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インデックスへ ・ 電気通信


第IV章 特定事業者に関する特別な接続ルール

第1節 総論

1 特別な接続ルールの必要性

  電気通信サービスの利用者は、加入者回線(電話の場合、保安器、配線盤等  加入者側に設置される回線の終端装置と加入者交換機との間の伝送路)で事業  者のネットワークとつながっており、利用者間で通信を行う場合、途中でどの  ようなネットワークを経由しても、最終的には加入者回線を経由しなければ当  該利用者にはつながらない構造となっている。   このため加入者回線を有する事業者は、接続の提供という観点からは、当該  加入者回線によりネットワークにつながれている利用者に対する他事業者から  のアクセスを独占しているとみることができる。   このように、加入者回線を相当な規模で有する事業者のネットワークへの接  続は、他事業者の事業展開上不可欠であり、また、利用者の利便性の確保とい  う観点からも当該ネットワークの利用が確保されることが不可欠であることか  ら、その接続条件は、競争の促進及び利用者利便の増進の観点から極めて重要  なものとなっている。   また、相当規模の加入者回線を有する事業者は、接続協議において圧倒的に  優位な立場に立ち得ることから、事業者間協議により合理的な条件に合意する  ことが期待しにくい構造となっている。   したがって、このようなネットワークへの透明、公平、迅速かつ合理的な条  件による接続を確保することにより、競争を促進し、かつ、利用者利便の増進  を図るため、第III章の一般的な接続ルールに加え、特別な接続ルールを策  定し、当該事業者に適用していくことが必要である。

2 特別な接続ルールを適用していくべき事業者の範囲

  特別な接続ルールを適用していくべき事業者(以下「特定事業者」という。)  の範囲については、   1.加入者回線の過半数を有していれば、常に他事業者より多くの加入者回    線を有していることから、交渉上優位な立場に立つこと   2.独占禁止法における「独占的状態」の基準においても50%超という基    準が採用されていること  等から、一定の市場において加入者回線総数の50%を超える規模の加入者回  線を有する事業者とすることが適当である。  一定の市場については、   1.都道府県は社会経済生活圏として一体性を有していることから、通信サ    ービスの大半を占める電話トラフィックは、約8割が同一都道府県内に終    始していること   2.こういった利用実態を踏まえ、ネットワークは概ね都道府県を構成単位    として形成されており、このようなネットワーク構成を前提として、現時    点においては、接続は、都道府県単位で行われることが一般的となってい    ることから、都道府県を単位とすることが適当である。   なお、移動体通信事業者については、基地局間又は基地局と交換局間の伝送  路を有しておらず、この部分は業務委託という形で固定通信事業者の設備を使  用しており、また、移動体通信事業者が扱う通信のほとんどは固定通信事業者  との間のものであることから、移動体通信事業者は固定通信事業者への依存度  が高い。   したがって、特別な接続ルールの適用の対象は、当面固定通信事業者に限る  こととし、移動体通信事業者の加入者回線は、特定事業者を決定するための加  入者回線総数には含めないこととすることが適当である。   上記特定事業者の定義については、接続ルールの見直し時に、実態を踏まえ  て見直すことが適当である。

3 特別な接続ルールの適用対象となる設備の範囲

  特別な接続ルールの適用対象となる設備(以下「不可欠設備」という。)は、   1.上述したように、概ね都道府県を構成単位として加入者回線と一体とし    て構成されるネットワークが形成されていること   2.接続の実態も、都道府県単位で行われていること   3.県間通信設備については、他事業者との代替性が高いこと  から、加入者回線と一体として構成される概ね県域をカバーする設備とする。   接続に関する会計の対象となる具体的な設備や料金表・約款において接続条  件を明確化すべき具体的な設備や機能については、電話網及び専用網に関して  は別紙3及び別紙4において考え方が示されているところであり、その他の設  備についても、これに沿って判断され、接続ルールが施行されるまでに明記さ  れることとなる。   また、不可欠設備の範囲については、接続ルールの見直し時に、実態を踏ま  えて見直すことが適当である。   なお、国際通信事業者のように、中継交換機の上位階層の交換機において接  続しており、他事業者の設備を利用することが困難な場合については、当該設  備についても、接続料金の算定、技術的条件の開示、接続関連費用の負担等に  ついて特別な接続ルールの考え方に基づいて接続が行われることが望ましい。

