都市内駐車場に関する行政監察結果(要旨)

依命通知日: 平成9年3月27日
依命通知先: 建設省

【調査の実施時期等】

  1. 実地調査時期:平成8年4月〜7月
  2. 調査対象機関:建設省、都道府県(12)、都道府県公安委員会、市区(37)、関係団体等
  3. 調査担当部局:行政監察局、管区行政監察局(6)、行政監察事務所(6)



【監察の背景事情】

 近年のモータリゼーションの進展は、自動車交通の著しい増大と駐車場の需要を飛躍的に増大させ、都市内の駐車施設の絶対的不足(平成8年度末の駐車場充足率約65%)、地区レベルにおける駐車需要と駐車施設の供給量との不均衡等により、路上駐車が都市内の商業業務地区を中心に発生(東京都・大阪府内の平成7年瞬間路上駐車約43万台)。
 国は、平成3年の駐車場法(昭和32年法律第 106号)改正に基づき、駐車場整備地区の対象区域の拡大及び同地区内における駐車場整備計画の策定の義務付け、附置義務対象建築物の床面積下限の引き下げ等を行い、併せて特定交通安全施設等整備事業等の補助制度の創設等の措置により駐車場整備を推進。しかし、駐車場需要に見合った整備が十分進んでいない。
 このような状況を踏まえ、都市内の駐車場について計画的かつ効率的に整備していく観点から、駐車場行政の改善に資するために調査を実施。



【勧告の要旨】

1 駐車場の計画的かつ効率的な整備

  1.  駐車場整備を重点的に進めるための駐車場整備地区の指定、見直しや駐車場整備計画の策定が的確に行われておらず、駐車場の整備が計画的に進められていない。

    駐車場整備地区:自動車交通が著しくふくそうする地区において重点的に駐車場整備を進めるために市町村が指定。平成3年の法改正により、整備地区内における駐車場整備計画策定義務付け。
 整備地区の状況:建設省が指定を促進している全国の人口10万人以上都市218 都市中123 都市(56%)が未指定。未指定都市(例)中野区、浦和市、東大阪市等、これら都市では駐車場の慢性的不足、都市計画駐車場の整備も整備地区指定都市が平均約4箇所に対し、未指定都市の平均は約0.4 箇所。
 整備地区の見直し:調査した29地区のうち、用途地域の変更等に即した見直しを行っているものは9地区(31%)のみ。
   整備計画の策定:29地区のうち19地区(66%)において未策定。策定されている整備計画も、内容不十分なものが4地区。

  2.  道路管理者である地方公共団体が実施する駐車場の整備は、必ずしも、各種の駐車場整備施策との連携を図った重点的な整備とはなっていない。また、地方建設局が実施する駐車場の整備については、未着工のものが少なくなく、中には着工のめどが立たないものがある。

    特定交通安全施設等整備事業による駐車場整備:平成3年度から路上駐車が原因となる交通渋滞を解消するため、道路管理者が実施。
 補助事業の実施状況:全国88箇所で補助採択、うち32事業箇所について調査、このうち整備地区外に整備(5)、整備計画に掲げていないもの(3)、この中で利用率が低いもの(2)。
 直轄事業の実施状況:全国の29箇所中、未着工16箇所(55%)。このうち、駐車需要が減少し、駐車場規模の変更等を要する、地下水脈により工事費用の大幅な増加が見込まれる等のため、着工のめどが立たないもの(11箇所)。

1)  整備地区の指定及び見直し並びに整備計画の策定及びその見直しを的確に実施した上で、駐車場整備を進めるよう指導すること。
2)  道路管理者が特定交通安全施設等整備事業(補助事業)により行う駐車場整備については、駐車場法担当部局との連携を図った上で、駐車場整備地区における駐車場整備計画等に沿った重点的な整備を進めるよう指導すること。
直轄事業により行う駐車場の整備のうち着工のめどが立たないものについては、事業内容の見直しを行うこと。

2 駐車場法に基づく届出制度の合理化

  1.  駐車場設置の届出は、行政手続法第37条の適用を受け、構造・設備基準の適合状況の審査まで求めるものではないにもかかわらず、設置届出時において、全ての都道府県、市が審査等を行っているため、受理までに長期を要している。

    駐車場の設置届出:法第12条により、都市計画区域内に設置する面積500 平方メートル以上の有料の路外駐車場は、事前に都道府県知事等に設置届出を義務付け。平成7 年度の届出件数は、136 件。
 設置届出事務権者による構造・設備の審査状況:調査した27設置届出事務権者の審査は区々(書面審査18、事前協議実施5、現地調査実施6(事前協議と重複2 ))。
 受理までの期間:抽出した172 件中、21日以上要しているものが東京都等115 件(67%)。

  2.  設置届出の事務を行う都道府県の事務体制が整っていないため、無届け駐車場や構造・設備基準の適合状況の把握、指導が十分行われていないが、届出制度の実効を挙げるための市町村長への権限委任が進んでいない。

    市町村長への権限委任状況:調査した12都府県のうち全部委任は6県のみ。
 無届け駐車場:抽出301 駐車場中109 駐車場(36.2%)。
 構造・設備基準に不適合駐車場:抽出64駐車場中26駐車場(40.6%)。

1)  駐車場設置届時における設備・構造基準についての審査を廃止するよう指導すること。
2)  市町村長への権限委任を促進し、無届け駐車場、構造・設備基準に不適合な駐車場の把握、指導を徹底すること。

3 附置義務制度を活用した効率的な駐車施設の整備

    附置義務条例制定の状況:10万人以上50万人未満の都市の半数が条例未制定。
 平成3年法改正等に即した附置義務条例の改正未実施:調査した都市の4割が未改正。

4 既存駐車場の有効利用の促進

    駐車場案内システム整備状況:全国32都市で整備、人口30万人以上の都市の約6割が未整備。
 

【資料編】
資料1 駐車場整備に係る施策の概要
資料2 駐車場の整備状況等



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