みんなでつくる情報通信白書コンテスト2011

審査員紹介(敬称略)

杉山知之

杉山知之プロフィール

デジタルハリウッド大学 学長・工学博士。
1954 年東京都生まれ。87 年よりMIT メディア・ラボ客員研究員として3 年間活動。90 年国際メディア研究財団・主任研究員、93 年 日本大学短期大学部専任講師を経て、94 年10 月 デジタルハリウッド設立。2004 年日本初の株式会社立「デジタルハリウッド大学院」を開学。翌年、「デジタルハリウッド大学」を開学し、現在、同大学・大学院・スクールの学長を務めている。マルチメディア放送ビジネスフォーラム代表、福岡コンテンツ産業振興会議会長、メタバース協会理事長、内閣官房知的財産戦略本部コンテンツ強化専門調査会委員を務め、また「新日本様式」協議会、CG-ARTS 協会、デジタルコンテンツ協会など多くの委員を歴任。99 年度デジタルメディア協会AMD アワード・功労賞受賞。
著書は「クール・ジャパン 世界が買いたがる日本」(祥伝社)、「クリエイター・スピリットとは何か?」※最新刊(ちくまプリマー新書)ほか。

石戸奈々子

石戸奈々子プロフィール

NPO法人CANVAS副理事長。東京大学工学部卒業。東京大学学際情報学修士。MITメディアラボ客員研究員を経て、2002年子供向け参加型創造・表現活動の全国普及・国際交流を推進するNPO法CANVASを設立、副理事長に就任。現職。モバイルコンテンツ審査・運用監視機構理事、デジタルサイネージコンソーシアム理事、総務省地域情報化アドバイザー、内閣官房違法・有害情報対策官実務家ラウンドテーブル構成員、コンテンツ学会理事等を兼務。

表紙絵受賞作品への講評

最優秀賞 市川菜月さん
元気そのものを感じる構図。水発電も魚とのおしゃべりも最先端科学がイメージできていることが、素晴らしい。回りの魚やたこたちも、コミュニケーションを取りたがっているように描けている。人の指の力強さに何か勇気づけられるね!
(評者:杉山知之)
躍動感のある大胆な構図で、元気をもらえる絵でした。色遣いも明るく鮮やかで、楽しい雰囲気が伝わってきます。海に潜り、魚たちと会話できる、そんなケータイがあったら、本当に楽しいでしょうね。タコや魚も、とてもうれしそうに見えました。
(評者:石戸奈々子)
優秀賞 守山典子さん
優しい色調で、デジタル技術で可能にして欲しい夢が描かれている。空中に浮遊したように見える妊婦さんとパソコンが、意図を伝えるために良い形で働いている。愛を感じるね。
(評者:杉山知之)
優しくふわっと柔らかな色づかいで、妊婦であるお母さんの、赤ちゃんに対する穏やかで暖かい愛情が伝わってくるようです。「お腹の中の赤ちゃんは、今何を考えているんだろう?」知りたいと思う妊婦さんは多いのではないでしょうか?情報技術の進歩が、人と人とのコミュニケーションを深めることに役立っていく、そんな夢の実現を待ち望みたくなりました。
(評者:石戸奈々子)
佳作 勝山渚月さん
ぐわっと伸ばした男の腕と手が印象的な絵。ちゃんと眼が腕時計型テレビの画面を見つめている。髪の毛が流れていて動きすら感じる。左手にはリモコンがあり12までのボタンがあって、ディテールも確かだ。色彩感覚と人物の配置に非凡さがあるね!
(評者:杉山知之)
ポップで楽しい色遣いに加え、腕時計と腕の存在感がぐっと訴えかけてくる、印象的な作品でした。腕時計型のテレビを見つめる人の表情、ハートと音符の洋風の模様、背景の色彩から、ワクワクする夢を感じました。
(評者:石戸奈々子)
佳作 照屋杏奈さん
イラストを描く技術が高い方ですね。世界の民族を、髪の毛の色、肌の色、ファッション、使っている機材で、破綻なく描き分けられています。この当たりはさすが高校生です。世界のどこにいてもインターネットでコミュニケーションができる現在をサークルの構図で見事に表現していますね。
(評者:杉山知之)
世界中の様々な人種・文化の人たちが、インターネットでつながっているということを、2つの丸と中心のハートを使い、上手に表現しています。青と橙、赤と緑、紫と黄等、コントラストの強い反対色の配置を駆使した、色彩鮮やかな作品です。
(評者:石戸奈々子)
佳作 守山木乃芽さん
動物との会話は、人類共通の夢のひとつですね。コンピュータ技術の発達と動物研究の発達が融合するとき、絵に描いたような世界がやってくるかもしれません。そんな世界を実現するピンク色のケータイ電話。そのまま未来の広告ポスターになってしまいそうなイラストです。とくにそれぞれの要素のレイアウトが良いと感じます。
(評者:杉山知之)
人や動物、そしてケータイ電話を囲むように明るい黄色がぬられていることで、新しいひとつの世界観がうまく表現されているように思いました。ケータイ電話の色遣いや形、動物の声に耳を傾ける人々のやさしい表情に、生物共存の未来を感じました。
(評者:石戸奈々子)
佳作 春田奈央さん
ちゃんとスタイルがあるイラストで、各世代の人物を描き分けている。人がデジタルでつながって行くという現在を、だれにでもわかるように表現できている。最後が大きなハートで表されているけれど、これはこの先にも愛を持つ多くの人がつながっているという解釈をしてみた。
(評者:杉山知之)
画面を9分割して、それぞれに家族の一人一人を配置する個性的な画面構成の作品でした。右下の大きな赤いハートから、温かい家族愛がインターネットを通じて全員に届くように流れているようで、世代を超えたコミュニケーションにパソコンやケータイが役立っていることがうまく表現されていると思いました。それぞれの人物の表情もイイ!
(評者:石戸奈々子)

