第6章 政府の役割

  
1 規制緩和の推進
 
  情報通信産業のダイナミズムを創出するためには、第2次情報通信改革に
 向け、第4章及び第5章で述べた措置を着実に実施するとともに、社会経済
 情勢の変化や急速な技術革新を踏まえ、積極的に規制緩和を推進していくこ
 とが望まれる。
 
 ア 電気通信分野の規制緩和
   支配的事業者に対しては、いわゆる非対称規制を導入することを検討す
  べきである。ただし、これについても、競争の進展状況に応じ緩和し、最
  終的には廃止すべきである。
  (ア) 参入規制
    過剰設備防止条項と切り離して公益事業特権を付与する新しい仕組み
   が確立されることを前提条件として、同条項の削除を検討することが必
   要である。
  (イ) 料金規制
    今後は、市場の公正有効競争条件の整備状況や競争の進展状況等を踏
   まえつつ、市場の実情に対応した料金規制の在り方について検討すべき
   である。
    市場における料金規制の在り方についての考え方は次のとおり。
     i)地域通信        -> 事前届出制(ただし、地域NTTはイ
                  ンセンティブ規制による認可制)
     ii)長距離・国際通信   -> 事前届出制(ただし、支配的事業者は
                   インセンティブ規制)
     iii) 移動体通信    -> 事前届出制
  (ウ) 専用線の利用自由化
    専用線の利用自由化は、情報通信ネットワークを活用したニュービジ
   ネスの展開や、料金の低廉化等を促進する観点から早期に実現されるこ
   とが望ましい。
  (エ) 外資規制等
    外資規制の在り方は、本年4月末を交渉期限としてWTO(世界貿易
   機関)で行われている基本電気通信交渉の交渉結果等を踏まえ、世界的
   な自由化に向け、我が国として、一層の緩和について検討すべきである。
  (オ) その他
    上記のほか、内外の意見・要望を踏まえつつ、適時適切な規制の見直
   しを進めていくことが望まれる。
 
 イ 土地等利用関係の諸規制
   第一種電気通信事業者のネットワーク構築を円滑に進めていくためには
  、について、線路設備収容に適した各種の公共空間の開放等を検討すべき
  である。
  
 ウ 情報通信の高度利用が期待される分野での諸制度の見直し
   教育、医療、行政、商取引等情報通信の高度利用が期待される分野での
  諸制度の見直しが必要。
  
  
2 接続に関する政策の推進
  
 (1) 基本的な考え方
   事業者間の協議に委ねる現行の制度を改め、NTT地域通信網などの一
  定の市場シェアを有し不可欠な設備を有する事業者と他事業者との接続に
  関する基本的ルールを策定するとともに、ルール遵守の実効性を担保する
  観点から必要な措置を講ずる必要がある。
    
 (2) 接続の基本的ルールの具体的内容
  (ア) 接続の義務化
  (イ) 接続条件の料金表・約款化
  (ウ) 接続に関する会計方法・基準
  (エ) 接続の技術的条件
  (オ) 局舎、電柱、管路等の使用
  (カ) 番号ポータビリティ
  (キ) 優先接続
  (ク) 網機能提供計画の開示
  (ケ) その他円滑な接続を確保するための措置
   
 (3) 接続の基本的ルールの策定、監視機能の充実
  (ア) 専門的スタッフを擁する新たな部署を設置するとともに、審議会の中
   に専門有識者をメンバーとする接続に関する部会を設置するなど、郵政
   省における接続行政に係る機能の充実・強化を図ることについて検討す
   べきである。
  (イ) 接続の基本的ルールの策定・監視・裁定といった行政に対する公平性
   ・中立性確保の要請に応えるため、これらの手続を明確にするとともに
   、可能な限り関係資料の公表を行うなどの透明性の確保に十分努めるこ
   とが必要である。
  
3 NTTの再編成の実施
  
  NTTの再編成の実施は、平成9年度末のデジタル化完了の後、速やかに
 実施することが望ましい。
  したがって、政府は、平成10年度中(1998年度中)を目途に再編成を行う
 べく、再編成計画案の策定等の検討作業を直ちに開始するとともに、所要の
 立法措置について準備を進めるべきである。
 
4 その他の政策措置の実施
 
 (1) 研究開発成果の普及
 (2) 合理化の推進
 (3) ユニバーサルサービスの確保
 (4) 研究開発の推進
 (5) 安全・信頼性の向上
 (6) 基盤整備の推進
 (7) 消費者行政の推進
 (8) 新しい行政の展開
   上記の各措置を推進していく中で、通信行政の力点は、(ア)情報通信ビジ
  ョンの提示、(イ)インフラの整備、(ウ)事業者の事業環境の整備(番号計画
  の策定、安全・信頼性、ハッカー対策など)、(エ)事業者間の調整(相互接
  続など)、(オ)消費者行政、(カ)国際的な環境づくり(国際標準化、相互認証
  制度、海外での普及支援、情報通信外交など)、(キ)周波数資源の開発、(ク)
  基礎的・先端的研究開発の充実、(ケ)コンテント事業の振興などとなってい
  くことが望ましい。