2010年代のケーブルテレビの在り方に関する研究会(第8回会合)
【多賀谷座長】 ただいまから2010年代のケーブルテレビの在り方に関する研究会の第8回会合を開催します。皆さん、ご多忙の折ご出席いただき、ありがとうございました。
それではまず、資料の確認をお願いします。
【井上地域放送課課長補佐】 それでは、本日の配付資料の確認をさせていただきます。
資料は、座席表、議事次第のほか、
補足資料「米国におけるパブリックアクセスチャンネルの編集責任について」
資料8−1「MSOと農村型ケーブルテレビの今後の方向性等について(案)」
資料8−2「2010年代のケーブルテレビの在り方(案)」
資料8−3「『2010年代のケーブルテレビの在り方に関する研究会』報告書目次(案)」
の4点でございます。
資料の最後に、前回会合の議事録をつけております。なお、傍聴の皆様分につきましては、議事録を割愛させていただいております。資料に不足等ございましたら、事務局までお願いいたします。
【多賀谷座長】 続きまして、前回、KDDI株式会社の構成員の変更があった旨ご紹介しましたが、今回、藤本構成員にご出席いただいていますので、改めてご挨拶いただきます。
【藤本構成員】 KDDIの藤本です。途中でメンバーがころころかわりまして、大変ご迷惑をおかけいたしましたけれども、これからは私が務めさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
【多賀谷座長】 また、人事異動に伴い総務省側の出席者に変更がありましたので、ご挨拶願います。
【藤島地域放送課長】 11月3日付で地域放送課長を拝命いたしました藤島と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。
【多賀谷座長】 それでは本日の議題に入ります。本日はケーブルテレビ事業の運営形態に関する論点整理と、構成員のアンケートに基づく「2010年代後半のケーブルテレビの在り方」について議論してまいりたいと考えております。また、そろそろ当研究会の報告書を取りまとめなければなりませんので、その構成についても検討してまいりたいと思います。
それではまず、これまでの会合でも論点の1つとなっております、MSOと農村型ケーブルテレビの今後の方向性等につきまして、議論してまいります。当研究会のこれまでの議論やヒアリング結果を踏まえ、事務局でたたき台の資料を作成しましたので、ご説明願います。
【井上地域放送課課長補佐】 まず最初に、前回の研究会で宿題をいただいておりました、米国におけるパブリックアクセスチャンネルの編集責任につきまして、補足資料に基づきましてご説明申し上げたいと思います。
補足資料をごらんいただきたいと思います。米国におけるパブリックアクセスチャンネルの編集責任はだれにあるのかということを宿題としておりましたが、ご説明いたします。
もともと米国では、フランチャイズ当局がケーブルテレビ事業者に対してチャンネル容量の一部を、公共用、教育用、行政用として指定し、使用することを要求することができると。米国のケーブルテレビにおけるパブリックアクセスチャンネルは、この公共用、教育用、または行政用のチャンネル、いわばPEGチャンネルの中に含まれておるものでございます。なお、現行の通信法におきましては、このPEGチャンネルは公衆通信ではなくケーブルサービス、ケーブルテレビの一部として扱われてございます。
編集権のことでございますが、このPEGチャンネルにつきましては、ケーブルテレビ事業者は編集権の行使を原則としては禁止されておりますが、わいせつな表現や下品な表現を含む番組については、ケーブルテレビ事業者が編集権を行使して、伝送を拒否することができることとされております。このPEGチャンネルの編集責任につきましては、わいせつな内容の素材等を含まない限り、ケーブル事業者は刑事上及び民事上の責任を負わないとされてございまして、放送されたPEGチャンネルの番組に対する民事上、刑事上の責任は、個々の番組提供者が負うこととなってございます。以上で、前回の宿題を終わらせていただきます。
続きまして、本日の議題でございます資料8−1からご説明させていただきたいと思います。資料8−1「MSOと農村型ケーブルテレビの今後の方向性等について(案)」をご覧いただきたいと思います。
まず、この資料の構成でございます。最初に現状を説明させていただきまして、その後論点、それから現在のサービスの状況、それからそれぞれが抱える今後の課題等につきまして説明させていただきたいと思います。
次に、現状といたしまして、ケーブルテレビの運営主体別の事業者数等でございます。平成18年6月現在のものでございますが、株式会社等、地方公共団体等ございます。MSOの傘下にあるケーブルテレビ事業者には、この上の段の株式会社等である営利法人、それから三セクの一部が含まれてございます。一方、いわば農村型のところにつきましては、地方公共団体直営のもの、2行目でございますけれども、ここに含まれるというふうに考えてございます。
次に、現在のMSOの市場規模の状況でございます。主にMSOと言われるのはこの4社ございますが、ジュピターテレコムとケーブルウエストさんは資本提携されています。それ以外にジャパンケーブルネット、メディアッティ・コミュニケーションズがございます。
次に、MSOの市場規模、どのぐらいのマーケットシェアがあるかということでございますけれども、左側、総加入世帯数に占める市場占有率の割合は約4割強、それから、営業収益の市場占有率につきましても4割強をMSOが占めている状態でございます。
次に論点に入りますが、これまで議論いただいた中でも、MSOは4割強を持つものでございますけれども、その拡大するMSOについて、地域性という観点から、今後どのようなコンテンツ提供を展開していくと考えられるか。具体的には、MSOを構成している複数のケーブルシステムに対し全く同じ番組展開を行い、ソフトコンテンツは全国均一を志向するのか。それとも、構成している複数のケーブルシステムに、コンテンツは一定程度の違い、固有性を持たせ、地域密着型のソフトを数多く提供して、地域との一体性を維持する方向に行くのか。それからこの研究会といたしまして、MSOと農村型とを区別して議論するべきか。こういう論点に基づきましてご説明させていただきたいと思います。
現状のサービス状況でございますけれども、まずはMSOでございますが、両面ございます。1つはスケールメリットが働く、全国で共通するサービスを効率よく提供する。例えばCS、BS、全国共通のものについては、センターから各局に配信等を行ったり、それから番組表を、CS、BS共通する部分を全国共通でつくるということをしております。その番組表の中の折り込みのところで、コミュニティチャンネル等、それぞれの地域のものは別に、それぞれのケーブル事業者ごとに挿入しているものが多くございます。そういったスケールメリットが働く全国共通のサービスの一方で、やはりMSOのほうでも、地域に密着したサービスというのは意識されておるということでございます。この背景につきましては、やはり他メディアとの競争を踏まえた差別化、それからケーブルテレビとしての歴史的役割、それから認識等があるものと考えられるものでございます。
具体的にはということでは、各局のコミチャンのところでは各局ごとに地域に密着した番組を放送されておる。それからコミュニティチャンネル以外のメディアといたしまして、FOD(Free On Demand)という形でその地域の情報を発信している。それから地域サービスの活動ということで、放送とか通信の世界ではないんですけれども、地域に密着したイベントをケーブルテレビ主催で開催したり等、地域に密着したサービスも意識しながら展開しているのが実情でございます。
