報道発表資料のトップへ トップページへ戻る

第1部
1XY番号の有効利用方策について

1. 1XY番号の利用状況とひっ迫対策の必要性
1−1 利用状況
 電気通信番号の中で1から始まる3桁の1XY番号(X及びYは0〜9の数字)
は、桁数が短くダイヤルが簡単であり、1から始まるので特別なサービスであるこ
とを想起しやすいという特長を有している。このため、緊急通報用番号(110、
119)のように緊急性の高い通信に利用されるとともに、番号案内(104)や
故障受付(113)のためのオペレータの呼出し、時報(117)、天気予報(1
77)、災害用伝言ダイヤル(171)、発信電話番号の通知(186)・非通知
(184)の選択等、汎用的な用途に利用されている。また、事業者ごとの付加
サービス提供のための特定の用途にも多くの1XY番号が利用されている。

 この1XY番号については、電気通信番号に関する研究会でこれまでに二度検討
されている。
「電気通信ネットワークの発展に伴う番号の在り方に関する研究会」 (報告 :昭
和63年6月)では、
 ・ 公平性、番号容量を考慮し、完結型番号(アドレス指定)としての1XYは、
  なるべく使用しない。特に、地域系通信事業者が、番号利用の優位性を利用し
  て一部に営利目的に1XYを利用させること等は控えるべきである。
 ・ 緊急的(数秒の遅れも許されない)かつ公共的サービスには、例外的にアドレス
  指定として1XY(完結型)を使用する。
 ・ 1XYは、非完結型番号として地域系事業者網内のサービス選択に使用し、1
  XYの後にアドレス等の付加情報が続く形式で使用することが望ましい。
 等が提言されている。

 また、「電気通信の高度化のための番号の在り方に関する研究会」(報告:平成
7年5月)では、利用方法の指針として、社会的影響が大きいもの、全事業者共通
のサービス番号等の予備、プレフィックスの予備、番号空間拡大用に利用する共通
使用空間と、網サービスの選択・制御、オペレータサービス、網内情報提供サービ
ス、営業・保守サービスに使用する統一使用空間に分類すること等が提言されてい
る。

 1XY番号はこれらの提言に基づき使用されてきたが、CATV事業者、移動体事業
者等、1XY番号を使用することができるアクセス系事業者が増加したこと、事業
者の創意工夫による多様なサービスが提供されてきたこと等から、その使用が急速
に拡大しているのが現状である。

 表1−1は現在の1XY番号の利用状況であるが、事業者ごとに同じ用途に異な
る複数の番号を利用していることもあり、少数の事業者による特定のサービスのた
めの利用が35個、営業・料金案内のための利用が7個、試験・保守のための利用
が21個と多くの番号が使用されている。

           表1−1 1XY番号の利用状況
 表1−1 1XY番号の利用状況

1−2 ひっ迫対策の必要性
 1XY番号は、個数が100個しかない極めて希少な資源である。図1−1は1
XY番号の空き番号数の推移であるが、「電気通信の高度化のための番号の在り方
に関する研究会」(報告:平成7年5月)の時点では、利用されている番号の数は
45個であったが、近年、新たな用途への利用が進展しているため、現在利用され
ている個数は66個(試験・保守用のみとして利用されている番号を含む)に達し
ている。今後、事業者の創意工夫により新たな1XY番号の利用が進展すれば、3
年程度で番号の使用率が75%に到達し、ひっ迫した状況となる恐れがある。

 図1−1 1XY番号の空き番号の推移
          図1−1 1XY番号の空き番号の推移

 このため、将来にわたり多くの事業者が多くの利用者のために共通に利用するこ
とのできる1XY番号の空間を早急に確保する必要があり、早期に有限希少な1X
Y番号のひっ迫対策を含む有効利用方策について検討を行う必要がある。

2. 1XY番号の有効利用の観点から適当と考えられる用途
2−1 特徴と制約
  1XY番号は3桁程度で使用できる番号であるため、利用者にとって、覚えやす
い、ダイヤルしやすいという特徴がある。また、2から9までの数字で始まる市内
局番と異なり、1から始まる番号は特別なサービスであることを想起しやすいとい
う特徴がある。
 一方、1から始まる3桁の番号であるので、100個しかない希少な資源である
こと、3桁程度で100個程度の番号を確保できる代替可能な番号空間がないこと
が制約として挙げられる(図2−1参照)。
 1XY番号の特徴と制約をまとめると次のとおりとなる。

[特徴]
 ・ 桁数が短いので、覚えやすい、ダイヤルしやすい
 ・ 1から始まるので、特別なサービスであることを想起しやすい
[制約]
 ・ 1から始まる3桁であるので、100個しかない希少な資源である
 ・ 3桁程度で100個程度の番号を確保できる代替可能な番号空間がない

