5G(ファイブジー)でどんなことができるの?

携帯(けいたい)電話に代表される移動(いどう)通信システムは大きく進化しています。2020年3月から商用開始された5G(Generation:ジェネレーション)(第5世代移動通信システム)で、どのように社会が変わるのか、8つの分野で見ていきましょう。

(1)農業

農業分野では、ロボット、AI(エーアイ)(人工知能(ちのう))、IoT(アイオーティー)(モノのインターネット)等の先端技術(せんたんぎじゅつ)を活用して「スマート農業」に向けた取組を進めています。これによって、作業を自動化し人手を省いたり(作業の自動化)、作業の記録をデジタル化・自動化し、熟練(じゅくれん)者でなくても作業できるようになったり(情報(じょうほう)共有の簡易化(かんいか))、農作物の生育や病虫害を予測(よそく)し、高度な農業経営(けいえい)ができるようになったり(データの活用)などの効果(こうか)が期待できます。また、5Gを使って、リアルタイムで農地や作物の状況(じょうきょう)などを遠くからモニタリングすることができます。

スマート農業
図1:スマート農業

(2)インフラ・建設(けんせつ)分野

調査(ちょうさ)・測量から設計(せっけい)、施工(せこう)、検査(けんさ)、維持(いじ)管理・更新(こうしん)までの全てのプロセスでICT(アイシーティー)(情報通信技術)等を活用し、これまでより少ない人数、少ない工事日数で同じ工事を行うことで、建設現場(げんば)の生産性(せいさんせい)向上を目指しています。5Gを使って、インフラ点検(てんけん)でリアルタイム監視(かんし)・管理のほか、建機等の遠隔操作(えんかくそうさ)・制御(せいぎょ)などができるようになります。

(3)医療(いりょう)分野

医療分野におけるICTを活用した代表的な取組に、オンライン診療(しんりょう)がありますが、そのほかに「遠隔コンサルテーション」と呼ばれる取組もあります。遠隔コンサルテーションとは、離(はな)れた場所にいる複数(ふくすう)の医師(いし)の間で、患者(かんじゃ)の診療(しんりょう)情報や検査画像(けんさがぞう)等を共有しながら、診断(しんだん)・治療(ちりょう)方針(ほうしん)等に関して相談するものです。これによって、医師の地域的(ちいきてき)な偏(かたよ)りなどの課題が解決(かいけつ)できると考えられています。例えば、集中治療専門(せんもん)の医師が、5Gを利用して送られてくる高精細(こうせいさい)なカメラによる患者の映像(えいぞう)などで、遠隔から監視を行いつつ、必要時に現場(げんば)の医師に助言を行うことで、日本全国での高い医療水準(すいじゅん)の確保(かくほ)なども可能(かのう)となります。

(4)製造(せいぞう)業

IoTAIを活用し、あらゆる設備(せつび)が動いている状態(じょうたい)や作業者の行動をリアルタイムに把握(はあく)する取組が進んでいます。例えば、工場内に設置(せっち)された高精細カメラの映像を5Gを利用して送ることで、リアルタイムで設備や機器の状態を監視することができます。さらに、AI技術を使って情報を解析(かいせき)することで、作業員の作業効率化(こうりつか)だけでなく、製造ラインによっては商品のキズや加工のムラを自動検知(けんち)することができます。

(5)教育分野

教室などに設置した高精細カメラからの映像を、5Gで伝送することで、遠隔地の学校の授業(じゅぎょう)を受けることができます。とくに5Gの超(ちょう)高速・大容量(ようりょう)・超低遅延(ちえん)という特長を活かすことで、映像(えいぞう)を活用した双方向(そうほうこう)かつリアルタイムでのやり取りができるようになります。さらに、学習用ICT端末(たんまつ)を用いた、動画教材等の活用や児童・生徒自身が撮影(さつえい)した動画等素材(そざい)のクラウドへの保存(ほぞん)・共有などによって学習の質(しつ)も向上するでしょう。

遠隔授業
図2:遠隔授業

(6)安心・安全分野

防災(ぼうさい)分野では、台風や豪雨(ごうう)時に河川(かせん)から水があふれ出ていたり、道路が水につかっているときの対策(たいさく)などで、センサーやカメラ等による防災情報収集(ぼうさいじょうほうしゅうしゅう)が行われています。住民への情報提供(ていきょう)の手段としては、エリアメールやL(エル)アラート、IP(アイピー)告知(こくち)端末やスマートテレビ等のさまざまなメディアへの緊急(きんきゅう)情報配信等が行われています。また、5Gを使って、河川に置いた高精細カメラなどの映像をリアルタイムに伝送することで、災害時の状況などをよく理解できるようになります。

防犯(ぼうはん)分野では、街中に設置したカメラ・センサーによる監視や防犯メール等による児童・生徒の見守り事業等が進められています。また、民間サービスでは、不審(ふしん)者の侵入(しんにゅう)を未然に防(ふせ)いだり、火災の発生などを素早(すばや)く発見したりするため、警備(けいび)ロボット等の導入(どうにゅう)などの取組が行われています。

(7)エンターテインメント・観光分野

スポーツ施設(しせつ)や博物館・美術館(びじゅつかん)などの文化施設等において、5Gの特長を活かした高精細映像(試合映像や街の魅力(みりょく)情報等)の伝送や、施設利用者等のニーズに応(おう)じたオンデマンドのコンテンツ配信やサービス提供が考えられます。

5Gによる高精細映像やVR(ブイアール)(仮想現実(かそうげんじつ))/AR(エーアール)(拡張(かくちょう)現実)等のリッチコンテンツを活用した、サイネージ(デジタル看板(かんばん))・スマホやVR端末等への地域の魅力発信などによって、観光客の増加(ぞうか)にも役立つでしょう。

(8)モビリティ分野

ドローンによる荷物輸配送(ゆはいそう)や宅配便(たくはいびん)の再(さい)配達削減(さくげん)等によって、効率的(こうりつてき)な物流実現に向けた取組が進められています。また、カーシェアリングも利用が増(ふ)えています。

また、自動運転の実現に向けて、レーダーなどを用いて先行車両と後続車との車間距離(きょり)を測定し、速度に応じた安全な車間距離を保持する車間距離制御(せいぎょ)(ACC(エーシーシー): Adaptive Cruise Control(アダプティブ クルーズ コントロール))がすでに実用化されています。5Gの超低遅延性を活用したトラック隊列走行等、車両の遠隔操縦(そうじゅう)や自律型(じりつがた)走行への応用(おうよう)が考えられます。

自動運転の輸送への活用
図3:自動運転の輸送への活用