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知らないうちに引っかかっているかも!?ダークパターンの罠

インターネットは、学習や交流、買い物など私たちの生活を便利にしてくれる一方で、利用者を不利な選択へ誘導する「ダークパターン」という問題も抱えています。
本コラムでは、ダークパターンの基本を整理し、ダークパターン対策協会が制作した動画教材と、それを教育現場で活用した授業実践を紹介します。

ダークパターンとは?

ダークパターンとは何か?

ダークパターンとは、事業者がWebサイトやアプリの表示や画面設計によって、利用者が必ずしも望まない選択をしてしまうよう意図的に誘導する手法のことです。
「今だけ」「簡単」「無料」といった言葉に安心して進んだ結果、定期購入になっていたり、解約が極端に難しかったりするケースが代表例です。
特に子どもは、表示内容を疑う経験が少ないため、知らないうちに不利益を受けてしまうおそれがあります。
ダークパターンは、消費者の判断力や注意力につけ込む問題のある手法として、国内外で社会的な課題となっています。

典型例 7つの大分類と具体例

ダークパターンにはさまざまな手口がありますが、代表的な整理としては、OECD(経済協力開発機構)が提唱する7つの大分類と24類型があります。
例えば、実際よりも人気があるように見せる「緊急性(在庫残りわずか表示)」、気づかないうちに定期契約をさせる「こっそり(隠れた定期購入)」、個人情報等を強制的に登録させる「行為の強制(登録の強制)」、解約を意図的に複雑にする「妨害(解約しにくい)」などです。
これらは単独で使われるだけでなく、複数が組み合わさることで、より利用者が冷静に判断することを難しくしたり、より事業者側に有利に誘導されやすくしたりしています。

OECDが提唱する7つの大分類と24類型
大分類 類型
1.行為の強制 登録の強制 登録を強制される又は登録が必要だと誤解させられる
開示の強制 だまされて又は強制されて、望ましい範囲を超えて個人情報を共有してしまう
アドレス帳吸い上げ 既存のユーザーを操って、他のユーザーの情報を引き出す
ゲーミフィケーション サービスの一定の機能が、サービスを繰り返し利用することでしか獲得できない
2.インターフェース干渉 隠された情報 重要な情報が視覚的に見えにくいよう隠されている
偽の階層構造 企業が望む設定や製品バージョンに視覚的な優位性が与えられている
事前選択 企業が望むオプションがデフォルトで選択されている
誤解を招く価格表示 誤解を招く又は虚偽の参照価格からの割引価格という形で価格を表示
ひっかけの質問 意図的に誤解を招くような設問(二重否定等)
偽造広告 広告だと明確に分からないものをクリックさせる
恥の植え付け 消費者の感情を煽り、操り、消費者に特定の選択肢を選ばせる
3.執拗な繰り返し 執拗な繰り返し 企業が望むことを行うよう、繰り返し要請する
4.妨害 解約しにくい 登録解除やオプトアウトを難しくする
価格比較困難 価格比較を意図的に難しくする
不滅アカウント アカウント削除を困難または不可能にする
中間通貨 直接の価格表示ではなく、特殊なポイントや仮想の通貨で購入させる
5.こっそり こっそりカートへ 意図しないアイテムを自動的にカートに追加
隠れたコスト 購入直前に隠れた手数料を追加
隠れた定期購入 1回限りの購入に見せかけて、定期購読の契約に目立たせずに加入させる
釣り餌と交換 当初宣伝していた商品又は価格と異なるものを提案
6.社会的証明 アクティビティメッセージ 今現在、〇人のユーザーが見ています、といった他の消費者の行動についての表示
嘘の口コミ ユーザーレビューを誇張して、又は嘘の表示
7.緊急性 在庫僅か 在庫の数が限られていること、人気であることの表示
カウントダウンタイマー オファーや割引について、まもなく期限が切れる表示

気を付けるポイントとNDD認定マーク

ダークパターンから身を守るために大切なのは、「すぐ決めない」「表示を疑う」「条件を確認する」姿勢です。特に料金、契約期間、解約方法は必ず確認しましょう。
また、ダークパターン対策協会では、誠実なWebサイトを第三者の立場で審査・認定する「NDD認定制度」を進めています。
NDD(Non-Deceptive Design)は、利用者が誤解なく判断できる表示や導線が確保されていることを意味しており、「ユーザーの誤解を招かない画面設計」や「信頼できるサイトであることをユーザーに伝える表示の工夫」といった、
DIGITAL POSITIVE ACTION が掲げる「SNS・デジタルサービスにおけるサービス設計上の工夫」「信頼性の高い情報にかかる表示上の工夫」を、民間の立場から具体化する取り組みの一つです。
このような取り組みを知り、活用することも、安全なインターネット利用につながります。

