3.経営の効率性
経営の効率性の項目では、収支の均衡度(収支比率)、繰入金の割合、生産性等、経営状況に関する代表的な指標を用いて分析を行う。
(1) 総収支比率、経常収支比率
総収益 営業収益+営業外収益
総収支比率(%)= ―――― ×100 経常収支比率(%)= ――――――――――― ×100
総費用 営業費用+営業外費用
|
当該団体 |
類似団体平均 |
全国平均 |
A 市 |
総収支比率 |
|
|
108.1 |
107.6 |
経常収支比率 |
|
|
108.2 |
107.8 |
【指標の見方】
収支比率は、収益性を見る際の最も代表的な指標である。例えば、経常収支比率は、経常費用が経常収益によってどの程度賄われているかを示すものである。従って、この比率が高いほど経常利益率が高いことを表し、これが100%未満であることは経常損失が生じていることを意味する。
また、この指標を用いて分析を行う場合には、(3)繰入金比率及び(6)料金回収率を併せて見る必要がある。
なお、総収支比率、経常収支比率の差異は特別損益によるものである。
【全体の傾向】
収支比率は、総収支比率、経常収支比率とも100%を上回っており、収支は比較的良好といえる。
【A市の場合】
A市については、総収支比率、経常収支比率とも100%を上回っており、また全国平均と同程度である。
総収支比率及び経常収支比率グラフ
(2) 累積欠損金比率
累積欠損金
累積欠損金比率(%)= ―――――――――――― ×100
営業収益−受託工事収益
|
当該団体 |
類似団体平均 |
全国平均 |
A 市 |
累積欠損金比率 |
|
|
2.7 |
− |
【指標の見方】
累積欠損金比率は、事業体の経営状況が健全な状態にあるかどうかを、累積欠損金の有無により把握しようとするもので、営業収益に対する累積欠損金の割合をいう。
【全体の傾向】
累積欠損金比率については、給水人口規模の小さい事業ほど概ね高くなる傾向を示している。また、有収水量密度別区分で見ると、平均未満の団体の累積欠損金比率が高くなっている。
【A市の場合】
A市については、累積欠損金が発生しておらず、全体的に健全な経営状況にあるといえる。
累積欠損金比率グラフ
(3) 繰入金比率
損益勘定繰入金
繰入金比率(収益的収入分)(%)= ―――――――― ×100
収益的収入
資本勘定繰入金
繰入金比率(資本的収入分)(%)= ―――――――― ×100
資本的収入
|
当該団体 |
類似団体平均 |
全国平均 |
A 市 |
繰入金比率(収益的収入分) |
|
|
2.4 |
0.4 |
〃 (資本的収入分) |
|
|
10.9 |
2.2 |
【指標の見方】
繰入金比率は、収益的収入、資本的収入それぞれの収入における繰入金依存度を分析しようとするものであり、これらが収支比率に与える影響を考察することは重要であるといえる。
また、経営状況を正確に把握するためには、基準内繰入金、基準外繰入金に分けて分析を行うことが必要であり、これらの詳細な分析については、「3各指標」を参照されたい。
なお、繰入金比率が低い要因の一つとして、一般会計から繰出基準どおりの繰入れを受けていないことも考えられるので、留意する必要がある。
【全体の傾向】
収益的収入に占める他会計繰入金の割合は、給水人口規模の小さい事業において高くなっている。また、有収水量密度別区分では、平均未満の団体の繰入金比率が収益的収入、資本的収入ともに高くなっている。
【A市の場合】
A市においては、繰入金比率について収益的収入、資本的収入ともに、全国平均を大きく下回っており、また、全てが基準内の繰入金であり、繰入金に依存しない経営が行われている。
繰入金比率(収益的収入分)グラフ
繰入金比率(資本的収入分)グラフ
(注)グラフ内の数値は、表示単位未満を四捨五入しているため、内訳を合計した数値は、合計の数値と一致しない場合がある。
(4) 生産性
現在給水人口
職員1人当たりの給水人口(人)= ――――――――――
損益勘定所属職員数
給水収益
〃 給水収益(千円)= ――――――――――
損益勘定所属職員数
|
当該団体 |
類似団体平均 |
全国平均 |
A 市 |
職員1人当たりの給水人口 |
|
|
2,603 |
1,539 |
〃 給水収益 |
|
|
53,389 |
39,756 |
【指標の見方】
損益勘定所属職員1人当たりの生産性について、給水人口及び給水収益を基準として把握するための指標である。
