平成15年3月28日
総務省新潟行政評価事務所

索道の安全確保等に関する行政評価・監視結果
−スキーリフト等の安全確保徹底のために−


 総務省新潟行政評価事務所では、平成14年12月から平成15年3月にかけて、新潟県内に所在する索道(リフト・ロープウェイ)の安全確保等を目的として、「索道の安全確保等に関する行政評価・監視」を実施しました(当事務所では初めて取り上げるテーマ)。

 調査の趣旨・背景事情:
 新潟県内の索道は普通索道(ロープウェイ)と特殊索道(リフト)を合わせて454基あり(平成14年3月末現在)、これは都道府県別にみると全国第2位の保有数。また、ロープウェイの中には日本最大規模の輸送人員を誇るものもあり。
 ここ数年はスキー客の減少傾向は続いているものの、スノーボード利用者は増加傾向。
 一方、索道に関する人身事故はここ数年毎年発生。

 調査結果について:
 平成15年3月28日、国土交通省北陸信越運輸局に対して通知(所見表示)。





調査結果の概要


1   索道運転事故の報告体制の確立
 索道を運行する事業者は、「鉄道事故等報告規則」に基づき、索道の運転に伴って発生した傷害事故等の発生状況を地方運輸局に報告(5人以上の死傷者が生じた場合等)又は届出を行わなければならない。
〔調査結果〕
 今回当所が、10索道事業者を調査したところ、スキーリフトを運行する1事業者において、リフトから降りる際に乗っていた椅子に後頭部をぶつけ傷害を負う等の人身事故が、平成11年度から同13年度までの3年間に計3件(いずれも負傷者は1人)発生しているものの、北陸信越運輸局に対し、未届となっている事例が認められた。
 ※ この発生原因は、現場では把握・記録していた事故の情報を、運輸局へ報告すべき立場にいる管理者が把握していなかったことによる。
〔通知事項〕
 北陸信越運輸局は索道事業者に対し、索道事業者を対象とした研修会等の場を通じて、索道運転事故の報告体制を確立するよう周知徹底する必要がある。

索道事業者に対する保安管理意識の徹底
 索道の運行にあたっては、関係法令の遵守とともに、日常の安全確保対策を徹底することが重要。
〔調査結果〕
 今回当所が、10索道事業者を調査したところ、以下のとおり保安管理に対する意識が十分徹底していない状況がみられた。
 1)  索道を運行する事業者は、法令により、索道施設を12ヶ月ごとに検査し、その結果を記録に留めなければならないとされているが、一部の検査項目において欠落箇所があったり、存在していない設備欄に検査結果を記録しているもの
  9事業者
 2)  実際には存在している設備であるにもかかわらず、検査記録に結果を記載する欄がないため、検査結果を記録していないもの
  6事業者
 3)  リフト乗降の際及び運転中に旅客が遵守すべき事項を掲示していないもの
  2事業者
 4)  リフト運転の基本となる「運転細則」が所在不明となっているもの
  1事業者
 ※  これらの発生原因は、1)ひな型として示されている検査の記録簿を、各事業者が自らの施設・設備の実態に即したものとしていないこと、2)乗客の安全な乗降に対する配慮不足。

〔通知事項〕
 北陸信越運輸局は、索道利用者の安全を確保する観点から、立入検査(保安監査)及び索道事業者を対象とした研修会等の機会を通じて、索道事業者における保安管理意識を徹底させる必要がある。

索道事業者に対する効果的な指導・監督の実施
 鉄道事業法に基づき、地方運輸局は索道事業者が索道施設の保安管理を適切に行っているかどうか把握するため立入検査(保安監査)を実施。
 国土交通省では、毎年、年末年始時期に公共輸送機関(索道を含む)を対象にした「年末年始の輸送等に関する安全総点検」(年末年始総点検)を実施(所定の様式により事業者自身が点検。結果は運輸局に報告)。
〔調査結果〕
(1)  北陸信越運輸局における保安監査の実施数は、事業者数が多い(平成13年度末:管内242、新潟県内72)こともあり、平成13年度の保安監査実施数は、管内で8事業者、新潟県内で6事業者となっており、過去5年間(平成9年度〜同13年度)の平均では、管内で11事業者、新潟県内では4事業者に留まっている。
 今回、当所が調査対象とした10索道事業者の中には、同運輸局の直近の保安監査から相当の時間が経過しているものが5事業者(平成3年の開業以来、監査未実施のもの1事業者、昭和63年以降未実施のもの4事業者)含まれているが、これらの事業者における索道の安全確保状況を調査したところ、以下のとおり保安管理意識が必ずしも十分でない実態が認められた(1)2)及び4)の事例は、「2 索道事業者に対する保安管理意識の徹底」で記載した事例と重複)。
1)  12ヶ月ごとに行う検査結果を記載した記録簿において、記録が一部欠落している箇所があるもの
  4事業者
2)  実際には存在している設備であるにもかかわらず、検査結果を記録していないもの
  3事業者
3)  1ヶ月ごとに行う定期検査の結果を記載した記録簿において、一部記録が欠落している個所があるもの
  2事業者
4)  リフト利用者が安全に乗降できるよう、旅客が遵守すべきことを記載した表示板がないもの
  2事業者
(2)  一方、平成13年度に北陸信越運輸局が実施した年末年始総点検の実施結果をみると、新潟県内に索道施設を有する72索道事業者のすべてから点検結果が提出されている。
 しかし、提出された個々の点検表をみると、1)点検すべき項目のうち、一部の項目について、点検の結果が未記入となっているため、点検を行ったのかどうか、特に問題がないのかどうか等の判断が困難なものがみられる(72事業者中10事業者:13.9パーセント)ほか、2)問題があった個所について整備等を行い、改善済みであるのもかかわらず、点検結果欄には未措置として提出しているもの(72事業者中2事業者:2.8パーセント)がみられ、必ずしも適切な記載とはいえない実態となっている。
 ※  この原因は、同運輸局が、点検結果(点検表)の提出が遅い事業者に対して提出の督促を行うものの、点検表の記載状況については、確認・補足等を行っていないことによる。

 北陸信越運輸局は、(1)のとおり、事業者に対する立入検査(保安監査)実績が必ずしも十分とはいえない状況となっているが、この総点検を有効に活用することにより、事業者の自主点検という形式ではあるものの、監査機能を補足する効果が期待できるものと考えられる。

〔通知事項〕
 北陸信越運輸局は、立入検査(保安監査)を効果的に行うとともに、年末年始総点検の実施効果を高めるため、索道事業者を対象とした研修会等の機会を通じて、漏れのない点検の実施及び記載漏れ等がないよう、索道事業者に周知徹底する必要がある。







参考資料

 1  索道事業者数及び索道基数(平成13年度末現在)
索道事業者数及び索道基数(平成13年度末現在)イメージ

 
 2  調査対象事業者及び索道基数
調査対象事業者及び索道基数イメージ

 3  新潟県内のスキー客数及びスノーボード客数の推移
新潟県内のスキー客数及びスノーボード客数の推移イメージ

 4  新潟県内における索道運転事故の発生状況
新潟県内における索道運転事故の発生状況イメージ


〔出典〕 1及び4:北陸信越運輸局    3:「新潟県観光動態の概要」(新潟県産業労働部)


行政評価・監視実施状況に戻る トップページに戻る