  • NDD認定マーク画像
    NDD認定マーク

小・中・高校生向け動画教材紹介

小学生向け動画(全3本)

小学生向け動画では、身近な広告やゲームを題材に、ダークパターンをわかりやすく解説しています。
「No.1広告」「今だけ90%オフ」「在庫残りわずか」といった表示が本当に正しいのかを考える内容や、ゲーム内課金でついお金を使ってしまう仕組み、無料のつもりが定期購入になってしまうケースなどを、短く親しみやすい映像で学べます。
オンラインでの買い物やゲームの課金などを、これから経験し始める段階で、「立ち止まって考える力」を育てることを目的としています。

  • 動画教材の1シーン 女性と子供の写真
  • 動画教材の1シーン 注意クイズ ダークパターンはどこにあったかな?と視聴者に問いかけている様子
小学生向け動画

中学生向け動画(全2本)

中学生向け動画では、会員登録や個人情報の入力をテーマにしています。
必要以上の情報提供を求められる場面や、気づかないうちに同意させられる仕組みを具体例で紹介し、そうした罠にかからないような眼を養う重要性について説明しています。
また、定期購入や解約を分かりにくくしている事例にも触れ、「同意する前に何を確認すべきか」を整理します。
自分の情報やお金を守る視点を持つことで、主体的なデジタル利用につなげます。

  • 動画教材の1シーン 左右に2人の女性の横顔、中央にWebサイトを開いているスマートフォンがあり、「●●愛用!大人気コスメ」という広告が表示され、それをタップしている様子
  • 動画教材の1シーン 怪しいメールが毎日のように... というテキストが上に、下に毎日勧誘や大量のメールが届いて困っている女性
中学生向け動画

高校生向け動画(全3本)

高校生向け動画では、より実社会に近いテーマを扱います。
「隠された定期購入」「後から追加される手数料などの隠されたコスト」「アクションの強制」「偽りの希少性」など、実際のネット取引で起こりやすい事例を紹介します。
成年年齢引き下げにより、高校生自身が契約主体になる場面も増える中、判断力を高める教材として活用されています。

  • 動画教材の1シーン ダークパターン事件ファイル というテキスト
  • 動画教材の1シーン 中央に商品、期間限定、お試し1000円と書かれた吹き出しが表示
高校生向け動画

埼玉県高校でのダークパターン対策授業

授業実施の背景とねらい

埼玉県立三郷北高等学校では、インターネット上の広告やサービスの中に潜む「ダークパターン」について、高校生の段階から正しい知識を身につけ、自ら考えて判断する力を養うことを目的とした授業が行われました。
生徒の中には、不当表示や不適切な誘導に「気づいたことがない」と感じているケースもありますが、実際には、知らないうちに影響を受けている可能性もあります。
そこで本授業では、ダークパターンを単なる知識として学ぶのではなく、「どこが問題なのか」「なぜ注意が必要なのか」を具体的な事例から考え、トラブルを未然に防ぐ視点を身につけることをねらいとしました。

  • 授業中の写真
    授業の様子

動画を活用した授業の流れ

ミニ授業は、ジグゾー法を用いて行われました。
まず生徒をA・B・Cの3つのグループに分け、それぞれが異なるダークパターンの動画を視聴します。
次に、A・B・Cそれぞれの生徒が一つのテーブルに集まるように席替えを行い、自分が視聴した動画の内容を、他のグループの生徒に説明する形でミニ授業を実施しました。「教え合う」プロセスを通じて、生徒は内容を自分の言葉で整理し、他者に伝える必要があります。
ワークシートも併用しながら、「どこが問題なのか」「なぜ危険なのか」を自分事として考える工夫がなされていました。

  • ジグゾー法によるグループワーク中の写真
    ジグゾー法によるグループワーク

生徒・教員の声から見える学びの成果

授業後のインタビューでは、生徒から「ダークパターンという言葉も内容も初めて知ったが、具体例を通して理解できた」「困ったときは、親や先生、国民生活センターなどに相談したい」といった声が聞かれ、身近な危険に気づき、相談先を意識するきっかけになったことがうかがえました。
校長は、ジグゾー法によって理解が深まり、高校生を狙ったトラブル防止につながることを期待すると評価しました。
授業担当教諭も、実例を通じて危険を見抜く力が育った点を成果として挙げ、その上で、「まずは危険を見抜く目を持つこと、そして188への相談やNDD認定制度を知り、適切に行動できる力を身につけてほしい」と期待を寄せました。

結び

ダークパターンを知り、正しく向き合うことは、デジタルを「怖がる」ためではなく、安心して前向きに活用するための第一歩です。
動画教材と学校教育を組み合わせた今回の取り組みは、生徒一人ひとりが考え、判断し、行動する力を育む実践例といえるでしょう。こうした学びを通じて、安心・安全なデジタル社会を支える輪が、これからも広がっていくことが期待されます。