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1 会計小委員会報告

 1 接続会計報告書の作成について 
 (1)特定事業者に接続会計報告書(仮称)の作成・開示を義務づける。

  (理由)

   1.コストベースの接続料金の水準に関する適正な算定の基礎が必要

   2.透明かつ公平・無差別な接続料金の算定に関する基準の整備が必要

  (接続会計作成の目的)

   1.合理的で透明かつ公平・無差別な接続料金の算定の基礎を確立
    ・接続料金の合理性に関する他事業者への判断材料を提供
    ・アンバンドルされた接続料金の合理的根拠を提供

   2.事業者間接続とユーザー営業との間の費用配分の操作等を通じた
     内部相互補助の防止(公正有効競争・ユーザー保護の観点)

   3.独占的な不可欠設備運営の効率化を促す情報とインセンティブを提
     供

 (2)他事業者への接続会計報告書の作成・開示の義務づけは不要である。

  (義務を課さない理由)

   1.市場支配力がないため不当な価格をつけるおそれがなく、事業者間協
    議により円滑に合理的な接続条件に合意することが期待できる。

   2.接続会計作成のための時間・費用の負担が重い。

   3.諸外国との規制の枠組みの調和の観点からも合理的である。
    (・英国においては、BTのみに接続会計の作成を義務づけている。
     ・EUにおいては、市場支配力を有する事業者のみに接続会計の作成
      を義務づけている。)
 2 接続会計の概要 
 (1)接続会計の枠組みは不可欠設備管理収支型とする。
    特定事業者が「不可欠設備管理部門」(不可欠設備の運営管理及び社内
   外への利用提供を行う部門)、「ユーザー営業部門」(不可欠設備を利用
   してユーザーにサービスを提供する部門)及びその他の部門を会計上独立
   して設置する。
    不可欠設備管理部門に生じた費用(不可欠設備の管理運営に必要な償却
   ・除却費、保守費、共通・間接費、資本コスト等の設備関連費用)を基礎
   として算定した接続料金をユーザー営業部門と接続事業者に対して等しく
   適用し、社内・社外から得たその収入を同部門の収益とする。
    毎年度における不可欠設備部門の収支の状況を接続会計として社内取引
   対象部門の収支とともに開示する。

  (理由)

   1.自社のユーザー営業部門と他事業者に対する不可欠設備の同一の条件
    での提供が財務諸表上で確認可能となり、透明で公平・無差別という接
    続ルールの趣旨に沿う。

   2.保守費や共通費・間接費等の費用について、「不可欠設備の運営管理」
    という合理的な計上の基準が確立されるとともに、伝統的な費用配賦に
    代えてコスト・ドライバを用いたABC手法などの導入により不可欠設
    備管理部門への費用帰属の精緻化を図る。これにより、特定事業者に生
    じた接続に無関係な費用を他事業者に転嫁することが抑制され、また、
    アンバンドルされた料金算定のための設備区分毎の費用集計が可能とな
    る。
     これまでの事業間協議で個別問題となっていた営業費については、営
    業部門を分離した本会計の体系上、原則的に接続料金原価から除外され
    る。同様に試験研究費についても、不可欠設備の管理運営に要すること
    が明らかにされたもののみが接続料金原価に算入され、それ以外の部分
    は除外される。

   3.また、独占的な不可欠設備の費用が開示されることにより、その非効
    率性の監視と効率性の向上促進等も図られる。

  (代替案「接続費用抽出型」(米国州際アクセスチャージ分計類似)の評価)

   1.自他の無差別な取扱いを財務諸表上では確認し難い。

   2.特定事業者のユーザー営業活動の費用と不可欠設備の管理運営費用が
    未分離のまま接続料金原価に算入され、収支開示という点を除けば手法
    的に現行の延長であり、不可欠設備管理収支型のようなメリットに欠け
    る。

 (2)接続会計の対象範囲は、網使用に係る収益・費用のほか網改造及び接続
   装置使用に係る収益・費用とする。

  1.事業者間の接続が確保されることが公共の利益に適うという観点から、
   基本的な接続機能の提供に伴って生じる網改造費(主としてソフトウェア
   の改修費用)は、ネットワークが本来有するべき機能を備えるためのもの
   とみるべきであり、関連する不可欠設備の費用として計上する。これによ
   り、特定事業者の営業部門等及び他事業者から公平に回収される。これ以
   外のものについては他事業者からの個別回収の対象とする。

  2.接続用装置の費用についても、上記網改造費と同様に、基本的な接続機
   能の提供に係るものは、これを付加した不可欠設備の費用として計上し、
   事業者間で公平に回収する。

  3.接続伝送路の費用については、双方向の利用が想定される加入者系の他
   事業者との接続に係るものを除いては、他事業者の負担とする。

  4.なお、コロケーション料についてはその内容が土地・建物の賃貸借類似
   のものであることから接続会計の対象としない。

 (3)接続会計報告書には、設備により区分された費用を記載することとする。
    アンバンドルされた料金算定に資するため、(市内/市外)交換機、伝
   送路等の階梯別・用途別のネットワーク要素毎に不可欠設備管理部門の費
   用を区分する。その際には、他事業者のサービス提供に必要でない設備の
   費用が混入しないよう厳密な設備区分を採る。
   (例:NTT電話網で10数項目程度が考えられる)
     (参考) 現在のNTTの(社内)経理においては、たとえば、市
         内交換機(D70)は約60の装置に分散して資産台帳に
         計上されている等、電気通信設備全体で約1700程度の
         精緻な資産区分が採用されているが、これを交換機種別あ
         るいは階梯別等に集計区分した会計報告は行われていない。