 図2−1 番号空間の利用状況
            図2−1 番号空間の利用状況

2−2 利用についての基本的な考え方
 1XY番号は2−1で記述したような特徴と制約を有することから、その利用に
当たっては、この特徴を最大限に活用する用途に利用されることが必要であり、ま
た、制約である有限希少な番号空間を利用するだけの優位性のある用途に利用され
る必要がある。

 すなわち、1XY番号の利用については次の二点を基本的な考え方とする。

・ 「桁数が短いので、覚えやすい、ダイヤルしやすい」、「1から始まるので
 特別なサービスであることを想起しやすい」という1XY番号の特徴を活用す
 る必要がある用途に利用する。
・ 代替可能な番号空間のない、有限希少な1XY番号空間に収容するため、1
 XY番号を利用する必要性が相対的に高い用途を優先する。

2−3 有効利用の観点から適当と考えられる用途
 1XY番号の利用についての基本的な考え方から、1XY番号を利用する具体的
な用途としては、番号空間が100個であることを考慮した上で、1XY番号を利
用する必要性が相対的に高い用途(優先度の高いもの)とそれ以外のものとに分類
することが適当と考えられる。以下では、優先度の高いものをA分類、それに準じ
るものをB分類とする。

2−3−1 A分類
 優先度の高いA分類として、1XY番号の特徴を活用する必要があると考えられ
る用途を抽出する。
 警察、消防等への緊急通報は一刻を争うものであり、桁数が短く、覚えやすい番
号とする必要がある。災害対応やプライバシー保護も公共性、安全性の観点から、
誰もが覚えやすい番号とする必要がある。
 また、番号案内、故障受付等、利用者が基本的な電気通信サービスを利用するに
当たって容易な認識が必要となるものも、覚えやすく、ダイヤルしやすい番号とす
る必要がある。
 さらに、既に3桁の統一番号として広く認識がなされている天気予報、時報、電
報受付については引き続き利用者の利便性を考慮する必要がある。
 この他に、異なるタイプの番号フォーマット、ネットワーク、サービスの選択を
可能にする指標であるプレフィックスを事業者共通で設定する場合に、覚えやす
く、ダイヤルしやすい番号とする必要がある。
 以上より、次の(1)、(2)、(3)、(4)の用途をA分類とし、その他の
用途に優先して利用できるものとする。

 A分類の用途
(1)緊急性、公共性、安全性の観点から重要な用途
 (例)・ 緊急通報(警察、消防)
    ・ 災害対応(災害伝言ダイヤル)
    ・ プライバシー保護対応(発信番号通知、発信番号非通知)
(2)基本的な電気通信サービスの利用に当たって容易な認識が必要となる用途
  (例)・ 番号案内、故障受付
(3)既に3桁の統一番号として広く認識がなされている用途
  (例)・ 天気予報、時報、電報受付
(4)事業者共通のプレフィックスとしての用途

2−3−2 B分類
 B分類はA分類に準じる用途であることから、上記のA分類の用途のための番号
を確保し得る範囲内で使用可能となるが、B分類の用途であっても、1XY番号の
利用についての基本的考え方に基づく必要があることから、これについて以下に検
討を行う。

2−3−2−1 1XY番号を使用する事業者について
 1XY番号は、事業者識別要素を付加せず短桁のメリットを生かすこととすれ
ば、加入者を直接収容する事業者がその加入者に対して提供するサービスに利用で
きるものである。
 加入者を直接収容する事業者以外の事業者による1XY番号の利用(すなわち、
加入者を収容する事業者が1XY番号により他の事業者へ接続し、その事業者が付
加サービスを提供する)については、1XY番号に事業者識別の要素を付加する必
要があり、1XY番号の短桁のメリットを損なうことになる。また、当該事業者に
は、付加サービスのための番号が別に用意されている。

 したがって、1XY番号は、加入者を直接収容する事業者のみがその直接収容す
る加入者に対して利用できることとすることが適当である。
 なお、この場合、直収の加入者を収容する中継事業者及び第二種電気通信事業者
もその直収加入者に対して1XY番号が使用可能となる。

 このように、加入者を収容する事業者からそれ以外の事業者へ接続して、その事
業者が付加サービスを提供する場合には1XY番号を利用しないこととしたが、加
入者を収容する事業者が1XY番号によりあるサービスを提供している場合に、そ
のネットワークに加入者を収容する他の事業者が相互接続して自社のサービスとし
て提供することが許容されるならば、その事業者が同一の1XY番号によりこれを
提供すること(図2−2参照)を可能とすることが適当と考えられる。