次に、農村型のCATV、西会津町の資料を挿入させていただきましたけれども、西会津町におきましては、テレビからインターネット、それからアプリケーション等を提供されておるところでございます。背景にはということでございますが、これは西会津町の資料でございますけれども、やはり西会津町のような中山間地域では、そういった民間事業者の方が参入してこないというような状況もございまして、公設公営でやられているというふうに承知してございます。
次に、それぞれが考える今後の課題等でございますけれども、MSO、ジュピターテレコムさんが提出された今後の課題の資料でございますが、やはり冒頭に、地域密着型営業、カスタマーサービスのさらなる強化、地域密着型コンテンツのさらなる充実ということでありまして、MSOであっても、地域密着は今後とも重要なコンセプトであると認識されているものと思います。
一方、農村型が考えている課題といたしましては、1つにはやはり財政面。いかに公設公営でやりながら、財政的に健全な体質を保つかということが主たる課題でございますし、一方、個別のケーブルテレビ事業者さんの課題を見ましても、通信速度の高度化とか放送のデジタル化への対応等、そういった技術面の話もございますし、それからここの資料で言うところの(5)で、情報化を進める隣接町村との連携というのがございますように、ここでは他事業者と掲げさせていただいておりますが、隣の市町村との連携、アライアンスを模索しているというのも課題であると承知してございます。
最後に取りまとめでございますが、やはりMSO型であっても農村型であっても、地域密着ということは引き続き重要なコンセプトであると思います。それから、それぞれが抱える課題につきましては濃淡がございますけれども、例えば農村型のケーブルテレビにつきましても、財政面の健全化、ケーブルテレビ事業の収支の健全化等に取り組んでおりまして、そのために必要となるサービスを導入していくことは重要なことであると認識されてございます。技術面の課題等といたしまして、放送のデジタル化対応、それから通信速度の高速化等も課題を有しておるところでございます。農村型ケーブルテレビにつきましても、社会的・文化的事情を背景としまして、隣接市町村、地域とのアライアンスを模索しているという状況でございます。
これを取りまとめますと、MSOであってもほかのメディアとの差別化という観点から、地域密着というのは非常に重要なコンセプトで取り組まれておるところでございます。一方、農村型でありましても、赤字を増やすようなものではなく、収益構造の健全につながるようなサービス面の充実、それに基づく財政の健全化、それから技術の高度化、それからアライアンスの模索等、MSOと共通するような課題も有しておるところでございます。
従いまして、研究会としての事務局案でございますけれども、2010年代のこれからあるべき姿をご検討いただくに当たりまして、両者が抱えている課題というのは基本的には共通であると。優先順位のつけ方に差異はあるかもしれませんが、基本的には課題というのは両者共通であるという認識のもと、今後も基本的にはあるべき姿としては、MSOであっても農村型であっても同じ方向で検討していきたいと考えております。
以上でございます。
【多賀谷座長】 それではただいまの2つの資料、アメリカのパブリックアクセスチャンネルの話と、それからMSOと農村型ケーブルテレビの今後の方向性等につきまして、ご意見、ご質問ございましたら、ご自由にご発言願います。
【石橋構成員】 MSOと農村型ケーブルテレビの今後の方向性ということで、今ご説明のありました結論が、最後の8ページの一番下にあるわけですけど、私はこういうことでいいんじゃないかなと思っております。
1つは、ケーブルじゃなくてもいろいろ過去の事例を考えてみますと、やはり当初は都市部とか、あるいは大規模とかいうところで物事が発展していく、成長していくということがあるんですが、ある時間差でそれが全国に広がっていくというような現象があるということ。もう一つは、アメリカもMSOだらけと思われがちなんですが、実は相当小規模の局が各地に点在しております。そういうところも、うまくやっているのはやはり新しい技術を取り入れ、MSO並みの経営感覚でやっていっている。ただ規模は小さいですから、できることとできないことがあるようでして、特に自力で難しい場合には、例えばMSOからそのサービスを買うというようなこともやっているように聞いていますので、そういう意味からも、やはりこの研究会としては基本的には同じということで議論をすると。ここに書いていますとおり、優先順位云々ということではなかろうかと思います。
【多賀谷座長】 今日の事務局の説明を聞いていると、これはある意味で新聞みたいなものかなという感じがして、MSOが全国ネットの新聞で、新聞の場合にはしかし地域版という形で、それぞれの地域のページが1面あるというところがある。そして実は東京近郊のところでは専らそれでやっていくわけですけれども、ほんとのローカルに行くと、どっこいローカル新聞が頑張っているという状況もあります。そういう意味で、MSOと農村型テレビがどうなるかというのは、今後の動向も見なければいけないんですけれども。
ただ、私がちょっと問題点として提起したいのは、地域密着型をしなければいけないということは、それは何を意味するかということについて考えたほうがいいだろうと思います。あるいはご存知の方はいらっしゃると思いますけれども、最近ニュースや何かを見ていますと、KDDIとかソフトバンクとケーブルテレビとの間の連携というようなことが出てまいります。その場合の連携において、通信事業者が何をケーブルテレビに求めているのか。地域密着型の話なんですけど、それは地域密着型のコンテンツの提供というよりは、地域に根を張って営業ができるといいますか、要するに地域との間の連関という点がやはり通信事業者にはない、そのところを使いたいということだと思うんです。それは地域密着の意味がやっぱり両方あると思うんです。地域密着型のコンテンツを提供するという話と、地域に根を張ってそこで営業をしているということで、だからそれを含めてということでしょうけれども、ローカルのケーブルテレビ局の地域密着というものをどういう点に生かすか、ほかの通信・放送事業者との間のアライアンスがあるとしたら、それがどういう形で生き残っていくかというのを、おそらく検討されなければいけないだろうと思うんです。
【藤本構成員】 確かに今おっしゃったように、地域密着というのは2つの意味があるだろうと思います。私の立場、KDDIの立場で申し上げている地域密着も、まさにその2つを使い分けているつもりでございまして、1つは例えば、その事業者自身の事業体制、営業体制としての地域密着ですね。これは地域に対する例えば顔という、つまりよく知った営業マンが来る、あそこに電話をすればどんなことでも親切に答えてくれる、そういう意味での営業体制に象徴されるような地域との密着と、それともう一つは、こっちのほうが私は大事だと思うんですけれども、地域の安全・安心、あるいは教育であるとか、そういう豊かなローカル性を発展させていく為の、あるいは高齢化していく社会に対してどう貢献していくかという、いわば情報の内容、コンテンツの内容、という切り口での地域密着と2つあると思います。
ケーブルテレビの本当の強さというのは、この後者のほう、要するに、地域にとってケーブルテレビの持つコンテンツ、特にコミチャンの存在等が必要だという認識を持ってもらったところが、多分一番強いだろうと思います。それを支えていく一つの体制として、地域に根を張った、営業及びアフターフォローを行うということ。これは表裏一体であっても、確かに性格は違うと思うんです。ここで言う地域密着を志向していくというのは、おそらく実態においては両方の面で追っていくんでしょうけれども、私はやっぱり後者のほう、いかに世の中に貢献していくか、その地域にとってなくてはならない存在になるか、それはコンテンツの問題だと思いますので、そこの部分に力点を置いて私はこの資料を読ませていただいたというところです。
