平成13年度地方税制改正について

総務省
平成13年4月

一 外形標準課税について

 法人事業税への外形標準課税の導入は、すべての法人が、その事業活動規模に応じて薄く広く、かつ、公平に地方公共団体の幅広い行政サービスの対価を負担するものである。このことは、応益課税としての事業税の性格を明確にし、地方公共団体には、地方分権を支える安定的な地方税源を保障するものとなる等、地方税として望ましい方向の改革である。
 平成13年度税制改正において、自治省としては、「事業規模額」による外形標準課税の具体案を示したところであるが、結論を得るに至らなかった。したがって、今後、課税の仕組み等についてさらに検討を深め、景気の状況等も勘案しつつ、早期の導入を図る。

【自治省案の概要】
 法人事業税のうち所得が課税標準とされているものについて、 所得基準と外形基準を2分の1ずつ併用する課税方式
(この結果、所得に係る税率は2分の1(9.6%→4.8%)に引き下げられる。)
    法人事業税額
     = 
    所得基準
     × 4.8% +
    事業規模額
     × 1.6% 
    (中小法人は1.0%)

    事業規模額
    収益配分額
    報酬給与額 + 純支払利子 + 純支払賃借料
     ± 
    単年度損益
※1 資本金1千万円未満の法人(約129万社)は『簡易事業規模額』(税額にして年4.8万円)を選択可

※2 「報酬給与額」の割合の高い法人については、雇用への配慮として「収益配分額」から一定額を控除する制度(『雇用安定控除』)を適用

※3 赤字が3年以上継続する法人や創業5年以内のベンチャー企業のため、新たな徴収猶予制度を創設、延滞金は減免

※4 税負担変動の緩和を図るため、実施当初3年間の外形基準の導入割合は1/4


二 平成13年度地方税制改正(案)の概要

I グリーン化税制

1 自動車税

 自動車税について、排出ガス及び燃費性能の優れた環境負荷の小さい自動車はその排出ガス性能に応じ税率を軽減し、新車新規登録から一定年数を経過した環境負荷の大きい自動車は税率を重くする特例措置(いわゆる「自動車税のグリーン化」)を、税収中立を前提に講ずる。

(1) 環境負荷の小さい自動車
特例対象車措置案
低公害車(ハイブリッド自動車を除く)税率より概ね50%軽減
☆☆☆+低燃費
(☆☆☆は最新排出ガス規制値より75%以上性能がよい自動車)
☆☆+低燃費
(☆☆は最新排出ガス規制値より50%以上性能がよい自動車)
税率より概ね25%軽減
☆+低燃費
(☆は最新排出ガス規制値より25%以上性能がよい自動車)
税率より概ね13%軽減
 (注1)軽課は平成13年度、14年度の新車新規登録の翌年度から2年間。
 (注2)税額の端数は切り上げる。

(2) 環境負荷の大きい自動車
特例対象車措置案
平成13年度、14年度に新車新規登録から 11年を超えているディーゼル車税率より概ね10%重課
平成13年度、14年度に新車新規登録から 13年を超えているガソリン車
 (注1)一般乗合用バス、低公害車は除く。
 (注2)税額の端数は切り捨てる。

2 自動車取得税

 自動車取得税について、低公害車、最新排出ガス規制適合車、排出ガス性能の良い一定の基準を満たす低燃費自動車、改正NOx法の特定地域内及び特定地域外において廃車代替して取得した自動車に対し、軽減措置を講ずる。

特例措置案
低公害車特例現行のまま、2年延長
 (1) 低公害車((2)を除く)            2.7%軽減
 (2) バス、トラック以外のハイブリッド車   2.2%軽減
  H13.4.1〜H15.3.31
平成14年排出ガス規制適合車早期取得特例平成14年排出ガス規制適合車
 H13.4.1〜H14.9.30   1.0%軽減
 H14.10.1〜H15.2.28  0.1%軽減
低燃費車特例対象を☆+低燃費(☆は、最新排出ガス規制値より25%以上性能がよい自動車)とした上で、1年延長
(価格から30万円控除)
 H13.4.1〜H14.3.31
改正NOx法特定地域内廃車代替特例改正NOx法特定地域内で特定自動車排出基準に適合しない自動車(乗用車を除く)の廃車代替
 H13.10.1〜H15.3.31  2.3%軽減
 H15.4.1〜H17.3.31   1.9%軽減
 H17.4.1〜H19.3.31   1.5%軽減
 H19.4.1〜H21.3.31   1.2%軽減
改正NOx法特定地域外廃車代替特例改正NOx法特定地域外で特定自動車排出基準に適合しない自動車(乗用車を除く)の廃車代替
 H13.10.1〜H15.3.31   0.5%軽減
 (注) 自動車取得税の税率は自家用自動車は5%、営業用自動車及び軽自動車は3%となっており、例えば2.7%軽減であれば、自家用自動車は2.3%、営業用自動車及び軽自動車は0.3%となる。


