科学技術は、経済社会の発展の基盤であり、科学技術創造立国を目指す我が国にとって、その果たすべき役割はますます高まってきている。また、科学技術の振興は、産業活動の活性化及び国民の生活水準の向上に寄与するのみならず、科学技術面における国際的な貢献を果たす上からも重要である。
科学技術の振興については、科学技術政策の基本的枠組みを定めた科学技術基本法(平成7年法律第130号)に基づいて策定された科学技術基本計画(平成8年7月2日閣議決定)において、 i )活力ある豊かな国民生活を実現するための独創的かつ革新的な技術の創成に資する科学技術の研究開発、 ii )人間が地球・自然と共存しつつ持続的に発展することを可能とするための地球環境、食料、エネルギー、資源等の地球規模の諸問題の解決に資する科学技術の研究開発、 iii )生活者のニーズに対応し、安心して暮らせる潤いのある社会を構築するための健康の増進や疾病の予防・克服、災害の防止などの諸課題の解決に資する科学技術の研究開発を強力に推進することとされている。
また、平成11年6月の学術審議会答申「科学技術創造立国を目指す我が国の学術研究の総合的推進について」において、学術研究の目指すべき方向として、 i )世界最高水準の研究の推進、 ii )21世紀の新しい学問の創造と研究遂行体制の刷新、 iii )社会への貢献が、その具体的施策として、 i )優れた研究者の養成・確保、 ii )研究組織・体制の機動的な整備、 iii )競争的研究環境の整備等が提言されている。
国の科学技術に関する研究開発機関としては、行政施策の目的に対応した試験研究を行う国立試験研究機関等や、主に基礎研究を行う国立大学の附置研究所・大学共同利用機関が設置されており、その数は我が国全体で約160機関となっている。また、国の科学技術関係経費は毎年増大し、平成12年度予算では約3兆3,000億円となっており、民間も含めた我が国の研究費総額(人文・社会科学を含む。)は、10年度では約16兆1,000億円と、国際的にみれば、アメリカ(約28兆1,000億円)及びEU(約20兆6,000億円)に次ぐものとなっている。
我が国の科学技術の一層の振興を図っていくためには、研究開発に係る各種施策を、科学技術基本計画の基本的方向に沿って、そのフォローアップ等を行いながら着実に推進していくことが重要であり、取り分け、 i )重要分野ごとの研究開発の基本的考え方、重要研究課題等を示した研究開発基本計画を状況の変化等に応じて見直すなどにより計画的に研究開発を進めること、 ii )「一般職の任期付研究員の採用、給与及び勤務時間の特例に関する法律」(平成9年法律第65号)、「研究交流促進法」(昭和61年法律第57号)等の関係法令により整備された任期付任用制度や産学官の研究交流促進制度等の定着化、競争的資金の拡充と運用の改善等により研究活動を更に活性化していくこと、 iii )「国の研究開発全般に共通する評価の実施方法の在り方についての大綱的指針」(平成9年8月7日内閣総理大臣決定)に沿った研究開発に係る的確な評価の実施及び評価結果を踏まえた研究開発資金や組織・定員の重点的かつ効率的な配分等により効果的な研究開発を推進していくことなどが重要となっている。
また、中央省庁の再編、国立試験研究機関の独立行政法人化等の科学技術を取り巻く状況の変化を踏まえた研究開発機関等の業務及び組織・定員の見直しも重要となっている。
この監察は、このような状況を踏まえ、国立試験研究機関等や国立大学等における研究活動等の実施体制、実施状況等を調査し、関係行政の改善に資するため実施したものである。