要援護高齢者対策に関する
行政監察結果に基づく勧告
−保健・福祉対策を中心として−
我が国では、少子・高齢化の進行に伴って65歳以上の高齢者の人口が増加しており、平成10年(1998年)には2,051万人と総人口(1億2,649万人)の16.2パーセントを占め、37年(2025年)には3,311万人(総人口の27.4パーセント)に達すると予測されている。
このうち、介護や看護等を必要とする寝たきり老人、痴呆性老人等の要援護高齢者数は、現在、200万人以上に上っており、今後も、12年(2000年)には280万人、37年(2025年)には520万人と急激な増加が見込まれている。また、65歳以上の高齢者のいる世帯は、平成9年(1997年)に1,405万世帯と全世帯(4,467万世帯)の31.5パーセントを占めており、このうち、単独世帯(248万世帯)及び夫婦のみの世帯(367万世帯)が43.7パーセントに上っている。
このような状況下で、高齢者介護の問題は、国民にとって老後の最大の不安要因の一つになっており、高齢者に対する自立の支援、家族の介護負担の軽減や就業の確保等の社会的な支援施策の確立が大きな課題となっている。
国は、これまで、老人保健法(昭和57年法律第80号)及び老人福祉法(昭和38年法律第133号)に基づき、国民の老後における健康の保持、医療の確保、要援護高齢者に対する保健福祉サービス等の充実を図ってきている。また、これらサービスの提供基盤である体制や施設に関しては、「新・高齢者保健福祉十か年計画(新ゴールドプラン)」(平成6年12月18日大蔵・厚生・自治3大臣合意)及び地方公共団体が作成する老人保健福祉計画に基づき、国の支援の下に地方公共団体が中心となって計画的な整備が進められているところである。
しかし、現行の要援護高齢者に関する施策については、1)老人福祉と老人保健の2つの異なる制度の下では、介護等サービスを総合的に提供することが困難であること、2)老人福祉制度においては、行政側が提供するサービスの種類、機関を決めることとされているため、利用者が自由に選択できないこと等の問題があるとして、平成9年12月、介護保険法(平成9年法律第123号)の制定により、新たに、社会保険方式により、利用者自らの選択による保健・福祉・医療サービスの総合的利用を確保する介護保険制度が創設され、12年度からの実施が予定されている。
介護保険制度の実施に伴って、現行の保健福祉サービスの対象とされている要援護高齢者の大部分は、この新たな制度による介護等サービスを利用することになるとみられ、本制度の円滑な実施が求められている。このためには、特に、利用者のニーズを踏まえた各種サービスの提供基盤が計画的かつ重点的に整備されるとともに、各種サービスが適切かつ効率的に提供され、利用者が自らサービスを選択するために必要な情報が広く提供されること等が重要である。
この監察は、介護保険制度の円滑な施行及び要援護高齢者のニーズを踏まえた保健・福祉対策を総合的に推進する観点から、国及び地方公共団体における関係施策の推進体制、実施状況等を調査し、関係行政の改善に資するために実施したものである。
1 ニーズを踏まえたサービス提供基盤整備計画の策定 | ||
2 サービス提供基盤の整備推進 | ||
(1) | 介護保険施設の在り方の見直し | |
(2) | 施設基準等の見直し | |
ア 特別養護老人ホーム | ||
イ ショートステイ事業 | ||
(3) | ホームヘルプサービスの充実 | |
3 事業運営の見直し | ||
(1) | 特別養護老人ホームにおける入所措置の適正化 | |
(2) | ホームヘルパー業務の見直し | |
4 サービス利用者に対する情報の積極的な提供 |