第3章 情報通信政策の動向


第4節 放送政策の推進

  1. 放送ビジネスの振興
  2. (1) 規制緩和の推進

    ア CSデジタル放送における多チャンネル放送の規制緩和
     10年3月から、CSデジタル放送において、従来複数局支配の禁止として制限されていた出資比率が、議決権の10分の1未満から3分の1未満に引き下げられたほか、一委託放送事業者が行うことができるテレビジョン放送の番組数についても、従来12番組に制限されていたものを、4中継器以内では何番組でも可能とすることとされた。

    イ CSデジタル放送における有料放送の規制緩和
     CSデジタル放送における有料放送においては、競争促進を図る見地から、料金認可制から届出制に改められたほか、契約約款について、標準契約約款に合致する届出であれば、認可を受けたものと見なされる標準契約約款制が9年11月から導入された。

    ウ ケーブルテレビにおける規制緩和
    (ア) ケーブルテレビの外資規制の見直し
     ケーブルテレビにおいては、フルサービスの提供を通じたビジネス展開の可能性を拓くため、10年2月、第一種電気通信事業を併せて行うケーブルテレビ事業者において、外国資本の割合の制限及び外国人の業務執行役員への就任の禁止の措置が撤廃された。
    (イ) ケーブルテレビ加入者網における無線システムの実用化
     ケーブルテレビ局のネットワーク構築の補完的な手段として、基地局から各加入者宅までの伝送に無線システムを利用することを認め、10年9月を目途に実用化のための措置を講じる予定である。
    (ウ) 複数ケーブルテレビ事業者のヘッドエンドの共用化
     ケーブルテレビ事業者が効率的にデジタル化投資を行えるようにし、デジタル化を促進する観点から、ヘッドエンド設備を複数の事業者で共用することを認めることとし、9年12月に有線テレビジョン放送法施行規則の改正を行った。

    (2) 地上放送における状況
     地上系テレビジョン放送の垂直帰線消去期間を利用した地上データ放送(VBI方式)が、固定受信のサービスで実用化されている。
     また、高速走行中の自動車内や携帯での利用等、移動中の受信を可能とするため、郵政省では9年6月に、音声信号副搬送波を利用した地上データ多重放送の制度化を行った。

    (3) 衛星放送における状況
     衛星データ放送には、アナログ放送における「データ多重放送」及びデジタル放送における「データ放送」がある。
     特に、CSデジタル放送におけるデータ放送は、従来のアナログ式のデータ多重放送に比べ、数十倍の大容量伝送が可能であり、映像・音声・データを融合した柔軟性のあるサービスの提供が容易といった優れた特性を有している。
     郵政省では、CSデジタル放送によるデータ放送分野の開発のため、本放送試験放送局に予備免許を付与し、デジタル放送トライアル・サービスを行うこととしている。この試験放送は、パーソナルコンピュータ等を受信機とし、文字、音声、動画、静止画等の各種データを放送するもので、本試験により、各種機器の試験・調査、番組の種類及びサービスの動向調査、視聴者調査等を実施することとしている。
     また、郵政省では、CSデジタル放送におけるデータ放送の事業化を推進していくほか、9年12月から「データ放送を利用したマルチメディア・サービスに関する調査研究会」を開催している。本研究会では、データ放送による早期かつ安価なマルチメディアサービスの実現のため、サービス分野の検討、サービス実現に向けた制度面・技術面等の課題の抽出等を行っており、11年3月に最終報告が取りまとめられる予定である。

    (4) ケーブルテレビにおける状況

    ア フルサービス化に向けた取組
    (ア) 通信・放送機構目黒リサーチセンターにおける実験
     通信・放送機構目黒リサーチセンターにおいて、7年度から広域ケーブルテレビ網を使った通信・放送融合サービスを提供するために必要な伝送技術の開発を行っている。本センターでは、東京、横浜、甲府のケーブルテレビ施設を利用し、ケーブルテレビ電話、NVOD、映像データの広域デジタル伝送等の広域ネットワーク実験を行っている。
    (イ) フルサービス・ネット委員会における取組
     ケーブルテレビのフルサービス化に向けたアプリケーション開発とネットワーク化を進めるため、6年5月に「フルサービス・ネット委員会」がケーブルテレビ協議会に設置された。10年3月時点において、87団体が参加し、ケーブルテレビ電話・インターネット接続・在宅健康管理システム等38の実験が実施されている。

    イ 将来のケーブルテレビのための技術開発
    (ア) 次世代ケーブルテレビのための研究開発
     ケーブルテレビにおけるデジタル伝送方式については、今後、より高速・大容量のシステム性能を要求されることから、郵政省では9年度から、アナログ混在のシステムではなく「フルデジタル」伝送を行うケーブルテレビシステムに最適な技術的条件について調査研究を行っている。
    (イ) プラスチック光ファイバの研究開発
     ケーブルテレビ伝送路の全光ファイバ化の促進を図るため、接続・分岐が容易で上り回線の高速化が可能なプラスチック光ファイバについて、低損失化等の研究開発を、通信・放送機構において10年度から行うこととしている。



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