麻生総務大臣閣議後記者会見の概要

平成161224日(金)

<<冒頭発言>>
  それでは、まず行政改革推進本部において、平成17年度までに行う独立行政法人の見直しの件につきまして、総務大臣として発言をしております。同様に行革担当大臣の村上先生からも発言がありました。閣議では平成17年度の一般会計予算につきまして、財務大臣、竹中大臣の発言等々があり、私からも同様に機構・定員の審査結果などについて話をして、同時に概算要求についても話をしています。
  閣僚懇では私から国家公務員の定員削減について、今回の1.66%の定員削減というものは昭和48年の1.58%の削減率を上回る史上最高の削減率となっているという実態をよく頭にいれておいて頂きたいという話をし、地方を預かる立場から言うとラスパイレス指数が97.9と、100という国の水準を今回が初めて下回りました。地方公務員のほうが学歴と平均年齢が高いという前提を頭に入れておいて頂かないといけないのですが、地方公務員の方が給与が高いとよく新聞に書かれていますが、これはいかに不勉強かということを如実に物語っている話だと思いますので頭に入れておいてください。一番低いところは73.3というのが実態です。地方公務員の総数は、前年度比較で33千人の純減。警察官等で約4千人増員した上での33千人の純減。これも同じく史上最高の削減率です。また各大臣の方から自分の選挙区のラスパイレス指数の資料を欲しいという話などいろいろ話がありました。
  (三位一体改革の評価)
  そこで今回、自分なりに頭を整理してみないといけないと思いまして、考えてみたのですが、今回の予算編成では、やはり三位一体の改革というのが一番の問題だったのだと思います。これがここまで進んだ理由は何かといえば、それは地方6団体、約3,000団体が結束して案を出し、そしてその後も結束が崩れなかったということだと思っています。少なくとも平成18年度までの検討課題として残されております項目として、税源だけでも3兆円に対して8割の2兆4,000億円位のものですから、残り6,000億円は来年中に議論をしていかないと、それ以後平成19年度に向けての三位一体の改革パート2に進んでいかないのだと思いますので、ここのところはきちんと頭に入れておかないといけないなと思っております。
  (様々な評価)
  そこで終わった後も地方6団体ともいろいろ話し合ってみたのですが、これは会えば会うほどいろいろな意見がある。地方6団体の中にも、大人で今回のこの取りまとめに全力を挙げた方々もいらっしゃる一方、全面的には参加していなかった方もいらっしゃいます。その結果、地方案が生かされていないという意見もありますし、総務省と地方団体との連絡がどうのこうの等いろいろ相反する評価があるのも確かだと思いますが、これについて僕としては多分、視点が違うからだと思います。総務省や地方団体は今回初めてこの種のことに成功したという評価の高いところもあれば、そうではないというところもある。
  (短期的に見ると)
  僕としては、短期的、局所的に見れば、3.2兆円の改革案を出したのに十分実現しなかったという点だけを見れば、その点は評価の対象にはならない。2兆4,000億円ですから。また他の役所にしてみれば予算の取り合いに過ぎないのではないかというようにしか見ない。基本的には文部科学省と厚生労働省が一番金額としては大きく1千億円単位のものが出ていますが、その他の省庁はそこまでいっていませんので、そういった意味で財源の取り合いとしか見ないところもあるのだと思います。
  (長期的に見ると)
  ただ、長期的とかより広い視野で見ると、やはり地方分権は結構進んでいると思います。順調とは言わないけれども着実には進んでいる、目標も期限も決められていますので、その意味では残っている部分についても進んでいるのだと思います。
  この三位一体の改革というものの意義なのですが、これは国と地方のお金の分け合い方、取り合い方という話にどうしてもなるのですが、僕としては三位一体の改革というものは、司馬遼太郎風に言えば「国のかたち」を変えることに繋がっていくという点が一番重要なところだと思っています。
  (国のかたちを変える)
