第2章 FTTH実現に向けたネットワークの展望

2 通信サービスに対する需要見通し

 光ファイバ網を使用する高速・広帯域通信サービスに対する需要は、マルチメディア化の進展に伴い、急速に増大していくものと予想される。特に、2000年以降については、それまでに全国の主要地域及び公共機関を対象とした光ファイバ網の先行整備が相当程度進捗していること、さらに光ファイバ網先行整備に併せた、遠隔教育、遠隔医療等の公共アプリケーションの公共機関への導入が進捗していることから、需要が急速に増大することが見込まれる。
 また、日欧米豪の主要電気通信事業者を中心に構成されるFSAN会議(注1)のロンドン会合(96年6月開催)においても、2000年以降、高速・広帯域通信への需要が増大すると予測されている。この予測によれば、主たる需要としては、高速インターネットアクセス(10Mbps程度)やVOD(ビデオ・オン・デマンド)、フレームリレー等が挙げられ、ATM−PDS方式(第3節「ネットワーク変遷の展望」参照)の標準化が完了し、製品が市場に出回る時期も2000年頃と想定されている。

(注1)FSAN(Full Services Access Networks)会議
 低コストな光アクセスシステムを構築するための会議。今後のコンピュータ通信などのサービスを経済的に提供するATM−PDSシステムの技術基盤とシステム技術を情報交換して、開発段階から仕様の共通化に結びつけることをねらいとする。
 NTTをはじめ世界の通信事業者と通信機器メーカが協力して、光加入者系のシステム技術の共通化に向けて検討されている。

 当面の伝送容量に対するニーズについては、インターネットアクセスのように、下り回線の伝送容量が上り回線より大きい非対称(上り:数100kbps、下り:数Mbps)なものと考えられるが、将来的には、テレワークや遠隔医療、遠隔教育等で、順次、上り下りの伝送容量が対称なサービスの利用が増加するものと考えられる。

 今後の光ファイバ網を中心としたネットワークインフラの整備とFTTH化の進展に伴う情報通信に対するニーズの見通しは以下のとおりである。

 ア 2000年頃
 家庭では、64kbpsから1.5Mbps程度の伝送容量が、インターネットへのアクセスやテレビ電話等に利用される。
企業では、数10Mbpsから150Mbps程度の伝送容量があり、LAN間接続、テレビ会議等に利用される。

 イ 2005年頃
 家庭では、1.5Mbpsから10Mbps程度の伝送容量が、高速インターネットアクセスのほか、遠隔医療、遠隔教育、ビデオ・オン・デマンド等、映像伝送にも利用される。
 企業では、150Mbpsから600Mbps程度の伝送容量が、LAN間接続、サテライトオフィス等に利用される。

 ウ 2010年頃
 家庭では、数10Mbps程度の伝送容量が、ビデオ・オン・デマンド(数チャンネル)、在宅勤務等に利用される。このころには、家庭からの映像情報の発信も増加するものと考えられる。
 企業では、600Mbps程度の利用が一般化し、高速回線でのLAN間接続により、企業内のみならず企業間においてもシームレスな通信環境が実現される。
通信ニーズの需要見通し

通信ニーズの需要見通し