II 市町村合併関連税制

○ 合併特例法による市町村合併に係る地方税の課税の特例の拡充

 市町村合併の推進のため、市町村の合併の特例に関する法律において次の措置を講ずる。

 (1) 地方税の不均一課税をすることができる期間を市町村の合併が行われた日の属する年度及びこれに続く5年度以内(現行3年度以内)に延長するとともに、新たに同期間内において課税免除ができることとする。

 (2) 合併により新たに人口30万以上の市となった場合における当該市に対する事業所税の課税団体の指定は、合併の日から起算して5年以内に行うものとする。


III 住宅・土地税制

1 個人住民税における土地等の譲渡益課税の特例の延長

 (1) 個人の長期譲渡所得の課税の特例制度について、税率軽減の特例(26%(住民税6%、所得税20%))の適用期限を平成15年12月31日まで3年延長する。

 (2) 優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(4千万円以下20%(住民税5%、所得税15%)、4千万円超26%(住民税6%、所得税20%))の適用期限を平成15年12月31日まで延長する。

 (3) 短期所有土地の譲渡等をした場合の土地の譲渡等に係る事業所得等の課税の特例制度について、適用停止措置の期限を平成15年12月31日まで3年延長する。

2 特定居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除の特例の延長

 個人住民税における特定の居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除制度の適用期限を平成15年12月31日まで3年延長する。

3 新たな高齢者世帯向け賃貸住宅供給促進制度(仮称)に基づき整備される賃貸住宅に係る固定資産税の減額措置の創設      →最初の5年間 2/3減額

(〜H16.3.31)

4 被災住宅用地に係る固定資産税及び都市計画税の特例措置の創設

 住宅が天災等の事由により滅失・損壊した土地について、やむを得ない事情により当該土地を住宅用地として使用できないものと認められるときは、天災等の発生後2年度分の固定資産税及び都市計画税について当該土地を住宅用地とみなすものとする措置を講ずる。

5 特別土地保有税の徴収猶予制度の拡充

 (1) 土地の有効利用に資する徴収猶予中の事業計画変更に係る特例措置の創設
 (2) 住宅・宅地供給に資する土地の譲渡に係る特例措置の拡充及び延長

(〜H15.3.31)

6 特定目的会社(SPC)、投資法人及び投資信託に対する特例措置

 不動産の証券化を促進するために特定目的会社(SPC)、投資法人等のスキームが整備されたことから、実物不動産の流動化へのインセンティブを与えるため、以下の軽減措置を講ずる。

 (1) 特定目的会社による資産流動化計画に基づく一定の不動産の取得に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の拡充

(現行)
価格の2分の1控除
 →  (改正案)
価格の3分の2控除
(〜H15.3.31)

 (2) 一定の投資法人及び投資信託に係る一定の不動産の取得に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の創設     →価格の3分の2控除

(〜H15.3.31)


IV その他の主な改正項目

1 株式等譲渡益課税の申告分離一本化の延期(個人住民税)

 株式等譲渡益課税については、現下の経済情勢、株式市場の動向等を踏まえ、平成13年4月に予定されていた申告分離課税への一本化を平成15年4月まで2年間延期する。


平成15年4月1日以降の申告分離課税のあり方については、直接金融を担う株式市場の役割、一般投資家の参加、国・地方を通ずる公平な課税等の観点より、譲渡損失の取扱い等を含め、一本化にあわせて検討する。

2 商品先物取引による所得に対する個人住民税の申告分離課税制度の創設

 (1) 平成13年4月1日から平成15年3月31日までの間に商品先物取引をした場合における一定の個人の所得については、他の所得と分離して6%(所得税20%)の税率により申告を通じて課税する。

