第28次地方制度調査会第11回専門小委員会 次第
平成16年11月2日(火)
10時30分〜12時30分
全国都市会館「第一会議室」
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開会
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議題
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1) |
道州制のあり方について |
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2) |
地方税財政制度のあり方について |
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3) |
その他
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3 |
閉会
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○ |
配付資料 |
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資料1 |
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道州制に関する論点メモ(委員限り)
−専門小委員会における調査審議経過− |
資料2 |
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地方税財政のあり方についての意見(案)(委員限り)
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○松本小委員長 それでは、時間もまいりましたので、まだお見えになっていない委員の方もいらっしゃいますけれども、第11回の専門小委員会を開会いたします。
本日は「道州制のあり方」及び「地方税財政制度のあり方」について意見交換を行います。道州制のあり方につきましては、前回、御議論をいただいたとおり、これまでの委員会でいただいたさまざまなご意見を踏まえ、今回、専門小委員会として調査審議経過を整理したいと存じます。
また、地方税財政につきしましては、前回も申し上げたとおり、国庫補助負担金改革、税源移譲、地方交付税改革の三位一体の改革が各方面で議論されている状況にあります。こうした状況を踏まえ、現在進行中の地方税財政改革が地方分権推進の観点を十分に踏まえたものとなるよう、地方制度調査会として意見を述べておくべきであるというご指摘が複数の委員からございました。
このため、皆様にもご賛同をいただいたとおり、前回に引き続き地方税財攻のあり方について意見交換を行うこととし、地方制度調査会の意見としての原案を専門小委員会としてとりまとめ、総会に報告したいと存じます。また、道州制のあり方に関する調査審議経過についても合わせて報告したいと存じます。
最初に「道州制のあり方」について意見交換を行います。前回までのご議論を踏まえ、事務局に資料を準備させておりますので、担当課長から説明させます。
なお、資料につきましては「委員限り」ということで配らせていただいておりますので、よろしくご了解のほどをお願いしたいと思います。それでは、久元行政課長。
○久元行政課長 「道州制に関する論点メモ−専門小委員会における調査審議経過−」、資料1につきましてご説明申し上げます。
10月25日に原案を提出させていただきましたが、当日頂戴いたしましたご意見、またその後のご指摘も踏まえまして、変更また追加をさせていただきました。時間の関係もありますので、変更点、追加点を中心にご説明を申し上げたいと思います。
最初の前文は前回と同じでございます。このペーパーは3つの大きな部分で成り立っておりまして、第1の見出しは「国・地方の政府のあり方と地方分権」、その中の最初の1が「期待される政府像」ということであります。ここの部分は基本的に変わってはおりません。道州制の広域自治体の再構築ということが、国・地方を通ずる政府のあり方の問題だということに触れているわけであります。ただ、用語といたしまして、前回のペーパーでは国という用語をいろいろなところに使っておりましたが、文脈によって、国といいましても立法府を含む国全体というところもありますし、また行政府全体としての中央政府という部分もありますし、また、各省庁を指す場合に国というふうに使っておったわけですが、それぞれ書き分けることにしました。
それから、2ページをご覧いただきますと、「○すなわち」のところですけれども、前回は関与という言葉を使っておりましたが、関与は地方自治法上の言葉で、この文脈では必ずしも適当ではないということで、「しかしながら、現状を見れば、国の中央省庁は、地方公共団体に対する法令による規制や補助金等を通じ、広範な分野において依然として濃密な介入を続けている。これを反映して、地方公共団体が自らの判断と責任において地域における課題に対応するという分権型社会は、未だ実現しているとはいい難い。」こういうような表現にさせていただきました。
いずれにしても、ここで言いたいことは、最後の○、「このような新しい政府像への転換は、ひとり国の改革のみにより実現されるものではない。地方公共団体、とりわけ国と基礎自治体との中間に位置する広域自治体のあり方について、新しい時代に即したものになるよう見直しを行い、国・地方公共団体双方の政府のあり方を再構築することによって実現できるものである。」というところであります。
2は見出しを直しました。前回は「広域自治体としての都道府県」ということでありましたが、ご指摘などを踏まえまして、この2で書いております内容をより端的にあらわす表現といたしまして、「広域自治体の再構築の必要性」という見出しにさせていただきました。そして、最初の○は、戦前のことを書いておるわけですけれども、戦前においては、「国の総合出先機関としての色彩が濃い存在であった」ということを端的に言っております。
戦後の改革といたしましては、都道府県知事、市町村長が住民の直接公選によって選ばれることになったということが重要な改革でありますので、この点について追加して触れることといたしました。しかしながら、この改革と同時に都道府県にも機関委任事務制度が導入されたという歴史を振り返りますと、3番目の○になりますが、この歴史を振り返れば、地方分権一括法による改革の意義について触れる必要があると考えられ、この改革によって「都道府県の法的地位に変容があったと見るべき」であり、「都道府県はこの改革によって、純粋な意味における広域な地方公共団体となったと考えられる」という表現にさせていただきました。
最後の2行ですけれども、「このような変化にもかかわらず、都道府県の構成やその区域については、明治21年以来特段の見直しはなく、基本的に現在に至るまで維持されている」としております。
次の○ですけれども、ここはやや修文をさせていただいております。
広域自治体を再構築するための都道府県の体制の見直しの必要性を分権改革との関連で補記しております。読ませていただきますと、「地方分権改革によって都道府県は地方公共団体としての法的性格が明確になったが、この改革の成果や市町村合併による基礎自治体の規模・能力の拡充を踏まえ、広域自治体が地域における行政を今後どのように担っていくかが、改めて問われることとなる。したがって、このような時期にこそ、地方分権改革が期待する役割を十全に果たすにふさわしい広域自治体を再構築するために、明治以来一世紀以上にわたって続いてきた都道府県の体制について、これまでの改革の成果を踏まえつつ、さらに本格的な見直しを行うことが必要と考えられる」としております。
次の○は、全文追加することにいたしました。今後求められる広域自治体の再構築の方途といたしましては、前回、ご指摘いただきましたように、都道府県合併という方法もあるという点に言及しております。また、ここのくだりで道州制の概念を明確にするための叙述も加えております。読みますと、
「この点に関しては、まず、規模・能力が拡大した基礎自治体との役割分担の下に、都道府県が広域自治体としての役割を十分に果たしていくため、都道府県合併によって区域の拡大を図ることが考えられる。
今般、第27次地方制度調査会の答申(平成15年11月13日) に基づく地方自治法改正により、都道府県の自主的合併の手続が整備されることとなった。その活用により、今後、現在よりも広域の都道府県が誕生し、これに中央省庁からの権限移譲を進めることによって、広域的な行政課題に的確に対応できる広域自治体となることが期待される。
さらに、国の役割を重点化し、その機能を地方公共団体に移譲するとともに、分権型杜会にふさわしい自立性の高い圏域を形成していく観点からは、現行の都道府県とは異なる新たな広域自治体として道又は州を設置する「道州制」の導入についても、今から検討を進める必要がある。」としております。
IIですけれども、「道州制が求められる要因」であります。前回の案では3点について、触れていたわけですけれども、その前に本文を追加することといたしました。
分権型社会において、道州制が求められる要因、それは地域レベルにおける必要性ということになるわけですけれども、この点につきまして、総括的に言及しております。
「分権型杜会では、地域の課題については地域住民が主体となって対応していくことを基本とし、地方公共団体が住民組織やNPO等と協働して新たな公共空間を創造していくことが期待される。
こうした社会にふさわしい行政のあり方を考えれば、まず基礎自治体が、『補完性の原理』や『近接性の原理』に基づき、福祉や教育、まちづくりなど住民に身近な事務を中心に地域における行政を総合的に担っていくことが求められる。
一方、広域自治体は、経済産業振興、雇用政策、高度な社会資本の整備、国土・環境保全、広域防災対策といった広域的な役割を積極的に担っていくことが求められる。
このような見地に立って地域における行政のあり方を考える場合、主として次のような要因から、道州制の導入に関する検討が求められることとなると考えられる。」
最初の1「地方分権の一層の推進−役割と権限の観点から−」の部分ですが、まず、最初の○の2段目のところを追加しております。それから、その前に段落ですけれども、折しも市町村合併が進みまして、昨日の時点で市町村の数が2,942
という数字になりましたので、「3,000を下回るところへ」という表現にしております。
