通信基盤局国際協力課で勤務しています。未知のテレコム部局で不慣れな国際業務に苦労しつつも、さまざまな方々のお世話になりながら約10ヵ月を過ごし、情報通信の世界の奥深さが少しずつ見えてきたかな、というところです。
  さて、「国際協力」という言葉を聞いた時、皆さんはどのような事柄を思い浮かべられるでしょうか。開発途上国にダムを建設したり橋をかけたり、学校を造ったり。あるいは医療環境の改善、農業技術の改良、教育面での指導など。国際協力課でも、途上国における通信インフラの整備や放送器材の供与、技術協力、人材育成への貢献など、通信・放送分野でさまざまな協力を推進しています。
  係員レベルで携わった業務に過ぎませんが、国際協力課で実施している「国際協力」の一例を御紹介します。
  毎年国際協力課では、独立行政法人国際協力機構(JICA)による集団研修の一環として、開発途上国の情報通信・放送関係省庁や、公社等の電気通信事業体、国営放送局などの局長級幹部を日本に招へいし、日本の情報通信・放送政策に関する講義の受講やさまざまな企業・研究所の視察等を行ってもらう研修を実施しています。これは、上述のような講義や視察、各参加者の出身国の制度や施策を相互に紹介し合うこと、それらに関する議論を行ってもらうことなどを通じて、研修参加者に自国の政策や制度の在り方について改めて検討する機会を提供し、自国における政策立案や公社・国営放送局の経営に役立ててもらうことを目的とするものです。
  私が行ったのは、この研修のカリキュラムの作成、講義や視察の依頼先に関する情報の収集やアポイントメントの取り付け、視察等への随行、その他さまざまな調整です。なかなか十分に準備が行えなかった部分もあり、今振り返っても反省すべき点がいくつかありますが、研修の最後には研修員の方々から感謝の声をいただき、また研修から半年経った後、研修員だった方の一人と再会した際に「あの時の仲間とは今でもメールのやり取りをしていて、活発な情報交換を行っている」と聞いた時には、研修が役立っている一面を実感したものでした。
  ところで近年では、厳しい財政事情を反映してか、ODA評価の必要性が唱えられたり、そもそも国際協力の在り方や必要性に疑問を持つ向きも現れたりするようになりました。国際協力という活動は、被援助地域の社会情勢の安定化や日本企業進出の下地を作るといった日本の国際戦略面からも、あるいは「途上国のために役立つ」という人道的な観点からも意義を有するものですが、日本国内ではなかなかその効果を実感することができなかったり、先程御紹介した人材開発研修のように明確な形での効果が見えにくいものもあったりします。とはいえ、国際協力活動の原資となるODA予算は国民の税金に基づくものであり、日本国民の理解と支持の声がなければ国際協力活動を進めることはできません。国際協力に携わる側として、国際協力の効果や必要性をアピールすることができなければ、そもそも十分な協力活動を展開できない時代が来ているのかもしれません。
  最近では、さまざまな媒体や手段を通じて、海外の国際協力の現場で活躍されている方々の貴重な声に触れられる機会も増えています。国際協力課でも、昨年「アジア・ブロードバンド計画」に関するホームページを立ち上げるなど、協力の積極的なアピールに取り組んでいます。私自身、情報通信分野の国際協力活動の意義をより周囲に知ってもらえるよう、これからも業務に励んでいくつもりです。


 


生末 明宏・執筆者近影
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生末 明宏・執務風景
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生末 明宏・職場の風景
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