マルチメディア時代のユニバーサルサービス・料金に関する研究会 報告書
第一部 マルチメディア時代の料金について

第3章 マルチメディア時代の料金の在り方

 1 望ましい料金の在り方

 2 望ましい料金体系

 3 料金設定の在り方

 4 望ましい料金水準

 5 その他






第3章 マルチメディア時代の料金の在り方



1 望ましい料金の在り方

(1) 基本的な考え方

  第1章、第2章で述べたニーズやネットワーク及びコストの動向を踏まえ、マ
 ルチメディア時代における望ましい料金についての基本的な考え方は、以下のと
 おりである。

a   経済・社会構造の変革及び高度情報通信社会の発展への貢献

 情報通信関連産業は21世紀における我が国のリーディングインダストリー
 として大きな期待を寄せられており、その在り方は、例えば、経済成長、雇用
 の創出及び国民生活の豊かさ等、経済・社会の変革を大きく左右すると考えら
 れる。
  また、平成7年2月に決定された政府の基本方針(高度情報通信社会推進本
 部決定)に述べられているように、高度情報通信社会においては、経済フロン
 ティアの拡大、国土の均衡ある発展や真のゆとりと豊かさの実感できる国民生
 活が実現されることが期待されている。
  こうした社会を構築するために重要なことは、マルチメディアに対する需要
 を早期に立ち上げ、ニュービジネスの創出を促すことである。マルチメディア
 時代における料金は、情報通信ネットワークの利用の増大とそれによるコスト
 の低下がマルチメディア需要の一層の拡大につながるという好循環を生み出す
 ものであることが求められている。

b   コスト構造への配慮

  新しいネットワークにおいては、既に述べたように情報単位当たりのコスト
 が激減するとともに、従量対応コストも縮小する傾向にある。こうした傾向は
 ニーズの動向にも見合ったものであり、これを反映した料金とする必要がある。
 また、コストは競争的な市場を通じた効率的な経営の下における適正なコス
 トであることが重要である。

c   利用者間の公平性の確保

  料金の設定に当たっては、利用者間の公平性について配慮する必要がある。
  基本的には、当該サービスの受益者がそのコストを負担するのが公平にかな
 うと考えられており、マルチメディアに対応した新しいネットワークについて
 も、こうした観点に基づく料金設定を行うことが、電話のような既存サービス
 の利用者との公平を確保する観点から適当と考えられる。
  また、同様の観点から、マルチメディアの利用者間においても大口利用者と
 小口利用者との間で費用負担の公平性を確保する必要がある。
  なお、低所得者あるいは社会的弱者への配慮や、過疎地等においてもできる
 だけ早期に他と公平な条件で高度な情報通信ネットワークの便益を享受可能と
 するための方策については、第2部で検討する。

d  公正有効競争条件の確保

  マルチメディア時代の高度なニーズに応じた低廉かつ多様な料金は、多元的
 な競争主体によるダイナミックな競争のプロセスを通じて実現されるものであ
 り、そのためには、公正かつ有効な競争が行われる環境を整備することが重要
 である。

e  規制緩和の推進

 電気通信市場の公正有効競争条件の整備状況や競争の進展状況等を踏まえ、
 市場の実情に対応して規制緩和を推進していくことが望まれる。




(2) マルチメディアサービスの初期・発展期における料金の在り方

a   需要喚起型料金

  マルチメディアによって提供される各種サービスの料金は、競争市場では基
 本的に需要と供給によって決定される。需要価格はユーザが支払ってもよいと
 するものであり、それはユーザがそのサービスによって得られる便益に依存し
 ている。他方、供給価格はサービス提供のコストによって規定される。後者に
 ついては、既に前章で述べたように大量のデータを伝送するマルチメディアで
 あってもその伝送コストは大 幅に低下する傾向にある。
  前者の需要要因については、マルチメディアはその初期の段階では価格弾力
 性が大きいと思われる。つまり、料金を引き下げれば、それ以上の需要の増加
 が見込まれる。実際、最近の携帯電話の急速な普及やインターネット利用者の
 急増は、電話機、パソコンといった機器の価格の低廉化や通信料金の引下げに
 負うところが大きい。
  (1)「基本的な考え方」において述べたように、マルチメディア社会の実現に
 向けての料金を考える上で最も重要なことは、映像通信の振興、ニュービジネ
 スの創出等マルチメディアサービスの普及促進を図ることであり、この観点か
 ら、特にサービスの初期・発展期において、利用を促進する需要喚起型料金を
 導入する必要がある。
  需要喚起型料金とは、サービスの初期・発展期において、低廉な料金を設定
 することにより、需要を喚起し、マルチメディアサービスのパイを拡大し、情
 報通信ネットワークのコストを低下させることにより、早期にクリティカルマ
 ス(注)に到達させうる料金である。