次の段落は、広域自治体の今後に役割について、より積極的に言及したいという趣旨からつけ加えております。
「今後、基礎自治体の規模・能力の拡充や団体数の減少が進むことによって、基礎自治体の補完や連絡調整に対する二一ズは実際に減少し、広域自治体は経済産業振興をはじめとする広域的な役割に軸足を移していくこととなる。すなわち、このような分野における圏域の自立的な発展のための戦略的な行政の展開こそが、実態面においても、これからの広域自治体には求られるのである。」、こういうくだりを追加をさせていただきました。
6ページをご覧いただきたいと思います。広域自治体の役割について触れているわけですけれども、その6ページの2段目の段落でなお書きを入れまして、道州制を導入する場合に想定される国と地方公共団体との役割分担のイメージを示す、別表を追加させていただきました。これは事務の分担によって、どういう仕事が、それぞれ分担されるかというイメージを明確にするためであります。これは後ほどご説明を申し上げます。
いずれにいたしましても、「こうした事務を担うにふさわしい規模・能力を有する広域自治体を構築するという観点から、国と基礎自治体の中間に位置する政治行政主体のあり方を検討することが求められる。このため、道州制の導入を視野に入れて検討することは必要ではないか」というふうにしております。
2の「ブロック単位での地域戦略−圏域に関する現状と課題の観点から−」の部分ですが、2番目の○のところの第1段落を加えております。いきなりブロック単位の状況ということに触れるのではなくて、ブロック単位につながりやまとまりが認められるようになっているということを、これは前々回の小委員会に提出させていただきましたような資料でお示しした内容ですが、このことに概括的に触れております。
7ページをご覧いただきますと、この2番目の観点は、いずれにしても、こうした広域の地域戦略を担う新たな主体を構築するという観点から、道州制の導入について検討することが必要ではないかということであります。
3点目については見出しを変えております。前回は「選択と集中」という表現を使っておりまして、「組織運営の観点から」というサブタイトルをつけておりましたが、内容を端的に表現するため、「広域の圏域における総合的かつ主体的な政策決定」、というタイトルに変更させていただきました。ややつけ加えておりますので、読ませていただきますと、「人口減少杜会への移行や財政制約の増大などの前提の下では、例えば、フルセット型の行政投資からの脱却や、地域特性に即した産業政策の重点化、持続可能な地域構造への転換といった重要な課題に対する総合的かつ主体的な政策決定が不可欠である。
このような政策決定は、国の画一的な基準に沿って行うのではなく、地域において、住民の参画と監視の下で、その二一ズを的確に把握しながら、地域の資源を最大限に活用して総合的かつ機動的に行われることが望ましい。
これらの課題の範囲や性質にかんがみると、これまでの都道府県を単位とする取組みでは総合的、戦略的な対応が難しい面があり、複数都道府県を単位として相互補完することが求められることを踏まえれば、今後は、原則として都道府県の区域を越える広域の圏域を単位として対応していくことが望ましい。
また、広域自治体に期待される役割の変化により、その組織や運営のあり方も自ずと変化が求められることとなる。例えば、圏域における政策決定を的確に遂行していくためには、現在の都道府県の業務を前提とした議決機関のあり方、また執行機関の補助機関や内部組織のあり方を、戦略的・機動的なものに見直すことが必要と考えられる。
このため、広域の圏域における総合的かつ主体的な政策決定に適した新たな政治行政主体を構築するとともに、広域自治体の体制や運営のあり方を抜本的に見直すという観点から、道州制の導入について検討することが必要ではないか。」としております。
IIIでありますが、「道州制の制度設計に関する主要な論点」であります。
上記のような観点から、「道州制のあり方」に関する調査、審議をさらに進めることとなるわけで、今後の調査の審議では、さらに道州制の意義や導入の必要性等が検討されることになるわけですけれども、それと併せて、制度設計に関しても議論することが予定されております。
そこで検討すべきと考えられる主要な論点が、2で示されているわけであります。それらの論点の前提といたしまして、前回では、連邦制を選択肢とすることは適当ではないということ、この1点だけを前提としていたわけですが、2つ目の○のところに、地方公共団体と明確に位置づけるということを前提とするということをつけ加えております。
すなわち、前回のペーパーの主要な論点の2番目にあったもの、これをも前提にしてしまうということであります。
「道州制の制度設計に際しては、地方分権改革の理念、すなわち、国と地方公共団体の新しい役割分担のあり方に基づき、地方公共団体が地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うとの考え方を基本として、地方分権を拡充・強化する方向を目指すべきである。
このような見地からは、道州制を構成する道州は、「国の総合的な地方支分部局」や「国と地方公共団体の性格を併有する中間的団体」ではなく、明確に「地方公共団体」と位置づけることが適当と考えられる。というくだりを追加をさせていただきました。」
次の○の連邦制の部分は、これは基本的には同じですけれども、下から4行目、これは27次の答申でも地域代表としての上院(参議院)としておりましたが、より一般的な名称といたしまして、「議院の創設」というふうにさせていただきました。
9ページをご覧いただきたいと思います。2の「主要な論点」であります。前回は10あったわけですけれども、これを8点に整理をさせていただきました。今申し上げましたように、(2)の道州の法的性格の項目は、前提として明確にいたしましたので削除してあります。
10ページをご覧いただきたいと思いますが、3番目の論点で、「道州と基礎自治体の事務配分について」であります。分権型社会における道州と基礎自治体の事務配分がどのようなものであるべきかということでありますが、2つの選択肢の対比をより明確にしております。「規模・能力の拡充した基礎自治体が、地域のおける行政をできる限り総合的に担うこととし、道州は基礎自治体が処理することが適当でないものを担うものとするか」ということが1つのチョイスで、もう一つのチョイスは、「道州の役割は広域的役割に重点化することとし、基礎自治体とは事項的に異なる事務を担うこととするか」ということであります。
4番目の道州の区域、これは道州の区域の基準ですけれども、2番目のポツのところで、首都または大都市圏等は、一般的な道州の区域の考え方の例外であるということで、「例外的に」という表現を入れました。「例外的に区域の広狭にこだわらず、大都市又はその周辺の区域をもって道州の区域とすることが考えられるか」という表現にしております。
5番目は同じでありますが、11ページに移っていただきまして、6番目は「議決機関と執行機関のあり方について」であります。前回は「長の補助機関、内部組織」を独立の項目として立てておりましたが、事柄の重さ、軽さということを考えまして、この議決機関と執行機関のあり方の中に溶け込ませました。むしろ、この議決機関につきまして、2番目の小さいポツですが、「議決機関の議員の選挙制度についてどう考えるか。」「執行機関と議決機関の役割分担のあり方についてどう考えるか」といった点を追加をしております。
次に第7点ですけれども、これは道州に対する国の関与、または道州の国に関する参画でありますけれども、道州制の導入によって、国との関係は道州のみならず、市町村との間でも変わり得るという考え方から、「地方公共団体に対する国の法令による規制と行政上の関与、国の政策形成過程への地方公共団体の参画等について」というふうに変更させていいただきました。
次は大都市等に関する特例ですけれども、「あるいは」というところですけれども、「道州としての性格を有する大都市又は大都市を中心とする広域都市道州」という表現とし、道州としての性格を有する大都市の広がりが、2つのタイプがあるのではないかと想定されているイメージを明確にさせていただきました。
次はこれは、別表といたしまして、10月1日に提出させていただきましたペーパーを「道州制を導入する場合に想定される国と地方公共団体の役割分担のイメージ」というタイトルでつけ加えております。道州制が導入された場合に、国が企画立案から管理執行までを一貫して担う事務としてどのようなものがあるのか。この点については、10月1日のペーパーに加えまして、2番目のポツの国家的治安維持、3番目の小さいポツの金融、5番目の小さいポツの海洋開発といったところを加えました。2番目のカテゴリーが道州及び市町村が担う事務で、その一つが道州が担う事務、そして、13ページが市町村が担う事務ということでありまして、この部分につきましては、基本的には10月1日のペーパーのとおりであります。私からの説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
○松本小委員長 ありがとうございました。それでは、調査審議経過についてご意見等がございましたらご自由に発言願います。どなたからでも結構でございますが……。
○小早川副会長 前々回に引き続いて、現段階としては、かなりよくまとまったペーパーになっているかと思います。ですから、これからさらに議論していくべき話ということになるのだと思いますけれども、拝見していて、言葉として気になるところがあるのは、地域という言葉と圏域。区域というのは、恐らく地方公共団体が制度としてあることを前提として、その区域ということだと思うのですけれども、地域と圏域ですね、基礎自治体の場合は確かに現在、市町村合併で非常に動いていますけれども、やはり、制度の基本的な考え方としては、何か地域のまとまりであって、あるいはあるべきであってというのを含めた方がいいかもしれませんが、そういうまとまりのある地域、それは地域社会と言ってもいいと思うのですけれども、それを前提にして、そこを自ら治めていくという市町村、基礎自治体というものが考えられると思うのですが、道州の場合に、ここで地域という言葉と圏域という言葉が使われているのですけれども、特にここで圏域というのが、そういう意味での何か社会経済的にまずまとまりがある、そういうものを前提にしているのかどうなのか。ということは、基礎自治体と将来の広域自治体としての道州の地方公共団体といっても、基本的な性格が両方どうなのかという話につながると思うので、これから議論していく話だと思いますけれども、差し当たり感想として、その辺が引っかかるなという気がいたします。