4 特別な接続ルールの内容

(1)接続条件の料金表・約款化    不可欠設備との接続に関しては、透明、公平、迅速かつ合理的な接続を確   保する観点から、接続料金、接続の技術的条件などの接続条件に関して料金   表・約款を作成し、認可を得ることを義務づけることが適当である。    この場合、料金表・約款に定める条件については、合理的な接続条件及び   公正有効競争を可能とすることを確保する観点から、以下の基準を満たすよ   う作成されるべきである。   1.技術的に接続が可能なすべての不可欠設備上のポイントにおける接続が    提供されること。     この基準には、次の内容が含まれる。   (ア)他事業者が不可欠設備上のポイントまで伝送路を設置するために必要     な建物・管路・電柱を提供すること。   (イ)上記(ア)の建物の提供には、物理的コロケーション(他事業者が接     続用設備を設置)、仮想的コロケーション(特定事業者が接続用設備を     設置)のいずれの提供も可能とすること。      なお、コロケーションについては、セキュリティの確保等の観点から、     特定事業者による保守受託の形態で行うことも認められるべきである。   (ウ)不可欠設備上のポイントから他事業者の要請に基づく地点(他事業者     の建物を含む。)までの伝送路の設置が含まれていること。   2.接続料金が、接続会計の結果に基づき、適正に算定されていること。   3.他事業者が、特定事業者の不可欠設備の構成要素や機能のうち必要なも    ののみを細分化(アンバンドル)して使用することができるような形態及    び料金表により接続が提供されること。   4.不可欠設備との接続条件は、特定事業者の同様なサービスより不利でな    い条件であること。   5.接続の技術的条件を記載すること。   6.特定事業者の利用者が他事業者に加入を変更する場合に、当該利用者が    同一の番号を保持すること(以下「番号ポータビリティ」という。)が確    保されること。     ただし、他事業者が、特定事業者に対して番号ポータビリティを提供し    ない場合には、他事業者からの番号ポータビリティの提供の申入れを拒否    することは認められる。   7.他事業者の要請に基づき、番号に関する以下の業務が提供されること。    (ア)特定事業者の番号案内サービスへのアクセス    (イ)特定事業者の番号データベースへのアクセス    (ウ)特定事業者の番号案内サービスにおける他事業者の利用者の番号案      内の実施及び特定事業者の電話帳への他事業者の利用者の番号の掲載   8.他事業者の要請に基づき、当該事業者のネットワークから発信された緊    急通報を警察及び消防機関に伝送・着信させることが提供されること。   9.接続に要する標準的な期間が明示されていること。 (2)接続に関する会計報告書の作成・公表    不可欠設備に係る接続料金について、透明、公平かつ合理的な料金の算定   を確保し、接続料金の合理性に関する他事業者等への判断材料を提供するた   め、特定事業者に対し、不可欠設備との接続に関する会計報告書の作成・公   表を義務づけることが適当である。 (3)網機能提供計画の作成・公表    不可欠設備との接続においては、不可欠設備のネットワークの改造のため   に多大の時間と費用を要する場合があることから、現在の不可欠設備を前提   として合理的な接続条件を確保するだけでは不十分である。このため、特定   事業者のネットワークの開発段階において、他事業者が今後開発されるネッ   トワーク機能の情報の提供を受け、また、他事業者の意見が当該開発に反映   されることを確保する必要がある。    したがって、特定事業者に対し、網機能提供計画を作成し、公表すること   を義務づけることが適当である。 (4)不可欠設備との接続に必要な情報の提供    上記の料金表・約款、接続に関する会計報告書及び網機能提供計画に記載   される情報のほか、公平かつ迅速な接続の確保の観点から、管路の空き情報   等、他事業者が不可欠設備への接続を検討し、又は実際に接続を行い、運用   する際に必要となる情報についても提供されることが必要である。    したがって、特定事業者に対し、不可欠設備との接続に必要な情報の提供   を義務づけることが適当である。