【音構成員】 4枚目の、MSO型も農村型も地域密着ということがコンセプトというのは、これはまさに今までのご報告を拝見している限りは確かにそうだと思うんですけれども、今座長がご指摘されたように、地域密着の中身の精査がやっぱり必要なのではないかというのが1点目と、それから今後、私の認識は前回ご報告させていただきましたとおり、やはりもう少し日本のケーブルテレビ産業の中でのある種の再編成といいましょうか、変化というものが起こっていく中で、じゃ、ここで言われております地域密着というものが、特に後者の部分がどういうふうな形でより発展していくのかという、その道筋というものを示さなくてはいけないのではないのかなと。または、それがそれぞれの自由闊達な事業活動の中で後退していくというような危険性はないのかというある種の懸念を、私のような研究者の立場からすると思わざるを得ないところはあると思います。前回ご紹介させていただいたような現実の事例として、そういうことが起こっているところもないわけではないですので、そのあたりに対する配慮というのは、ちょっと注意をしながらする必要があるのではないのかなと。
この研究会としてその両者をあわせて議論をしていくことに関して、私は反対するものでは全くございませんけれども、事業発展、産業的な発展を考えるがゆえに、そのあたりへの配慮を政策的に考える必要があるのではないのかなという認識でございます。
【中村構成員】 今、地域密着に関してお二人の話がありました。私も基本的には同じ考えを持っております。今日のこの研究会にお集まりの皆さんは、地方のケーブル事業者は地域密着であるとおっしゃるのですが、私自身、富山で事業をやっていて、どうなんだろうかということを考えると、ちょっと寒くなるというのが本音です。そういう意味で、この安心・安全、教育と言われるコンテンツのさらなる充実強化というのは必須だろうと。ほんとにこの事業が地域に必要不可欠なツールとして認知されるためには、その面の強化が一層必要だと考えております。
【竹岡構成員】 今のご報告は、私どもは非常に合理的な結論ではないかと思います。私どもは衛星放送協会の各事業者、番組供給事業者として、全国のケーブルテレビ局とお付き合いをさせていただいているわけですけれども、多チャンネルの契約者数というのは、大体今のケーブルの契約者数の3分の1でございます。その中でやはり全国的なコンテンツであるとか海外のコンテンツ、これについての需要も非常に大きなものがございます。確かにスポーツであるとか各地域密着型、フランチャイズ制をとっておられるので、その中での濃淡はありますけども、やはり人気があるスポーツマンは全国共通であるということは一定でございます。そういう一つのベースの中で、各地域の情報と全国的、かつまたワールドワイドなそういう興味が重なって、いいケーブルテレビのサービスができるんじゃないか。
ですから、そういう日本全国すべてにわたるコンテンツと地域のコンテンツ、両方がマッチングをして、よりケーブルテレビの役割が果たしていけるんじゃないか。ですから、私どもの番組に出演した方が各地域のケーブルテレビ局におじゃまして、そういう地域密着の番組に出るだとか、そういうアライアンスも非常に強めておりますので、今後さらに、こういうバランスのとれた発展というのが必要になってくるんじゃないかなと考えております。
【中村構成員】 ネーミングについて一言。このMSOと農村型というネーミングが何となくひっかかるのです。性格を2分するとき、MSOはわかりやすいのですけれども、円グラフのデータと合わせて考えると、例えば企業型とか、都市型とかが良いように思いますし、農村型と言っても農村ばっかりではないので、地方型なのかなということです。都市型、地方型なのか、企業型なのか、三セク型なのか、そんなような名前は浮かんできます。もう少し検討してみたいと思いますが。
【多賀谷座長】 おそらく農村型じゃないネーミングを考えたほうがいいでしょうね。
【井上地域放送課課長補佐】 わかりました。
【多賀谷座長】 それでは、このテーマはこのぐらいにしたいと思いますけれども、最後に私から一言だけ申し上げますと、やはり基本的にMSOになるということは経済的合理性だと思うんですが、それは反面、リスクを伴うものであると。地域の安全・安心とかローカル性の担保というのは、中村さんが言うように、それを怠るようなケーブル局があると、やがては通信事業者全体のネットワークの中へ、おそらくケーブルテレビ自体が飲み込まれていって、存在しなくなってしまう、吸収されてしまうということになるんだろうと思います。
他方、そうはいっても農村型だか地方型だかわかりませんけど、それが単体でローカルで生き残るというのはそれなりにやはり経済的にはかなり困難で、そういう点については必要な限りにおいて、先ほども出てきたみたいに一定程度、通信の高速化とかデジタル化対応等については、ある意味での、MSOじゃないですけどもプラットフォーム的な連携をするというようなことも、今後検討しなければいけないだろいう気がいたします。
それでは、第1の議題は以上にしまして、次の議題に入りたいと思います。2010年代後半におけるケーブルテレビのあり方、役割につきまして、構成員の皆様にアンケート形式でご意見を伺いました。その結果を事務局で取りまとめましたので、当方から一旦全体の大枠等を説明させていただき、その後、構成員の皆様方から2〜3分ずつ、提出されたご意見についてご説明いただきたいと思います。それではお願いします。
【井上地域放送課課長補佐】 それでは、お手元の資料8−2「2010年代のケーブルテレビの在り方(案)」に基づきましてご説明させていただきます。
これまで第6回の本研究会で資料を出させていただきましたが、前々回では2010年代初頭の課題と方策をご議論いただきました。今回は2010年代後半、2015年ごろのところをご議論いただきたいと思ってございます。それに先立ちまして皆様からアンケートをいただいてございますので、これから後ほどご説明いただければと考えておりますので、事務局といたしましては大枠の部分をご説明させていただきたいと思います。
次に、2010年代のケーブルテレビのあり方として、我が国を取り巻く状況と、それにおけるケーブルテレビが果たすべき役割とは一体どういうものなのかというようなことをまとめさせていただいております。
社会的な情勢としては、現在は格差社会が言われていること、それから高齢社会等が言われているというところでございます。5年後の姿としては、2010年代初頭にこの格差というのが是正されているのかどうか。再チャレンジとか地域再生という施策を打っていますが、格差の是正というのがなされているのか。2010年代というのは予測するのはなかなか困難でございますが、一方であるべき姿を考えれば、世代間、それから地域間の格差の是正ということが必要であるだろうと。それについてはコミュニティの再構築とか、高齢者の方でも元気に生活、社会参画できる社会というのが、いわばあるべき姿ではないかと。
では、その中でケーブルテレビが持っている特性と申しますか、ケーブルテレビがやるべき業務、役割というのはどういうことかということで、例えば先ほども議論いただきましたように、地域密着サービスの提供ということで、コミチャンの高度化とか、さまざまな行政アプリケーション等も含めた、クインティプルと名づけさせていただいていますが、新たなサービスを提供していくということが、ケーブルテレビとして果たすべき役割ではないかと考えてございます。