○松本小委員長 何かありますか。先生方の意見をとりあえずお聞きしておくということで……。
○松本小委員長 それでは、そのほかの委員の先生方。林委員。
○林委員 4ページ目のところで広域自治体の再構築の必要性で27次の地方制度調査会の答申で合併がより容易になったということなのですが、本来、道州制の議論は2つ目の○の三段落目の「さらに、国の役割を重点化し」というところがあって、そして、それを進めていく上で、今の広域自治体で果たして、それを受けとめることが可能だろうかというところが議論として出発点だったような気がするのですね。ところが、この間に合併を活用して、そして中央省庁からの権限移譲を進めるということになってくると、どうも合併というのを受け皿として権限を移譲するための条件のような感じで出てきて、そしてさらに、それを進めるためにという今までの議論と違和感が私自身にはあるのですね。つまり、そういうステップとして、今の都道府県で権限移譲を十分に進められないのであれば、道州制へ至るステップとして合併というのがあっても構わないかもしれない。というような、これでいくと今までの市町村合併と同じように、権限を移譲するためには合併が必要だ、広域化が必要なのだというところが出てしまって、特に、小を大にするような印象を受けてしまうのではないかという気がしていまして、どうなのでしょうね、違和感が若干あるのですが……。
○松本小委員長 今のことにつきましては、この間の西尾先生の意見なのですね。西尾先生が、この間の専門小委員会のときに、やはり都道府県の合併ということについても、一定の位置づけを与えた上で道州制を語れと、簡単に言えば、そういう感じのことを言われたのですね。ですから、そのことに配慮して、ここに書いたのですが、私、昨日原案を見せていただいたときに、道州制のあり方という諮問に対して、少し合併の方の議論が出過ぎるのじゃないかということで、これでも抑え目にはしてあるのですけど、そこのところは委員の先生方がどう考えられるかということなのですが、ただ、総理の諮問は明らかに「道州制について」ですから、合併ということを、どの程度ここで触れるかというのは、考えさせていただきたいと思いますけれども。
○林委員 一番いい道州制というのは非常に難しい部分があるのだろうと思うのです。ですから、ステップとして合併というのがあっても構わないと思うのですが、どうも合併をして、そこへ広域的な権限を下ろしていくという記述でいくと、むしろ、今、分権の流れの中で、国がやっているものをもっと地方にという流れで、道州制というのがどうも来ているように、私は認識をしておりましたので、ちょっと、この順序ですね。つまり、これを最初に持っていくのか、ちょっとこのあたりを検討しなければいけないのじゃないかなと。
○松本小委員長 そこは西尾先生と林先生は少し違うと思うのです。明らかにスタンスが。そこのところを、私も2つ意見があるなと。林先生のようにステップ論として合併ということを考える。プロセスの段階で考えていくという考え方と、おそらく西尾先生の考え方は、都道府県合併というものを通じてというか、都道府県合併ということある程度意義を与えて、広域自治体の構造を整備するという、何かそういう感じなのですね。そこのところの考え方が少し違うので、また、十分意見を参考にさせていただいて、西尾先生とも相談させていただきたいと思います。今村先生。
○今村委員 私は、林委員とは逆に、この主文が入った方がいいという考え方です。これはやはり、総理から諮問が道州制があること、これは間違いないことですが、現在の都道府県の有り様、これが基礎自治体を包括する広域的な自治体としてどうなのかという、その問いかけを含んでいるわけでして、現在の都道府県から、さらに規模を拡大しようとするような場合に、西尾委員が前回言われたとおり、選択肢として合併と道州制とそういう形で提起されていると思うのです。林委員の危惧も、それに沿って考えましても、この部分があることによって、今日ありました明確に道州を地方公共団体として位置づけること、これを前提の方に移したことの意味がより明確になるというふうに思うのです。というのは、広域的な自治体、それが府県合併であれ、道州であれ、それは38年の憲法上の地方公共団体に関する最高裁判決のような、そこまでのことは要求しないまでも、少なくとも、地域の住民が自治体をつくるという、その機運の醸成がない限り、それはあり得ない話で、したがって、最低限の要件というべきであって、道または州を明確に地方公共団体、自治体として位置づける以上、やはりそういう機運の醸成という意味で言ってきますと、林委員がおっしゃるところのステップという意味が非常に重要な意味を持ってくるわけです。にわかに画一的な道または州を区域設定したところで、そうした機運の地域住民が、一つの自治体をつくるという、その機運の醸成が不十分なままやったのでは元も子もないわけですから、やはり、その意味においても、この部分を置くことが、私は非常に重要な意味を持ってくるというふうに理解します。
○松本小委員長 今の今村先生の意見も一種の機運の醸成という意味の位置づけでいいのでしょうか。そういうふうに受け取らせていただいて。
○今村委員 その意味でも……。
○松本小委員長 その意味でも。
○久保審議官 今のご議論は、実は道州制の論点、主要な論点というところの10ページでございますけれども、10ページの(5)とも関連しているというか、申請でいくのかというのは、むしろ、合併に極めて近いニュアンスを持ったような道州のつくり方というか、あるいはまた、法律で一斉にやっていくか、法律で区域も画して道州というのをつくっていくのかという議論とも、実は関連しておりますので、どう表現したらいいのかというのは、実は悩ましいところだろうともともと思っています。御議論いただきたい部分だと思っています。
○松本小委員長 いずれにしても、今回は経過報告ですから、そこを決めつけることのない形の表現で、とりあえず、経過報告的なものはさせていただくということで。今おっしゃったように、多少とり方によっていろいろ違ってくるかもしれませんけれども、これからの論議ですから、両方がとれるような表現で、今回は経過報告とさせていただくということにせざるを得ないと思うのですが、今村先生、よろしゅうございますか、それで。岩崎委員。
○岩崎委員 その経過報告なのでということですが、逆に経過報告だから、これからの議論を少し方向づけるかもしれないということもあると思うわけです。それで地方制度調査会としては、やはり第4次地制調の答申は、意識はしておくべきだという気がします。そういうことが出されたということですね。それで、そのときは多分、地方案ですね、これは官治、自治のミックスの中間団体型だと思うのですけれども、地方案と都道府県統合ですか、その案だと思うのですね。地方案の方が僅少差ですか、地制調としては珍しく極めて対立的な審議とプロセスの中で僅少差というか、それで地方案の方が載った。そういう経緯を地制調の資料集の中で読みました。何を申し上げたいかと申しますと、あれは昭和32年ですね。今は……。
○松本小委員長 79年。
○岩崎委員 40年以上経っていますね。そうすると、今回のペーパーで官治と自治のミックスの中間団体的なものを否定をするわけですが、都道府県合併の方が出ていて、つまり、40年以上も経つのに似たようなものしか出せないというのは、何となく自己批判的ですが、地制調としては、もうちょっと進んで現在の社会経済状況に合った、求められる道州制像を出したいという気がしています。分権一括法で機関委任事務制度の廃止をしたわけですから、その再来を招くような中間団体型は絶対に否定。もちろん、総合行政出先の官治の道州制というものも絶対に否定。先般の自治法の改正で都道府県合併の道が開かれたわけですよね。4次のときは、府県統合の道がなかったから、その後、一生懸命府県合併法をつくろうとしたような経緯があるのですけれども、何年にもわたってうまくいかないでということだったのですが、今回は、もう合併の道は開いているわけですから、やろうと思ったらできるわけです。そうすると、道州制の諮問を受けながら、やろうと思えばできることがあるのに、それを道州制の中で論じるというのは、4次の域を越えない。せっかく道を開いたのを、またここで議論する意味もないし、それから逆にそのぐらいのことしか道州制として考えていないのかということを出すことにもなるし、というので、もう少し大胆に言い切ることが重要という気がしています。
私の意見ですけれども、具体的に言うと、どこを変えていただきたいかということなのですが、変えていただけないかもしれないのですけれども、8ページの基本的な考え方の2つ目の○のところの最後のところで、ここは今申し上げましたように、官治分権でもなくて、官治と自治のミックスでもないということで、明確に地方公共団体と位置づけることが適当と考えられるというところで、「位置づける。」とか、「位置づけるべきである」とか、そういうふうにしていただかないと。「……ことが適当であると考える」なんて二重、三重にふわふわふわっとしてしまって、せっかく前で、そういうことではないと言っておきながら、適当であると考えられるのは、考えられなくなったら、これはやめようとか、そういうゆり戻しがあるかもしれないと、ちょっとヨタヨタするような感じなので、恐らく、ここの委員の方々の中には、よもや中間団体型がいいとか、出先型がいいとか、そういうことは思っていらっしゃらないと思うのです。地方公共団体と位置づけたことで憲法上の問題が生ずるかもしれないということがあるかもしれないけれども、その場合、特別地方公共団体で考えるとか、もう少し発想を自由にしておいて、地方分権のための道州制ということを、もっとはっきりと言い切りですね。それで出していただかないと、経過報告だけど、何となくこの程度と言われながら、次の議論をしていくのはちょっと辛いという気がします。
前半は今のことを申し上げたいための説明、理論武装で、どこを要求しているかというと、ここを明確にもうちょっと言い切ってほしいということが私の意見です。
○松本小委員長 今の点は、委員の先生方でも、ここに明確に地方公共団体と位置づけるということについては異議ございませんね。異議のある方いらっしゃいますか。それでは、そういうふうに表現も変えるということで……。
○紺谷委員 異議じゃないのですけれども、地方公共団体じゃなくて、地方自治体というふうにしてください。
○久保審議官 憲法上の用語は地方公共団体なのです。