(注) クリティカルマス
  サービスの利用コストがベネフィット(便益)と同水準まで
  低下し、需要が以後大幅に増加することが期待される点



b  需要喚起型料金の必要性

  一般的に、サービスの初期段階においては、サービスのベネフィットよりも
 コストの方が高いため、容易に普及が進まない状況にあり、サービスの普及を
 促進するためには、出来る限り早急にクリティカルマスに到達させることが重
 要である。需要サイドから見れば、料金が低廉であれば需要が立ち上がるが、
 逆に初期の料金が高く設定されれば、需要が長期間顕在化しない可能性がある。
  特に、マルチメディアサービスの場合、マルチメディア通信に資する大容
 量・双方向ネットワークの建設には、初期に莫大な設備投資を必要とすること
 から、初期段階で料金水準が非常に高くなると、普及が進まない可能性が高い。

c  需要喚起型料金の条件

  一般的に新サービスを立ちあげるために低廉な料金を設定すれば、そのコスト
 を回収できず、サービスの安定的な提供が困難になるといった問題が生じる。し
 かし、ある種のネットワーク・サービスではその初期には赤字を承知で価格を低
 く設定しても、時間の経過とともに需要が増加し、ある程度の期間でみると収支
 が均衡、あるいは利潤が発生する場合がある。これが成立するためには、
     ア) ネットワークに大きな外部性(注)が存在すること
      イ) 将来の技術革新により大幅にコストが低下すること

(注) ネットワークの加入が増加することにより、ネットワークの
  価値(加入者全体の便益)が拡大すること

 の条件が必要である。ア)はネットワークへの加入者が増加すれば、それによっ
 て当該サービスの利用者が一層増加することをいい、イ)は機器の価格の低廉化に
 よって時間がたつほどコストが低下することをいう。したがって、当初は赤字で
 もそれは時間とともに解消されることになる。
  マルチメディアサービスの場合、基本的には、新たに大容量・双方向のネット
 ワークを活用するため、ネットワークの外部性が存在するとともに今後、技術革
 新が急速に進むことから、上記2条件が満たされているサービスである。
 したがって、マルチメディアサービスに関し、需要喚起型料金を導入すること
 により、需要を喚起し、情報通信ネットワークの利用の増大、単位当たりコスト
 の低下を図ることによるマルチメディアサービス需要の一層の拡大という好循環
 を生み出し、効率的な資源配分を実現することが重要である。

(図8 マルチメディアサービスの発展段階)










2 望ましい料金体系


(1) 定額制料金について

  現在、電話、ISDN、パケット交換サービス等の公衆網の料金体系は、定額
 制料金と従量制料金(通話時間、情報量等)から成るいわゆる二部料金制を採用
 している。
  二部料金制は、定額制料金と従量制料金の要素をそれぞれ組み合わせることに
 より、各々のデメリットを解消しようとするものであり、基本的には合理的な料
 金体系と考えられる。
  しかしながら、第1章で述べたように、マルチメディア時代では長時間にわた
 る通信の利用形態が増えると予想され、その場合には現在のような二部料金制で
 は利用抑制的な料金となるおそれがある。このため、マルチメディア時代の料金
 は基本的には、定額制料金のように、通信の時間や情報量といった「量」の要素
 ができる限り少ない料金体系を基本に考えることが望ましい。




(表2 定額制料金と従量制料金のメリット、デメリット)

定額制料金従量制料金
利用者サイド ・利用促進的
・定額料金を支払えば、制約な
 く利用できるため大口利用者
 にメリット
・小口利用者には基本料負担の
 逆進性
・料金水準が加入インセンティ
 ブに与える影響大
・利用抑制的
・利用量に比例して課金される
 ため小口利用者にメリット