  明治4年の廃藩置県以来、日本は中央集権という国家体制で上手くやってきた、間違いなく当たったのです。敗戦後も簡単に言えば官僚主導、業界協調という中央集権体制の下、日本という国は間違いなくあっという間に経済復興を成し遂げた、そういった意味では成功したのだと思いますが、この国家主導と言うか、中央集権の一番の手段というものが補助金だったと思います。官僚は補助金によって地方団体にいろいろ言うことを聞かせてきたわけです。これは相沢英之先生の大蔵週報という新聞にも「金の切れ目が縁の切れ目」と出ていました。金の切れ目が縁の切れ目というのは、なにも男女の関係だけではない。国と地方の関係も同じなのだと思いますが、さすがに主計局を30年もやってきた人の言う台詞は、説得力が全然違うと思って読みました。やっぱり補助金の廃止というのは、地方集権、地方分権に変えていくという意味において最も大きな原動力であって、やはり地方団体というものが自分で集めた、自分のところの税金で、自分で考えた行政を行っていく、そうすることがたぶん地方分権なのだと思いますので、お上に依存するとか、官僚依存とよく言われる日本の社会を変えると言うことなのだと思います。それだけ日本の官僚が優秀だったということもあります。優秀ではない官僚だったらとっくの昔に壊れていますよ、官僚が優秀だったというのは確かだと思います。ですから、これを行政改革という話でしか捉えていないようですが、僕はそれは違うと思います。行政改革をもっと先に進めて国のかたちを変えるということだと思いますので、官僚主導イコール官僚依存というような日本の社会の構造、体質自体というものを変えるのであって、これがたぶん民間に対する規制の緩和と同じ脈絡の上にあると思っています。
  これは同時に、政治も変えることになるので、やはり地元に公共事業とか、補助金とかを持って帰ってくるのが政治家の第一の仕事かのごとき話ではなくなってきて、日本という国の在り方を自分の地域の在り方を含めて考えるのが政治家の本来の仕事であって、今までのようにインフラが一定でない、電話が通じない、テレビが観られない、電気がこない、水道も無いというような時代であっては今言ったような話も重要だったのかもしれませんが、ある程度一定の社会基盤が整備されてくると、均衡ある地域の発展から特色ある地域の発展に世の中が変わってくるのだと思います。
  (政治と意識を変える)
  この例として昭和39年に作られた新幹線の駅の外観どれも同じ駅にしか見えません。東京駅と名古屋駅、それに新大阪駅いずれも同じような板が張ってあるだけ。この辺で何か起きたら板をはがして持ってきて、こっちに持ってきてパチンとはめたら全部はまるようになっている。合理的、安い、軽い、早いと、これはあの時は絶対の善でありました。ところで最近では八戸駅に行ったらたまげるよ。びっくりするような駅になっている。しかもこれは八戸の人が考えた、これが良いということですごく綺麗なものになっています。東京でもあんなに綺麗な建物はそうざらにはありません。それが今の八戸駅ですよ。地方の方は今、特色ある地域を目指しつつある。昔だったらあんなものは無駄遣いと言われて叩かれるはずです。ところが今では地元は叩いたりしない、あれはやはり俺たちの新しい駅として誇りを持っているのです。そういう意識の変化というのが、猛烈な勢いで変わってくるのだと思います。
  (改革が困難な理由)
  僕は今後この種の補助金の削減ということは更に進んでいくのだと思いますが、やはり基本的に補助金の廃止というのが簡単に進まないのは、それは中央官僚の権限や国会議員の権限を削減するからですよ。それを自分で削減しようとする人はいないのであって、なかなか進まないというのがこれまででした。新聞社だって同じですよ。上がり記事はなかなか載せないとか。地方で真面目に書いている記事はなかなか上がってこない。皆さんが一番知っているでしょう?地方を回った人が一番良く知っているはず。地元で記者が議員に喰いこんで議員の話が最も本音が取れるはず。僕は議員に入りきれない新聞記者は駄目だと思うけど、皆入り込んでいるよ、優秀な人は、僕はそう思います。そういった記事を中央がそれを認めるか、デスクはそれを取り上げるかというと、自分が取れない記事は上がっていかないのと同じような心理だと僕にはそう見える。今そういった状況にもかかわらず、それがまがりなりにも進みつつあるのは、1つは時代の流れであり、これはもうはっきりしていると思いますね。やはり中央集権ではなかなか活性化しない。公共事業とか補助金だけでは地元は元気にならないということが認識されつつある。これは大都市に限らないことであり、標準とか画一とかいう基準から、多様化、個性や特色という方向に進んでいく中、地方公務員を含めて官僚任せから自分たちで街づくりをするのだというような話に意識が変わりつつあるのだと思います。
  (政治主導で行う)
  もう1つは小泉改革の中で、やはり三位一体の改革もそうでしょうけれど、これは政治主導で政治目標を設定しているのです。そういったものは、今までの自民党路線の変更ということになりますので、これが3年間の小泉内閣の元で進んだということになりませんかね。私は党の方についこの間までいましたが、ここが一番肝心なところだと思います。
