平成16年8月31日
総務省
児童手当受給資格者が失踪・行方不明になった場合における受給資格者の認定の見直し(概要)
−行政苦情救済推進会議の検討結果を踏まえたあっせん−
|
総務省行政評価局は、次の行政相談を受け、行政苦情救済推進会議(座長:塩野宏)に諮り、その意見(別添要旨参照)を踏まえて、平成16年8月31日、厚生労働省に対し、改善を図るようあっせんします。
私は児童手当の受給対象となっている子供が2人いますが、手当を受給している夫が行方不明のため、手当が振り込まれる口座を夫名義から私名義に変更しようと市に申し出たところ、1)私を受給資格者に認定する必要があるので、私から改めて認定の請求をしてもらい、認定の上、請求した日の属する月の翌月分から私名義の口座に振り込む、2)既に支払われた分については、返還してもらう場合もあるとのことでした。
夫が行方不明になった以降は私が引き続き子供を監護しているのに、児童手当の支給に空白が生じたり、これを返還させられることには納得できない。できるだけ早く受給資格者の変更が認められないものか。 |
(現状)
市町村の中には、遺棄したことが客観的に把握されないケースについて、厚生労働省の通知による指導を踏まえ、1年間様子をみて当該受給資格者が監護していないことを確認し、その受給資格を消滅させた後に、現に監護する者を新たな受給資格者に認定し、失踪・行方不明時にさかのぼって支給する取扱い。一方、市町村の中には、この確認期間の弾力的取扱いをしているところもある。(注)
(厚労省通知では、この確認期間を、通常、事故等による生死不明の場合は3か月、行方不明の場合は1年間としている。) |
(検討結果)
○ |
児童がいる以上、誰かが児童を監護しており、その現に児童を監護する者に間断なく支給するよう運用することが制度の目的にかない、その効果が十分に発現。 |
○ |
現に児童を監護する者から受給資格者が行方不明であるとの申立書が提出された場合、当該者が監護している事実が確認できれば、1年間様子をみることなく、行方不明者の受給権を消滅させ、現に監護している者を受給対象者として認定したとしても、児童手当制度の運営上支障が生じるとは考えられない。 |
|
(あっせん要旨)
児童手当の受給資格者が行方不明になった場合、児童を監護する者の申立て等に基づき、当該監護者が現に児童を監護している事実が確認できた時点において、当該監護者を受給資格者とするよう認定事務の適切な運用を図ることを求めるもの |
(注 |
) 市町村によっては、1)行方不明になった日から1年間とされている確認期間を3か月〜6か月に短縮、2)相談があった時点で認定請求を提出させ、併せて行方不明者への支給を停止する等の弾力的取扱いをしている。 |
(参考)
○ |
児童手当は、児童を養育している者に、家庭の生活の安定及び児童の健全な育成・資質の向上を目的として支給するものであり、単なる多子防貧対策ではなく、「世代間扶養」の観点等から、一般家庭をも広く対象とした制度。 |
○ |
高齢化・少子化対策の一環として逐次その充実が図られ、平成16年に小学校3年生までの児童に拡大(従前は義務教育就学前の児童)。第1子・第2子=5,000円、第3子以降=10,000円(いずれも月額)を支給。支給対象児童数は、制度発足当時(昭和46年度)112万人、平成12年度578万人、16年度936万人。 |
担当部局 |
: |
総務省行政評価局行政相談課 |
|
連絡先 |
: |
行政相談業務室長 |
安治川 博 |
課長補佐 |
山岡 壽行 |
|
|
電話 |
: |
5253-5423(直通) |
|
FAX |
: |
5253-5426 |
|
|
行政苦情救済推進会議における意見要旨
○ |
子どもがいる以上、誰かが養育しており、その者に間断なく支給することが制度の趣旨であって、支給にすきまが生じるような制度・運用は改善すべきものと考える。
|
○ |
法は支給の要件を「監護し、生計を同一(又は維持)する」こととしているが、要は「子どもの養育費を負担している」者に支給するという趣旨であるとすれば、行方不明等の確認に時間をかけなくても、「養育費の負担者が変わった」事実を確認することにより、真に養育費を負担する者に支給することが可能になり、この取扱いが法の趣旨に沿うものではないか。 |
|
(行政苦情救済推進会議)
総務省に申し出られた行政相談事案の処理に民間有識者の意見を反映させるための総務大臣の懇談会(昭和62年12月発足)。会議の現在のメンバーは、次のとおり。
(座長) |
塩野 宏 |
|
東亜大学大学院教授 |
|
大森 政輔 |
|
元内閣法制局長官 |
|
大森 彌 |
|
千葉大学法経学部教授 |
|
加賀美幸子 |
|
千葉市女性センター名誉館長 |
|
加藤 陸美 |
|
財団法人健康体力づくり事業財団理事長 |
|
田村 新次 |
|
中日新聞社参与 |
|
堀田 力 |
|
さわやか福祉財団理事長、弁護士 |