そのような横の流れでございまして、例えば現在では国際競争力の強化が叫ばれておるところ、中ほどでございますけれども、国際競争力の確保というのが2010年代初頭には得られているのか。それから今から10年後のあるべき姿としてはやはり、国際競争力を確保していなければならないのでないか。
では、その中でケーブルテレビが果たすべき役割は何かといえば、国産技術の国際標準化ということで、例えばケーブルテレビですとFTTHが今進んでいるということでございますし、ホームネットワークというのも日本が取り組んでいる。そういったところでケーブルテレビの技術が国際標準になっていき、国際競争力を確保していく。そういったケーブルテレビの果たすべき役割というのがあるのではないかと考えてございます。
最後の下のほうでございますけれども、社会情勢もさることながら、ICTの足元を見ましても、5年後にはユビキタスネット社会というのが構築されていく。あるべき姿としては、それを踏まえたさまざまなサービスが提供されたり、デジタル放送サービスが高度化され、超高速ネットワークが整備されておる、そういうことが2010年代にはあるべきではないか。
では、その中でケーブルテレビが果たすべき役割は何かと言われれば、やはり放送サービスとしてフルデジタル映像を行うこと、地デジ、BS等のハイビジョンのものを再送信してやるとか、それから独自の自主放送であるコミチャンを高度化してやる。それから放送ではございませんが、VODのコンテンツを充実させていくということも必要でございますし、それからユビキタスネットワーク社会の基盤としてホームネットワーク、それから超高速インターネットアクセスとか、それから事業展開に応じた柔軟なネットワークを構築していく、そういったことが2010年代のケーブルテレビとしては果たすべき役割ではないかという概観をさせていただいたものでございます。
以下、皆様からいただいたアンケートをもとにまとめたものでございます。
次ページは、2010年代後半に予想される状況。前ページともかかわりますけれども、皆様からいただいたご意見をまとめさせていただいたものでございます。
次のページは、2010年代にケーブルテレビとして果たすべき役割についてそれぞれ個々に見て、皆様からいただいたアンケートをもとに、黄色で囲ってありますけれども、事務局のほうで見出しというか、ヘッドラインというものをつけさせていただいております。以下では、事務局のほうでいただいた意見のヘッドラインのところを簡単に触れさせていただきたいと思います。
フルデジタル映像サービスの提供ということで、地上、BS、CSのデジタルハイビジョンの再送信というのを、2010年代後半にはケーブルテレビとしてやるべきではないかということでございます。
次ページは、フルデジタル映像サービスの提供ということでは、放送以外のVODのほうでも、ケーブルテレビとしてはハイビジョンの画質のものを提供する等、充実を図っていくことが重要ではないか。
それから次のページは、コミチャンの高度化、地域密着ということもございますし、ケーブルテレビ独自のコンテンツとしてコミチャンをいかに高度化させていくかということも、2010年代のケーブルテレビのあり方として必要なことではないか。
次のページは、ユビキタスネットワーク社会の基盤の提供ということでございますけれども、これにつきましてもやはり、超高速なインターネットアクセスを提供する役割というのを、ケーブルテレビとして担っていくべきではないかというものでございます。
次のページは、ユビキタスネットワーク社会の基盤の提供ということで、ネットワークのつくり方につきましても、宅内の外の部分でも、その事業展開に応じた柔軟なネットワークの構築というのが必要でございますし、次のページは、事業展開に応じた柔軟なネットワークの構築等といたしまして、無線の利用の活用がアンケートとしては挙がってございますので、そういった無線も含めた事業展開に応じた柔軟なネットワークの構築が必要ではないか。
その次のページは、地域密着サービスの提供ということでございますが、あえてネーミングということでクインティプルと名付けさせていただきましたが、今、放送、それからインターネット、電話、携帯ということで、クワドロプルプレーというのはなされていますが、さらに一層、行政とか防災とか教育とか、さまざまなアプリケーションを含めた形をケーブルテレビが提供して、いわば5つのサービスを提供するような、クインティプルプレーみたいなものが必要ではないかということでございます。
次のページは、アプリケーションも含めたクインティプルプレーということで、さまざまな行政分野での活用とか、地域の経済振興、教育というところで、アプリケーションも含めた地域に密着したサービスをケーブルテレビが提供していくことも、役割として重要ではないかということでございます。
次のページは、国産技術の国際標準化ということでございますけれども、ホームネットワークの中核的役割としてのSTBをゲートウェイとしたホームネットワークの普及とか、STBとテレビの融合等、そういったことが、これから国際競争力の確保というような観点からも必要ではないかと考えております。
次のページは、国産技術の国際標準化ということで、ホームネットワークの技術もそうですし、国際標準化機関等に対するプレゼンスの確保ということが必要ではないか。それから実際に業務に携われる方の人材の確保、それから国際的にも通用するような人材を、ケーブル業界としても輩出していくことが必要ではないか。
その他、経営環境等でございますが、地域性を有しながらMSO化が行われている、それから、自立的な体力を有するケーブルテレビが増加していくということがあるべきではないかというふうにまとめてございます。
最後、ケーブルテレビの市場規模でございますけれども、ARPUの向上等によりまして、事業規模が今4,000億程度でございますけれども、さらに倍増を図り、1兆円まで拡大していくとか、そういった産業的な位置づけを向上させていくということも必要ではないかというふうにまとめてございます。
以上、ヘッドラインの部分だけをご説明させていただきました。
【多賀谷座長】 それでは続きまして、構成員の方々から2〜3分ずつコメントをお願いしたいと思います。
【後藤座長代理】 私はどちらかというと通信側の立場でありまして、いろいろ勉強させていただいたところでございます。ケーブルを高度化していくときに、その特徴はどこにあるかと考えます。地上波でデジタル化が推進されて、ケーブルがデジタル対応していく。地上波のデジタルの場合は、それを視聴者の人が見てアクションを起こす場合に、上りの回線というのが問題になるわけです。そこはケーブルのほうが圧倒的に有利だろう。通信と放送を対比して考えますと、双方向のサービスというのはより通信側になるわけですが、そこの部分がケーブルの場合には十分有利な点だと考えて、そこを中心に書かせていただきました。
なお、そういった場合に問題になるのは認証だと思います。それはほかの構成員の方のご意見にもありますように、ホームネットワーク等のメンテナンスなどを考えますと、当然、それぞれの機器対応に利用者の方が細かい操作までするというのは大変です。事業者の方とか、あるいはベンダーの方が、家庭のもののメンテナンスとかソフトウエアの入れかえ等も、かなり主導的にやらないといけない。そういうことができるようになると、世の中には悪い人がいるのでソフトウエアを書きかえられてしまうという事件も起こるでしょう。それを防ぐために認証が必要となる。
また家庭のセットトップボックスなりは、個人情報がかなり入ったようなものになってくると思います。従来の通信ですと、例えば携帯電話を使った取引のほうがパソコンを使った取引より安心なのは、携帯電話の個別の識別ができる。一部の機器にちょっと問題があって、国際的に問題が起きたことがございますけれども、それは逆に言うと、通常はあまり問題が起きていないということでございます。