コラム受賞作品への講評

小中学生の部
優秀賞:星下笑瑠(8歳/小2)「私とじょうほう未来〜じょうほう未来がきせきをかなえる〜」
病気のおじいさまが、奇跡を信じていることを、実現させるための数々のアイディア。素晴らしいです。 その結果、まさにヴァーチャルリアリティの最先端を行く科学者が実現したい技術を、ちゃんとわかりやすく解説できてしまっています。凄いです。
(評者:杉山知之)
病気で身体の不自由なおじいさまのために、どうしたら元気に歩かせてあげることができるだろうか?必死に考えた未来の情報技術。筆者の、おじいさまを思いやる優しい心と、アイディアを実現する具体的な方法まで説明する描写力に脱帽しました。筆者のような、大切な人を助けたいという気持ちが、奇跡を起こし、笑顔につつまれる未来をつくるのだと思います。
(評者:石戸奈々子)
優秀賞:香川えり子(15歳/中3)「わたしとケータイ〜心に響いたメール〜」
本心を直接言葉で伝えるのが不得意な人は、本当にたくさんいると思うのです。そんなときにも確かにメールは素晴らしいコミュニケーションツールになりますね。とくにこの話のように、相手に思いやりがあるメールは、一生宝物として残しておけるのもデジタルの良いところですね。
(評者:杉山知之)
メールのいいところは、面とむかって相手に言えないことを言えるところ、と筆者は言います。そして、それは、照れてしまって言えないようなポジティブなほめ言葉だったり、励ましの言葉だったりするという点に、好感を持ちました。メールで交わす何気ない一行の言葉が、言葉を直接交わすコミュニケーションを超えることがあります。そんなやりとりが世界中でたくさん生まれて欲しいと、この作品を読みながら、思いました。
(評者:石戸奈々子)
一般の部
優秀賞:増田和恵(60歳)「わたしと宇宙をつなぐ夢空間〜ITから国際宇宙船の世界へ〜」
国際宇宙ステーションやこうのとり2号機のことは、ただニュースの一項目として、過ぎ去っていく情報になってしまっている人々が多い。しかし、ISSを肉眼で確認し、いくつもの疑問を持ち、それらをネットで調べ、見つけた情報に感動する作者の活き活きとした心が素晴らしい。こんなふうネットを使って欲しいと思うね。
(評者:杉山知之)
疑問に答え、好奇心を満たしてくれるのがインターネットだと思います。筆者は、そんなインターネットをフルに活用し、宇宙への夢をふくらませています。科学や通信の技術の発達に、純粋な希望と期待を感じていることが伝わってきます。朝方早い時間に畑に立って、満点の星と宇宙ステーションや宇宙船の軌跡を見上げているシーンの描写が素晴らしく、目の前にその光景が広がるような感じがしました。
(評者:石戸奈々子)
優秀賞:藤井仁司(32歳)「私とブログ〜家族のつながり〜」
母親が始めたブログから、離れてしまった息子が母の近況を知るようになり、そこから交流が再開する。母親があうんの呼吸で答えた一言に、ちょっと涙が出た。デジタルだからこそ、どんな遠くに離れてもいても、暖かいコミュニケーションが生まれるんだね。
(評者:杉山知之)
ささいなことで母親と喧嘩をして家を飛び出した筆者に、母親がブログを始めたことをそっと教えてくれた姉、後悔しながらも素直になれない息子は母のブログを読んで母の様子を垣間見る。たとえ離れてしまっても、家族は愛情でつながっている、そんなエピソードに、心打たれました。文章のテンポがよく、読みやすくしかも深く共感できるコラムでした。母親の探していた花を名乗らず贈った筆者に、ブログで「ドラ息子、早く帰っておいで」と母親。心がつながった瞬間ですね。
(評者:石戸奈々子)
優秀賞:渡辺勇三(67歳)「わたしと孫の交信〜インターネットとケータイの先生〜」
孫世代にとっては、どんなに幼くてもやりたいと感じるからこそ、克服してしまうデジタルリテラシー。ご本人も、孫とのコミュニケーションをしたいという気持ちがあるからこそ、一歩一歩、機器の使いこなしができるようになって行く。やっぱり人間、モチベーションがはっきりしていないものは学べないものですね。
(評者:杉山知之)
生まれながらにケータイやインターネットが身近にある世代の孫と、ケータイ操作に四苦八苦する祖父との、ほのぼのとしたやりとりがエピソードとして面白く感じました。祖父は孫にマニュアルの漢字を教え、孫は操作が直感的にわかってしまうので、祖父に操作方法を教えることができる。ICTツールを通じて、コミュニケーションが生まれる。現代を象徴する関係なのではないかと思います。
(評者:石戸奈々子)
優秀賞:家城武尚(26歳)「わたしと白黒メール〜一生来て欲しくないメール〜」
恋人同士でも、すれ違いを余儀なくされるほど忙しい現代社会。今やケータイメールは必需品。そして日本で独自に発達したのが、デコメール。象形文字に戻ったような表現に色もつきカラフルな世界、そこに突然、白黒文字のみメールが来たらと思うと、確かに恐怖。作者に共感しました!
(評者:杉山知之)
デコメールは、ともすると冷たく感じられてしまうデジタルなメールのコミュニケーションに「気持ち」を注入する方法の1つと思います。筆者の彼女は、メール1本で、これだけの恐怖を与えることができ、デジタルコミュニケーションの達人なのかもしれません。現代社会の恋愛事情を垣間見るような作品でした。また、文章に読者を引き込む力を感じました。
(評者:石戸奈々子)
問合せ先:総務省情報通信国際戦略局 情報通信経済室