 B社が提供する1X1Y1の網内設備またはオペレータにA社が相互接続し、A
社のサービスとして加入者に対し、同じ1X1Y1番号で提供することを可能とす
る。

 図2−2 他事業者との接続による1XY番号の利用
       図2−2 他事業者との接続による1XY番号の利用

2−3−2−2 接続先を指定する番号としての利用について
 接続先を指定する番号としての1XY番号の利用とは、1XY番号をいわゆる短
縮アドレスとして利用することである(図2−3参照)。事業者個別にこのような
用途に使用した場合、1XY番号が急速に消費されることが考えられる。事業者共
通の短縮アドレスとした場合でも、多様な用途が考えられることから、1XY番号
の容量では不充分である。
 1XY番号は有限希少な番号空間であり、他の番号体系(0AB〜J、0AB0
等)で対応可能な用途には使用しないこととすべきであり、B分類の1XY番号
は、接続先を指定する番号としては利用しないことが適当である。

 図2−3 接続先を指定する番号としての利用
        図2−3 接続先を指定する番号としての利用

2−3−2−3 B分類の具体的な用途
 次にB分類の具体的な用途について検討する。
 加入者を直接収容する網で行われる処理としては、その接続形態から大きくオペ
レータへの接続と設備への接続に二分できる。
 ここで設備への接続とは、加入者交換機で単なる接続処理を行うことや、SCP
を利用したサービス制御、網内装置への接続処理等を含め、ネットワーク内の設備
全般をブラックボックスと考え、そこへのアクセスを意味する。
 このオペレータへの接続と設備への接続においてそれぞれ以下のような具体的な
用途が考えられ、それらについて1XY番号の利用の適否を検討することとする。

2−3−2−3−1 オペレータへの接続

2−3−2−3−1−1 オペレータを介した呼接続
 オペレータを介した呼接続とは、単にオペレータに営業、料金等に関する問い合
わせを行うものではなく、事業者のオペレータへ接続した後に、一般加入者等への
呼接続を行うものを意味する。例えば、コレクトコール、クレジットコールがこの
例である。
 図2−4にオペレータを介した呼接続の例を示す。
 これについては、接続先、課金方法等の申告をオペレータに対して行うという処
理の繁雑さを考慮した場合、1XY番号の使用は許容されるものと考えられる。

 図2−4 オペレータを介した呼接続の例
         図2−4 オペレータを介した呼接続の例

2−3−2−3−1−2 オペレータへの問合せ
 オペレータへの問合せは、用途を問わず事業者のオペレータに接続して処理が完
結するものを意味する。
 図2−5にオペレータへの問合せの例を示す。
これは2−3−2−2の接続先を指定する番号としての利用とも考えられ、一般番
号や着信課金番号での接続が可能であるため、1XY番号の使用は必須ではないと
考えられる。
 但し、営業案内や料金案内は従来より利用者利便の確保のために短桁で使用され
ており、当面利用可能とすることが適当と考えられる。

 図2−5 オペレータへの問合せの例
          図2−5 オペレータへの問合せの例

2−3−2−3−2 設備への接続

2−3−2−3−2−1 呼接続に関する付加的な処理
 呼接続に関する付加的な処理とは、一般加入者への呼接続を行う際に、信号を追
加する等、網内で付加的な処理を伴う接続を意味する。例えば、A分類の例ではあ
るが184(発信番号非通知)がこれに該当し、本来の呼接続のための0A〜J等
のダイヤルの前に1XY番号をダイヤルすることで、呼接続に関する付加的な処理
を行うものである。
  図2−6に呼接続に関する付加的な処理の例を示す。

 呼接続に関する付加的な処理では、1XY番号の後に0A〜J等の10桁程度の
長桁が続くことが一般的であり、1XY番号の短桁のメリットを生かす必要がある
ことから、1XY番号の使用が適当であると考えられる。

 なお、着信側の利用者が直前に接続要求のあった発信者に対し、ネットワークで
保持している発信者の番号情報を利用して1XY番号のダイヤルのみ(0A〜J等
のダイヤルを行わない)で呼び返す場合(図2−7参照)等、接続先が固定的では
なく、1XYだけのダイヤルにより呼接続が行われるものも、呼接続に関する付加
的な処理の一形態とみなすこととする。

 図2−6 呼接続に関する付加的な処理の例
         図2−6 呼接続に関する付加的な処理の例

 図2−7 呼接続に関する付加的な処理の一形態とみなされる例
    図2−7 呼接続に関する付加的な処理の一形態とみなされる例

2−3−2−3−2−2 呼接続
 呼接続とは、1XY番号を短縮ダイヤルとして一般加入者等への接続に利用する
ものである。図2−8に呼接続の例を示す。
 これは2−3−2−2の接続先を指定する番号としての利用に該当し、一般番
号、着信課金番号等での接続が可能であるため、1XY番号の使用は適当ではない
と考えられる。