  (仕掛けが重要)
  いろいろ今まで党の反対もあってなかなか進まなかったというのは当然のことですが、地方もそんなに望んでもいなかったからだとも思いますが、今回この三位一体の改革が進んだのは、やはり仕掛けがきちんと出来上がったからだったと思っています。経済財政諮問会議で議論をして目標を閣議で決定し、そしてそれでも話が進まないと見ると目標を追加したわけです。
  それは三位一体の改革の方針を平成14年に決定して、昨年平成15年に3年間と期限を切って4兆円の補助金を削減します、廃止しますという目標を立てたわけです。そして今年は、目標は立ったが進まないものだから、三位一体の改革の中でも3兆円の税源移譲は先行することを盛り込むことにした。三すくみみたいな状況になっていたところを税源移譲から最初に切り込んできたと。地方からみたら、補助金は返納したが税源移譲は無かったではとてもじゃないと疑心暗鬼になっていたところに3兆円を出しますということを閣議決定した。そして次に補助金の削減もなかなか中央ではまとめきらない、800億円しかまとまらなかったのだから2兆9,200億円足りない。それに対しては地方に案の取りまとめ振る。補助金を貰う方がいらないと言ってきたのだから、それを要るだろう、要るだろうと言っているのが中央だという図式にしたのですよ。それで、結果として地方は3兆円の税源移譲が決まったものだから考えた。
  (地方の責任)
  地方6団体でいろいろと県と町村では意見が違う、立場も違うにもかかわらず首長は最終的にこれに乗った結果6団体の結束が最後まで崩れなったということで、これがまとまったということだと思いますが、これによって地方にも責任が出てきます。格差が付きますから、地方6団体の中にあっても同じ人口200万人の県を比べ、同じ人口5万の市を比べた場合必ず格差が出ますから。これによって市長さん知事さんの経営能力に差がついてくると思っているので、これからは間違いなく地方分権というのは地域が主権を持った分だけ責任と義務を負ってもらうという流れが確実に出てきますので、えらいことになったなあと思っている首長さんもいらっしゃるでしょうし、これは面白いことになったと思っておられる方もいるでしょう。そういった時代の変化なのだと思います。
  (今後の課題)
  今後の課題ですが、政府としては残された6千億円の税源移譲の話や義務教育の負担の扱いの問題、これは中教審を含めていろいろ残っています。建設国債を財源とするものの税源移譲の方法、これは技術的な話です。そして、もうひとつは平成19年度から、今約20兆円あります補助金のうち進んだのは、まだ約3兆円ですので、まだまだ残額は多いわけです。地方6団体が要求している、また野党も勇ましくいろいろ言っておられますけれども、そういった意味では、いわゆるパート2というものはこれからなので、今回の三位一体の改革はその第一段階に過ぎないと思っています。
  三位一体の改革の話というのは、この後も結構しんどいと思っています。官僚の抵抗も更に激しくなりますよ、当然だと思いますが。ただ時代の流れが地域主権、地域分権というものにあるのだと思いますのでこの流れを押し止めることは不可能、日本を変えるためとの意識が各地方に出てきています。その一番分かりやすい例は地方に何々銀座とかいった名前が無くなってきました、そう思ったことないですか。地方に行ったら昔は何とか銀座というのが何処にでもありました。銅座もなければ銀座も無かったのに何で銀座と付いたのかと当時思っていました。スキー場にもあったから、混んでいるところを対象に銀座としたのですよ。今だったら歌舞伎町って言ってもらいたいね。だけどそういった名前がなくなって、博多は中州になり、北海道に行けばすすき野になり、名古屋に行けば栄町と、みんな堂々とその名前を言うようになってきた。
  (地方も主役)
  明らかに地方にそれなりの自意識が出てきたのだと思います。いろいろの場で国と地方の場というのは今日も開催されますが、閣議決定とか諮問会議とかいろいろありますので、国と地方というものに関しては、国政というものに対してやはり地方が意見を言うということが制度化されたわけですよ、国と地方の場というのは。今回の場合、地方は脇役ではないのですよ。地方が自ら要求したのだから、そういった意味では地方は主役の1人と成ったわけですので、その点は今回の三位一体の改革の進め方というのは画期的なことだったと多分あとになって言われるのだと思いますが今は大変ですよ。これが後になって振り返ればあの時だったと言われるだろうと思っています。とにかく、地方団体と力を合せてやっていかないと、これから先は進んでいかないのだと思っているということを言いまして、本年最後の記者会見を締め括る予定だったのですが、聞いたらもう1回会見があるそうなので、今の話は年末分です。

