第3章 情報通信政策の動向


第7節 21世紀に向けた技術開発・標準化の推進

  1. 標準化活動の一層の推進
  2.  マルチキャリア化・マルチベンダ化が進展する中で、多様な端末機器及びネットワークを国際的に相互に接続し、様々な情報通信サービスを簡単に利用できるようにするため、標準化の推進が必要である。電気通信分野の標準化はITUを中心として行われており、我が国からも積極的な寄与を行っている。
     また、公的な標準化機関とは別に、特定の企業、業界、グループ等が集まり、独自の標準(デファクト標準)を作成し、市場を席巻する事例が増えており、これへの対応が重要となっている。

    (1) 標準化に対する取組

    ア 国際標準化活動
     電気通信に関する国際標準化は、ITUのITU−T及びITU−Rを中心として活動が行われている。
     一方、アジア・太平洋地域における標準化の相互協力を推進するため、9年11月、「アジア・太平洋電気通信標準化機関」(ASTAP)がAPTの下に設立され、本格的に活動を開始した。

    イ 国内標準化活動
     我が国における電気通信の国内標準化に対する取組は次のとおりである。
     
     郵政大臣の諮問機関である電気通信技術審議会は、ITUにおける国際標準化活動に適切かつ効率的に対応するため、電気通信標準化委員会及び無線通信委員会を設置し、我が国の主張又は意見を取りまとめるとともに、国際標準化活動への寄与を行っている。
     電気通信標準化委員会は、ITU−Tの活動のうち、技術に関する事項についての我が国の寄与及び対処について審議を行っている。
     無線通信委員会は、ITU−Rの活動のうち、技術に関する事項についての我が国の寄与及び対処について審議を行っている。
     
     民間の機関としては、電気通信全般に関する標準の作成及びその普及を行う(社)電信電話技術委員会(TTC)、通信・放送分野における電波利用システムに関する標準規格の作成及びその普及を行うARIB、ケーブルテレビの技術に関する標準規格の作成及びその普及を行う(社)日本シーエーティブィ技術協会(NCTEA)が活動している。
     
     我が国の情報通信端末の相互接続性の確保については、郵政省において開催される高度通信システム相互接続推進会議(HATS推進会議)を中心に、ユーザー、メーカー、電気通信事業者の協力のもと進められている。

    (2) 国際競争時代における情報標準化の在り方とその推進方策
     郵政省では、9年4月、電気通信技術審議会から、標準化体制・制度の望ましい在り方等を取りまとめた、「国際競争時代における情報通信標準化の在り方とその推進方策」と題する答申を受けた。その概要は次のとおりである。

    ア 情報通信分野における標準化の取組強化の必要性
     グローバル化、シームレス化の進む高度情報社会にあって、我が国の国際競争力を強化していくためには、標準化を相互接続性・相互運用性の確保としてのみとらえるのではなく、国際競争力の強化及び新産業の創出のための有効な手段としてとらえることが必要である。さらに、国際競争力強化に資する新しい標準化推進方策を明らかにした上で、我が国としての標準化への取組を強化していく必要がある。

    イ 今後の標準化推進の在り方
     情報通信の高度化、グローバル化、デファクト標準の台頭による標準化に関わる国際競争の激化が進展している中、情報通信分野における相互接続性・相互運用性の確保、国際競争力の確保を図るためには、重点的に標準化を推進すべき分野と標準化課題を明確化した上で、我が国全体として積極的に標準化を推進していくことが必要である。この認識のもと、今後、重点的に標準化を推進すべき10分野と45の標準化課題を選定した。

    ウ 国際競争時代における情報通信標準化の推進方策
     今後の標準化政策の基本方針として、新産業創出・国際競争力確保の手段としての標準化、外国との連携を重視したオープンな標準化、民間主導のオープンな標準化、研究開発・標準化・実証実験の一体的推進を提示しており、官民がそれぞれ所要の施策を推進すべきである。

    (3) シームレス通信環境の実現に向けて
     郵政省では、8年8月から「シームレス通信技術研究会」を開催し、21世紀の高度情報通信社会の構築に必要なシームレス通信環境の実現方策等について検討を行ってきたが、9年4月、報告を取りまとめた。
     報告では、まず、「ネットワークのシームレス化」及び「家庭内の情報配線のシームレス化」という二つの観点から「シームレス通信環境」の実現に必要な標準化課題等を明らかにしている(第3−7−6図参照)。
     また、これらの技術開発及び標準化を進めるために、基盤的技術に対する国の研究開発やシームレス通信技術共同研究テストベッドやモデル住宅を用いたマルチメディアホームリンクの実証実験等、様々なメディア、ネットワークにかかわる産学官の関係者が参加した開発を推進すること等が提言されている。


    (4) マルチメディア時代の宅内の高度情報化の実現に向けて
     シームレス通信技術研究会において提言されたマルチメディアホームリンクに関する実証実験の実施、技術の標準化、設計・施工のガイドラインの策定及び導入支援措置の整備などの具体化に向けた検討を行い、住宅の情報化に資することを目的として、郵政省では、9年11月から「マルチメディアホームリンクの研究会」を開催し、10年3月に報告を取りまとめる予定である。
     また、このマルチメディアホームリンク技術に加え、宅内の高度情報化について、中長期的観点から将来像と研究開発の推進方策を明らかにすることを目的として、10年2月、電気通信技術審議会に「宅内の高度情報化の将来像と研究開発の推進方策」を諮問したところである。



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