 図2−8 呼接続の例(仮に1XYを使用した場合)
       図2−8 呼接続の例(仮に1XYを使用した場合)

2−3−2−3−2−3 特定者向け情報の蓄積・再生
 特定者向け情報の蓄積・再生とは、1XY番号の後に特定者を識別するための情
報を付加して網内の蓄積・再生装置に接続し、音声、テキスト、データ等の情報を
蓄積するものまたはその蓄積情報を再生するものを意味する。
 図2−9に特定者向け情報の蓄積・再生の例を示す。

 特定者を識別するための情報として0A〜J等の端末系伝送路設備の番号を利用
する場合には、ダイヤル桁数が長くなることから、2−3−2−3−2−1 の呼接
続に関する付加的な処理と同様に1XY番号の使用は適当と考えられる。

 なお、着信者が話中の時や電源をオフにしている時に発信者が蓄積した音声情報
等を、着信者が1XY番号だけ(後に端末系伝送路設備の番号が続かない)で再生
することについては、特定者(この場合は着信者)向けに蓄積された情報を再生す
る場合であり、自分の0A〜J等の番号のダイヤルを省略したものとみなすこととす
る。

 図2−9 特定者向け情報の蓄積・再生の例
         図2−9 特定者向け情報の蓄積・再生の例

2−3−2−3−2−4 サービス条件の設定
 サービス条件の設定とは、加入者が契約しているサービス条件をプリセットで交
換機等に設定するものを意味する。例えば、着信転送サービスで転送のオン、オフ
の設定、転送が起動するまでの呼び出し時間の設定などがこれに該当する。
 図2−10にサービス条件の設定の例を示す。

 サービス条件の設定は、加入者データのサービス条件を利用者が直接変更するも
のである。このような用途は通常のサービスとは異なり、特別な用途であることが
容易に認識できることが望ましい。したがって、サービス条件の設定に1XY番号
を使用することは適当であると考えられる。

 図2−10 サービス条件の設定の例
          図2−10 サービス条件の設定の例

2−3−2−3−2−5 その他
 設備への接続により行われる処理のうち、呼接続に関する付加的な処理、呼接
続、特定者向け情報の蓄積・再生、サービス条件の設定の何れにも該当しないもの
であり、例えば、試験用に使用されるもの、不特定の加入者を対象として網内情報
提供を行うものなどがこれに該当する。これらは基本的に他の番号でも対応可能で
あり、1XY番号の使用は必須ではないと考えられる。
 図2−11に網内情報提供の例を示す。

 なお、将来、呼接続に関する付加的な処理、特定者向け情報の蓄積・再生、サー
ビス条件の設定のいずれにも該当せず、1XY番号の使用が必須となるものが現れ
た場合は、B分類として1XY番号を使用することのできる用途を見直すこととす
る。

 図2−11 網内情報提供の例
            図2−11 網内情報提供の例

2−3−2−3−3 B分類の1XY番号の用途
 以上から、B分類の1XY番号の用途を整理すると表2−1のようになる。

          表2−1 B分類の1XY番号の用途
 表2−1 B分類の1XY番号の用途
 ○は利用可、×は利用不可

(注1) 他の事業者が1XY番号による処理を行っている場合に、当該処理を行
    うオペレータまたは設備に接続して役務を提供することが許容されるなら
    ば、同一の1XY番号により処理を行うことを可能とする。
(注2) 営業・料金案内については、従来より利用者利便確保のため短桁で使用
    されており、当面使用可とする。
(注3) 接続先が固定的ではなく、1XYだけのダイヤルにより呼接続が行われ
    るものを含む。
(注4) 蓄積時に1XYの後に端末系伝送路設備を示す番号等の長桁の番号を指
    定する場合に限る。なお、着信者に向け蓄積された情報をその着信者が再
    生する時には0A〜J等の番号のダイヤルを省略できることとする。

2−3−2−4 番号空間の拡張について
 B分類として多様な用途に使用可能とする場合、できる限り多くのサービスが収
容できるようにすることが必要である。このため、4桁化等によりできるだけ番号
空間を拡大して使用することとし、番号利用の高密度化を図ることが望ましい。

2−3−3 「市外局番+1XY」の使用について
 現在、市内局番の第1桁が1であるものはなく、「市外局番+1XY」の形の番
号空間は、市外局番+177(天気予報)以外は空きの状態である。
 今後の多様な番号需要に備える必要があるため、これらの番号空間を不用意に使
用することは、番号の有効利用の観点から望ましくないと考えられる。
 このことから、「市外局番+1XY」の形の番号空間については、天気予報(1
77)についてのみ当面使用できることとし、それ以外を保留しておくことが適当
と考えられる。
 今後、市外局番を指定する必要があるサービスが考えられた際には、例えば、
「1XY+市外局番」の利用が考えられる。