○紺谷委員 憲法上のことは後で議論すればいいじゃないですか。憲法を変えちゃいけないって、どこかに決まっていますか。
○松本小委員長 それは地方自治体でもいいと思いますが、また後で修文のことについては申し上げたいと思います。
それでは、そのほかの委員の方。小幡委員。
○小幡委員 ちょうど、私もそれは申し上げたかったので、そういうことになりましてよかったです。
先ほどからの議論に戻りますけれども、地方分権の流れの中でとらえるべきであるというのは、ほぼ一致していると思うのですが、そこで自主的な都道府県合併と、どちらが先かという話が出てきてしまうのだと思います。
3ページのところの広域自治体の再構築の必要性というところで、都道府県の法的地位の変容があったと。ついこの間の地方分権改革で機関委任事務が廃止になったので、まさに都道府県はそういうふうに変わったと、そこまではよろしいのですね。そのまま、これで流れてうまく位置づけられるかと思うと、ここは道州に行くには、なかなかここからスムーズには行かない。そこで今の都道府県が余りに固定的に長いから、ここで改革を21世紀なのでしようと、もうひとクッションあるような感じがします。ですから、この流れ、ここから直接行くと西尾先生のおっしゃるような、4ページのところの法的性格が変わった、変容した、その都道府県がまずは合併すればいいじゃないか、こういうふうな話にも結びつきやすいなというふうに思いました。そこは直しようがないと思いますがね。この変容は確かにそのとおりですが、その後の道州制に一足飛びに行くかというところが、ちょっと違和感があるかなと。
その後、8ページのところの今の文言を申し上げたかったのですけれども、出先ではないという形で、本物の地方公共団体、自治体でもいいですけれども、それをはっきり書かなければ、いずれにしても、いけないだろうというふうに思いました。
もう一点は、ちょっと違う話ですが、11ページのところの(7)のところで、道州制の導入に際し、という一つ目ですけれども、義務づけ・基準設定のあり方、とあるその次の国の関与の法定主義や基本原則に関して、その見直し、と書いてありますが、これは道州になると国の関与の法定主義とか、国の関与については、このような手続きでやるべきとかの手続的な基本原則を見直さなければいけないと、いう趣旨でしょうか。法令の義務づけ、基準設定のあり方の見直しはよろしいのですけれども、こちらの方は果たして見直す必要があるかなと疑問に思ったのですが。
○松本小委員長 何かありますか、事務局は。
○久元行政課長 これは論点ですので、まさに分権一括法で確立された関与の類型ですとか、基本ルールということをどういうふうに見直すのか、中身について、今、事務局としてこういうものがあるというわけではありません。いずれにしても、道州制は、このペーパーの前半からずっと書かれておりますように、都道府県とはまた異なる新しいタイプの広域の地方公共団体ということですから、やはりこの仕事の内容、あるいは役割というのが変わってくるという可能性を考えますと、国と道州との関係は、やはり変わってくるだろう。今の自治法の関与のままでいいのかという問題意識をここに書いているわけです。
○小幡委員 一応、考えた方がいいということの趣旨ですね。
○久元行政課長 そうです。
○松本小委員長 ちょっと申しますと、現行制度の関与の法定主義と基本原則というのは、法律又はこれに基づく政令で定めれば、逆に言うと何でも定められるということなのです。だから、ものによっては国と道州とになってくると、その辺を遮断することも必要ではないだろうかというような見直しも含めて考えなければいけないという意味が、ここに書いてあるのだと。事務局がそう考えたのじゃないかと思うのですけれども、違いますか。率直に言って、そういうことはあり得る話ですので、法令で決めれば何でも決められるというのはおかしいではないかと。
○久保審議官 とらないタヌキの皮算用じゃないのですけれども、国の方から来るような権限が、どのような権限かという議論と裏腹になっているのだろうと思います。この前でしたか、本来国がやるという要素が極めて強いようなものまで受けるべきでないというご指摘がありましたけれども、仮に、そういうものでも総合行政として道州をつくるのだったら、移すべきだという議論が出てきたときには、関与というのはむしろ、強めの関与というのもあっていいのかという議論もあり得るのじゃないか。また、それは遮断すべきであるということになれば、明確にルールというものは、もう少しきちんとした方がいいのじゃないかとか、権限というのは関与とは裏腹でしょうから。
○松本小委員長 それでは、あともう一つ議題が入っておりますので、時間の都合でございますが、この際、この経過報告について、さらに特にご意見ございましょうか。
○篠崎委員 基本的なところで、私も地方分権の流れの中で考えていくという今までのご意見に賛成です。ただ、論点を細かく見ていきますと、地方分権の流れの中で考えるという姿勢に立ちますれば、区域割りにしましても、道州の長や議会の議員の公選にしても、地方自治の枠組の原則だけを定めて、あとは住民の意志が反映できるような、そんな地方の選択ができる余地も考えるべきではないか。論点の中にはある程度国が決めないといけないという発想があるような気がいたします。むしろ、地方分権の流れで、分権の発想で決めていく。そういう具体的な制度設計の中に、地方の多様な意志を反映できるような仕組みを考えなければいけないのではないかと思っております。
○松本小委員長 わかりました。世古委員。
○世古委員 私も今の意見で賛成です。特に地方公共団体というふうに道州を位置づけるということにもちろん賛成です。この道州制が求められる要因の中に、地方公共団体が住民組織NPOと共同して新たな公共空間を創造していくことが期待されるというふうにあります。そうであれば、そこのところの地方公共団体、特に基礎的自治体の部分を考えておられるのだと思いますが、その部分にも当然、道州も地方公共団体だとしたら、そこに住民の意志が反映させられるということが必要なわけです。
特に地方公共団体の役割分担というイメージのところそういった意味でこれまでの県がはたしてきた住民との関係役割というのは、道州制ではどのようになるのか。また住民側からの意志がかなり公共空間をしっかりつくれるようになれば、つまり、地域の分権するという発想から言えば、国と地方公共団体の間だけの分権ではなくて、地域への住民への分権という視点も必要なわけです。
そうすると、その分権の担い手になる住民側から考えれば、地域の住民側が新たな協働の仕組みをつくって公共空間を創造していく。そこでできないことを基礎自治体のどこかで補完的なことを一緒にやっていく。この上で県があり、それから道州という枠組であればいいのではないかというふうに思いますが、この論点に書いてあるところは、やはり国からの道州というのを制度設計においては、官々分権の中で考えられているという印象が強いし、これを地域の住民や一般の人々が見たときには、やはりずっと地方分権の本当の担い手としての住民の意志が反映されるものというふうには受け取りにくいような表現だというふうに思います。そこをぜひ具体的に、地域の住民の意見が基礎自治体だけでなく反映されるような地方公共団体としての道州にとっても必要だということを論議すべきではないかと思います。
○松本小委員長 これは事務局、例の都道府県との関係は、ちょっと答えておいてください。答える……?世古先生、これは要するに、広域自治体というのは……。
○諸井会長 県をなくそうという話なのです。
○松本小委員長 現在の県にかわるものという意味なのです。これを先生のおっしゃる意味で県と呼んでもらえばいいのです。
○諸井会長 そこがまた、浜田さんの問題にしているところでもあるわけで……。
○世古委員 道州になってもきちんと住民の意志を反映できるしくみが必要ということですか。
○諸井会長 ということなのだよ。それは残るのだよ。
○世古委員 県がになっていた住民の意志が生かされる方法をなくなさないようにしないと。。
○松本小委員長 それは今からまた、論議をしていくということになります。
○諸井会長 これが一番難しいところです。
○松本小委員長 神野先生。
○神野委員 最後に簡単なこと、言うことは簡単なのですけれども、中身は大きいのですが、どうして道州が必要かというところが、まだよく理解できないという方が多いので、少しインパクトを、こういうことも考えられる、こういう行政も新たな再編ができるのだということを言う意味では、フランスがレジオンをつくったときには、高等教育を含む意味での産業と、それからセットになった雇用政策ですよね、落としたのは。
それからもう一つ、イタリアがやったのは、医療保険を含む社会保障基金と医療の関係ですよね。そうすると、ここのイメージづくりの中でも、社会保障基金がかなり広域化すると大きく変わるのだ、変わる道も開けるのだということがないのです。例えば、年金とかがポコっと中央に出てくるのだけれども、場合によっては、地域ごとに社会保障基金をつくって、医療なんかをまとめていくという道も開けるわけです。
それから、産業なんかのクラスターなども雇用を含んでできるというような、何て言うのかな、これができることによって、今まで言っていた、そこはいつももめていたわけですよね。地方事務官でも雇用とか、保険とか、どっちなのといってもめていた部分が、ここをつくるとかなりすっきり整理できますよとか、何か前向きなイメージが、今までの枠組の中でも1つつくりました。上下どうやって整理しましょうかということだけではなくて、横にあった社会保険とか、いろんなものが整理できますよということが、実際には書けないと思うのですけれども、見通しというか、そういう道も開けるというようなことぐらいは示してもいいような気もします。
○松本小委員長 それは別表のところの書き方、例示を少し変えますかね。別表でよろしいですか。本文に入れなければならないでしょうか。
○神野委員 イメージが少し膨らむというような……。
○松本小委員長 考えます。そのほかの方はいらっしゃいませんか。
○紺谷委員 すみません、確認なのですが、例えば、ここにある別表なのですけれども、これはもう確定したわけじゃないのですよね。
○松本小委員長 もちろん、そうです。
○紺谷委員 じゃいいのです。ありがとうございました。
○松本小委員長 それでは、ただいままでの意見を踏まえまして、若干の文言の修正等につきましては、私の方にご一任いただければありがたいと思いますが、よろしゅうございますか。