従いまして、従来の放送の受信するだけというときにはあまり意識しなかったような部分が今後、より強調されると思います。従来からもちろんケーブルの場合には、インターネットを使わない方でも、メンテナンスのために上りの回線というのはちゃんと用意してある訳ですけれども、より上り回線が意識されるだろう。そういう観点で文書の上では、何カ所かにちりばめたような形になってしまっております。以上、補足をさせていただきました。
【石橋構成員】 では資料に沿って、私の名前が出ているところを少しピックアップしてお話しさせていただきたいと思います。
7ページの高速化ということで、国の施策としても2010年のブロードバンド戦略というのがあるわけですけれども、30メガ以上を目指すということになっておりますので、我々も当然これに対応していかなきゃいけないということで、その場合に、やはりHFCでそれだけのものができるという見通しも、だんだん立ってきているわけですが、上りを30メガ以上ほんとうに確保するためには、相当やっぱり難しい問題がある。
そのために今考えられるのは、小セル化と、それからあとは流合雑音をどういうふうに解消していくかということが、極めて重要な課題になっております。ですからこれは、ネットワークのメンテナンスとかいうことも絡んでいますが、そういう流合雑音との関係というのを解決するためには、やはり小セル化ということがどうしても必要になってくるんじゃないかなと思っております。もちろん新たに更新する、あるいは新たな地域に出ていくときに、HFCでいくのかFTTHでいくのかということも、当然考えなければいけません。ですからそういう意味では、自社内でFTTHとHFCを併用するというようなことも当然あり得ますので、そういうことも考慮しながら考えていくということじゃないかと思います。
それから次、8ページ。これはそのさらに拡大版でございまして、ほかの事業者の方が持っているネットワークを借りてやると。もちろん自前で持っているものを主体的に、当初はなると思うんですが、それを補完する、あるいは新しいサービスが入ってきたときに、自前のネットワークではちょっと無理だというような場合に、ほかのネットワークを使うことによってそのサービスを可能にする、実現するというようなイメージで、ここは書いております。
それから次、無線の活用、9ページ。これはもう先ほどございましたので、当然ケーブルプラス無線というところで、相当いいサービスができるんではないかと考えております。
それから10ページのところですが、ここは特段ございません。この前一度、クローズドの中でのユーチューブ型サービスということを申し上げましたが、それを書いております。
それから11ページ。真ん中の下のほうに出ていますが、ICTと人的労働力を結合したサービスへの取り組みということで、結局先ほども地域密着ということで議論があったわけですけれども、地域で顔があるとか、そういうことはもちろん重要なツールではあるんだけれども、それは目的でも何でもないわけで、お客さんにとってみたら、やはり最後までどういうサービスをしてくれたかと。それも願わくば、一気通貫でやってもらうということが非常にお客さんにとっては価値があるだろう。そうしますと、我々はICTのところだけやりました、あとはほかの人に頼んでくださいよということだけでは、サービスが完結しないということになりますので、こういう点を我々は、自前でそれだけの人間を抱えてやるというのは無理でしょうから、今、NPOとかいろんな活動をしている地元の方々がいらっしゃいますから、そういう方と連携してそういうサービスを、ケーブルに頼めば最後まで完結するというような感じのものができないのかなという意味で、ここに書いております。
それから13の人材インフラの質的拡充ということで、非常に難しいし、それから特効薬的なものはないんですが、これから通信という概念を持たずして我々が事業を展開していくというのは、非常に危険性があると思いますので、もちろん通信だけじゃないんですが、一番必要なのは、通信をわかった人間がケーブルの経営に参加していくということが、やはりどうしても必要じゃないかなと。もちろん技術屋さんとかいろんな面もありますけれども、それだけではなくて、経営面からもそういう人が必要だろうと思います。
【小池構成員】 私のレポートではまず、2015年を大胆に予測してみました。ハイビジョンは当たり前で、私はさらにその上の、今言われている4Kとかスーパーハイビジョンさえも夢ではなく、一部は実用化されるのではないかと思っています。NHKはサーバー型放送サービスの実現に向けて取り組んでいるわけですけれども、サーバー型放送とかVODとかいう話はもう当たり前で、一般家庭に普及しているだろうと思います。また、放送は本来無線でやるものですけれども、都市も含めてケーブルテレビがどんどん普及していって、直接無線で受けるよりはケーブルで受ける時代になっているということです。もしかすると、ワンセグ以外はケーブルを通して受信するということに15年はなっているのではないかと思います。
そういう予想の中で、放送がデジタルになると、都市部については都市難視が大幅に減少します。今の10分の1ぐらいに減るだろうと言われています。ですから都市部のケーブルテレビは難視対策から、今議論されたMSO的な高度なサービスにシフトしていく。逆に言えば、それをしない限り、都市におけるケーブルテレビの意味がなくなると思っています。MSO化がさらに進むであろうと思います。先ほどの総務省さんの説明にも一致する点だと思います。
今、NHKは、民放さんと共に、地上デジタル放送を全国で見られるように取り組んでいますが、地域によってはどうしてもケーブルテレビ局さんの力を借りなければならないところもあります。そういう意味では先ほどの都市部とは違って、郡部のケーブルテレビ局は難視対策的な役割も含めて、我々は非常に重要なものだと考えています。その場合、地方のケーブルテレビ局はどうしても財政的基盤という点では大都市のケーブルテレビ局とは違うので、引き続き行政の支援が不可欠であろうと思います。
レポートの最後に書きましたけれども、都市部と、郡部というか、農村型に代表される難視対策としてのケーブルテレビを考えましたが、その中間に位置するケーブルテレビ局がどういうふうになるべきかというところが、私は大いに検討すべき内容ではないかと思います。先ほどの総務省さんの考え方と多分同じだと思いますが、MSO的なことをしながらその地域を大事にするというようなスタンスで、進んでいくのではないかと予想しております。
【中村構成員】 提出しました資料の意見につきましては、重複しますので割愛させていただきまして、私の思っていることをお話しさせていただきます。10年、15年後の将来のケーブルテレビ業界を考えた場合に、やはり一番問題なのは今後設備投資等でお金がかかっていくということです。VODもやりたい、プライマリー電話もやりたい、いろいろあるのでお金がかかる。ケーブル事業者の弱みはそこで、資金力、技術力がないということで、これを放置していくと、IP技術をベースにしたキャリアさんからの攻勢に飲まれてしまうと考えております。
そういう意味から、企業の合併とか、M&Aを進めていかなければならないのだろうと。すなわち、集中化のメリットを追求していきたい。人、物、金という面については集中化のメリットを追求したい。一方、反対に分散化のメリットも追求したい。と言いますのは、ローカルコンテンツの充実です。この集中と分散を両立させていかなければならないのじゃないかと考えております。
【藤咲構成員】 2010年代後半ということですので、今から10年先の議論です。1993年にインターネットの商用サービスが登場してから10年間で、インターネットは世の中を激変させてしまったということを考えると、今後10年後というと、多分今問題になっていることの延長線ではもはやないんだろうということで、その先が議論できるかどうかちょっと協会の内部で議論して、こういうペーパーをつくりました。