3 事業者間での1XY番号の統一の意義・必要性と利用のための基本的な方針
3−1 統一の意義・必要性
 同様のサービス・類似のサービスに対して事業者間で番号を統一することのメリ
ットとしては、サービスを提供する事業者にかかわらず同じ番号であるので、利用
者の間で認識を共有できる(社会経済生活において共通認識を醸成することができ
る、常識化することができる)こと、事業者を変更した場合に利用者が認識を変更
する必要がないことなどが挙げられる。最近では、携帯電話等で事業者を変更する
ことが少なくないことや、平成12年度を目途に一般電話、ISDNの番号ポータ
ビリティの実現が検討されていることを勘案するとそのメリットは大きいと考えら
れる。
 一方、デメリットとしては、統一の度合いによっては、サービスの内容について
事業者による創意工夫の余地に制約を与える可能性があることが挙げられる。
 したがって、事業者間での番号の統一については、これらのメリット、デメリッ
トを充分に勘案する必要がある。

 図3−1 番号の統一のメリット・デメリット
        図3−1 番号の統一のメリット・デメリット

3−2 利用のための基本的な方針
 A分類については、広範囲の利用者により容易に認識できることが必要であるこ
とから、1XYの3桁を事業者間で統一して使用する必要がある。また、その3桁
の番号に設定する用途については限定的であることが望ましい。
 なお、1XYの後にさらに追加ダイヤルを必要とするものについては、そのダイ
ヤル手順は、利用者の利便性を考慮の上、必要に応じて事業者間で調整されること
が望ましい。

 一方、B分類については、利用者の利便性及び事業者の創意工夫の余地の確保の
バランスをとる観点から、3桁目までを番号ごとに大枠で用途設定し、提供する
サービスの内容が大枠でその用途に適合している場合は、その番号を使用すること
が適当と考えられる。
 また、2−3−2−4で記したように、B分類については、4桁化等によりでき
るだけ番号空間を拡大して使用することとし、4桁目以降は事業者の創意工夫によ
り使用することが適当と考えられる。


4.  今後の1XY番号の有効利用方策
4−1 1XY番号の利用指針
4−1−1 利用指針
 2−3 有効利用の観点から適当と考えられる用途、及び、3−2 利用のための
基本的な方針をもとに「これまでの利用指針(*)」を見直す。
 (*)「電気通信の高度化のための番号の在り方に関する研究会報告書(平成7
年5月)」による利用指針(同報告書の改訂手続きに従って7回改訂されている)

 将来のA分類の番号空間を確保するため、「これまでの利用指針」において「保
留」となっていた番号を引き続き「保留」とする。また、「これまでの利用指針」
で限定されていた用途を持つ番号のうち、今回、その用途がA分類またはB分類に
分類された番号については、次のとおりとする。

・ 用途がA分類に分類された番号は、緊急通報等の重要な番号であるととも
に、既に多数の利用者に認識され、利用されていることから、同じ番号をその用
途に継続して利用することとし、適切な用途名を設定する。

・ 用途がB分類に分類された番号は、次のとおりとする。
1) 既に多数の事業者で同じ用途に使用されている番号については、今後、他の
  事業者での利用も考えられ、利用者利便の観点から、その用途名を設定す
  る。
2) 限定的な用途名が設定され、現状で提供事業者が少なく、今後もその用途で
  は提供事業者の増加が見込まれない番号については、番号の有効利用の観点
  から、その用途を包含する大枠の用途名に変更する。
3) その用途としての現在の利用が将来適当ではなくなる予定(例:NTTの再
  編成)の番号については、将来のA分類のための番号空間を確保する観点か
  ら「保留」に変更する。
4) 「営業/料金案内」については、「これまでの利用指針」で6つの番号が割
  り当てられているが、各社多くても3個しか利用していないという実際の利
  用状況に鑑み、3つの番号に集約する。他の3つの番号は別用途名に変更す
  る。

 また、「これまでの利用指針」の番号のうち、今回その用途がA分類、B分類に
分類されなかった番号については、1XY番号としての利用が不適切であると考え
られ、次のとおりとする。

・ 「試験に利用」とされていた番号については、将来のA分類の番号空間の確
保の観点から、「保留」に変更する。(ただし、「111」をB分類とし、当面
は試験用として使用可とする。)
・ それ以外の用途(網内情報提供サービス等)の番号については、別用途名に
変更する。


