警察庁における不祥事案対策に関する

行政監察結果に基づく勧告

 

平成12年12月

総務庁


前書き

 近時の警察における不祥事案の続発は、国民からの厳しい批判を受け、警察に対する国民の信頼を大きく損なうものとなっており、発生した事案についての厳正な処理とともに、今後の不祥事案の再発防止に万全を期すことが求められている。
 こうした中、警察庁は、不祥事案対策として、都道府県警察本部長等に対し、平成11年9月に警察庁長官官房長通達を、11月には同庁次長通達を発出し、職業倫理教養の徹底、身上監督の徹底、警察署に対する特別監察の随時実施等を示達するとともに、警察庁及び管区警察局が都道府県警察に対し、また、都道府県警察本部が管内警察署等に対し、それぞれ両通達の趣旨の警察の現場における浸透状況についての特別監察を実施し、その末端までの浸透を図っている。
 また、国家公安委員会は、平成12年1月に、警察職員の職務倫理及び服務に関する規則(平成12年国家公安委員会規則第1号)、監察に関する規則(平成12年国家公安委員会規則第2号)及び警察教養規則(昭和29年国家公安委員会規則第12号)の制定・改正を行い、既に施行されている。
 しかし、一連の不祥事案対策が実施に移されたにもかかわらず、その後も警察官による不祥事案が相次いで発生している状況にある。
 この監察は、これら警察庁により講じられている一連の不祥事案対策の実施状況を調査し、その実効を確保する観点から実施したものである。

 この監察の実施途上の平成12年8月、国家公安委員会及び警察庁は、国家公安委員会が発足させた警察刷新会議による「警察刷新に関する緊急提言」を受け、当面警察が取り組むべき施策を「警察改革要綱」として取りまとめ、その実現に全力を尽くしていく旨を明らかにしている。
 さらに、平成12年9月に召集された第150回国会に、警察法一部改正案が提出され、成立した。既に第147回国会において、警察が持つ監察機能が有効に機能しなかった反省を踏まえ、公安委員会の管理機能を強化し、具体的・個別的な監察指示権を付与すること等を内容とする警察法一部改正案が提出され、同国会閉会に伴い審議未了となったが、新法案は、第147回国会において提案された内容に加え、公安委員会の指名する監察担当委員による監察状況の機動的点検、警察職員の職務執行に係る苦情の適正な処理、警察署協議会の設置等を規定するものとなっている。

 警察の刷新改革は正に喫緊の課題である。警察法改正案で提案されている各種の制度面の改革に加え、当庁による実態把握に基づくこの勧告の内容が実施に移されることにより、警察に対する国民の信頼回復の措置が確保され得るものであると考える。

 


目次

 不祥事案処理の的確化
(1) 不祥事案に係る処分の適正化・迅速化
(2) 不祥事案の報告の励行
(3) 不祥事案及び不祥事案関係情報の積極的な公表
(4) 不祥事案対策に係る監察機能の充実強化
(5) その他
  不祥事案の未然防止対策の適切な実施
(1) 不祥事案の前兆の的確な把握等
(2) 職務倫理教養の充実
  特別監察の厳正な実施
(1) 特別監察の的確な実施
(2) 特別監察の結果に基づく評価・通知等の充実
(3) 特別監察の厳正・中立性の確保
 国家公安委員会の運営の在り方の見直し
 管区警察局の府県警察に対する監督機能の強化