まず全体像ですけれども、有線・無線、移動・固定、通信・放送などの融合、複合がどんどん進展していくということになるわけです。同一のケーブルを使って、双方向型の各種のショッピングやゲームなどの発展形のようなサービスとか、オンデマンド型のサービス、超高精細度の放送、自動編集型、あるいは各種データ放送などのサービスが同時に、ここのケーブル上で流れていくということになると思います。そしてケーブルテレビのヘッドエンドは大規模なコンテンツのストレッジとなり、現在はセットトップボックスとか端末とか言われている部分が、家庭内のサーバーもしくは家庭内のデータストレッジになっていくだろうと。
そうなっていくと、ネットワークの部分なんですが、大容量化、双方向化がもちろん進んでいくわけですので、多分エンドユーザーから見ると、もうネットワークの部分というのは見えなくなって空気のような存在になってくる。エンドユーザーからは、サービスとコンテンツが見えるようになってくるのではないかと思います。
サービスの部分は、ほかの委員の方も言っておられるように、各種の社会的、経済的サービス、ショッピングとか遠隔医療その他が、このネットワーク上で行われていくようになるでしょう。
それから端末におきましても、もうディスプレイはさらに高精細度化され、大規模化されていくということで、自動車も移動体ではありますけれども、固定しているのと同じように見えるようなサービスが車の中で行われていくでしょう。
コンテンツも、コミュニティ番組の相互交換、あるいは地域情報の流通増加と書いてあります。ただ、ここでちょっと注意する必要があるのは、地域情報といった場合に、地方中核都市のような経済的、社会的に完結した場所の地域という意味と、それから東京通勤圏、人口3,000万の場合の地域とでは、大分地域の意味が違うだろうなと思います。
最後にケーブル事業の集約化の進展ということで、やはりこれは何らかの形でMSO化が進展していくだろうと。理由は、今、中村構成員がおっしゃったような財務上の理由と、それからもう一つはやはりコンテンツの理由。地上波のテレビ放送もネットワークというものができたのは、コンテンツを東京から地方にもらうためということを考えると、資本系列まで進むか緩い提携になるかはわかりませんけれども、やはり事業の集約化が進んでいくように考えています。
【藤本構成員】 ほとんど内容はもう皆様がお書きになっておられるのと一緒ですので、ポイントだけ申し上げますと、まず1点、今ケーブルテレビの立っている状況というのはこれから数年間、やることが山ほどあります。とにかくアナログを巻き取らないといけないわけです。広帯域化だけじゃなくてSTBの問題、商品も拡充しないと、やっぱりすき間をつくっておくわけにいかない。これは電話からVODまで。あるいはコミチャンのデジタル化からHD化等、やることが山ほどあって、さっき中村構成員がおっしゃったみたいにお金がないというのが実態だと思うんですね。そこでおそらく経営としての選択肢が2つに分かれてきて、もしも同軸というものが、例えば技術的な強化によって10年、15年使える、少なくとも10年もつインフラであるんだとすると、今一番お金の要るこれからの数年間、この同軸を最大限活用しながらやるべきことをやりつつその間に内部留保を蓄えていく。もちろん一番いいのはFTTHに一挙に巻き取って、さらにやるべきことを全部やれれば理想なんですけれども、大変な体力が必要となる為、経営資源をどう配分するかという観点では、同軸のままで徹底的に強化されるところは出てくるだろうと。
そういうことを考えると、おそらく2015年ぐらいの世界では、同軸のままでIPマルチに切りかえておられるところが、大手のMSOから地方の都市部までを中心に相当広がっていく。非常に体力のあるところは極端な小セル化、端的に言えば1ノード32世帯ぐらいにして、いつでもFTTHに切りかえられる状況まで持っていっておられるかもしれませんけれども、そろそろ自力のFTTH化も視野に入ってきている、そういう状況が2015年ぐらいの世界じゃないかと私は思っております。
それともう一つに、そのころMSOについてはどうかと申しますと、今ほんとに資金が必要なのは、今年を含めてあと二、三年、どうやってその資金を調達するかということが、非常に切なる問題だと思うんです。そういう意味で、大手の通信等とのいろんな融合、競合の中で、コスト競争力を徹底的につけていかないといけない、都市部の事業者を中心にMSO化の波というのは、おそらく2010年、11年までに、ほぼ出尽くすぐらい出るんじゃないか。そこをくぐり抜けた事業者は、その地域における存在基盤や、将来への青写真ができているはずだから、形として言えば、例えばコミチャン用コンテンツのお互いの交流だとかいう様な地域、あるいは日本全体が業界としてまとまることによって、特に大きなコストをかけずに商品を強化できる道というのがいろいろあるはずですので、そういう意味で地域、あるいは全国の業界としての組合化、あるいは擬似MSO化、この辺がしっかり形成されてくるんじゃないかなと考えております。
【山口構成員】 事前に提出いたしましたアンケートに記載いたしました項目を、本日の会議資料にほとんど掲載していただいておりますけれども、もう一度強調したいところを話させていただきます。
まず、全国有線テレビ協議会の会長としての発言であります。全国有線テレビ協議会の会員は、いわゆる農村型ケーブルテレビでありまして、条件不利地域をエリアとしております。運営形態はこれまで自治体主導による公設公営で行ってきました。しかし近年の自治体財政の緊縮化や広域合併の進行、また自治体にかかわる規制緩和策として、民間ができることは民間にとの発想のもとで、指定管理者制度やIRU契約が導入されたことで、運営形態の選択肢が多様化してきております。こうした制度改革は、行政コストの効率化に寄与するという側面が強調されているようであります。
しかしケーブルテレビは、本来持っている広報・広聴機能を生かして、地域に密着した情報提供や新しいまちづくりへの住民参画を促すことで、合併によって広域化した自治体においても、地域のアイデンティティーの形成や特色あるまちづくりを可能にするメディアだと思います。農村型ケーブルテレビを、単に今までのケーブルテレビの延長として存続させることと考えるのではなくて、新しい自治体運営に大きな役割を果たすことのできる機能を持っているとの考え方から、自治体主導の公設公営によって維持できる方策についても、引き続き検討していただきたいと切望するわけであります。
特に運営基盤の強化については各会員が努力しているところでありますが、デジタル化や高度化への自助努力も限界に来ている会員が多くなってきております。また現行の地域情報通信基盤整備推進交付金は単年度事業での精算となっており、広域化された会員にあっては、必ずしも継続利用が期待できないところがあります。それが不安材料となっておるところであります。特段のご配慮をお願いいたしたいと思います。
次に、西会津町長として発言させていただきます。福島県西会津町は豪雪、過疎、辺地と言われる中山間地域でありまして、通信事業者のFTTH敷設が見込めない条件不利地域であります。ブロードバンドゼロの解消、テレビでのデジタル化、HD化などに対応するためには、政府の支援を受けて全町をカバーするケーブルテレビ網の改修が不可欠な町であります。これによって、町内隅々まで高速大容量のネットワークが構築できます。このネットワークを基盤としてICTを活用し、実生活の中で利用できる、人に優しい端末を導入し、高齢者や障害を持った人でも安心して生活できる社会、それぞれの年齢層が持っている知識、技能を生かした自己実現を図ることができる社会をつくることが可能になると考えております。これによって、いつでも、どこでも、何でも、誰でも簡単にネットワークを利用できる、ユビキタスネットワーク社会が構築されるのではないかと思っておるところであります。
