審査員による受賞作品への講評

それぞれの受賞作品にカーソルを合わせると審査員のコメントが見られます。

飯野 賢治 氏

株式会社フロムイエロートゥオレンジ代表取締役社長
1994年に株式会社ワープ設立、ゲームソフトウェアの開発、出版を行う。独自のマーケティング、プロモーションによって、「Dの食卓」や「エネミー・ゼロ」といった代表作を中心に、家庭用ゲームソフトウェアを全世界で出版。5年間で、200万本以上の売上を記録する。2001年に株式会社フロムイエロートゥオレンジに変更。消費者インターフェイスとコミュニケーションを中心とした、サービスや商品に関する、企画、マーケティング、コンサルティング等を行っている。

携帯電話は人のコミュニケーションを変えました。こんな小さな子が、桜の季節、携帯電話で写真を撮っている自分の絵を描くなんて、10年前ではあり得なかったことだと思います。その画の内容に、なにより驚きました。満開の桜が持つ圧倒的な生命力、輝きを持った存在感を力強く、とても素直に表現できていると思います。

いつの時代でもコミュニケーションの中心となるのは、人と人との愛なのではないでしょうか。 そのようなコミュニケーションの本質を「言葉」ではなく、ハートマークを中心とした記号によって、 情報端末から溢れて飛び出して、広がっていくような様として、上手に楽しく表現されています。 使われている色のバランスもキレイですね。

人と人が繋がるための、情報通信技術。まるで、自分と相手が側にいるように。 まるで、自分と相手が触れあっているように。「人と繋がっていたい」という思いは、年齢や人種、 どんな時代にも関係なく、すべての人が持っている気持ちです。自分と相手が繋がっている状態を、 シンメトリーを使って上手に表現できています。優しく暖かい色調もいいですね。

技術は「出来なかったこと」を「可能」にします。それは人の夢でもあります。動物たちとコミュニケーションすること。そして、動物だけではなく、鳥や虫、木や花などとも相互のコミュニケーションが可能となる夢のような未来。情報通信技術が可能にするそんな未来の会話は、どんなことを話し合っているのでしょうか。賑やかで楽しそうな声が聞こえてきます。

情報通信技術によって、物理的に離れた相手と繋がることが可能になる。隣の国、別の大陸、そして地球上の数千km離れた相手までも。そんな情報通信技術がもたらす「楽しみ」や「喜び」というものを地球を中心に描くことによって、上手に表現できていると思います。人と人との距離がどんどん近くなっていくことで、どのような未来が待っているでしょう。

情報通信の機器を中心に、人と人が繋がり、さらにその向こうで人と人が繋がっていく。 情報通信技術によって人と人が繋がり、コミュニケーションがコミュニケーションを生み、 それぞれが重なっていく様子が、独特のタッチと構成で見事に表現されていると思います。 人と人、それぞれの存在が溶け込んでいるように見える色の選び方と重ね方がよいですね。

未来の自分と会話してみたい、10年後、20年後の自分を知りたい、というのは僕も子どもの頃に考えたことがありましたが(未来を知るということは、同時にこわくもありましたが)、その未来の自分を「応援したい」という気持ちが、素晴らしいと思いました。現在の自分と、未来の自分とで、互いに励ましあうというのはとても強い力でしょうね。

笑顔をエネルギーにして緑を増やしていく、という発想いいですね。環境が改善され、よくなっていうことで、さらに笑顔が増え、良いスパイラルを生んで、循環していくことでしょう。実際に、笑顔が生みだす力というものは、人に与える影響も含め、とても大きいものです。笑顔が溢れる未来が生みだせるといいですね。

コミュニケーションの手段において、アナログやデジタルという言葉は、技術の進化によって、デジタルの表現が暖かいものになっていくことで、利用者にとっては、以前のような大きな差は感じなくなっている、というのもあるのでしょう。そして、なにより大切なのは、手段ではなく、そこに込められた互いの「思い」ですね。

ケータイのメールに添付された画像という、決してリッチではない、低い表現によって生まれた、面白い物語ですね。もちろん、送り主も、それだけでしっかり伝わるとは思っていなかったのでしょう。大きな喜びを、驚きを添えて届けたかったのでしょう。そんな気持ちがこちら側に届いて、楽しく読むことができました。生命の誕生を伝えるのもケータイの添付画像とはすごい時代になりましたね。

ケータイというものは、単なる通信手段ではなく、記憶や思い出、人との繋がりの手段を含めた、ある種「その人」の一部のようになりました。ですから、ケータイを変えるというのは、自分の過去のある一部を捨てるというような意味を持ちます。深い繋がりの、初めも別れも、同じケータイだった、という彼女の物語に引き込まれました

ケータイというものが、人と人を繋げるものでありながら、それが間接的な、対面ではない手段であるからこそ素直に伝えられる、口に出せることもあるのかもしれないなあ、と思いながら、読ませていただきました。支えてくれている奥様の心と、それに対する感謝の気持ちが強く伝わります。そして「ありがとう」というのは、良い言葉だなあと改めて感じました。

慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科助教、総務省地域情報化アドバイザー、有限責任中間法人モバイルコンテンツ審査・運用監視機構 (EMA)理事、NPO法人CANVAS副理事長

青空の下に満開に咲く桜の花と、楽しそうに携帯で写真を撮る女の子。 いつでも、どんなときでも、美しいと感じたこと、感動したことは、誰かに伝えたくなります。 作者の伝えたい想いが、明るく元気いっぱいに描かれている作品です。

ICTの利用においてとても大切である、目の前にはいない誰かに対する思いやりの気持ち。やさしさ。 この作品では、そんな他者への想い、願い、希望がハートなどのモチーフと、カラフルな色彩により表現されています。ICTによって世界が無限に広がり、人と人とがやさしさで繋がっていく。そんな明るい未来が素敵に描かれています。

やわらかいグラデーションの中で手を取りあう、国籍の違う男女。 言葉や文化の壁を超えたつながりによって生まれる情報通信の温かく優しいイメージが伝わってきます。 地球を連想させる青い丸と、ネットワークのつながりを連想させる黄色い線によって、 ICTの世界への広がりと無限の可能性もよく表現されています。

人、動物、虫、木。 みんながつながる夢の世界が表情豊かに表現されていて、画面いっぱいに楽しい雰囲気が溢れています。 女の子の服や、動物の表情など、全体を通して、細かいところまで丁寧に描かれている点も、すばらしいと思いました。作者の純粋な想いと、夢や希望が溢れている作品です。

鮮やかな背景と青い地球がとても印象的です。 大胆な構図から、世界が1つにつながっていく様子を感じ取ることができました。 こだわった細部のデザインによって、世界中の人が繋がることの出来るICTの便利さと楽しさも、 とてもよく表現されています。

ICTの利用を通じて、みんなが楽しく、お互いに学びあう様子が伝わってきます。 淡い色調と独創的な画風で、まるで画面にいる1人1人から賑やかな声が聞こえてきそうです。 ICTの技術が活かされた新しい学びのイメージに、とてもワクワクしました。

時空を超えたい。人類の夢だと思います。 10年後、20年後の自分は、どうなっているのでしょうか。 たとえ、その姿を見ることができなかったとしても、自分の描く理想をいつまでも忘れずに追い続けていれば、夢はきっと必ずかなうはず。そんな勇気をもらえる作品でした。

笑顔をエネルギーに地球温暖化を止めたい。 読みながら思わず笑顔になってしまう素敵な発想ですね。 環境問題という社会的課題にしっかりと目を向け、人に対する、そして、動物、自然、すべての生命に対するやさしい気持ちが溢れている作品です。世界中の人の協力で地球を美しくできるならば、環境問題だけでなく、きっと世界平和も実現できることでしょう。

遠く離れた人に手軽にすぐに伝えることができるデジタル。個性があらわれ温かみがあるアナログ。 それぞれにそれぞれの良さがあります。 しかし、手紙も電話もメールも伝える手段に過ぎません。本当に大事なことはそれを使って誰に何を伝えるか。 はっとさせられる作品でした。

ある日、息子さんからケータイで送られてきた写真にうつっていたのは、「黒に白い粉の画像」。 いったい何の写真なのか、ドキドキしながら読み進めました。 離れて暮らしていても、ケータイを上手に活用して、頻繁にコミュニケーションを取り合い、お互いにはつらつと生きていらっしゃる様子に、まさに家族の絆をつなぐICTの具現を見ました。

ケータイを通じての告白、そして、心をときめかせながらのメールのやりとり。 しかし、宝物だった大切なあの人からのケータイのメールは、恋の終焉とともに、自らの手で消しさられてしまいます。そんなせつない、恋する女性の、心情の変化が、臨場感あふれる文章でつづられています。 いつもつながっていられると同時に、簡単に削除もできる。 改めてケータイというものを考えさせられました。

人を支えるのは、やはり人です。 つらい時だからこそ、大切な人との会話に救われ、素直な気持ちになることができます。 時にケータイがそんなコミュニケーションの手助けをしてくれます。 作者の奥様への感謝の心がひしひしと伝わってきました。

石戸 奈々子 氏
受賞作品 ※横の矢印をクリックすると作品がスライドします。

最優秀賞 木村苑香(きむらそのか)さん

優秀賞 河之口みな(ごのくちみな)さん

佳作 佐藤綾乃(さとうあやの)さん

佳作 山下愛(やましたあい)さん

佳作 ギャベイイランさん

佳作 高木政史(たかぎまさし)さん

優秀賞 岡部美優(おかべみゆう)さん

優秀賞 斉藤杏優(さいとうあゆ)さん

優秀賞 家城武尚(いえきたけひさ)さん

優秀賞 池上正子(いけがみまさこ)さん

優秀賞 岩上幸代(いわかみさちよ)さん

優秀賞 中塚計佐男(なかつかけさお)さん


受賞作品の掲載イメージはこちら