  (参考)事業者の意見及び諸外国の状況
   1.NTT 4〜5区分程度
   2.NCC 10数区分程度
   3.英国BT 23区分程度 (設備的には数区分との意見もある)
   4.FCC規則のアンバンドル 7区分 (会計上の区分ではない)
 3 接続会計報告書の公表等 
 (1)接続会計報告書は郵政大臣に提出し、別に刊行して公開する。(例:英
   国BTの接続会計の公表方法)
    提出する接続会計報告書については、接続会計のルールに基づいて適正
   に作成された旨の公認会計士による計算結果の証明を付する。
   (例:役務別損益・電話役務損益明細表の扱い)

 (2)会計部門設定の詳細、費用帰属の具体的内容、会計報告や料金算定に必
   要な勘定科目、開示内容等については、郵政省において、事業者、有識者
   等の参加や意見も得て検討を行い、接続会計が平成10年度を目途に実施
   できるよう準備することとする。
 4 料金算定 
 従来型の総括原価(フルコスト)方式ではなく、「接続との関連性」を基本に
おいて、精緻な設備コストの帰属決定を行い、それに基づいてアンバンドルされ
た接続料金を算定する。
 この点で、米英において採用の見通しである長期増分費用アプローチの持つ利
点が採り入れられることとなる。

 (1)接続会計により設備種別ごとに区分集計された費用に基づいて接続料金
   を算定する。
    接続料金原価は、接続会計においてネットワーク要素毎に集計・区分し
   た費用から構成される。接続会計で分離された営業費や不可欠設備の管理
   運営との関連の明らかでない試験研究費は接続原価から除外される。また、
   保守費やユーザー営業部門等との共通費・間接費等の費用もコストドライ
   バを用いたABC手法などの導入により、接続との関連性を厳密に反映し
   て適正に帰属させる。

 (参考 長期増分費用アプローチの現時点での問題点)

   1.固定資産(特に設備)に対するフォワード・ルッキングなコスト・デ
    ータ入手の制約

   2.リアリティのある技術モデル作成経験の必要性

 (2)料金体系は、必要な設備・機能がアンバンドルされ、その料金が上記会
   計により区分されたコストデータを活用し、回線数、通話回数、通話分数
   等を単位として、費用発生の態様を考慮し適正に積算する。その算定の詳
   細については、郵政大臣が接続会計との連携を前提に接続料金の算定要領
   として定めることとする。

 (3)接続装置の使用料等の算定方式を見直す。
    現在、NTTが網使用料とは別個に他事業者から費用を回収しているネ
   ットワーク改造費用及び接続装置の費用については、上記2(2)のとお
   り、基本的な接続機能の提供に係るものは不可欠設備の原価に含め網使用
   料で回収する。その対象とならない部分についても、内部的に計算された
   創設費(機器購入費に取付費及び諸掛費を加えた額)に全社総体的な保守
   ・営業費比率を乗じて使用料を算定する現行方式(ユーザー料金算定要領
   B方式準拠型)を見直す。

  1.設計上の計算価格である創設費の内容及びこれに乗じる保守・営業費比
   率等の内容が不透明との指摘
    →客観性のある会計数値(償却費・保守費等)を個別に積み上げる。
    (ユーザー料金算定要領A方式準拠型に移行)

  2.(上記に伴い)耐用年数到来後は償却費相当額の年経費を減額する。

  3.例外的にB方式準拠型によらざるを得ない場合でも、保守費比率等は会
   社全体でなく接続会計をベースとし、償却費分についても上記3.と同様
   の扱いとする。

  4.(他事業者の資金事情に依存する面もあるが、)機器の(一括)買取り
   のオプションの用意を検討する。

 (4)独占的な不可欠設備運営の効率化促進とそのインセンティブ付与につい
   ては、郵政大臣が料金表・約款の認可に当たり特定事業者の不可欠設備運
   営の著しい不経済性により生じた費用を接続料金原価に算入しないよう努
   めるとともに、同設備の効率化によって生じた(所定の資本コストを上回
   る)利益の営業部門等及び他事業者への還元の方法についてのルールを定
   めることとする。

 (5)上記(1)から(4)をはじめ、接続料金の算定に必要な事項について
   は、接続会計との連携を前提として、郵政大臣が、接続料金の算定要領と
   して定めることとする。

 (6)なお、接続料金の一層の低廉化を実現する方策として米英において採用
   されている長期増分費用方式について、接続ルールの見直しの時期までに、
   郵政省において、事業者、有識者の参加や意見も得て、外国モデルの解析、
   設備に関するフォワード・ルッキングなコスト・データの収集、技術モデ
   ルの構築等の作業を行うこととし、ルール見直時にその扱いを決定するこ
   ととする。
 5 個別問題の検討 
 (1)不可欠設備の管理運営を接続料金原価の対象とする接続会計の導入によ
   り、営業費は原則的に接続料金原価に算入されないこととする。

 (2)試験研究費は、不可欠設備の管理運営との関連性が明確にされない限り、
   接続料金原価には算入されないこととする。

 (3)特定事業者のサービスの赤字については、原則として他事業者に負担を
   求めるべきではない。仮に、赤字負担に一定の合理性がある場合において
   も、負担の水準については、赤字解消に向けて経営改善努力を行うことを
   考慮して決定されるべきである。この原則とユニバーサル・サービスの範
   囲やコスト負担の議論とは別個に扱われるべきである。







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