それでは、そういうことにさせていただきたいと思います。ただいまのご意見を踏まえまして、会長、副会長ともご相談をしながら、若干、修正をさせていただき、そして総会に報告させていただきたいと思います。
それでは、次に地方税財政制度のあり方について意見交換を行います。現在、進行中の地方税財政改革が地方分権推進の観点を十分に踏まえたものとなるよう、地方制度調査会として意見を述べておくべきであるという委員からのご指摘もありますし、現在の状況を見ますと急を要する感じもいたします。したがいまして、前回ご了解をいただいた日程で進めるとすれば、議論のたたき台が必要と考え、私から指示し、事務局において地方税財政のあり方についての意見案としてとりまとめさせております。担当課長から説明させます。なお、資料につきましては、「委員限り」ということで配らせていただいておりますので、ご了解、ご協力のほどをお願い申し上げます。椎川課長。
○椎川課長 それでは、私の方からまとめてお手元にお配りしております「小委員長指示により作成した議論のたたき台(案)」というものをご説明させていただきます。それとあわせて、25日の小委員会以降の経過についても簡単にご報告をさせていただきたいというふうに思っております。
1ページの前書きのところをお開きいただきまして、現状認識が書いてございますが、そのことと合わせまして、最近の経過を報告させていただきたいと思っております。
1ページの真ん中あたりから8月24日に6団体の補助金改革案、三位一体改革案が提出をされたということが書いてございますけれども、これは地方団体の中にもいろんな意見がある中で、統一案としてとりまとめられたものでございまして、歴史上、こういうことはなかったということで、このことについては大変各方面から評価をされてございます。また、地方分権に向けての6団体、地方団体の強い意志のあらわれであるというふうな見方もあるわけでございます。
そして、政府といたしましては、地方からの改革案を真摯に受けとめ、11月半ばを目途に全体像をとりまとめることとして作業を進めております。現在、諸般の日程から15日から18日ごろをめどに、何とかとりまとめたいということで進めておりますけれども、既に新聞報道等でご覧のとおり、各方面の足並みが必ずしもそろっているとは言えない状況で、ここ一、二週間が重要な局面ではなかろうかというふうに言っております。
25日のこの小委員会以降の経緯でございますけれども、28日の日に各省庁から検討結果が提出をされました。以降、29日には閣僚懇談会で官房長官から再度、関係府省から提出をいただいた検討結果を見ると、今後一段と精力的な調整を行う必要があるというようなご認識が表明をされました。その後、政府部内におきましては、その後、官房長官を中心にいたしまして、総務大臣、財務大臣、それから経済財政担当の竹中大臣、この関係4大臣の会合というのが頻繁に開かれておりまして、実は昨日も今朝も開かれてございます。今後、今週中は何度か開かれるというような具合になってございますけれども、これは今ご説明申し上げましたように、各省庁から出てまいりました補助金の改革案、ざっと見てまいりますと、地方の案を全部受け入れた省庁はわずかに2省庁、内閣府と総務省でございまして、約100億円ぐらいの廃止縮減ということを提出をされております。
その他の省庁については、かなり地方の案とはかけ離れたものが出てきているというのが実感でございます。例えば、文部科学省さんにおきましては、ほとんどゼロ回答、代替案なしのゼロ回答に近いものになっている。厚生労働省さんにおかれましては、一部廃止縮減をしていただいておりますけれども、ほとんどが生活保護費や国民健康保険、児童扶養手当といったような、かなり国の責任が重い分野における補助率の引き下げという提案になっている。さらに農林水産省、国土交通省といった公共事業官庁におきましては、廃止縮減額はごくわずかで、一部を交付金化をするということで、税源移譲につながらない改革案というものが提示をされているというような状況、大体、そういうような感じでございまして、この官房長官のご認識というのは、そういうところから出ているのじゃないかというふうに思っているわけでございます。
したがって、この1ページの下から3分の2ぐらいのところに書かせていただいているように、大変重要な局面にあるのではないか。私どもとしては、与党の方でもいろいろと調整の場なりが設けられておりまして、政治レベルで、この問題を議論するということになっておりますので、予断を許さない重要な局面ではないかというふうに認識をしております。
さらに補助金、税源移譲の問題がそういう状況にある中で、交付税の改革の問題についても経済財政諮問会議で議論がなされております。このことについては、私どもの大臣の考え方は、前回ご説明させていただきましたけれども、財務大臣の方からは、現在、国と地方が2分の1ずつ折半をして穴埋め、補てん措置をしております地方財源不足が7.8
兆円、16年度ベースであるわけでございますけれども、この財源不足全額を18年度までに解消すべきだと、こういうようなご提案がされました。このことに対しまして、現在地方から不安の声、あるいは16年度の改革の二の舞になるのではないか、あるいは三位一体改革は、やはり国の財政再建が優先されて、地方分権とはかけ離れたところに行ってしまうのではないか、こういうような声が相次いでおりまして、そういった面でも予断を許さない状況にあるのではないかというふうに思っております。
ということで、1ページから2ページにかけましてでありますが、昨年の5月、11月と2回にわたって、この三位一体改革について、地方制度調査会からご意見をいただいておるわけでございますけれども、一貫して三位一体の改革が地方自治の本旨の実現という地方分権改革の流れに沿って着実に推進されるべきであるというご意見をいただいておりますので、そういう観点から、この議論をしていただくと大変ありがたいというふうに思ってございます。
2ページ以下は個別の項目ごとに簡単に現在のポイントを書かせていただいておりまして、まず税源移譲でございますけれども、これは比較的はっきりしておりまして、閣議決定されました「基本方針2004」に従って、総理から強いご指示をいただいております3兆円規模の税源移譲を18年度までに確実に実施する必要があるというのが基本でございます。この方法については、所得税から住民税、特に個人住民税所得割の10%比例税率化ということによるという方向性が概ねコンセンサスになりつつある。ということではないかと考えております。
それから、こういう税源移譲を行いますと、財政力格差が拡大するという問題が各方面から指摘されております。これは交付税の交付団体間におきましては、交付税の機能によりまして、適切な対応ができるわけでございますけれども、いわゆる、東京都問題と言われていますように、不交付団体に過度に税収が集中するのではないかという問題につきましては、税制面における経済活動に実体に即した税収帰属を図る観点からの法人事業税の分割基準の見直しや譲与税の譲与基準の見直し、さらにその他の方法もいろいろと工夫をいたしまして、そういった事態にならないように対応する必要がある。3兆円の税源移譲でございますから、前回、ご説明いたしましたように、10%比例税率化ということでやりますと、東京に約10%、人口シェア並みの税収が帰属する。それに対して、東京に現在行っている補助金がどの程度廃止縮減の対象になるのか。これは、これから決まるわけでして、その補助金改革の中身が決まりませんと、はっきりした数字は出ないわけでございますけれども、いずれにしても、その両者を比較しまして、不交付団体に過度の税収が行かないように、こういう措置を考えていく必要があるという認識でございます。
それから、国庫補助負担金の改革、今申し上げましたように、大変先行き不透明な感じもするわけでございますけれども、一番基本的なことは、これまでの経緯でございまして、総理の3兆円規模の税源移譲を目指すという発言と、それを閣議決定いたしましたことに関連いたしまして、そのかわりといいますか、補助金改革の具体案を地方に対して策定することを要請する、それを踏まえて政府としては検討する、こういうことになっておりましたので、そういう流れからいたしますと、政府といたしましては、この案を尊重して、3兆円規模の税源移譲を確実に実施できる補助金改革に全力で取り組む必要があるのではないかということでございます。
それから、一部公共事業関係で前回説明をいたしましたように、災害が今年は大変多かったということ、あるいは地方6団体の案が都道府県のみが事業主体になっている比較的大規模な公共事業というものを選定してきたということで、議論がいろいろあるわけでございます。また、税源移譲に馴染むとか、馴染まないという議論もございました。これにつきましては、建設国債が財源であっても、その償還は最終的に国税で賄われるということで相応分の税源移譲、いろいろなテクニカルな問題、時期とか、額とか、いろいろあろうかと思いますけれども、最終的に、相応分の税源移譲は必要であるということは明らかではないかというふうに私どもは考えてございます。
それから、先ほどちょっと触れました厚生労働省関係で多いわけでございますけれども、地方の自由度を拡大するという名目のもとに補助負担率を引き下げる、こういう提案がされているわけでございますけれども、自由度の拡大が一体どの程度のものか、どういう質のものかということが大変問題になるわけでございまして、制度の根幹部分を全部国が決めておいて、多少地方の権限を拡大する、あるいは権限を付与するからといって、補助率のような基本的な国と地方の負担関係を変えるということには、なかなか地方の方も納得し難いものがあるわけでございます。制度の基本的な部分を地方の自主的な判断に委ねるということが、補助率を変更する場合には必ず必要になる。
そうした意味では、今回提案されておりますような生活保護だとか、国民健康保険等の分野につきましては、まず国民自体がそういうことについて、地域格差が生ずることを受け入れるとは考え難いということもございます。制度的に考えましても、憲法で保障されました文化的で最低限度の生活を保障するという生活保護の理念からいたしましても、地域格差ということは、物価の差は現在でも反映をさせているわけでございますけれども、それ以上の地方団体の裁量とか、判断というものを許容するものではなく、必要最低限度のものだ。こういう建前からいたしましても、こういう分野における国庫補助負担率の引き下げということは、断じて行うべきではないのではないか。地方からの反発も去年から非常に大きなものがある。こういうふうに認識をしております。