 なお、別用途名に変更する番号については、事業者の創意工夫により今後新たな
利用が進展すると考えられる「サービス条件の設定」及び「呼接続に関する付加的
な処理」に用途名を変更することとする。

 さらに、次の新たな利用方法を考慮に入れる。

・ 海上保安機関への緊急通報用の番号として新たな1XY番号の使用が適当と
される場合には、緊急性・公共性・安全性の観点から重要な用途と考えられるこ
とから、A分類の1XY番号とする。具体的な番号としては、これまで11Y系
列で「110」が警察機関への緊急通報、「119」が消防機関への緊急通報に
使用されていることから、利用者へのわかりやすさの観点で、同じ11Y系列で
保留となっている「118」を使用することが適当と考えられる。
・ 「優先接続に関する研究会報告書」において、固定優先接続を選択した利用
者が登録事業者以外の事業者に接続したい場合には、通話ごとに「1XY」+事
業者識別番号をダイヤルすれば、その事業者に接続される旨記述されている。固
定優先接続の解除という用途の重要性を勘案し、この用途にA分類としての1X
Y番号を使用することとする。具体的な番号としては「122」が適当と考えら
れる。(詳細は第2部参照)
・ 複数の移動系事業者において利用されると考えられる「ドライブモード(用
語の注釈参照)」、「位置情報利用(用語の注釈参照)」、「端末切替え(用語
の注釈参照)」等に対応するため、B分類としての1XY番号を設定する。た
だし、移動系以外の事業者での利用を考慮し、大枠の用途名を設定する。

 上記の方法をもとに、「これまでの利用指針」を見直し、「新たな利用指針」を策
定すると図4−1〜図4−10のとおりとなる。
 なお、「新たな利用指針」の表中で、【 】は主たる用途が【 】の中の用途であ
る場合はその欄の番号とすることを示す。ある事業者が【 】の中の用途を使用し
ない場合は、その番号を大枠の利用方法に沿った別用途で使用することを可能とす
る。

 今後、新たに1XY番号を使用するに当たっては、この「新たな利用指針」をも
とに使用することとなるが、B分類に該当する用途の番号の使用に際しては、次の
点に注意することが適当である。

・ 複数の用途に共通する処理
 複数の用途に共通する処理を行う場合は、その処理のために独立した1XY番号
を使用することも、用途ごとに使用する1XY番号の中でその処理を行うことも考
えられるが、その処理のために独立した1XYを使用した方が利用者にわかりやす
い理由がある場合を除いては、用途ごとに使用する1XY番号の中でその処理を行
う方が利用者にとっては望ましい。

・ 複数の用途を利用するサービス
 複数の用途を利用するサービスを提供する場合にどの用途の番号を利用するかに
ついては、そのサービスが有する最も主要な用途が何かにより、その用途に該当す
る番号を利用することとする。

 図4−1 1XY番号の利用指針(1)
          図4−1 1XY番号の利用指針(1)

 図4−2 1XY番号の利用指針(2)
          図4−2 1XY番号の利用指針(2)

 図4−3 1XY番号の利用指針(3)
          図4−3 1XY番号の利用指針(3)

 図4−4 1XY番号の利用指針(4)
          図4−4 1XY番号の利用指針(4)

 図4−5 1XY番号の利用指針(5)
          図4−5 1XY番号の利用指針(5)

 図4−6 1XY番号の利用指針(6)
          図4−6 1XY番号の利用指針(6)

 図4−7 1XY番号の利用指針(7)
          図4−7 1XY番号の利用指針(7)

 図4−8 1XY番号の利用指針(8)
          図4−8 1XY番号の利用指針(8)

 図4−9 1XY番号の利用指針(9)
          図4−9 1XY番号の利用指針(9)

 図4−10 1XY番号の利用指針(10)
         図4−10 1XY番号の利用指針(10)


用語の注釈
 「新たな利用指針」の表中で使用される用語の注釈を次に示す。

143 ドライブモード
 着信した呼に対して、自動車運転中である旨のガイダンスを送出するよう設定す
るもの。留守番電話への録音、着信転送等を行うよう設定する場合もある。

