ニュースリリース

地方行政運営研究会第13次公務能率研究部会報告書
「地方公共団体職員の人材育成－分権時代の人材戦略－」の概要

○報告書の目的

　職員の人材育成について、地方分権の推進が図られ、行政改革が重要な課題となっている状況を視野に入れながら、地方公共団体が自ら総点検を行い、今後、総合的な取り組みを展開していくに当たって留意しておくべき考え方、着眼点について整理をし、提示することを目的とする。

○報告書のポイント－人材育成の課題と対応方向－

１課　題－地方分権、行政改革を視野に入れた実効ある人材育成の推進

◆政策形成能力、管理能力、法務能力、国際化対応能力等を有する職員を育成すること

◆住民の視点を持ち、全体の奉仕者としての自覚と意欲のある職員を育成すること

２対応方向－各地方公共団体における実効ある人材育成の積極的推進

◆各地方公共団体で、人材育成の取り組みに関し総点検を実施すること

◆人材育成基本方針を確立し総合的取り組みを展開すること

　(1) 総点検の実施－総点検４つの柱－

◆ 各地方公共団体における人材育成基本方針の策定、推進

◆ 首長の明確なリーダーシップの確立

◆ 職員の主体的な取り組みの引き出し

◆ 多様な機会を活用した総合的取り組みの展開（別紙１参照）

　(2) 総合的取り組みの展開－総合的取り組み３つの柱－

1) 人材育成基本方針の策定、推進

首長のリーダーシップのもと、長期的視点を踏まえた政策を持って人材育成を推進すること
スタッフ等推進体制を整備すること

2) 基本となる人材育成手法の改革（別紙２参照）

自己啓発の組織的推進～個人の自覚任せから組織的な支援、推進へ～
- 個人の自覚に任せるだけではなく組織的な支援、推進を行うこと
  
  〈具体的方策等〉
  　自主研究グループ、通信教育等の奨励・支援、自己啓発度チェックシーの活用、職員間の相互啓発の促進、自己啓発結果の顕彰・適正な評価等
職場研修の計画的実施～場当たり的な職場研修から計画的・自覚的な職場研修へ～
- 上司、管理職者が職場研修の目的と方法を個々の職員に応じて明確にしながら計画的に推進すること
  
  〈具体的方策等〉
  　管理職者の計画的指導・助言、計画的な職場研修の実施を管理職者の職務として明確化、職場研修マニュアルの作成・配布　等
職場外研修の改革充実～与えられる研修から参画する研修へ～
- 職場ニーズに対応し、職員が主体的に参画できるプログラムとしていくこと
  
  〈具体的方策等〉
  　職場ニーズに対応したプログラムの実施、課題演習等の実施、住民・民間企業人との共同研修の実施、派遣研修先の拡充　等
3) 職場のあらゆるステージの活用

【参考】

これまでの調査研究成果と本報告書の特色

１　これまでの調査研究

○時代に即した個別課題を中心に調査・検討し、その成果を地方公共団体に提供

《これまでに行った調査研究のテーマの例》

・地方公共団体における多様化時代の人事管理

・民間的人事管理手法の導入

・中高年職員の能力発揮・活用方策

・民間企業派遣研修のあり方

・国際化に対応した人材育成

・職員の士気高揚研修のあり方　等

２　本報告書の特色

○来るべき地方分権の時代を見通した人材戦略と効果的な人材育成推進方策について

提示

・個別課題に対応した人材育成方策についてのこれまでの蓄積を総合

・人材育成の今日的課題への対応方向を検討

全体の奉仕者としての自覚と意欲のある職員の育成

人材育成基本方針の策定

基本となる人材育成手法の改革

職場のあらゆるステージの活用

政策形成能力・行政管理能力・法務能力・国際化対応能力等の育成

住民参加型研修の実施

市町村職員の人材育成の推進　等

・地方分権、行政改革の推進を視野に入れた実効ある人材育成を進めるための基本的な着眼点、留意事項を具体的に提言

３　自治省の施策

○人材育成の総合的取り組みに対する支援（資料別添）

自治大学校における研修の実施
各種調査研究の実施、情報の提供
（目標管理マニュアル、QC活動マニュアル、職場研修マニュアル等）
人材育成のアドバイザーの斡旋、紹介
市町村アカデミー、国際文化アカデミーとの連携
人材育成関連経費に対する財政措置

【資料】

人材育成の総合的取り組みに対する自治省の支援施策について

１　人材育成の推進に関する経費の充実

　今後、地方公共団体が行政改革を推進し、また地方分権の進展に対応していくためには、地域住民のニーズに的確に対応できる政策形成能力等を有する意欲ある職員を育成していくことが不可欠である。
　そのためには、地方公共団体において、
1. 　長期的な視点を踏まえた人材育成基本方針を策定し推進していくこと
2. 　職員研修の内容を充実し時代のニーズにあったものとしていくこと
3. 　研修の機会を拡充しできるだけ多くの職員が適切な機会に研修を受けることができるようにしていくこと、
4. 　市町村職員について共同研修を充実し効率的・効果的な研修が実施できるようにしていくこと（参考１）
  等が必要である。
　平成９年度地方財政対策においては、このような人材育成基本方針の策定、研修内容の充実・機会の拡充等の取り組みを進めていくために必要となる経費について財政措置を充実することとし、３０億円の増額を行っている。