3ページの3のところは交付税の改革でございますけれども、先ほど税源移譲に伴う財政力格差の問題を申し上げましたけれども、国庫補助負担金を廃止いたしましても、引き続きその仕事を地方団体が実施していく必要があるというものがたくさんございます。今回の議論の中では、当然、義務教育の問題が一番大きいわけでございますし、私立の保育所の問題等も地方から提案をされております。こういう基本的な行政サービスにつきましては、補助金が廃止されたからといって、事務をやめてしまうとか、サービスの水準を引き下げるということではございませんで、地方団体が引き続き、むしろ創意工夫、裁量というものを生かして、切磋琢磨しながら、よりよい住民サービスをしていくということが求められているわけで、そういうことができるようにするためには、一般財源による財源の保障ということは当然必要になる。交付税によりまして、万全の財源調整及び財源保障を行うべきであるということは当然のことではないかというふうに思っております。
なお、このことは交付税を増やすとかいう話ではございませんで、今回、補助金の廃止・縮減額に見合う税源移譲を行うということでございますから、マクロ的には地方財源が歳入中立で見合っているわけでございますので、これを仕事の量が地域によって異なってくる、例えば、義務教育の先生ですと、当然、過疎地においては人口に比して先生の数が多くなってしまう、そういうことをきちんと交付税計算に反映をさせ、税源の偏在を調整していくということでございまして、決して、交付税の総額を増やすとか、そういう意味ではないということでございます。
それから、所得税から住民税3兆円の税源移譲ということになりますと、その32%が元来法定率分ということで、交付税の原資になっておりますので、3兆円の補助金改革と3兆円の税源移譲は歳入中立になるわけでございますけれども、9,600億の交付税が減少するではないか、こういう意見がございます。これに対しては、当然地方財政計画をつくります場合には、歳入歳出をきちんと合わせる。それから、歳入中立という三位一体改革の考え方からいたしましても、9,600億円はどこかで補てんをしなければならない。補てんの方法については、いろいろあるわけでございまして、選択肢はかなりいろんなものがあると思いますけれども、いずれにしても、確実に補てんをしなければ穴が開いてしまうということになるわけでございますので、当然のことではございますけれども、ここに書かせていただいた次第でございます。
それから、交付税改革そもそも論といいますか、あるべき論というものをやるべきではないか。一部には需要と収入を計算して財源保障をするという、こういう仕組みがモラルサバードを引き起こすのだとか、あるいはこういうものを改めない限り、歳出の効率化は進まないといった意見をおっしゃる方がございます。私どもは何遍もご意見をいただいておりますように、現在の我が国の仕事のやり方、国が法令基準などでかなり地方にたくさんの仕事を義務づけている、あるいは、その水準、中身まで義務づけているという現状におきましては、財源保障というのは必要であると考えておりまして、そういう議論にくみするわけにはまいりません。交付税の本質論というのは、現在の交付税の運用というのが、法定率分以外に多額の特例措置ということで総額の不足を補っている。これは国、地方を通ずる多額の財源不足ということが背景にあるわけでございまして、致し方ない面もあろうかと思いますけれども、そういう本則から少し外れました特例的な運用をしていることが長く続いておりまして、そのことが何か交付税の本質を見誤らせるような方向に議論が進んでいるのではないか。むしろ、これを本来の姿に戻していくということが必要ではなかろうかというふうに考えておりまして、そのためには、当然、地方財政の歳入、歳出ギャップを縮小していく必要がございますけれども、これは歳出水準の見直しということも必要でございますし、歳入の確保ということも必要でございます。場合によって増税ということも必要になってこようかと思います。そういうような複数の手段の組み合わせの中で、当然、実現していくものでございますけれども、そういうものを目指して将来的には交付税率をきちんと見直して、地方財政の収支が償えるような形に持っていくということが本質論ではなかろうかというふうに思っておりますし、その際、地方の固有財源であるという性格を明らかにする観点から、特会への直入ということも検討すべきであろうと思っております。よく言われておりますように、偏在性の大きい税目については、交付税の対象税目にして、これを財政調整の対象とする。比較的偏在性の少ない税源につきましては、地方税としてきちんと地方がとれるようにしていく。こういうような意見もいただいているところでございますので、そういうことについても検討していく必要があるのではなろうか。こういうふうに書かせていただいております。
こういった改革を進めてまいることによりまして、交付税の総額、あるいは自分の団体に毎年度どの程度交付税が来るのだろうかということについて、予見可能性が高まってくる。地方税と同じように歳入の見込みを立てて、税と交付税で自分の財布として考えて、事業を計画的に執行する、あるいは受益と負担の関係をより強く感じて、この施策の取捨選択をする。自己責任のもとで行財政改革やサービス水準の見直しに取り組むことが可能になってくる。そういうことが分権時代にふさわしい地方税財政制度ではないか。こういうふうに考えているわけでございます。
さらに、交付税については多くの団体が交付を受けていて、不交付団体は非常に少ないという問題がございました。4ページのところに書いてございます。再三ご指摘も受け、申し上げておりますように、不交付団体の数というのは、我が国においては市町村の規模が人口200人から300万人を超えるような規模までばらつきがあるということで、現在、合併を進めているわけでございますけれども、市町村の数というよりも、そこに住んでいる人々が、自分たちの税金で自分たちのサービスがされている、自分たちの市町村のサービスがされているということを実感して、受益と負担の関係において、ものを考えていく、それが住民自治の観点からも、地方分権という観点からも好ましい状態ではないかということで、不交付団体に居住する人口の割合を着実に増加させるべきであるというご意見を従来からいただいております。これにつきまして、三位一体改革はもちろんでございますけれども、経済の着実な回復による税収の確保等も必要なことでございまして、できるだけ早期に、これを3分の1程度にすることを目指すというふうに書かせていただいております。
先日の経済財政諮問会議で、私ども大臣の方から2010年代初頭という目標を表明させていただいたということをご説明させていただきましたけれども、経済の着実な回復、あるいは抜本的な税制改正の問題の議論が進んでくれば、できるだけ早期に、こういうことを達成していくことが望ましいという書きぶりにさせていただいております。
それから最後に「地方財源不足への対応」、主に平成17年度に向けての対策でございます。4ページの真ん中あたりになりますが、三位一体改革を真に成功させるためには、国と地方の信頼関係が不可欠、三位一体だけではなくて、これから財政再建であれ、税制改革であれ、国と地方がいがみ合ったり、あるいは非常な軋轢を生じている中では改革というものはうまくいきませんので、この三位一体の中でだまし討ちを受けたとか、あるいは交付税だけが非常に削減されて、結局はそういうことだったのかというようなことを言われる方も大変多い。これは私どもに責任があるわけでございますけれども、16年度の地財対策の中で、交付税と臨時財政対策債がマイナス12%になったということで、大変な不信感も生じております。こういうことが続きますと、改革がうまくいかないということで、今年の骨太方針の中では、地方団体の安定的な財政運営に必要な一般財源総額の確保ということを閣議決定させていただいたということがございますので、こういうことをきちんと確保できるように17年度については、やっていかなけばならないという認識を示させていただいております。
最後に、なお書きのところに、今までの説明の中でも触れてまいりましたけれども、国・地方を通じて巨額の財源不足、地方財政におきまして十数兆円という財源不足が続いている。国におきましてもプライマリーバランスが19兆円の赤字とか、赤字国債30兆円という状態でございまして、長期の負債残高も700兆円を超える。こういう状況でございますので、当然、小泉総理のおっしゃるように、歳出効率化努力を続けるということは大前提でございますけれども、サービスの水準と国民負担の水準のあり方というものも議論を深めていかなければならない状況にあるのではないかと思っておりまして、現内閣では消費税の税率引き上げはやらない、こういうことでございますけれども、議論をしていただくことは結構だと、こういうような総理のお言葉もございます。
それから、平成11年度に景気対策のために所得課税の定率減税ということをやってございます。これは地方税で0.8兆円でしたか、国で2.5兆円の減税ということになってございまして、相当の減税が毎年度続けられているということでございますので、当然、景気がある程度回復軌道に乗ったというような状況のもとでは、縮小廃止ということは検討しなければならない。あるいは骨太方針にも書いてございますように、抜本的な税制改正についての検討を進めていく必要もあるわけでございまして、そういうことを最後に付言をさせていただいております。
私からの説明は以上でございます。
○松本小委員長 ありがとうございました。それでは、ただいまの意見案についてご意見等がございましたらご自由に発言を願います。
○神野委員 極めて体系的にかつ必要な論点をすべて盛り込んでいただいて、的確に反論していただいているので、私としては、この内容でいいのではないかというふうに思います。
ただ、ちょっと、調味料を効かせていただけないかというお願いなのですけれども、それは関係官庁とのやり取りをされているので、こうしたことも的確に書いておくという必要があるのですけれども、国民に対しては地方分権というのは、とにかく身近な、国民にとって身近なところで公共サービスの受益と負担を決めた方が国民の生活にとって豊かさ、ゆとりを増しますよねということを言ってきたわけですね。かつ、そうしたことが結局、効率的に必要な、それぞれの住民にとって必要なサービスが出るということになるにもかかわらず、今、そうではない方向に移ろうとしているのだということが伝わればいいんだと思うのですけれども、中身にそうした背後理念といいますか、背景にある概念が少し伝わるような言葉が余りないのです。