148 通知要請
 発信電話番号を通知しない呼に対して、着側加入者の要望により、番号を通知し
ないと接続できないことをアナウンスするよう設定するもの。

155 位置情報利用
 端末の位置情報を利用するサービスの条件設定をするもの及び呼接続する際に位
置情報を利用する、しないの設定を行うもの。

164 端末切替え
 複数の端末のうち、いずれの端末を用いて発着信を行うかを設定するもの。

169 プロトコル変換
 データ通信において発信側、着信側で使用するプロトコルが異なる場合に、ネッ
トワークにおいて変換を行うもの。

181 ローミング
 移動系端末が他社のサービスエリア内でも通話可能なように設定を行うもの。

4−1−2 利用指針の効果
「新たな利用指針」において分類ごとの番号数は、表4−1のようになる。

      表4−1 「新たな利用指針」による分類ごとの番号数
A分類 13
B分類 40
保留 47
合計100

 現在、各事業者(グループ)で使用している分類ごとの番号数は表4−2のとお
りであり、「新たな利用指針」においては、今後各事業者の創意工夫により新たな
利用が進展すると考えられるB分類の用途に対して充分な番号数が確保されている
と考えられる。

      表4−2 事業者(グループ)ごとの現在の使用番号数

NTTTTNetタイタスDoCoMoIDODDIセルラー
A分類104610108
B分類203214109
合計3078242017


デジタルホンツーカーセルラーデジタルツーカーDoCoMo(PHS)DDIポケットアステル
A分類886779
B分類686649
合計141612131118

 また、今後B分類については、大枠での用途設定、4桁化等での利用により、番
号の効率的利用が図られ、使用領域の拡大が抑えられると考えられることから、図
4−11に示すように、広範囲の利用者による認識が必要であり、事業者間で統一
して利用するA分類の用途について当分の間は充分な番号を確保できるものと考え
られる。

 図4−11 1XY番号の空き番号数の推移
         図4−11 1XY番号の空き番号数の推移

4−2 利用指針に適合しない既使用番号の扱い
 「新たな利用指針」に適合しない既使用番号は、原則的に移行することが適当で
あると考えられる。
 しかしながら、現に多数の利用者が利用している番号を、直ちに移行することは
かえって利用者の利便性を損なうおそれがあることから、1XY番号の利用指針に
適合しない既使用番号の扱いについては以下のとおりとする。

(1) 1XY番号の用途として不適当となったものについては、可能な限り速
   やかに移行に着手することとする。(注1、注2)

(2) 1XY番号の用途として適当と考えられるが、「新たな利用指針」と異
   なる番号を使用しているものについては、当面継続して使用することを可
   能とするが、今後、利用者の番号統一への要望、番号の有効利用等の観点
   から必要が生じた場合、移行を行う。

(注1)
 試験用に使用されているもののうち「新たな利用指針」で保留扱いになってい
る番号については、当面継続して使用することを可能とするが、今後A分類の用
途に割当てられた場合には、速やかに移行する。

(注2)
 網内情報提供に使用されているものについては、当面継続して使用することを
可能とするが、今後、利用者の番号統一への要望、番号の有効利用等の観点から
必要が生じた場合、移行を行う。

4−3 利用指針を変更する場合の手続き
 今回策定した「新たな利用指針」は、利用者にとって重要なA分類の用途を含む
利用指針であることから、今後、これを変更するに当たっては、利用者、有識者、
事業者等に幅広く意見を聴取した上で変更することが適当である。

 このため、事業者が利用者の意向を踏まえた変更案を郵政省に連絡し、郵政省が
事業者、学識経験者、利用者の意見を幅広く聞いた上で利用方法の決定を行うこと
が適当である。(図4−12)

 図4−12 「新たな利用指針」の変更手続き
        図4−12 「新たな利用指針」の変更手続き

参考 #または*から始まる番号の利用の考え方について

1 これまでの番号研究会での検討結果
 「電気通信の高度化のための番号の在り方に関する研究会報告書」(平成7年5
月)において次のとおり記述されている。

 #で始まる番号は、現在NTTとNTTドコモの2社が「#ABCD」の形態
で提供する着信短縮ダイヤルサービスで使用されているのみである。このサービ
スで使用されている番号帯域は、次のようになっている。
#0000〜#6999  空番号領域
#7000〜#7999  NTT/NTTドコモ使用領域(地域ごとに共通)
#8000〜#9999  NTT/NTTドコモ使用領域(全国共通番号)

  1XY番号は完結型ダイヤルのアドレスとして使用することが(原則として
)禁じられており、その代替として#番号の一部(当面7000〜9999)を
短縮アドレスとして利用することが望ましい。#番号は契約者である着信者の意
向に従って、物理番号、ルーチング情報に展開されることから、同じ#番号はで
きる限り同じアドレスに接続されることが望ましい。

 このことから、当面は、事業者間で調整をしつつ利用できることとするが、将
来において、需要が拡大することを想定し、並行して#番号の利用の在り方を検
討することが望まれる。

 *系番号は、現状、主に発信加入者の利便性向上のために使用されており、そ
の利用方法も多種多様である。1XY番号、#番号などで一応の考えられる付加
的なサービスがまかなえることから、*系番号は今後とも各事業者が独自に加入
者の利便性を図るために活用することが望ましい。