〇 児童手当法(昭和46年法律第73号)
(目的)
第1条 |
この法律は、児童を養育している者に児童手当を支給することにより、家庭における生活の安定に寄与するとともに、次代の社会をになう児童の健全な育成及び資質の向上に資することを目的とする。 |
(支給要件)
第4条 |
児童手当は、次の各号のいずれかに該当する者が日本国内に住所を有するときに支給する。 |
一 |
次のイ又はロに掲げる児童(以下「支給要件児童」という。)を監護し、かつ、その生計を同じくするその父又は母
|
イ |
三歳に満たない児童(月の初日に生まれた児童については、出生の日から三年を経過しない児童とする。以下同じ。) |
ロ |
三歳に満たない児童を含む二人以上の児童 |
二 |
父母に監護されず又はこれと生計を同じくしない支給要件児童を監護し、かつ、その生計を維持する者 |
三 |
児童を監護し、かつ、これと生計を同じくするその父又は母であって、父母に監護されず又はこれと生計を同じくしない児童を監護し、かつ、その生計を維持するもの。ただし、これらの児童が支給要件児童であるときに限る。 |
2 |
前項第1号又は第3号の場合において、父及び母がともに当該父及び母の子である児童を監護し、かつ、それと生計を同じくするときは、当該児童は、当該父又は母のうちいずれか当該児童の生計を維持する程度の高い者によって監護され、かつ生計を同じくするものとみなす。 |
第5条 |
児童手当は、前条第1項各号のいずれかに該当する者の前年の所得(1月から5月までの月分の児童手当については、前前年の所得とする。)が、その者の所得税法(昭和40年法律第33号)に規定する控除対象配偶者及び扶養親族(以下「扶養親族等」という。)並びに同項各号のいずれかに該当する者の扶養親族等でない児童で同項各号のいずれかに該当する者が前年の12月31日において生計を維持したものの有無及び数に応じて、政令で定める額以上であるときは、支給しない。 |
2 |
前項に規定する所得の範囲及びその額の計算方法は、政令で定める。 |
(認定)
第7条 |
受給資格者は、児童手当の支給を受けようとするときは、その受給資格及び児童手当の額について、住所地の市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)の認定を受けなければならない。 |
2 |
前項の認定を受けた者が、他の市町村(特別区の区長を含む。以下同じ。)の区域内に住所を変更した場合において、その変更後の期間に係る児童手当の支給を受けようとするときも、同項と同様とする。 |
(支給及び支払)
第8条 |
市町村長は、前条の認定をした受給資格者に対し、児童手当を支給する。 |
2 |
児童手当の支給は、受給資格者が前条の規定による認定の請求をした日の属する月の翌月から始め、児童手当を支給すべき事由が消滅した日の属する月で終わる。 |
3 |
受給資格者が住所を変更した場合又は災害その他やむを得ない理由により前条の規定による認定の請求をすることができなかった場合において、住所を変更した後又はやむを得ない理由がやんだ後15日以内にその請求をしたときは、児童手当の支給は、前項の規定にかかわらず、受給資格者が住所を変更した日又はやむを得ない理由により当該認定の請求をすることができなくなった日の属する月の翌月から始める。 |
4 |
児童手当は、毎年2月、6月及び10月の三期に、それぞれの前月までの分を支払う。ただし、前支払期月に支払うべきであった児童手当又は支給すべき事由が消滅した場合におけるその期の児童手当は、その支払期月でない月であっても、支払うものとする。 |
第11条 |
児童手当の支給を受けている者が、正当な理由がなくて、第26条の規定による届出をせず、又は同条の規定による書類を提出しないときは、児童手当を一時差しとめることができる。 |
(不正利得の徴収)
第14条 |
偽りその他不正の手段により児童手当の支給を受けた者があるときは、市町村長は、受給額に相当する金額の全部又は一部をその者から徴収することができる。 |
第26条 |
第8条の規定により児童手当の支給を受けている者は、厚生労働省令で定めるところにより、市町村長に対し、前年の所得の状況及びその年の6月1日における被用者又は被用者等でない者の別を届け出なければならない。 |
2 |
児童手当の支給を受けている者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の規定により届出をする場合を除くほか、市町村長に対し、・・・厚生労働省令で定める事項を届出、かつ、厚生労働省令で定める書類を提出しなければならない。 |
※ 児童手当法施行規則(昭和46年9月4日厚生省令第33号)
(受給事由消滅の届出)
第7条 |