例えば、国民というのは一言も出てきませんし、国民的合意というぐらいは出てくるのですけれども、何というのですしょうか、国民とか、住民とか、本来主人公で決定すべき人々たちの言葉が出てこないので、そこに国民とか、住民とかという言葉をまぶすような工夫がお願いできないかと。
例えば、前書きのところの最初のところも、国と地方の役割分担は責任分野を明確にするとともに、地方が責任を持つべき分野について自己決定権と自己責任感を徹底する地方分権の改革というふうになっているのですが、つまり、地方分権というのは、国と地方との役割をきちっと決めて、役割が与えられた地方の範囲内については、自己決定、自己責任でやるというのが、これが地方分権ですよと、こういう説明をしているのですよね。そうすると、ここだと団体自治だけを説明していくことになって、本当はもうちょっと大きな国民の生活にとって非常に有利で、かつ身近なところは参加もでき、決定もできるという趣旨が消えているような、さまざまなところにもう少し、国民にとってどういうメリットがあり、国民が住民として決定をした方がいいのだけれども、そうした流れできたものが、今全部逆になっているということがにじみ出るような書き方にお願いできないか。
論点は当面の論点ですから、ここで書いてもらわないと困りますから、ここに書いていただいた論点は、これで生かした上で、少し国民とか、住民にとっての諸井委員長はじめとして、これまで進めてきた分権の流れの意味みたいなものは、あくまでも国民の生活を重視していたので、そういう言葉がにじみ出ませんでしょうかと。
例えば、国と地方の信頼関係といったときに、団体自治の信頼関係みたくとられがちなので、地方のお役人と官官分権みたいにとられがちですから、そこにやはり、もう一回住民とか、国民とかという媒介項を入れないと、政府に対する国民の信頼参加というようなことが伝わるような文章を幾つか入れていただけないでしょうかというお願いです。
○松本小委員長 それでは、それは事務局で考えてください。そのほか意見ございますか。西野委員。
○西野委員 私ももう少しつけ加えてほしいと思ったことがございました。今、ご説明をいただいた部分で、基礎自治体の住民たちが自己の責任のもとでいろいろな行財政サービスを最も望ましい形でベストバリューになるようにしていく。そういう取組みということも含んだ財政改革が必要だと思いますので、こういう今までのご説明に加えまして、この点をもう少し強調してほしいのです。特に地方交付税改革のところで地方の課税自主権の強化の意義を強調していただきたいのです。新しい地方の小さなニッチな税の創設は税収増には、余り大した役には立ちませんが、自由な税率操作ができると、地方が独自の必要な財源を住民の合意の上で確保できる道がひらけます。私は固定資産税を念頭に置いていますが、住民が納得して、あるベネフィットを受けるために負担を増やしてもいいと考えるならば、そうできるような制度改革を目指すことを示唆してほしいのです。そのことが自己責任やベネフィットと負担との均衡をクリアーした本当の意味での地方自治を確立させる基礎になると考えます。
○松本小委員長 ありがとうございました。そのほかの委員の方。紺谷委員。
○紺谷委員 先ほど神野先生がおっしゃってくだすったことはとても大事なことだと思います。地方が責任を持つべき分野について、地方の責任とか自己責任とか責任ばっかり出てきて、決定権限を明確に示す言葉が出てこないのですね。だから、住民の立場に立ってというようなことをきちんとお書きくだされば、責任、責任、責任と財務省用語ではなくなるのではないのかなというふうに思います。
それから、文言のことなのですけれども、同じページの下から5行目、「解消するとの提案を行ったことに対し」というのを、事の経緯を知らない素人が読みますと、解消してくれるのだ、税源移譲してくれるのだなと読めちゃうのですよ。だけど、そうじゃない。支出を減らせと言っているわけです。そういうことが伝わらないかもしれないなという心配があると思うわけです。
それから、先ほど定率減税のお話がありましたけれども、あれは一時的な景気対策として行ったのではありませんよ、皆さんご記憶と思いますけれども。なぜあのときに恒久減税という−−恒久的とおっしゃった方も一部省庁にいますけれども−−言い方をしたのか。短期的な景気対策ではないという意味です。前回、ここで配られました減税の歴史を見ますと、個人所得税が10兆円も減ったと、減税だけをグロスで取り上げた減税の歴史でありまして、ともにやっていた増税の分は入っていないわけです。あんな財務省発のデータをお使いになっていてはいけませんと、私は思います。
それから、財政が非常に厳しいということを前提に削減、削減の論調になっているのですけれども、何度も何度も言わせていただきましたように、なぜこんなに財政収入、歳入が減ったのかという原因分析をきちんとなさっていないじゃないですか。景気対策をきちんとやらないからですよ。公共事業のせいだ、景気対策のせいだと言ってきたけれども、公共事業は98年から激減、一方、財政赤字は98年から激増、景気対策に使われた国債は、50兆から60兆、だけど、その間に増えた国債は300兆ということを考えれば、財政赤字の最大の要因は税収不足であるというのは明らかなわけですよ。
しかも、小泉政権になってからたった2年間で10兆円も税収が減っているのです。そんな内閣はありましたか。まずは内閣が、なぜこんなに歳入が減ったのかということを財務省とともに強く反省すべきではありませんか。そうでないにもかかわらず、そういう大間違いのマクロ政策の上に乗っかって、地方の行政を論じるのはおやめいただきたいと思います。
きちんと景気対策をやっていれば、これも何度も申し上げましたけれども、GDPは750兆、1.5倍です。税収は100兆です。2.5倍です。まずは経済を健全化するという前提でなぜ考えられないのか。それなのに財政健全化だけを優先して地方分権と言いながら、地方の財源を削る話ばっかりなさっているじゃないですか。それでどうやって今まで以上に自由な住民ニーズに即した地方行政ができるのですか。できるわけがありませんね。そもそも国と地方IT基礎技能講習関連事業の実態調査様式の送付の利害に応じて負担をするという話は変じゃないですか。国と地方は利害が対立するのですか。それもさっきから神野さんが指摘なさっている官官の対立を匂わせるわけでありまして、住民、国民の立場から言ったらば、国と地方が利害が異なるということがあってはならないのです。常に国民の立場、住民の立場ではないでしょうか。それなのに、そういうへんてこりんな法律が、そのままあるわけですよ。しかも利害の割合に応じて、負担の割合というのはできている。権限と負担の割合というのは、きちんと納得的なのですか。そういう根本的な議論をしないで、譲るのだから削れというような話はとても変なんじゃないでしょうか。
国が最低の義務として行うものは、全額国が財源を提出すべきであると私は思います。国が全額負担しても地方の自由度を認めるということは大いにあり得ることでありまして、それを初めから議論の枠から外して、財務省がこしらえた土俵の上でだけ議論をしたらば、どんどん地方行政は窮屈になるばかりではありませんか。
ついでに申し上げると、先ほど地方公共団体というのは憲法にある文言だから変えられないというご趣旨の発言があったと思うのですけれども、地方交付税法など、地方公共団体という言葉を使っていない法律がありますね。ただ単に地方団体となっていたのじゃなかったでしょうか。だから、必要なら憲法を変えたらいいのですよ。この憲法のもとで中央がこれだけ困窮してきたのだとしたら憲法を変えたらいいじゃないですか。だから、いつもお願いしているように、地方自治体、地方政府という言葉を使うところから地方分権は始まると私は固く信じておりますし、そうしていただけない限りは、毎回毎回言い続けようと思っておりますので、どうぞ皆さん覚悟なさってください。どうも失礼しました。
○松本小委員長 ありがとうございました。そのほかの委員の先生方。林委員。
○林委員 私、全体的にこれは緊急提言といいますか、緊急意見だと思うのです。なぜこんなことになっているかということが、これは別に足並みがそろっていないからということではなくて、むしろ、本来の地方分権改革でなぜ三位一体改革が必要なのかというところが、少し欠落してしまっている部分があるので、そこでもう一度、それに合わせて、地方税財政制度をどうすればいいのかということをもう一度改めて提言しようということだと思うのです。ですから、確かに地方6団体が意見を出されたということは、非常に尊敬すべきことだと思いますが、これを真摯に受けとめて、これに合ったような形でということで、地方制度調査会というのが提言をすべきかどうか。むしろ、やはり我々が今までずっと、それから過去地方分権を進めてこられた、あるいは考えてこられた方々の意見に沿った形での三位一体改革でなければいけない。それはやはり、国民のための改革だということがあって、どうも第1段落目の前書きのところにさらっと分権のことが書かれてしまっていて、むしろ、もう一度原点に戻って、こういうことのために、本来、三位一体改革というのはあるべきなんじゃないかということを、ここでもう少し強調すべきだと思うのです。
あとは足並みが乱れている、そろっているとは言えず、もし足並みがそろっていればいいのかというと、そんなことはないわけですし、むしろ、本来分権を進めようとしているものが、どうもうまくいかないという危機感みたいなものがあって、それを受けてということだと思いますので、神野委員がおっしゃったのは、おそらく、そのあたりをもう少し強調すべきなのじゃないか、もちろん原点に戻ってということだろうという具合に思うのです。前書きのところが一つあります。
それからあと、細かいところですが、1ページ目の交付税改革のところがずっとあって、そして「国と地方の信頼関係を崩し、三位一体の改革に重大な支障を及ぼすとの声が相次ぐなど」、これが交付税改革についてということではなくて、むしろ、今の議論そのものが国と地方の信頼関係をなくし、そして三位一体改革に重大な支障を及ぼす。これは国庫補助負担金についても同じことが言えるのではないかという具合に思いますので、交付税改革、もちろんそのとおりだと思うのですが、このままいくと交付税改革だけが、こういう信頼関係をなくすというようにとられてしまうということが1つあります。