・大口利用者の利用インセンテ
 ィブを抑制
コストサイド ・加入者増に対応した費用の
 回収に適した料金

・料金によって通信量をコン
 トロールすることができな
 いため、予想以上に利用が
 増加し、設備の増設を行っ
 た場合には、当該コストの
 回収が困難となる

・課金コスト小
・トラフィック増に対応した費
 用の回収に適した料金 








・課金コスト大


(注) 無線呼出サービスにおける従量制料金の導入について

   無線呼出サービスの料金は、従来、定額制とされてきたが、一部の事業者
   が、本年3月から、利用者による選択メニューとして従量制を併用した料金
   によるサービスを提供している。これは、定額制料金の下では、最近のトラ
   フィックの急増に対応する設備の増設コストが回収しきれなくなってきてい
   ることを背景とするものである。
   このことは、定額制料金の導入が可能な条件として、技術進歩によりトラ
   フィックセンシティブコストの比重が縮小する必要があることを示している
   といえる。


(2) 定額制料金に適したサービス

  定額制料金体系を考えていく場合、現在、従量料金で回収しているトラフィッ
 クセンシティブコスト(通信の多寡により変動するコスト。設備的には、ノード
 コストと中継コスト。(TSコスト))が技術革新等に応じてどのように変化し
 ていくかが重要なポイントになる。技術革新等によりTSコストが縮小すれば、
 その部分については定額制料金を導入することが可能である。

 a   技術革新によるTSコストの縮小
  第2章の「ネットワーク及びコストの動向」で述べたように、マルチメディ
 ア時代には、技術革新に伴い、中継回線コストの低下、ノード(交換機等)の
 従量対応コストが低下することから、TSコストの比重が大幅に低下し定額制
 料金の導入が可能となると考えられる。
 なお、現時点では、全ての通信形態についてTSコストが無視しうる程縮小
 するという状況を想定することは難しいが、伝送方式等、その形態如何でTS
 コストが今後大幅に縮小すると予想される。



(図9 技術革新とコスト構造の変化)




b  ネットワークの効率的な利用によるTSコストの縮小
  ATMやルータを用いたデータ伝送ネットワークでは、上記1に加え伝送路
 の使用効率が高まり、また、ピーク時のトラフィックのオフピークへの移行が
 可能になるなど、回線設備を効率的に使用できるようになることから、TSコ
 ストの比重が低下し、定額制料金の実現が容易になると考えられる。
  例えば、インターネットのように回線容量に余裕がある場合に伝送されるい
 わば遅延許容のサービスや品質の劣化(ビットエラー)を許容するサービス等
 は、定額制料金の導入が可能であると考えられる。



(3) 多様な料金体系
  マルチメディア時代においては、定額制料金体系を基本に考えることが望まし
 いが、他方、既に述べたように、マルチメディア時代には通信量や通信時間等に
 関する利用者のニーズが極めて多岐にわたり、例えば、将来的にも通信量や通信
 時間等が僅かないわゆる小口利用者の存在も想定されるため、こうした小口利用
 者の利用形態にも柔軟に対応できる料金体系が望ましい。
  したがって、マルチメディア時代の料金体系は、定額制料金体系を基本としつ
 つも、種々な利用者のニーズに柔軟に対応できる多様な料金体系を設定すること
 が望ましい。
  以下では、具体的な料金体系について述べることとする。

a   複数定額制料金
  定額制料金体系を導入するに当たり、マルチメディアサービスごとに内容や
 利用時間等の利用形態が異なることから、各サービスのコスト差や効用の差に
 着目した料金水準の異なる複数定額制を導入することは、多様なニーズに応える観
 点からも重要である。また、一律の定額制料金は、通信量の少ない利用者
 にとっては、かえって負担増となる可能性があることから、複数定額制料金と
 することにより利用者の選択肢を拡大することも重要である。
  具体的には、サービス別に複数の定額制料金を設定することや、ネットワー
 ク内のピーク時トラフィックに対応して需要量段階別に複数の定額制料金を設
 定すること等が考えられる。
・ サービス別複数定額制

  ex. 高度(例えばセキュリティ機能)なサービス、標準的なサービス
・ 需要量段階別複数定額制
 ピーク時トラフィックの重要な要因である各利用者に保証する速度の
 上限や下限等を変数として、需要段階別に複数定額制を設定すること

  ex. アクセスポイントの容量単位 : 64kbps,1.5Mbps・・・ 20Mbps ・・・





(図10 サービス別複数定額制料金のイメージ)







b   複数定額制料金と二部料金制の選択
  定額制料金の下では長時間の通信が実現できるというメリットがある一方、
 小口利用者にとって禁止的な料金水準となるおそれも存在する。
 したがって、同一サービスに対して定額制料金と二部料金制とが選択できる
 料金体系を設けることにより小口利用者にも配意することが望ましい。また、
 利用が著しく少ない利用者に対しては、従量制料金も検討する必要がある。
  なお、二部料金制を採る場合、従量制料金の課金変数としては時間、情報量、
 通話回数等が考えられるが、課金のためのコストや利用者にとっての分かりや
 すさ(注)等を考慮して定める必要がある。
(注) 通信に当たって予め料金の負担額が把握できること。