私は過疎・中山間地域、さらには少子超高齢化社会だからこそ、このような機能を持っているケーブルテレビ網が必要であり、行政と一体となって運用することで、行政の効率化と町民の福祉の向上へ大きく寄与できるものと考えております。よろしくお願いいたします。
【多賀谷座長】 意見をお出しになった方で出席されている方からの補足説明は以上のとおりであります。
それでは、ただいまの資料全体、あるいは補足説明を通して、ご質問、ご意見がございましたら、ご自由にご発言願います。
1つとしては、やや問題提起型、特に藤本構成員から問題提起がされたわけですけれども、一方において中村構成員から、資金力、技術力というものはCATVにはないと。したがって、ローカルコンテンツの充実を図りつつも、資金力を獲得するためにある程度MSO化といいますか、あるいはM&Aというのは必要であるとおっしゃられたわけですけど、他方、藤本構成員は資金不足というのはここ数年であって、その後はMSO化は一段落するというようなお話があったわけです。将来的にケーブルテレビがどのようになっていくか。特にそれは、先ほど小池構成員がおっしゃった都市部と郡部の中間のところで、おそらく一番シビアに戦略を立てなければいけないだろうと思うんです。これは戦略的な問題で、この研究会で結論が出るというものではないでしょうけれども、しかしケーブルテレビ事業者等が、十分な情報がないまま間違った選択をするのはやはり問題なので、皆様方からご意見があれば、この場でお話しいただければと思います。
【藤本構成員】 ちょっと若干補足させていただきますと、私はMSO化が進まないのではなくて、MSO化の動きというのはもっと切実なもので、もう少し早く進むでしょうということです。2010年、11年のアナログの巻き取りをむしろ乗り切った後は、そういう動きは全くなくなるわけじゃないんでしょうけれども、そこで将来の基盤をつくる、あるいは青写真を描けたところというのは、売り手と買い手があって初めてMSO化というのは進むわけなので、なかなか売りに出てこないだろうという意味で、ピークは過ぎているんじゃないかと、そういうふうに考えます。
【多賀谷座長】 わかりました。そこまでに終わってしまうということですね。
【藤本構成員】 はい。
【中村構成員】 私の発言と西会津町長の山口さんの発言とは、あたかも対立しているように聞こえるかもしれませんけれども、私は全く同じことを言っていると解釈しております。と言いますのは、先ほど集中と分散という言い方をしましたが、西会津のような地域において、地上デジタル放送のヘッドエンドを個別に設置するのですかとなると、それはやはり業務連携して共用していった方がメリットはあるのじゃないでしょうか。こういう観点から考えると、町長さんの意見と一致しているだろうと考えます。一方では地域のアイデンティティーを高めていこうという立派な理念をお持ちです。すなわちローカルコンテンツという単語を使うのであれば、それはそれで一層充実していかなければならないのじゃないかと考えております。そういう意味でも一致していると考えております。
【石橋構成員】 先ほどの中村さんのご発言とちょっと関係あるんですけど、資金力がないということで、やっぱり日本のケーブルで最大の問題は資本家がいないということだろうと、私は極めて痛感しておりまして、要するに広域化する、連携していくということで、考え方としては、今ある多数の局が1つの会社に統合されるということもありますし、それからもう一つは、外部の資本家が買収していくということもあろうかと思うんです。統合というのは言葉は簡単なんですが、それぞれ例えば10社なら10社が一緒になるということになりますと、社長は9人いなくなるというところから始まりまして、非常に難しいというのが現状じゃなかろうかと思います。
そういう中でやはり、願わくば日本の投資家がケーブル業界に投資するというようなことがないと、これは相当問題があるんじゃないかなと実は思っております。じゃ、どうしたらいいんだというご質問が次にあるんだろうと思いますが、どうしたらいいかということは全く持ち合わせてなくて、そういう意味ではあまり意味のないことを申し上げているかと思うんですが、投資家が日本にあらわれてもらわないと、やっぱり相当我々としては厳しいんじゃないかなというのが、私の今の実感です。
【音構成員】 お話をお聞きしておりまして、中村さんがご指摘になられた、山口町長との意見が少し違うのではないのか、でも同じですよと。私も基本的には同じご意見なんだなというふうに認識しています。ただ、藤本さんの本日のご意見の中にもありましたけれども、MSO化が早く進んで、その後、そのMSO化の流れに入り切れなかったところが、単独局が組合化したりとか、擬似MSO化を全部すればいいんですが、多分中村さんのある種のご懸念はそこなんじゃないのかなと思うんですけれども、そこに入り切れないようなところが実は随分あるのではないのか。
今の石橋さんのお話で言うと、日本国内の投資家なり外部の投資家が、投資をするに足り得る事業者であると思えないところというんでしょうか、実際にやられているところにはすごく厳しい言い方になるのかもしれませんけど、そのような場所が結構日本の国内にあって、ですけどもう片方で、そこで今までの地域密着なり、地上放送の補完装置として機能してきたところがあるであろうと。そのあたりのところをどういうふうにフォローアップをしていくのかということも、相当大きな問題なのではないのかなという認識を私は持っております。
【中村構成員】 このケーブル事業をどの程度公共性に軸足を置いて考えるかという問題でもあります。例えば電力会社には電気事業法による縛りがあります。もしケーブル事業法という法律があるとすれば、その公共性という側面を持って全国ネットになる可能性は高くなるように思います。
【多賀谷座長】 有線電気通信法は、ある意味においてそうなんですけれどもね。
【中村構成員】 そうなんですか。
【多賀谷座長】 ただ実際上、公共性というのは通りはいいんですけど、ただほうっておくと、通信・放送融合化の中で、収益性が高い都市部は民間の事業者が行い、そして収益性があまり高くないところだけで公共性というネットワークを張るといっても、それは経済の論理として成立しないというところが非常に悩ましいところなわけですね。全部セットでユニバーサルでというんだったら、それはそれでわかるんですけれども、多分そうはいかないところが悩ましいところで、これが電力でしたら地域独占ですから、その話はないわけですけれども、その点が違うところです。
【藤本構成員】 さっき音さんがおっしゃったことは、私も実はこうなってほしいと思いつつ、ほんとにそうなるだろうかという疑問は当然あります。MSO化のメリットというのは、これは私のところも、とりあえず筆頭株主をやらせていだだいていますJCNというのがあって、私自身そこの非常勤の取締役を兼ねているんですが、どうやってMSO化のシナジー効果を出していくかということは、単純な問題ではありません。例えばヘッドエンドの共用、これは人的にもランニングコストにおいても非常に大きな効果が出ます。しかしそれをしようと思うと隣接していないといけない。また、ヘッドエンドの統合まで行かなくとも、熊本にもう1社グループ局があるんですが、せめてコミチャン以外では同じ番組編成にしていこうともしており、これは非常に効果があるんですが、そうしていくと価格も一緒にしないといけない。中には、もっと安い価格で提供してきたところは値上げになってしまうとか、いろんな問題があって、なかなか進みません。