第2節 接続に関する料金表・約款

1 接続に関する料金表・約款の作成・認可手続   第1節で述べたように、不可欠設備との接続に関しては、接続条件に関して  料金表・約款を作成し、認可を得ることを義務づけることが適当であるが、透  明、公平、迅速かつ合理的な接続を確保する観点から、料金表・約款の作成、  認可手続については、次のとおりとすることが適当である。 (1)特定事業者は、不可欠設備との接続に関する料金表・約款を作成し、認可   申請を行う。    料金表においては、第3節の会計制度において定められる会計上の区分を   ベースとして算定される、アンバンドルされた料金体系を設定する。 (2)料金表については、接続会計結果に基づき毎年見直し、必要に応じて変更   の認可申請を行う。    約款については、接続の技術的条件などその内容を変更すべき事情が生じ   た場合には、速やかに変更の認可申請を行う。 (3)郵政大臣は、申請資料を一般の閲覧に供する。 (4)他事業者等は、申請及び下記(5)の意見に関して郵政大臣に対して意見   を述べることができる。 (5)特定事業者は、上記(4)の意見に関して意見を述べることができる。 (6)上記(4)、(5)の意見に基づき申請が不認可とされる場合には、特定   事業者において不認可の理由を踏まえて速やかに再申請を行うことが望まれ   る。    特定事業者において適切な対応が行われない場合には、郵政大臣は業務改   善命令を出すことができる。 (7)軽微な事項については、認可を得ることを要しない。ただし、他事業者等   の検討が可能となるよう事前に届出を行うとともに、公表することとし、当   該届出に関して他事業者等は、意見を述べることができる。    また、郵政大臣は、当該届出に対して、業務改善命令を出すことができる。 (8)事業者は、約款により接続を行った場合には、届出を行う。 (9)行政手続法に基づき、認可手続に関し、標準処理期間及び審査基準を定め   る。

2 認可された料金表・約款の扱い

  認可された料金表・約款が、その後の事情変更により合理性を欠くに至った  場合には、他事業者等の苦情申告等に基づき、業務改善命令を出すことを可能  とする。

3 料金表・約款によらない個別協定の扱い

  不可欠設備に関する接続条件については、料金表・約款に定めることを原則  とするが、新サービスなどであって料金表・約款によらない特殊な条件で接続  することについて他事業者から申込がある場合には、個別に接続協定の認可を  得て、これによる接続を提供することができる。個別の接続協定は、その条件  が第1節4(1)の基準を満たさなければならないものとする。

4 他事業者による料金表・約款手続の利用

  多数の事業者による接続の円滑化等の観点から、他事業者についても、任意  に料金表・約款を作成し、認可を得ることができることとする。この場合にお  いては、当該手続の利用を促進するために、手続利用に伴う他事業者の負担の  軽減を図ることとする。具体的には、特定事業者に課された特別なルールであ  る接続会計制度に基づく料金算定、毎年度の見直し、網構成設備・機能の細分  化(アンバンドル)等の実施は要しないものとする。   他方、手続の透明性確保の観点から、申請資料の閲覧及び他事業者等の意見  を述べる機会の確保については、上記1と同様の手続とする。   なお、認可を得た料金表・約款に定める条件で接続を提供する場合には、個  別の接続協定の締結、認可を要せず、届出を行うこととする。







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