3 料金設定の在り方


  マルチメディア時代の料金については、マルチメディアサービスの初期・発展期
 においては需要喚起型料金が望ましいこと、また、料金体系としては定額制料金体
 系を基本としつつ多様な料金体系を設定することが望ましいことを述べたが、以下
  では、そのような料金を実現するための具体的な料金設定の方法について検討する。

(1) 料金算定方法の弾力化

a  料金算定期間の長期化
  マルチメディアに対応した新しいネットワークの構築には、大規模な初期投
 資が必要となり、これを短期間に回収しようとすれば料金が割高なものになる
 可能性が大きい。
  現在、料金の算定期間は、新サービスの場合原則として5年間とされ、サー
 ビスの内容によっては5年を超える料金算定期間も可能な制度となっているが、
 マルチメディアサービスの需要を立ちあげる低廉な料金を設定する観点から条
 件を明確にした上で、料金算定期間の長期化を図ることが望ましい。
  具体的には、
   ア ネットワークに大きな外部性が存在し、将来的に大きな需要増が見込まれ
     ること
   イ 将来の技術革新により大幅なコストの低下が見込まれること
     の2つの条件が満たされる場合には、5年を超える長期の料金算定を認めるこ
     とが望ましい。
      なお、対象となるマルチメディアサービスの種類、具体的な料金算定期間に
     ついては引き続き検討する必要がある。


b  減価償却方法
  減価償却方法には定額法と定率法とがあり、どちらを採用するかは事業者の
 選択に委ねられている。
  定額法は、初期の償却負担を軽減する効果があり、ネットワーク構築の初期
 段階において低廉な料金を設定する上で有効なものと考えられることから、マ
 ルチメディアサービスを提供する場合、事業者において定額法の導入について
 検討する必要がある。

(2)  サービス・グレード別の料金設定

  マルチメディア時代には、様々なサービスが提供されるようになり、サービス
 の種類に応じて要求される品質が異なってくることが予想される。例えば、電話
  サービスの場合、音声のリアルタイムの伝送が重要であり情報の遅延は許されな
 いが、インターネット、電子メールやゲーム配信、電子新聞といったサービスは
 必ずしもリアルタイムである必要はない。
  このように、遅延が許容されるサービスは、回線に余裕があるときに伝送され
 るので、ネットワークのコスト構造上、トラフィックセンシティブコストの比重
 が小さく、コスト面からみて、マルチメディア時代の料金としてニーズの高い定
 額制料金が実現可能なサービスである。
  また、データ伝送サービスのように正確な情報が必要であり、品質の劣化
 (ビットエラー)が許容されないサービスもあるが、映像伝送サービスのように
 多少の品質の劣化(ビットエラー)が許容されるサービスもある。このような品
 質の劣化を許容するサービスもピーク時のトラフィックに影響を与えないため、
 定額制料金が実現可能なサービスである。
     このように、遅延が許容されるサービス、品質の劣化が許容されるサービス等、
 サービスグレードに応じて異なる多様な料金を設定することが重要である。

(3) ピークロードプライシング

  オフピーク時の設備の有効活用を図る観点から、トラフィックの増加による設
 備拡張の費用はピーク時の利用者が負担し、オフピーク時の利用者は現行設備の
 操業費のみ負担することにより、オフピーク時に低廉な料金を設定する考え方を
 ピークロードプライシングといい、これにより、設備の有効な活用も図られるこ
 ととなる。
  このような考え方に基づき、既に現行の深夜・早朝時間帯の料金が設定されて
 いるとともに、昨年6月の本研究会の中間報告書の提言を受けてNTTにおいて
 パソコン通信の普及促進を図る深夜時間帯の定額制料金が導入されている。今後
 とも、料金の多様化・低廉化を図るため、このような考え方に基づく料金設定が
 積極的に導入されることが望ましい。



  (図11 深夜時間帯の定額制料金サービスの概要)
     
ア   対象サービス
 加入電話及びISDN(基本インタフェイス(INS64))

イ  対象時間
 深夜・早朝時間帯(23時〜翌朝8時)

ウ  対象通話
 あらかじめ登録した区域内の2番号への通信、又は隣接
 区域内(区域外のうち20kmまでを含む。)の2番号への
 通信

エ    通話料(MA内番号指定型の場合)
 ・ 電話 ・・・ 1,800円/月
 ・ ISDN ・・(住宅用) 2,400円/月
       (事務用) 4,600円/月