なお、生産性の向上は、設備投資や管理の効率化、業務の委託化と密接に関連しているので、生産性の指標は、設備投資や費用に関する他の指標と併せて総合的に判断する必要がある。
【全体の傾向】
いずれの指標も、給水人口規模の大きい事業が概ね良好となっている。都及び指定都市の比率が低いものとなっているのは、検針業務等を直営で行っている事業体があり、これらに従事する職員数が影響していることによるものである。
【A市の場合】
A市については、職員1人当たりの給水人口及び給水収益は全国平均に比べともに大きく下回っている。この要因としては、配水関係職員が多いことが考えられる。
職員1人当たりの給水人口グラフ
職員1人当たりの給水収益グラフ
(5) 給水収益に対する割合
職員給与費
給水収益に対する職員給与費の割合(%)= ―――――― ×100
給水収益
企業債利息
〃 企業債利息の割合(%)= ―――――― ×100
給水収益
減価償却費
〃 減価償却費の割合(%)= ―――――― ×100
給水収益
|
当該団体 |
類似団体平均 |
全国平均 |
A 市 |
給水収益に対する職員給与費の割合 |
|
|
17.4 |
21.3 |
〃 企業債利息の割合 |
|
|
12.8 |
11.4 |
〃 減価償却費の割合 |
|
|
26.5 |
24.6 |
【指標の見方】
給水収益と比較した場合の各費用の比率を示した指標である。費用構成比及び有収水量1m3当たりの費用金額と併せて分析を行うことで、効率化を図るべき費用項目を把握することができる。詳細については、「3各指標」を参照されたい。
なお、給水収益は料金改定により変動するため、各指標の結果に大きく影響することに留意する必要がある。
【全体の傾向】
各指標とも給水人口規模の小さな事業は概ね高くなっている。給水人口規模の小さい事業は、「2.施設の効率性」で述べたように、施設利用率や配水管使用効率が悪く、投下資本の回収が困難なことから、給水収益に対する企業債利息や減価償却費といった資本費が高くなるものと考えられる。
【A市の場合】
給水収益に対する企業債利息、減価償却費の割合は、全国平均を若干下回っている。一方で、給水収益に対する職員給与費の割合は、全国平均を上回っている。これは、前項でも述べたとおり、配水関係職員が多いことによるものと考えられる。また、企業債利息と減価償却費は、施設利用率が良く、施設自体も年数が経過しているためと考えられる。
給水収益に対する職員給与費・企業債利息・減価償却費の割合グラフ
(6) 料金回収率、1ヶ月20m3当たりの家庭用料金
供給単価
料金回収率(%)= ――――― ×100
給水原価
ただし、
┌
│
│
│
│
│ │ └ |
給水原価(円・銭/m3)= |
経常費用−(受託工事費+材料及び不用品売却原価+附帯事業費)
――――――――――――――――――――――――――――――
年間総有収水量 |
供給単価(円・銭/m3)= |
給水収益
――――――――
年間総有収水量 |
|
┐
│
│
│
│
│
│ ┘ |
|
当該団体 |
類似団体平均 |
全国平均 |
A 市 |
料金回収率 |
|
|
98.5 |
103.4 |
1ケ月20m3当たり家庭用料金 |
|
|
3,042 |
2,908 |
【指標の見方】
料金回収率は、供給単価と給水原価との関係を見るものであり、料金回収率が100%を下回っている場合、給水にかかる費用が水道料金による収入以外に他の収入で賄われていることを意味する。料金回収率が著しく低く、繰出基準に定める事由以外の繰入金によって収入不足を補てんしているような事業体にあっては、適正な料金収入の確保が求められる。なお、1ヶ月20m3当たりの家庭用料金は税込の金額を示している。
【全体の傾向】
料金回収率については、給水人口規模の小さい事業においては概ね低くなる傾向となっている。
また、1ヶ月20m3当たりの家庭用料金については、給水人口規模の小さい事業ほど高くなる傾向となっている。
【A市の場合】
A市の料金回収率は103.4%で、全国平均を上回っている。1ヶ月20m3当たりの家庭用料金は、ほぼ全国平均並だが、給水人口規模別区分で見ると、約14%高くなっている。これは、A市の水源の大部分が、ダムと受水であり、浄水と受水に費用がかかるためと考えられる。
料金回収率グラフ
1ケ月20m3当たり家庭用料金グラフ
平成17年度水道事業経営指標