 (2) 商品先物取引による所得の金額の計算上生じた損失の金額は、他の所得との損益通算及び繰越控除は認めない。

3 軽油の輸入に係る課税の適正化

 軽油引取税について、軽油の輸入に係る課税の適正化を図るため、次の措置を講ずる。

 (1) 特約業者・元売業者以外の者が行う軽油の輸入に係る課税時期(申告納付期限)の改正

(現行)
軽油を輸入し、消費又は譲渡した日の翌月末日までに課税
(改正案)
保税地域から引き取るときまでに課税

 (2) 軽油の輸入を業とする元売業者の指定の要件(石油業法の届出から3年を経過しない者に係る輸入量要件)の改正

(現行)
申請の日の属する年の輸入量(見込み要件)
(改正案)
申請の日の属する年の前年の輸入量(実績要件)

4 企業年金税制

 企業年金法(仮称)による新たな企業年金制度(確定給付型)の創設に伴い、 次の所要の措置を講ずる。

区分地方税(参考)国税



事業主負担<法人住民税>
法人税に準じる
<法人事業税>
法人税に準じる
<法人税>
損金算入
加入者負担<個人住民税>
一般の生命保険料控除
(上限額:3万5千円)
<所得税>
一般の生命保険料控除
(上限額:5万円)



掛金の積立金

(運用利子等は非課税)

<法人住民税>
法人税に準じる(注)
(法人住民税法人税割)
<法人事業税>
課税関係なし
<法人税>
特別法人税を課税







年金給付<個人住民税>
公的年金等控除を適用
<所得税>
公的年金等控除を適用
一時金払い<個人住民税>
退職所得課税を適用
<所得税>
退職所得課税を適用
障害給付金<個人住民税>
非課税
<所得税>
非課税
遺族給付金<個人住民税>
非課税(相続税は課税)
<所得税>
非課税(相続税は課税)

 (注) 特別法人税の課税停止措置は、平成15年3月31日まで2年間延長する(法人住民税もこれに準じる)。

5 会社分割制度の導入に伴う所要の措置

 企業が経営環境の変化に対応し柔軟な企業組織再編を行うことを可能にするため、企業組織再編税制を整備する。

 (1) 法人住民税及び法人事業税について、法人税における諸制度の取扱いを踏まえ、所要の措置を講ずる。

 (2) 会社分割により取得する不動産に係る不動産取得税について、移転事業に係る主要な資産の移転が行われていること、移転した事業の継続が見込まれていること、従業員の相当数の移転が行われていることなどの要件の下、非課税措置を講ずる。

 (3) その他、組織再編成に係る地方税制の整備について所要の措置を講ずる。

6 鉄道駅総合改善事業により取得した鉄道施設に係る固定資産税の特例措置の創設

 市街地再開発事業等と一体として補助を受けて行われる駅の改良工事(鉄道駅総合改善事業)により取得した鉄道施設に係る課税標準の特例措置の創設      →最初の5年間 3/4

(〜H15.3.31)

7 優良緑化施設に係る固定資産税の特例措置の創設

 緑化施設整備計画(仮称)に基づき設置される緑化施設に係る課税標準の特例措置の創設   →最初の5年間 1/2

(〜H15.3.31)

8 広帯域加入者網を構築する施設に係る固定資産税の特例措置の創設

 広帯域加入者網を構築する施設(DSL、FWA、ケーブルモデム)に係る課税標準の特例措置の創設    →最初の5年間 3/4

(〜H15.3.31)

9 農業協同組合等の体質強化等のための措置

 農業協同組合等の体質強化等のための信用事業譲渡、子会社設立等を支援するため、以下の特例措置を講ずる。

 (1) 農業協同組合等が行う信用事業譲渡に伴う不動産の取得に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の創設

全部譲渡 価格の2分の1控除
一部譲渡 価格の4分の1控除
(〜H16.3.31)

 (2) 農業協同組合等が行う一定の現物出資により設立される子会社が当該現物出資に伴い取得する不動産に係る不動産取得税の非課税措置の創設

(〜H16.3.31)


V 非課税等特別措置の整理合理化状況

廃止18件
縮減合理化    46件

合計64件