【人材育成の推進に係る経費の内容の具体例】
- 人材育成基本方針の策定
  ・人材育成基本方針の策定に要する経費
- 研修内容の充実・機会の拡充等
  ・研修用資機材の整備費
  ・研修テキスト等の制作費
  ・研修講師の謝金・旅費
  ・市町村の共同研修推進に要する経費　等

２　人材育成のアドバイザーの斡旋、紹介

　地方公共団体の要請に応じ、研修講師や人材育成方策の構築、推進に関するアドバイザーとして適任の者を斡旋、紹介する

３　研修機関の新たな取り組み

自治大学校
- 平成９年度研修計画大綱の基本方針として、行政改革の推進に資する見地から自治大学校の研修の充実強化を図る
- 一般研修各課程において、行政改革及び公務員意識に関連する講義課目を拡充する
- 政策形成能力の養成を図るため、研修生の主体的な取り組みを重視した演習課目を強化する
- 地方公共団体における政策形成能力育成研修を支援するため、研修専門課程について、政策形成能力育成研修の企画運営に関する実践的な研修を中心に実施する
市町村アカデミー（市町村職員中央研修所）
- 行政課題研修課程で時代のニーズに即した研修科目を設定
  「待ったなし行政改革」（平成９年度から）
  【目的】：行政改革の推進に必要な実践的な課題処理能力の養成
  【内容】：行政改革の緊要性、行政改革の現状と課題、事務事業のスクラップアンドビルド、職員定数の見直し、組織・機構の改革、民間委託・第三セクターの活用　等
  
  「分権の時代の広域行政」（平成９年度から）
  【目的】：地方分権型社会の構築に向けた広域行政の推進に必要な課題処理能力の養成
  【内容】：広域行政に関する国の諸施策、広域連合制度、市町村合併制度、広域行政の現状と課題、広域行政の展開と地方分権、先進自治体の事例　等
国際文化アカデミー（全国市町村国際文化研修所）
- 市町村職員等の国際化対応能力を向上させるため、総合的な研修を実施
  【内容】：国際化理解の基礎知識、専門実務、外国事情、自国文化　等
- 市町村等の要望を踏まえた研修コースの設定
  「アジア・中国語コース」（平成９年度から）
  アジア地域の社会、文化、習俗等及び中国語の基礎
  
  「異文化体験コース」（平成９年度から）
  国際交流事業等の実地体験を通して、地域国際化事業の企画立案能力を養成
- 市町村の国際化推進事業に役立つ国際化情報提供サービスの実施(平成８年度から)

４　人材育成に関する先進的な取り組み事例

住民参加型研修（参考２－１）
出前講演及び出前トーク（参考２－２）
地方自治土曜講座（参考２－３）
管理職レポート（参考２－４）
庁内公募制（参考２－５）

【参考１】

○市町村職員の共同研修の推進

《共同研修の効用》

・単独市町村では実施できない高度、専門的な研修の実施が可能となる

・市町村職員の広域的な交流と相互啓発のために絶好の機会となる

・市町村の共同研修組織が人材育成シンクタンクとして機能する

・市町村間の連携の緊密化と広域行政の進展を促進する契機となる

《共同研修の類型》

①市町村共同整備型

・市町村が共同して施設を整備する（施設の設置主体は市町村の共同組織［一部事務組合、財団法人］）

・市町村の共同組織が研修を企画、実施する

②都道府県整備型

・都道府県が施設を整備する（施設の設置主体は都道府県）

・市町村は当該施設を借用して共同研修を企画、実施する（都道府県が受託する場合もある）

《具体例》

類　　型	市町村共同整備型			都道府県整備型
実施機関名	福岡県自治振興組合	大阪府市町村振興協会	(財)ふくしま自治研修センター	愛知県市町村職員研修所
施設名	福岡県市町村職員研修所 (福岡県自治振興センター	おおさか市町村職員研修研究センター	ふくしま自治研修センター	愛知県自治研修所
開設年度	昭和63年４月	平成７年10月	平成４年４月	平成６年９月
平成７年度研修計画人 A	3,730人	1,421人	6,671人	3,489人
特色	市町村職員研修所が独自に企画・立案し、階層別研修、専門研修及び特別研修を体系的に実施している（宿泊研修が原則）	大阪府市町村振興協会が自ら施設を整備し、43市町村共同の各種研修や市町村職員の共同による調査・研究事業等を実施している（研修は通所型が主体）	自治研修センターが企画・立案し、職層必修コースや個別選択コース等、県職員と市町村職員の一体的研修を実施している（宿泊研修が原則）	県・市・町村職員で構成する事務局が県自治研修所の指導・協力を得て、階層別研修、専門研修等を実施している（通所型研修が主体）

【参考２－１～５】省略