食品は、人の生命、健康の維持・増進のために必要不可欠なものであり、食品の製造・輸入等から加工・調理等を経て消費に至る各段階において食品の安全・衛生を確保することが極めて重要である。
しかし、近年、食生活の多様化による輸入食品、加工・冷凍食品の増加等に伴い、食品の製造、流通形態が大きく変化している。また、腸管出血性大腸菌O157等の新興感染症病因物質等による大規模な食中毒事件が発生してきており、生命、健康の安全を脅かすこれらの事態に迅速・的確に対応することが求められている。
このため、厚生省は、食中毒による健康被害に対する健康危機管理体制を整備する等の食中毒事件への対応策の充実を図るとともに、食中毒事件が発生した場合、多数の健康被害者が発生するおそれのある学校等の集団給食施設に対し、保健所の一斉点検を推進する等の食中毒事件発生防止対策の充実を図ってきている。
しかしながら、食中毒事件の発生件数は、平成7年には699件であったものが11年には2,697件と3.9倍に増加している。また、大規模な食中毒事件も依然として発生しており、重大な食中毒事件に対応した適切な健康危機管理対策の策定等の食中毒拡大防止対策等を迅速に講ずることや食中毒の効果的な発生防止を図ることが喫緊の課題となっている。
また、食品に残留するダイオキシンや内分泌かく乱化学物質(いわゆる環境ホルモン)の安全性や遺伝子組換え食品の表示に関する国民の関心が高まっており、これらの食品の安全対策及び表示対策の充実強化が求められている。
この監察は、食品の安全・衛生を確保する観点から、食中毒発生時の危機管理対策の実施状況、食中毒の発生防止対策の実施状況、輸入食品に係る監視指導の実施状況、食品残留化学物質に対する安全確保対策及び新開発食品に対する表示対策の実施状況を調査し、関係行政の改善に資するために実施したものである。