第3回接続の円滑化に関する特別部会公表資料(株式会社ジュピターテレコム)






電気通信審議会
 特別部会

平成8年5月24日

株式会社ジュピターテレコム
社長 西村泰重


「接続の基本的ルールの在り方について」


弊社(ジュピターテレコム)は、TCI社と住友商事の合弁会社として昨年1月
に設立された、日本に於けるCATV事業の広域運営を行う、いわゆるMSO(
マルチプル・システム・オペレーター)であります。

 平成6年11月に郵政省より発表された「CATVを利用した電話サービスの
事業化ガイドライン」に基づき、地域通信分野に於ける競争の実現のため地域通
信事業へ進出を目指して開業準備を鋭意進めております。

 CATV電話につきましては、NTTの地域通信網との接続がサービス提供上
不可欠であり、昨年3月以降NTTとの相互接続交渉を続けて参りましたが、そ
の過程で認識された問題点その他新規参入事業者としての観点から別紙の通り概
略御説明させて頂きます。


NTTとの相互接続交渉に於ける問題点

1.基本的な問題:

NTTのスタンスはNTTの私的に所有する有形無形の事業施設に接続を許諾す
るという姿勢であり、対等の事業者相互間の接続という認識に立っていない場面
が未だ見られる。NTT地域通信網は国民のインフラとして構築されてきた公共
の施設であり、この開放、相互接続に係わる費用はNTTとしても負担すべきで
ある。現実には競争導入の促進との観点から、さらには負担能力等を勘案して大
半をNTTが負担する妥当性がある。現行の接続に関する制度は、事業者間の協
議に委ねることが原則となっているが、利益の相反する当事者間の接続交渉の長
期化を避ける為にも、接続の義務化、接続条件の明確化等接続のルールに関する
行政的、法的措置を早期に確立して頂きたい。

2.接続形態:

1> 接続方法の多様化:
GC/ZCにての接続を前提としてNTTと交渉を行っているが、CATV局の
業務エリアとNTTのMAが必ずしも同一にはなっておらず、また、GC/ZC
の数及びその所在地次第では、現在NTTより提示を受けている接続料金体系で
はコスト面でNTTより不利な条件におかれるケースもある。
また、GC/ZC接続以外の接続方法として加入者線接続(MDF接続)も考え
られるが、具体的な接続条件は明らかにされていない。

2> POI(相互接続分界点):
NTTとのGC/ZCに於ける相互接続に際し、通常POIは、NTT局舎内に
設けられることより、その接続に必要な中継線及び、NTT局舎内に設置される
設備の費用は全て接続を要請した事業者側の負担となっている。相互接続の観点
から、中継線の中間でのPOIの設置(あるいはそれを前提とした費用分担)等
も考えられる。

3.相互接続に係わる費用(網改修に係わる費用/年経費):

1>相互接続に係わるGC/ZCの網改修費用及びその算出根拠の明確化(弊社
は3月25日付にて相互接続申込書を提出しており、7月25日までにNTTか
ら回答取得予定)これは年経費として継続的に支払うことになるわけだが、この
場合総費用の配賦方法(加入者数割/事業者数割など)の考え方及びその具体的
な算出根拠が示されるべき。

2> 相互に接続するとの観点からNTTとしても応分の負担をすべきである。

4.相互接続料金(網使用料):

1> 料金算定基準の明確化
あくまで相互接続に伴う増分コストのみを前提として算出されるべきである。し
かしながら、NTTは総コストに基づいた負担を求めており、また、現行法上事
業者間の協議に委ねられていることもあり、この基本的問題について進展は全く
見られない。

2> 新規参入者の負担軽減:
実質的な地域通信分野での競争導入を早期に実現する為には、新規参入者に対す
る負担軽減等(例えば、CATV電話の地域通信分野でのシェアが(X)%にな
るまで、網使用料を低額ないし無料にする)何らかの特別な法的措置が不可欠と
考える。

5.接続するサービス:

1>全てのNTT付加サービスの解放
「ネットワークの解放」を前提として、NTTの費用負担で自主的に網改修を行
い、全ての付加サービスの接続を可能にすべきである。 

2>番号案内等のNTTサービス料金は赤字であるとの理由(但しそのコスト内
容は提示解明されていない)で、弊社に対してはNTTユーザー料金よりも遥か
に高いコスト負担を要求されているが、少なくとも弊社ユーザーへの提供料金が、
NTTユーザー料金と同じレベルに揃えられるようなコスト負担とさせて頂きた
い。

6.番号ポータビリティ:

弊社の実施した市場調査に於いても、諸外国と同様、番号ポータビリティは非常
に大きな問題である。この問題が早急に解決されない場合、弊社のサービス開始
はもとより、地域通信分野での競争導入に大きな障害となることが懸念される。
技術的に解決されるまでの間、一定期間の自動転送あるいは番号変更の案内サー
ビスを無料で受けられるようにして頂きたい。また、技術的解決に際しては、N
TTが主体となり、応分の負担も含めて早期に対応して頂きたいと考える。

7.他事業者との接続及び接続料金の精算方法:

1>現行法では各事業者が接続を行う事業者と個別に接続協定を締結する必要が
あるが、NTTと同等の各種通信ネットワークへの接続サービスを事業開始時よ
り提供することが、地域有線型通信サービスの必須の条件である。一方で通信事
業者数の増加に伴い関係事業者との接続協定締結に多大の時間と労力が必要とな
り、全ての事業者と短期に接続協定を締結することは至難であり、これが参入障
壁になりかねない。少なくとも技術的にNTTとの接続のみで他NCC事業者と
の接続が可能な場合には、NTTと接続協定を締結する事で他関係事業者との接
続協定を省略、或いは簡略化するようなルール作りが望まれる。この措置は暫定
的取り決めであることもやむを得ない。

2>事業者間精算についても、NTT網或いは既存のネットワークの何れかを経
由して他事業者へ抜ける呼に対しては、NTTを窓口として精算を一本化できる
ようなルール/システム作りが実際的である。

8.NTT局舎及び管路の開放について:

特に集合住宅(MDU)向のCATV電話の引込みに際し、従来のMDUにはN
TTの電話回線しか敷設されておらず、また、その回線の所有者がNTTとして
扱われているケースが多いことより、ユーザーがCATV電話に加入(変更)す
る場合このNTT回線は使用出来ず、別途CATV電話用の回線を新たに敷設す
る必要がある。そもそも屋内配線がNTT所有かユーザー所有かが明確でないこ
とより、ユーザーの判断でこの屋内配線をCATV電話に使用出来るようなルー
ル作りを希望する。

今回の郵政省からの諮問を受けて、年内に具体的なルール作りを踏まえた答申が
出されるものと理解しておりますが、その結果具体的な法改正が実現するにして
も、実際に適用されるまでNTTの決算時期、諸会計ルールの整備等によるかな
りのタイム・ラグが出て来るのではないかと懸念しております。
地域通信分野への競争導入は早期実現が急務であり、法改正が実現した場合、例
えば暫定措置であれ、新ルールに沿った形でただちに実施できるような方策を是
非とも検討して頂きたいと思います。

以上