5.通信の秘密、個人情報保護について

 

  5−1 携帯電話は誰かに盗聴されたりする心配はないのですか。

 

  5−2 「通信の秘密の保護」に関する法律と「通信の秘密」として保護される範囲について教えてください。

 

  5−3 インターネット上の通信も「通信の秘密」として保護されるのですか。

 

  5−4 私の会社では、社員が送受信したメールを上司がチェックしているようです。こういうことは許されるのですか。また、家族のメールを勝手にのぞき見るのはいけないことなのでしょうか。

 

  5−5 他人の無線LANアクセスポイントから勝手にインターネットにアクセスすることは問題があるのですか。

 


 

5−1 携帯電話は誰かに盗聴されたりする心配はないのですか。

  

○ 携帯電話の通話を盗聴するということは技術的に非常に困難で、ほとんど不可能です。しかしながら、電波を利用して通信を行っているため、盗聴されている可能性は絶対にないとはいえません。

 

○ 法律的には、携帯電話の通話内容を盗聴することは、その通話が携帯電話会社など電気通信事業者の取扱中に係る通話であり、原則として違法な行為です。具体的には、電気通信事業者の取扱中に係る通話の場合には、その通話の内容を盗聴する行為は電気通信事業法第4条に違反します。

 

○ 電気通信事業者の取扱中に係らない通話の場合であって、企業内の有線LANなどの通話の内容を盗聴する場合には有線電気通信法第9条に、企業内の無線LANなどの通話の内容を盗聴する場合には、その通話の内容を聞くだけならば電波法に違反するとは言い切れませんが、その内容を漏らしたりすると電波法第59条に違反し、それぞれ違法な行為として処罰の対象となります。

 

○ この他、盗聴のために他人のパスワードをつかって無線LAN等のネットワークに侵入するような不正アクセス行為をした場合には、不正アクセス禁止法違反となります。

 

 


 

 

5− 「通信の秘密の保護」に関する法律と「通信の秘密」として保護される範囲について教えてください。

 

○ 誰にも通信の内容や通信の存在、相手方といった事実を知られずに秘密のうちに通信を行うことができることは、個人の私生活の自由を保障する上でも、自由なコミュニケーションの手段を保障する上でも大変重要なことです。

 

○ こういったことから、憲法第21条第2項においては、通信の秘密を個人として生きていく上で必要不可欠な権利として保障しているものです。この趣旨を受けて、電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密については電気通信事業法第4条、第179条により、有線電気通信における通信の秘密は有線電気通信法第9条、第14条により、無線通信における通信の秘密は、電波法第59条、第109条によりそれぞれ罰則をもって保護されています。

 

○ 通信の秘密 の保障には、通信の内容だけでなくその存在の秘密が確保されることも含まれるものですから、上記の各法律の保護の及ぶ範囲は、通信内容だけでなく、通信当事者の住所、氏名、通信日時、発信場所等通信の構成要素や通信の存在の事実の有無を含むものです。

 

○ 電気通信事業法では、電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密を侵すことを禁じているのですが、ここで禁止行為とされている「秘密を侵す」とは、上に述べた通信の秘密の保障が及ぶ事項の秘密を侵す行為、すなわち、通信当事者以外の第三者がこれらの事実を 故意に知ったり、自己又は他人のために利用したり、第三者に漏えいすることをすべて含むものです。正当な理由なくこれらの行為を行うと刑事罰に処せられることになります。

 

○ 電気通信事業者の取り扱うプライバシー情報の中には、上記の「通信の秘密」に該当しない情報も含まれていますが、これらの通信の秘密以外のプライバシー情報の取扱いについては、「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン」(平成1 6年8月総務省告示第695号)において定められています。

 http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/s-jyoho.html

 

 


 

 

5−3 インターネット上の通信も「通信の秘密」として保護されるのですか。

 

○ インターネットを利用して行われる通信であっても、インターネット接続事業者のサービスを利用して行われるような場合には、電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密に該当し、電気通信事業法に定める保護が与えられることになります。それ以外の場合であっても、必要に応じて有線電気通信法、電波法等の保護が与えられることになります。

 

○ ただし、インターネットの場合、接続機器の設定や事業者のサービスによっては、プライバシー保護が万全とは言い難い場合もあるようですので、注意することが必要です。

 

 


 

 

5−  私の会社 では、社員が送受信したメールを上司がチェックしているようです。こういうことは許されるのですか。また、家族のメールを勝手にのぞき見るのはいけないことなのでしょうか。

 

○ 会社内のネットワークにおいては、電気通信事業法上の通信の秘密の保護が及ぶものではありませんが、有線電気通信法の適用の有無が問題となる可能性があります。

 

○ また、このような会社におけるメールチェックについては、従業員のプライバシー保護との関係で議論されているようですので、その観点からの配慮も必要でしょう。

 

○ 家族のメールを同意を得ないままにのぞき見る行為は、既に端末にダウンロードされているものをのぞき見る場合には、単に民事上の不法行為の問題しか生じませんが、他人のID・パスワードを入力するなどして、未だダウンロードされていないメールをインターネット接続事業者のメールサーバからダウンロードしてきて読む場合には、「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」が禁止する不正アクセス行為に該当するおそれが高いといえますし、場合によっては、電気通信事業法に定める通信の秘密侵害罪に問われるおそれがあります。

 


 

 

5−5 他人の無線LANアクセスポイントから勝手にインターネットにアクセスすることは問題があるのですか。

 

○ 他人の無線LANアクセスポイントから勝手にインターネットにアクセスすることがアクセス制御機能の侵害に当たるような場合には、「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」第3条の違反になります。

 

○ また、勝手に他人の無線LANアクセスポイントにアクセスし、無線LAN上を流れているデータを知得し、その内容などを漏らしたり窃用したりした場合は、電波法第59条違反になる場合もあります。

 

○ さらに、以上の刑事上の責任の他、他人の無線LANアクセスポイントから勝手にインターネットにアクセスした場合、場合によっては不法行為等の民事上の責任も発生する余地があります。