(4) 多様な料金の設定

  マルチメディア時代には多様なサービスが提供されることから、利用者の利便
 性に配慮した多様なユーザ料金が設定されることが望ましい。

a  通信料・情報料一体型の料金設定
  従来、ネットワークサービスの料金は基本的に通信料と情報料が分離されて
 おり、各々利用者が料金を支払う相手が異なる等、一般の消費財(例えばモノ
 の消費)とは異なる性格を有している。しかしながら、今後、ネットワークを
 通じた多彩なアプリケーションの利用が進むことが見込まれることから、利用
 者におけるサービスの簡便な利用を図る観点から、通話料・情報料を各々コス
 トに基づき算定した上で、これら通話料・情報料をパッケージとした一体型の料
 金設定が考えられる。
  また、第二種電気通信事業者が第一種電気通信事業者のネットワークを活用
 して、コンテントビジネスを提供することも想定されるため、第一種電気通信
 事業者と第二種電気通信事業者との間の公正有効競争条件を確保する観点から、
 第一種電気通信事業者が、ユーザに対して一体型の料金設定を行う場合には、
 併せて、他の電気通信事業者に対して情報料及び網機能毎の通信料をアンバン
 ドル(分離)し、適正な料金の下で提供することが不可欠である。

b   広告料を考慮した料金設定
  従来、通信料金の負担者は、発信者や着信者のほか、予め指定された特定の
 者であったが、最近、インターネットにおいてユーザ端末の画面の一部に広告
 を掲載し、広告主から広告料を徴収することによりユーザ料金の低廉化を図る
 試みがなされている。これは、誰もがアクセスに利用するブラウザ(注)上の画
 面が、広く公衆が視聴する広告媒体としての価値を有することに着目したもの
 であり、利用者の負担軽減を図る方策の一つとして有効である。
  なお、その場合、上記?と同様、第一種電気通信事業者が提供する場合には、
 コストの分計は明確になされる必要がある。

(注) ブラウザ
  WWWサーバ(文字、音声、画像等を用いて作成されたマルチ
  メディアの情報を蓄積するデータベース)内の情報をインター
  ネットを用いて視聴するためのソフトウェア。













4 望ましい料金水準


  具体的な料金水準に関しては、利用者が支払ってもよいとする料金の水準は、そ
 れによって得られるコンテントに依存する面もあると考えられるが、現在のところ、
 将来の利用者の負担可能額について月額1万円弱〜1万5千円程度とする見通しが
 多く、また、現在、ネットワークを利用しているユーザからはさらに低廉な料金ヘ
 の要請が強い。
  他方、具体的な料金水準を検討するに当たっては、電気通信事業者のコスト動向
 も重要な要素となる。設備対応の費用については、今後の技術革新に依存するとこ
 ろが大きいが、第2章で述べたような人件費的経費のように、事業者の経営努力に
 よるところが大きいものもある。したがって、今後のマルチメディア社会を展望し、
 通信コストの低廉化を図るためには、事業者における一層の合理化努力が期待され
 る。
  当研究会のモデル試算では、2005年におけるネットワークインフラの平均コ
 ストを月額1万5千円程度とすることも可能(注)との結果が得られており、競争
 の一層の促進や事業者の効率化により、ネットワークコストと家計の負担可能な水
 準との乖離の縮小が期待される。

(注)   2005年において2000万人の加入者を前提とし、各利用者に対して
   20Mbpsを保証するデータ伝送網の平均コスト。












5 その他


  以上、電気通信事業者の料金の在り方について述べてきたが、マルチメディア
 サービスを利用するためには、利用者においては、パソコン等の情報通信端末機器
 を購入又は賃借することが必要であり、マルチメディアサービスが普及するか否か
 はこれら機器の機能及び価格に左右される面も大きい。現に、近年の急速なイン
 ターネットの普及は、パソコン等の機能の高度化及び価格の低廉化に負う面が大き
 いものと考えられる。
  こうしたことから、マルチメディアサービスに対する需要を立ち上げ、マルチメ
 ディア社会を実現するためには、情報通信端末機器の機能の高度化及び価格の低廉
 化が一層進展することが望ましい。
  また、あわせて一般ユーザがネットワークサービスを円滑に利用できるようにす
 るため、端末機器の利用方法の周知や故障時の対応について十分な体制整備が行わ
 れることが望ましい