テレコム外交の現場から

奥田 依里(平成17年入省)
総合通信基盤局 国際部 国際経済課 欧州経済係
欧州二国間(主として北欧諸国、フランス)との政策対話等の開催を含む二国間関係業務


はじめまして。現在、総合通信基盤局国際部国際経済課で、欧州諸国との政策対話等、二国間関係に関する業務を担当している奥田依里と申します。

現在入省して2年目ですが、昨夏までは、同じく国際経済課にて、OECDの「情報・コンピュータ・通信政策委員会(ICCP)」及びその下の4つの作業部会への対応の取り纏め、更にAPECの電気通信・情報作業部会(TEL)等に関する業務に携わっていました。

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『あら。アナタヒトリ?弁護士さん?違うのならチョットムツカシイかもねー。(片言日本語)』(「弁護士さん?」と聞かれたのは、国際会議における各国政府関係者には専門家が多いため。)

初の海外出張。これは、APECの電子商取引運営グループ(ECSG ※1)で、会議セクレタリー(議長及び会議全体のアシスタント)から「APECプライバシーフレームワークの国際的実施に関するガイドライン」に関するドキュメントを配布された際にかけられた言葉です。1年目の夏に出席した初の国際会議。上司陣は別の会議があったことに加え、台風というハプニングもあって、初日の会合で「JAPAN」のプレートの前に、相当緊張しながらたった一人座る羽目になったのです。
対処方針(注:政府全体で一致した対応をするために会議前に関係省庁等の間で作成する方針文書)を見ながら、相当びくつきつつ会議の様子を注視していました。そんな中、先の会議セクレタリーが気さくに話しかけてきたのでした。おかげで幾分緊張がとけ、その後は、上司に判断を仰ぐべき事項は明言を避けるなど、誤った理解や判断で「日本がこう言っていた。」とならぬよう正確な発言を心掛けつつも、各国の代表と何とか話せるようになったのでした。

そうかと思えば、日常業務では、「Hi, Okuda-san!」と極めてフレンドリーな文体で、昨夏まではOECD事務局から、現在は、外国大使館情報通信担当者から、「日本の規制政策に関するコレコレの資料送ってね。」「この質問票への回答を短いけどいついつまでにヨロシク!」「今度うちの国のエライさんが訪問するからu-Japan政策の説明、どなたかお願いね!」といった依頼メールが日々送られてきます。他国の情報通信政策について、公になっている情報のみでは正確な理解が困難な場合もあり、直接聞いてみないと不明瞭なことも多いのです(だからこそ多国間国際会議や二国間政策対話が意味を持つわけです)。そのため、日本の情報通信政策への理解に繋がればと、こう言った質問には精力的且つ適切に回答するよう心がけています。

外交とは交際・交渉による国際関係の処理のことですが、私が担当している業務における外交は、情報通信分野における連携促進という表現がぴったりのような気がします。情報通信分野における欧州各国と日本の政策対話では、往時のように貿易障壁の排除のための交渉といった意味合いが薄れ、最先端の情報通信政策に関する理解促進・意見交換といった面が強くなっていることに加え、情報通信分野においては、外交という言葉から一般にイメージする安全保障や国際人権問題などと異なり、感情的なもつれというものは余りありません。このため、(FTA・EPAやWTO交渉といった国際的に拘束力のある通商交渉は別として)、やはり交渉という側面よりは、連携促進・上手なお付き合いという面が強調されるように思います。

国際会議対応から地道な日常業務まで「テレコム外交」の最中にあって、1)諸外国の情報通信政策担当/国際機関としっかりしたお付き合いをし、情報通信分野における外交チャンネルを構築すること(『国際社会の一員としての総務省』)、2)諸外国の情報通信政策担当/国際機関への窓口として、日本の施策を対外的に発信(特に多国間の枠組では、情報通信分野における先進国であるが故に日本が一定のプレゼンスを示すことも重要になります)したり、海外情報を国内政策への参考として集約したりすること(『日本における情報通信政策担当省庁としての総務省』)の2つの役割を意識しながら、日々業務を行っています。

余談ですが、APECでは、他の加盟国・地域の担当者とお話をすると、「Our Japanese Colleague(日本の同僚)」という言い方を聞き、嬉しくなることがあります。このため、「国に持ち帰って担当部局に相談しなきゃいけない文書が沢山あるけど、貴方はいつもどうしているの?」などという、国際担当部局としての悩みを共有したりする一面も・・・。

まとまりのない文章になってしまいましたが、総務省における国際業務を通じ、テレコム事務官として、引き続き「テレコム外交」に微力ながら貢献していきたいと思うとともに、外交で重要なのは人間力。円滑な「お付き合い」ができるよう国際人として自己研鑽に励みたいという思いを日々強くしています。

※1 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/apec/soshiki/ecsg.html



奥田 依里・APEC−ECSGにて
APEC−ECSGにて
奥田 依里・日EU定期協議風景
EU定期協議風景