大きな転換期のなかで

中尾 亨(平成12年入省)
総合通信基盤局 電波政策課 第一計画係長
周波数の割当て等に関する事務


  「この周波数の電波は何に使われているのですか?」

 周波数とは、一般的には周期的現象が1秒間に繰り返される回数。無線通信で使われる場合、電波の物理的性質を示す指標となります。電波はその周波数に応じて、テレビ放送や携帯電話、衛星通信等の様々な用途に使用されています。

 私は、平成12年に入省して以来、主に無線周波数の監理を行う業務にたずさわってきました。入省して間もない頃は、冒頭のような質問を一般の方から頻繁に受けたことを記憶しています。いま振り返ってみると、当時は、総務省が電波政策や周波数監理に関して公開している情報が比較的乏しかったため、一般の方からすれば、どの周波数を何の用途で使っているのか、自分の開設したい無線局でどの周波数を使うことができるのかが、分かりづらかったのだと思います。

 しかし、ここ数年間で状況は大きく変わりつつあります。

 まず、「周波数割当計画」なる告示を策定し、日本国内における周波数割当てのルール的事項を明示するとともに、周波数割当状況の概要を総務省HP上で公表しています。
 また、携帯電話や無線LANの爆発的普及に代表される電波需要の拡大に対応するため、電波利用に関する中・長期的な政策ビジョンを打ち出し、それに基づき「電波開放戦略」という政策パッケージを推進し、周波数割当てや電波利用料制度の抜本的な見直し、周波数再配分制度の整備、将来技術の研究開発の推進など、電波を最大限有効に利用する取組を積極的に行っているところです。
 (興味のある方は、「周波数割当計画」、「電波政策ビジョン」、「電波開放戦略」、「周波数の再編方針」等のキーワードで総務省HP内を検索してみてください。)

 これらの取組を通じて感じることは、電波利用により国民(=ユーザー)生活の利便性向上やライフスタイルの創造を図るというユーザーの視点、新たな無線産業の開拓に代表される経済効果など電波の持つ経済性の視点等、今までとは異なる観点を取り入れた結果、従来の枠組にとらわれない柔軟な政策が展開されつつあるということです。

 また、これらの取組の実施にあたり、パブリックコメントや研究会において可能な限り広く意見を求め、透明性を確保しつつ検討するように努めており、おのずと、現在の周波数割当てがどうなっているのか、将来どの用途にどれだけの周波数を割り当てることが計画されているのかについて、一般の方でも容易に知ることができるようになったと思います。その効果かどうかは分かりませんが、今では冒頭のような質問を受ける機会はかなり減少しました。

 このように、電波政策は今、大きな転換期を迎えています。

 もっとも、それを実感できるのは、私が現在の業務を担当しているからであり、一般の方々にとっては、電波の世界は専門的でまだまだ身近とは言えないものだと思います。かつての私がそうであったように、一般ユーザーにとっては、携帯電話や無線LANが必要な時に使えることが重要であって、使われている周波数など気に留めないものです。

 今後は、少しでも電波政策に関心を持つ方々が増え、電波利用の将来について一緒に考えていただくことができるよう、総務省が取り組んでいる政策をアピールしていくことが重要であると考えています。

 なにしろ電波は、国民共有の貴重な財産なのですから。



中尾 亨・執筆者近影
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中尾 亨・執務風景
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