あとはもう一つ、4ページ目のところで、交付税改革なのですが、2行目に「経済の着実な回復による税収の確保等も図りながら」、これはものすごく気になりますね。つまり、3分の1程度とするというのは、これは1つの政策目標ですから、基準財政需要額を小さくする、あるいは基準財政収入額を大きくすれば、当然、小さくなるわけですね。これを目標とするというのは、多少よろしいかと思うのですが、それは通常の状態、あるいは平均的な状態において、3分の1にするように税源移譲を進めようとかということであれば、これはよくわかるのです。ところが経済の着実な回復による税収の確保というのは、まさにこれは外生的な話なので、ここは政策変数をどうするかということを議論しているので、景気がよくなって、自動的に3分の1になればいいのかというと、そうではないわけで、むしろ、ここは別に要らないのではないかというような気がしております。
それから、あと交付税はごみ収集の民間委託を前提とした基準財政需要額の算定といったような形に変わってきていますよね。ですから、そういう意味で、むしろ地方歳出の効率化といいますか、そういうものも考慮した交付税制度のあり方というのですか、こういうことを進めていくというような文言を入れておかれた方が、今のままで財源保障というような形でいくと、ちょっとやっぱりどうなのだろうと。例えば、民間委託を進めるというアウトソーシングの議論というのは、当然、重要になってくるわけで、場合によっては、交付税がそういうことを取り込んだというか、ごみ収集というのは、まさにそういうことを取り込んだという具合に私は理解しているのですね。だから、公立の保育所から私立の保育所に移管していくとかといったようなことまで、将来的に進めていかなければならないだろうという具合に考えると、そのあたりも交付税制度として誘導というと、ちょっとまた語弊がありますけれども、そういうものを歳出の効率化に資するような交付税制度、あるいは基準財政、財源保障のあり方、こういうものも検討するということは、ちょっと入れておく方が、今は保障保障というような感じで出てきているので、ちょっとそのあたりいかがでしょうかというように思います。
○松本小委員長 ありがとうございました。何か意見があったら言ってください。小室審議官。
○小室審議官 非常に貴重なご意見で、特に国民生活とか、住民の選択とか、大きな意味での分権、あるいは三位一体など、少し書き足りないという話は、十分練らせていただきたいと思います。その中で、具体的に西野先生の方から課税自主権、特に固定資産税の話がございましたが、去年の意見では、課税自主権をさらに活用しやすくするような方策について検討すると書かれておりまして、実際、16年度改正で固定資産税の超過課税の上限を外したりしています。そういう方策は実際にやっておりますので、あとはいかに活用されるか、そういう観点がこれからは重要であろうということだと思います。
それから、紺谷先生、恒久的減税、あれは幾つかあって、お話があったように、前段の大きな話はともかくとして、具体的に定率減税の部分と最高税率を下げた部分がございます。今回は、その中で言うと定率減税の部分に限定してお話をさせていただいているという意味でございます。要するに下げた部分、この辺はある意味で恒久化といいますか、そういうふうな観点で、全部が全部戻してしまうということではないことはご案内のとおりでございます。
○松本小委員長 紺谷委員。
○紺谷委員 でも、あのときは長期的な税構造の改革としてやっているわけですよ。だから、恒久とか、恒久的という言葉が出てきたのですし、恒久という表現の方が一般的だったのに、法案をつくるときにわざわざ「的」を入れたのは財務省の戦略です。恒久「的」は恒久ではないということになって、いずれこういうことになるだろうなと思っていたら、案の定なってきたというだけのことです。財務省と闘う総務省を標榜なされるのだったらば、せめて財務省がつくったいい加減なデータは使わない、いい加減な文言は使わないということをお願いしたいと思います。
○松本小委員長 そのほかの委員の方、いらっしゃいますか。篠崎委員。
○篠崎委員 皆さんおっしゃっていることと同じことになるかもしれませんが、すごくシンプルな言い方をさせていただきますと、三位一体の改革というのは、地方分権を推進するために、住民に身近な地方に権限と税財源を移して、地方の責任で自立的な行財政運営をするという、こういう原則が余り書かれてないのですね、さっきおっしゃったように。ですから、原則にのっとって住民が受益と負担を自ら考えて、自ら選べるような、そういう仕組みにしていくという原則に照らして、いろいろ出ている提案を考えるべきであると。そういう形で検討していかなければいけないという言葉を、非常にシンプルな言葉でいいのですが、ぜひ入れていただきたいと思っております。
○松本小委員長 ありがとうございました。ほかの委員方いらっしゃいますか。
まだ時間がございますけれども、ございませんか。大変たくさんの貴重なご意見をいただきまして、事務当局にちょっとお尋ねいたしますが、この前書きの部分は、今のご意見等を踏まえて、かなり全面的に考えないといけないかもしれませんね。
○椎川課長 対処します。
○松本小委員長 あと個別の話は、先ほどから出ておりますのは、特に交付税のところの林先生からの意見がありまして、あれなんかは、要するに効率化ということをインプットした交付税の算定方式というようなものも必要だというような考え方ですね。
○椎川課長 交付税というのは、よくご存じのことですけど、標準的な財政需要というものを算定するわけですので、その標準というものが大半のところで委託を前提に事業をやっているような場合には、当然、それを前提にする。あるいは、世の中の流れとして、民間も含めて、そういうことが常識であれば、そういう設定をしていくということであろうかと思っております。書きぶりは少し工夫させていただきますけれども、その趣旨はどこかに書かせていただきたい。
それから、ついでで、恐縮でございますが、不交付団体の人口の話は、気持ちとしましては、今景気がやや立ち直り気味といいますか、そういう中で考えますと、3分の1である程度視野に入ってきた。こういうことなのですが、また、景気がどこかでがたっと落ちますと、税収がドンと落ちちゃうものですから、そういう場合、3分の1というのはどうかという議論もありまして、ちょっと躊躇したような面がございます。もう少しわかりやすく、できるだけここの前提を外すような方向で検討はしてみたいと思いますけれども、そういう要素だけはご理解いただきたいと思います。
○松本小委員長 そのほか、林先生、何かございますか。
○林委員 経済の着実は回復による税収の確保等も図りながらということの意味ですね。これが非常に不明確なのですね。つまり、自然増収を期待しているのか、あるいはもう少し税制を変えて、こういうことも考えながらということなのかというところもありますので、むしろ、自然増収だったら、私はあまりこんなことは書かない方がいいというように思います。
○松本小委員長 それでは表現をまた考えましょう。そのほかの委員の先生方。世古先生。
○世古委員 ここの不交付団体に居住する人口の割合を着実に増加させるという表現は、不交付団体を着実に増加させるというのではまずいのでしょうか。なぜかというと、今、地方に行きましても、地方の大都市にどんどん人口が集中していくわけですよね。特に過疎地域はどんどん過疎化していく。こう書くと地方の大都市への集中ということを前提としているように見かねないので、不交付団体を着実に増加させるというのはわかりますけれども、不交付団体に居住する人口の割合というふうに書く必要があるのかどうかということについては疑問です。
○松本小委員長 今の意見について椎川課長。
○椎川課長 これは昨年も同じようなご議論があったように記憶しておりますけれども、当然、その団体数も増えることが一番望ましいわけでございますけれども、先ほどご説明申し上げましたように、人口200人というような小さな団体からあるわけでして、例えば、1万人未満のような団体数が非常に多いということで、現在、合併を進めているわけですけれども、団体数で見ますと、例えば、人口が不交付団体の居住人口が倍に増えたとしても、団体数でなかなか数が出てこない。要するに、大きな団体から不交付団体になっていくものですから、横浜市は人口300万人で、そこが不交付団体になっても1団体とかカウントされないということで、成果目標が何かはっきりしないということがございます。それからもう一つは、そこに住んでいる人たちが受益と負担の関係を意識しながら、地方政府の中でいろいろ自分たちのサービスについて議論していく。こういうようなことが重要であろうということからの人口基準、ただ、その書きぶりがちょっと、人口移動を促すような書きぶりになっているというご指摘であれば、その点は工夫してみたいと思います。
○松本小委員長 世古委員、よろしゅうございますか。
○世古委員 はい。
○松本小委員長 そのほかございませんか。
○諸井会長 いずれにしても、これは総会にかけるわけですね。
○松本小委員長 そうです。それでは、本日のご議論をいただいた意見案につきまして、皆様方のご意見を踏まえて修正をすることといたしますが、具体的な表現等につきましては、諸井会長、小早川副会長とも相談させていただきながら修正することで、私の方に一任いただきたいと存じます。よろしゅうございますか。
ありがとうございました。それでは、11月8日に予定しております総会に諮らせていただきたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。
ありがとうございました。それでは、そのようにさせていただきます。本日はいろいろなご意見をいただきありがとうございました。では、最後に次回以降の日程について事務局より説明願います。
○石川課長 今後の予定について説明いたします。第3回総会を11月8日月曜日、午前10時から12時まで、グランドアーク半蔵門「華の間」でお願いいたしたいと存じます。なお、年内はあと2回専門小委員会がございます。12月3日金曜日午後3時から5時まで、12月17日金曜日午前10時30分から午後12時30分までを予定させていただいておりますけれども、会場につきましては、改めて事務局から連絡させていただきます。
以上でございます。
○松本小委員長 ありがとうございました。会長、よろしゅうございますか。
○諸井会長 はい。
○松本小委員長 では、地方制度調査会第3回総会は11月8日月曜日午前10時からグランドアーク半蔵門「華の間」において開催することといたします。
以上をもちまして、本日の専門小委員会は閉会といたします。どうもありがとうございました。 |