2 現在の使用状況
 平成9年度末現在、NTTの一般加入電話60,381千加入のうち、#、*か
ら始まる番号を使用できるPB回線は28,610千回線(全体の47%)のみであ
る。
 一方、ISDN,携帯・自動車電話及びPHSにおいては、全端末が#及び*から始
まる番号を使用できる状態にある。
 現在の各事業者ごとの#及び*から始まる番号の使用状況は表1−1のとおりと
なっている。

 #から始まる番号については、上記番号研究会での提言どおり、#7000〜#
9999までの番号を使用している。また、その用途については、上記番号研究会
での提言に沿った形の利用、即ち、#から始まる番号の契約者である着信者が複数
(あるいは一つ)の事業者に契約して、ある一つの#から始まる番号をその着信者
への短縮アドレスとして利用する形態のものが多い。
 なお、#から始まる番号の使用については、#から始まる番号を利用する事業者
間で情報を交換することにより行われている。

 *から始まる番号については、*から始まる2桁の数字で加入者が個別に登録す
る短縮ダイヤルサービスに利用されている(参考)他、特に移動系においては様々
な用途に使用している事業者もある。また、*に続く番号も0〜9まで利用されて
いる。

(参考)平成9年度末現在のNTTの短縮ダイヤルサービスの利用回線は777千
回線であり、前年度より178千回線減少している。

         表1−1 事業者毎の#及び*番号の使用状況
 表1−1 事業者毎の#及び*番号の使用状況

3 番号利用に当たっての前提条件等
  #または*から始まる番号の利用においては、以下のような条件が前提とな
 る。

・ 1−2で示したように、平成9年度末現在、NTTの加入電話の53%はDP回
 線であり、これらについては、#、*から始まる番号は使用できない。一方、移
 動体の端末においては全て#、*から始まる番号を使用できる。
・ 現在、#、*は網間インタフェース(ISUP)では規定されておらず、加入者
 を収容する事業者の網内に閉じた利用しかできない。
・ ITU−T勧告E.331では、ユーザとターミナルの間のインタフェースとし
 て、#はサブアドレスを含むダイヤル番号の終了を示し、*はサブアドレスの開
 始を示すとされており、2桁目以降に#、*を使った場合、それぞれ終了符号、
 区切符号と認識する端末がある。

 なお、海外での利用例として以下のものが挙げられる。
・ 米国では、××#、*××の体系でキャリア間共通の付加サービスが提供されて
 いる。
・ GSMでは、#、##で始まり#で終わるダイヤル手順の番号、*、**で始ま
 り#で終わるダイヤル手順の番号を付加サービス制御に利用している。また、c
 dmaOne方式では、*から始まる番号を付加サービス制御に利用している。

4 #または*から始まる番号の利用の考え方
 #または*から始まる番号は依然として一般固定電話の半数強で使用できないこ
とから、1XY番号のA分類のような全ての利用者が利用するような用途に利用す
るこはできない。また、3で述べたように利用に当たっては一定の条件が前提とな
る。
 今回、#から始まる番号及び*から始まる番号の将来的な利用方策について、事
業者から意見を聴取したが、現時点では明確な番号空間の利用方法の特定には至ら
なかった。したがって、当面の間は、「電気通信の高度化のための番号の在り方に
関する研究会報告書」(平成7年5月)に準拠した利用を継続することが適当であ
ると考えられる。

 すなわち、#から始まる番号は、複数の事業者が一の契約者に対して同一の短縮
番号を設定し、加入者から当該契約者への「呼接続」を行う場合に利用することと
する。ただし、一の事業者が自網の加入者からの接続のみのために#から始まる番
号を自ら利用することは、利用可能な#から始まる番号の数に限りがあることから
望ましくないと考えられる。
 図1−1に一般的な接続形態を示す。
 なお、#ABCDの形態でA=7〜9、B、C、D=0〜9の数字で使用可能と
する。

 図1−1 #ABCDの一般的な接続形態
         図1−1 #ABCDの一般的な接続形態

 また、*番号は、当面、各事業者が独自に加入者の利便性を図るために活用する
ことが適当である。その際、*ab(c・・・)の形態で、a、b、c、…を数字
として使用することとする。

 しかしながら、#または*から始まる番号は、電気通信サービスが多様化してい
く中で将来的には有用な番号空間として利用する必要が生じることが考えられる。
したがって、今後、国際的な使用状況や、ISDN回線、PB回線、移動系端末
等、#及び*が使用可能な回線の普及動向を勘案し、必要となった段階で利用方
法、既使用番号の移行等について検討を行うことが適当である。
戻る



トップへ