これからは消費者行政の時代

入江 晃史(平成14年入省)
総合通信基盤局電気通信事業部消費者行政課企画係
電気通信事業分野における消費者行政一般


  皆さんこんにちは。総務省総合通信基盤局電気通信事業部消費者行政課※に勤務する入江晃史と申します。平成14年に総務省に入省してから、ずっとこの課で勤務していますので、同じ課で3年目の公務員生活を迎えています。
  私の入省当時は「料金サービス課電気通信利用環境整備室」という長い名前でしたが、平成15年6月に今の名前になりました。

  まず、私が勤務している消費者行政課とはどのような業務をしているところなのかについてご説明したいと思います。
  簡単にいえば、消費者行政課とは、「電気通信をめぐる消費者トラブルについて解決策・対応策を考えることを仕事とする課」です。具体的には、近頃社会問題化しているオレオレ詐欺(今は「振り込め詐欺」といいます。)、架空請求や迷惑メール対策、インターネット上の誹謗中傷問題・知的財産権侵害問題対策、さらに電気通信事業者の個人情報保護対策等を扱っています。
  私たち消費者行政課職員は、このような電気通信をめぐる様々な消費者問題に対し、行政としてどのように対応するべきかを日夜考え、時には電気通信事業者や他省庁と協力・連携し、行政としてのベスト・ソリューションを模索しています。
  行政というと、近寄りがたい存在であり、何をやっているのかよくわからないというイメージをもたれる方もいらっしゃるでしょうが、この課では、消費者の方々の身の回りで起こる問題解決を仕事の対象としており、この課に設置されている電気通信消費者相談センターでは、一般の消費者の方からの相談業務も行っています。
  日々仕事をしていて私が感じることは、自分の仕事が具体的な国民の利益に直結しており、国民と常に隣あわせで仕事ができるという「やりがい」です。私はこの点がこの課の最大の魅力ではないかと思っています。  

  さて、消費者行政課の仕事を、簡単ですがご紹介します。私が勤務している間だけでも、消費者行政をめぐっては、実に様々な話題がありました。以下では、私が直接・間接に関わった様々な問題の中からピックアップしてご紹介します。

  【ワン切り対策】
  私が平成14年に入省した当時、世の中では、いわゆる「ワン切り」と呼ばれる行為が社会問題化しており、ある電気通信事業者では、ある者のワン切り行為のために、自社の交換機(電話をかけるためには不可欠な機械)が故障して電話がかけられなくなってしまう事故が発生していました。行政として、このワン切り問題に対してどのように向き合って解決策・対応策を考えていくのかということが私の初仕事となりました。総務省では、有識者で構成される研究会が開催され、ワン切り問題に対する民での対応(電気通信事業者による約款に基づく利用停止措置等)や官での対応(法的措置等)など様々な方策が提示されました。私は、方策の一つである法的措置として、既存の通信法の改正作業を担当し、忙しいながらも楽しく充実した仕事ができました。

【個人情報の漏えい対策】
  私は電気通信事業部というところに配属されていたので、その名のとおり、主として電気通信事業者が仕事の相手であることが多いのですが、平成15年・平成16年は電気通信事業者が個人情報を漏えいしてしまう事故・事件が少なからず発生しました。中には新聞等で大きく取り上げられた事件もありました。
  近年ではブロードバンド(高速大容量通信)が普及し、インターネットを通じてサービスを提供する企業もたくさん登場し、まさに「IT(情報通信技術)戦国時代」といえるのではないかと思いますが、これらの企業も含め、多くの企業ではコンピュータやインターネットを利用した個人情報データベースでの管理が当然のように行われており、企業の中には数人の職員が何万人もの顧客情報を取り扱うところも多くなってきました。この流れのなかで、簡単に個人情報データベースから大量の個人情報を外部に流出させてしまうことも一方で可能となり、個人情報の漏えいの危険性は数年前に比べ飛躍的に高まってきています。私も業務上、様々な個人情報漏えい事故に触れる機会がありますが、私が入省した2年前と比べて、認知件数としては増えていることを実感しています。
  個人情報の漏えい事故については、企業自身の情報セキュリティに対する意識の向上や、それを踏まえた安全管理措置等の努力が極めて重要だと思います。ただ、行政としても、これらの企業が個人情報漏えい事故を発生させないように様々な形で働きかけたり、事故が発生してしまった場合であってもしっかりとした利用者対応や再発防止策の徹底を要請することで、個人情報の漏えい事故の発生を防止していくためのサポートを行う必要があります。
  総務省では電気通信事業者を対象とした個人情報保護に関するガイドラインを策定しており、私たちはこのガイドラインに基づいた適切な個人情報の取扱い方について、企業にアドバイスなどを行っています。

  おわりに
    電気通信をめぐる消費者トラブルというのは枚挙に遑がありません。そして、日進月歩で技術革新が進む今、10年後にこの課がどのような問題を扱っているのか現時点では想像できません。
  どのような技術にも良い面がある一方で悪い面もあります。ITにも良い面(インターネットショッピングなどの利便性)と悪い面(インターネット上における著作権侵害など)があります。ITの悪い面としては、IT本来のもつ問題(たとえば、セキュリティーホールなど。これはITの「限界」といったほうが適切かもしれません。)やそれ以外(たとえば、悪意を持った従業員による個人情報の流出)がありますが、それらを世の中から完全に消し去ることはおそらく不可能です。しかし、行政としては、現存する、あるいは、これから顕出してくるであろう諸問題に対し積極的に向き合い、適切な対応をしていかなければなりません。
  行政として解決していかなければならない様々な問題に取り組むことができる私の課は、総務省の中でも特に働きがいのある職場だと思います。私は、引き続き、自己研鑽を怠らず、職務を全うしていきたいと考えています。
  本稿を読んで、少しでも行政のイメージがわき、親しみをもってくれることを期待しつつ、筆を置かせて頂きます。


入江 晃史・執筆者近影
執筆者近景
入江 晃史・執務風景
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入江 晃史・職場の風景
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