  (質疑応答)
【三位一体の改革の今後の進め方】
:今の正に三位一体の改革というのは丁度緒に就いたばかりであり、その次のことをお伺いするのもなんですが、平成19年度以降のパート2についてどうやって進めていくのかということについて、今回の場合は税源移譲を先にするとか、そういう大臣の仰ったいろいろな仕掛けがありましたがも、次回については、今回はこれで押し切られたけれども、次はなかなかそういうふうなことに対して相当の抵抗があると思うのですが、次回に向けての仕掛け、1つは地方団体を国政に参与させる場を作ったと、それ以外で今から出来ること、今後に向けての仕掛けというものとしてはどうことが考えられますか。
:仕掛けを先に言ったら仕掛けにならない。仕掛けがあると分かって引っかかる獣もいないのだから。そんなこと先に言うことはない。それは無いけれども、しかし基本的に言って今回は住民税のいわゆるフラット化という5パーセント、10パーセント、13パーセントというものを一律10パーセントにするということで約3兆円を捻出したのだと思いますが、やはり3兆円のフラット化が出来ると地方と国との税収の割合が従来の6040から、5446ぐらいになるわけです。でも基本的にはこれはやはり5050ということになるべきと思いますので、その意味では、どういう形で税源移譲をするかという手段も考えていかなければならないところでしょう。補助金では、どう返上するかということを中教審の話、施設整備費や公共事業を含めて、もちろん補助金20兆円のうち約半分は厚生労働省関係ですから、そういったものを含めて、いろいろなものをこの一年かけて考えていかなければならないところだと思います。これを一年間やりますから、皆さん結構、実感が湧いてきますよ、各地方団体は。これは自分の能力がキッチリ出てきますから、もっとやれというところと、何でもかんでも自分の責任になってくるからしんどいという人と3,000団体もあればいろいろ意見が分かれてくるのは当然だと思います。そういった形で分権が進み、また、情報通信技術を使っての合理化、スリム化をやってみたりといろいろなことを試行錯誤される。その中から、新しいものがきっと生まれてくるというような感じはしますが、いずれにしても地方というものの中で優れた経営者がきっと出てくるのです。だから、ペリーが来航した時に地方の意見を求めた時に同じ役人の中に、当時旗本と言ったのですが、旗本の中でずっと課長補佐のそのまた下みたいな役職のところから勝海舟の海防意見書が出たわけです。後の幕府の海軍政策は全部あの時に出たものです。そういった意味ではいろいろな意見が今から経験を含めて出てくる。新しいものが出てくると思いますけれども、流れとしてはやはり不交付団体の数を増やして交付団体の数を減らす。そして地方が自分たちの特徴を出すということに対しての規制がありますから、その規制はなるべく緩和する、特区などは一つの試みなのですが、そういった方向で確実に今動いているのだと思いますので、その方向が更に加速されていくと税収も上がったりといろいろな形で、今とは違うものが出てきて、今言ったような話が幾つもあると思いますのがいろいろアイディアが出てくるのであって、これは何も役人が考えなくても地方からもっとこうしようとか、ああしたいとかいう意見は出てきておかしくないと思います。

:今仰った三位一体の関連ですが、確かに今回地方にとっては地方案が十分に生かされなかった部分もありますけれども、地方の方から評価する声が出ているというのは、国と地方が協議する場が出来たということが非常に新しい政策決定のプロセスとして評価されたのだと思うのですが、今後大臣が仰ったように残っている課題についての議論ですとか、或いはこの先のパート2の三位一体の改革の議論を続けていくために、協議の場というのは今後も続いていくということが政府内でもみんなのコンセンサスになっているという理解でよろしいでしょうか。
:結構です。国と地方の協議の場に於いて、この今回の案がまとまった時に地方の方から要求があり、それに対して官房長官が答弁をしておられますので、間違いなくその方向だと思います。第一この種のことをやるのに地方の案が全然理解できないまま押し付けても上手くいきませんから、やはり両方で協議していかないと手がないと思います。
  以上



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