論点 |
NTT西日本の主張 |
委員会の判断 |
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電気通信事業法(以下単に「法」と略称)第38条本文による接続の義務の存否 |
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1) NTT西日本の加入者回線とソフトバンクBBのDSLサービスとの間には、ソフトバンクBBの従前の請求により既に接続が実現しているから、これを超えてソフトバンクBBの新たな請求を受け入れる義務はない。 |
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法第38条にいう「電気通信設備の接続」とは、規定上、接続箇所を限定していないばかりか、その沿革に照らすと、技術的に接続が可能なすべての箇所における接続を意味する。 |
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2) ソフトバンクBBの接続請求は、その実質においてMDFのジャンパ線の自前工事を求めるものであるから、協議再開命令の対象とはならない。 |
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本件申立ては、あくまで法第38条に依拠して協議の再開を求めるものであり、申立人が自前工事が可能となるものとの主観的な期待を有しているからといって当該接続請求を同条の適用対象外のものとすることはできない。 |
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3) ソフトバンクBBの請求を入れると、接続約款の変更をもたらし、他の電気通信事業者や利用者などに重大な利害関係を及ぼすことになるから、協議再開命令により二社間で個別的に解決することは許されない。 |
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接続協議を行うことと、協議の結果締結される接続協定の内容がいかなるものとなるかとは、別個の問題である。また、法第38条の2第2項は、接続約款の作成を義務づけているが、同時に、当事者間の協議結果に基づいて接続約款を変更することを予定しており、さらに、同条第7項は、認可接続約款により難い特別な事情があるときは総務大臣の認可を受けて認可接続約款の内容と異なる接続協定を締結することができる旨を規定している。 |
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4) ソフトバンクBBの請求する箇所に接続点を設定することは、加入者回線と交換機端子との一対一の対応関係及び交換機端子までの加入者回線の連続性を絶ち、NTT法により維持を義務付けられている加入者電話網の完全性を侵害することになる。 |
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NTT法第2条第3項に規定する地域電気通信業務の定義は、接続を義務づけている法を前提として理解すべきものであり、法の義務を制約する根拠になるものではない。現に、NTT西日本とソフトバンクBBとの間の既存の接続においても、ソフトバンクBBの設備を利用してNTT西日本の電話役務を提供している。 |
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5) ソフトバンクBBが請求する接続箇所は、法が要求する責任分界点の要件を充たしていない。 |
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法第41条第2項第5号は、事業用電気通信設備規則の規定と併せ考えると、設備における責任の切分けが物理的に明確であることを求める趣旨である。これを本件の接続請求についてみると、個別のジャンパ線をどの事業者が設置したものかが明らかになっていれば、物理的な責任分界は明確である。 |
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6) ソフトバンクBBが求めるMDFジャンパ線の自前工事を認めると、故障・移転・DSL事業者変更などの際に電気通信役務の円滑な提供を行うことが困難になるほか、誤接続などの事故の増加、保守責任の不明確化、プライバシーへの悪影響、複数事業者の工事の施工に伴う分割損の発生、工事の安全性の低下等が予想されるため、法第38条第1号及び第2号に掲げる接続義務の除外事由に当たる。 |
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新たな接続箇所における接続の是非とその工事を誰がどのように行い、こうした危険を防止するかは、別の問題である。したがって、この点の主張は理由がなく、他に除外事由があると認めるべき事情はない。 |
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現行のNTT西日本の接続約款第95条第1項第3号は、コロケーションを認められたスペース内で接続事業者が保有する設備を設置する際の手続を規定したものであって、これと他の事業者が自己の設備を管理する権利との競合関係を調整するものと解することはできない。つまりは、接続請求事業者が自前工事を行うこととしてもNTT西日本その他の事業者のための設備に支障を及ぼすおそれのない場合についての規定であって、この規定を根拠として、ソフトバンクBBが本件接続のためのジャンパ線の敷設や接続を当然に自前工事として実施することができることにはならない。 |
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本件接続に伴う工事に関しては、ソフトバンクBBが当然に行い得るものではなく、当事者間で調整すべき事項である。したがって、新接続箇所での接続義務を負うNTT西日本は、迅速、安価、安全かつ公平な接続を目指して接続義務を誠実に履行する責務があるとともに、他方、ソフトバンクBBも、NTT西日本の役務提供に支障を及ぼさない具体的な提案を行うことが求められる。当委員会としては、今後、当事者間において、誠意のある協議を行い、早期に妥当な結論が得られることを切に期待する。 |
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