受給者は、児童手当の支給を受けるべき事由が消滅したときは、速やかに・・届出を市町村長に提出しなければならない。ただし、引き続き法附則第6条第1項の支給を受けることとなるとき、又は受給者に係る支給要件児童が3歳以上の児童となったことにより、引き続き法附則第7条1項若しくは第8条第1項の給付の支給を受けることとなるときは、この限りでない。 |
(特例給付)
附則第6条 |
当分の間、第18条第1項に規定する被用者又は第17条第1項に規定する公務員であって、法4条に規定する要件に該当するもの(第5条第1項の規定により児童手当が支給されない者に限る。)に対し、第20条第1項に規定する一般事業主又は第18条第3項各号に定める者の負担による給付を行う。 |
(3歳以上小学校第3学年修了前の児童に係る特例給付)
附則第7条 |
当分の間、次の各号のいずれかに該当する者であって日本国内に住所を有するものに対し、児童手当に相当する給付を行う。 |
一 |
次のイ又はロに掲げる児童(以下「小学校第3学年修了前特例給付支給要件児童」という。)を監護し、かつこれと生計を同じくするその父又は母
イ |
3歳以上の児童であって9歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者(以下「3歳以上小学校第3学年修了前の児童」という。) |
ロ |
3歳以上小学校第3学年修了前の児童を含む2人以上の児童 |
|
二 |
父母に監護されず又はこれと生計を同じくしない小学校第3学年修了前例給付支給要件児童を監護し、かつ、その生計を維持する者 |
三 |
児童を監護し、かつ、これと生計を同じくするその父又は母であって、父母に監護されず又はこれと生計を同じくしない児童を監護し、かつ、生計を維持するもの。ただし、これら児童が小学校第3学年修了前特例給付支給要件児童であるときに限る。 |
附則第8条 |
当分の間、第18条第1項に規定する被用者又は第17条第1項に規定する公務員であって、前条第1項に規定する要件に該当するもの(同条第2項の規定により同条第1項に給付が支給されない者に限る。)に対し、同項の給付に準じた給付を行う。 |
〇 児童手当関係法令上の疑義について(昭和46年12月8日付け児手第40号)
(問)
受給者の失踪等の場合、父(受給者)が出かせぎによる行方不明である場合、受給者の変更はいつの時期、その証明はどのような書類でされるか。
|
(答)
(一 |
) 父(受給資格者)が児童を遺棄したことが母からの申立書等により客観的に把握される場合、児童を遺棄した時点において、父の受給資格を消滅させるものとする。 |
(二 |
) 父が家を出て、あるいは出かせぎ先で音信不通となり、その後1年間何らの連絡がないまま経過したときは、さかのぼって、家を出た時点あるいは音信不通となった時点において、児童を監護しなくなったものとして取り扱うものとする。 |
(三 |
) 父の乗った船舶が沈没した場合その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した場合でその後三カ月生死が明らかでないときは、船舶が沈没したとき、またはその他の危難が去った時点において受給資格を消滅させるものとする。 |
(四 |
) (二)及び(三)についても、母からの申立書等に基づいて処理するものとする。 |
|
〇 児童手当関係法令上の疑義について(昭和47年2月18日付け児手第20号)
(問)
児童手当法第8条第3項に規定する「やむを得ない理由」として遺棄・行方不明及び生死不明を取り扱い、その理由のやんだ後(遺棄のときは、その時期、行方不明のときは、1年経過後、生死不明のときは、3カ月経過後)15日以内に認定請求するときは、変更前の受給者名義でそのやむを得ない理由としての遺棄・行方不明又は生死不明の生じた日の属する月まで支給し、その翌月から認定を請求した者(その理由の生じた日以降当該児童を監護し、一定の生計関係にある者に限る。)に支給すべきか。なお、その理由の生じた旨の申立てが遅れた場合、すでに変更前の受給者名義で受給していることが考えられるが、当該理由の生じた日の属する月の翌月以降分の児童手当は、返還させることとしてよいか。
|
(答)
お見込みのとおりであること。
|
 |
(注) |
上記の行方不明のときは1年経過後、生死不明のときは3カ月経過後とあるのは、46年通知の(二)及び(三)のケースである。 |
 |
児童手当を行方不明の夫に代わって、
妻の私に早く支給して!
|
○ |
市町村の中には、受給資格者が行方不明であるとの申立書が提出された場合、画一的に1年間様子をみて、当該受給資格者が監護していないことを確認し、その受給資格を消滅させた後、現に監護する者を新たな受給資格者に認定
( |
厚生労働省通知では、確認期間を事故等による生死不明の場合は3か月、行方不明の場合は1年間としている。) |
|
|
○ |
現に監護する者の申立等に基づき、当該監護者が児童を監護している事実が確認できれば、1年間様子をみることなく、従前の受給資格を消滅させ、新たな受給資格者に認定 |
|
|