それともう一つは、番組を一緒にしていってもその売り方や地域での基盤がまちまちで、例えば今あるお客さんを非常に大事にしていく、そのかわり新規の獲得は弱い。こういうものを1つのMSOとして一律の基準で評価することはなかなかできないという問題がありまして、MSO化で効果を出そうとすればするほど、その地域の特性というのを当然ながら阻害してしまう方向に向かうことになる。幾らコミチャンを大事にしても、全体の方向性としては向かっていく。この兼ね合いをどうするかというのも、非常に難しい問題です。ですからこれから先MSO化が、ここあと数年間ぐらいでどっと進んでいくとすると、それはほんとに両者にとって効果が出せるような、地理的な隣接とか、その地域の住民、その市場がどこを向いてどこと一番密接な関係があるかという、こういう地勢的なものも含めて検討していくんだろうなと思います。
で、残ったところというのはぽつんぽつんとあって、そこに単独の力があっても、そこをMSOとして大きな傘下に単独で入れていくということは、その効果が望めないので、そういうところは確かに取り残されていく。だとすると、後の方法というのは、そういうところがせめて近隣とでも組んでコストダウンできる部分、共有できる部分、ここのほうを相当進めていくしかないですが、いずれにしてもこれは厳しいなという思いは全く同感でございます。
【石橋構成員】 今の藤本さんのお話もあって、そういうご苦労をされているというのはまさにそうだろうと私も思いますし、ただ、MSOとして一番メリットがあるのは実は人材なんですね。人材インフラを効率化できるということです。例えば通信をやる、例えば電話事業をやるといったら電話の専門家、これは技術屋だけじゃなくて、やっぱりサービス面も含めた電話屋さんが要るわけで、そういうものをやろうとしたら、それはあるマスがないと絶対できないというのは、それだけの人間を抱えないといかんということがありますから、そういう意味でMSO化をやっていく。
連携がなぜ難しいかというと、なかなか1人の人が決断を下すということができない。みんなが寄って合意形成をせないかん。そのうち世の中が変わってしまうということになる。そういう意味で、やはりMSOで人材を集めて有効に使っていくというようなことが、僕はMSO化の一番のメリットであって、お客さん側から見ればMSOとかは関係ありません。MSOだからどうだということはないので、これはやっぱりその地その地で必要とされるサービスを提供し、お客さんに評価してもらうという、この原理原則は変わらないということですね。
【多賀谷座長】 そのほかございますでしょうか。MSO以外の論点等もある程度お話を。
1つはローカルコンテンツのあり方といいますか、どなたかから出ていたんだと思うんですけれども、要するにローカルコンテンツとして、ケーブルテレビの放送サービスだけではなくて、それ以外のプラスアルファ的な要素も展開するというようなお話が多分出てくると思うんですが、そこら辺の戦略等についてはどなたかご意見ございますでしょうか。
【中村構成員】 私のほうから1つ、また富山の話で申しわけございませんが、当社が実施していることを紹介します。ケーブルテレビ事業は放送事業ではありますが、放送を一方的に会社から流すという発想ではなくして、地域の皆さんから情報を発信してもらってケーブルのネットワークを利用してくださいという考え方から、プリクラみたいなものを街に置いています。そして迷子になった犬や猫を捜してくださいという情報を発信しております。ケーブル事業は地域のインフラとして皆さんに使っていただく。情報は住民が発信する、という考え方です。
【藤咲構成員】 ケーブルテレビというのはおそらく、その地域で比較的高所得の世帯が加入している。逆に言うと、地域で購買力の高い世帯を囲い込んでいる、線でつながっているということは、これはマーケティング的に見ると多分宝の山という言い方もできますので、そういう財産をいかに活用するかというのが、これからのケーブルテレビの発展の一つの鍵になるのではないかと思います。
【多賀谷座長】 今までのお話を聞いていると、技術のレベル、ヘッドエンドとか、あるいは技術ではなくても、ローカルコンテンツ以外のコンテンツとか、そういうところについては、やはりローカルのケーブルテレビが単体ではどうも困難であるということで、何らかの資金が必要であると。その場合に民間の資金を導入するのはいいけれども、民間はおそらくペイするところにしか資金を出さない。そうすると取り残されるところが出てくるだろう。
他方、従来からもある程度公的資金が投入されていますけれども、公的資金の場合は、その資金を投入してもそれで当該事業体が立ち上がるかどうか。要するにその公的資金だけに頼ってということになると、やはりそれも事業体としては限界があるということですね。そこら辺を今後どうするかということを、それぞれの分野で考えていかなければいけないだろうと思います。
それからもう一つ、ケーブルテレビが行うローカルサービスという話なんですけれども、多分藤本構成員がさっきおっしゃったと思うんですが、私のイメージも、ローカルでどういうことをやるかというのはそれぞれのローカルに任せればいいんですけれども、ケーブルの強みを出すというのだったら、西会津町でありますように、ただ全部やる必要はないかもしれませんけど、やっぱりある種のそういう放送サービス以外のサービスにも乗り出していく。それで存在意義といいますか、それがなければならないという形が必要だろうと思う。
私の個人的な見解で言うと、今後日本は高齢化社会に入ってきますので、やはりある種の福祉サービスとどのようにして連携していくか。要するに介護保険にかかわるような、ケアマネジャー等がかかわってくるようなサービスとどういうふうにかかわってくるかというのは、おそらくケーブルテレビの、これは別に農村部だけじゃなくて、実は都市部でも多分同じ話だと思うんですね。おそらく都市部であるほど高齢者の方は孤立していて、そして高齢者の方と介護センター等との間の連携というのがなかなかうまくいっていないという状況にあると思うんです。農村部だったらそこに高齢者がいるということはだれでも気がつきますけれども、都市部だと人知れず独居老人みたいなのが存在している。そういうところでやはり福祉サービスとか、これから必ず必要なサービスとの組み合わせをソフトとしてどう立ち上げていくかというのは、おそらくケーブルテレビのもう一つの将来的な存在必要性というところだと思います。要するに単なるレジャーというんじゃなくて、地域における存在必要性があるサービスというものをどう提供するかというのも、やはり将来を左右する話だろうと思います。
【後藤座長代理】 ご指摘のところはまさにそのとおりだと思います。ちょっと違った視点で考えますと、昔から実は通信のほうでは、デジタルによるメディア統合みたいな夢というのが長年あって、ISDNという言葉がまさにそれを象徴していました。ただし、技術のほうがいろいろ未熟だったものですから、当時のナローバンドはHDLCというのがあって、今でも一部シリアル線には使われています。広帯域、ブロードバンドという言葉が今の時代に生き残っているわけですが、そちらがATMであって、一応それで画像、映像、音声を全部統合しようということだったんです。実際はそうはいきませんで、結局現在見えているのはIPによる統合だろうと思うんですね。
デジタル統合というのは、大変いいといえばいいんですけれども、非常にポータビリティーがいいということになりますので、今問題になっておりますように、遠くまで飛ばそうと思えば、別に隣の町じゃなくてもどんどん行ってしまうという問題がある。便利なことは便利なんですけれども、逆に言うといろいろ副作用が出てくる。そのあたりではちょうど今ご議論の、確かに10年後を見通すという意味ではなかなか将来像が分からないところなんです。
ただインターネットにしましても、確かに商用化というのは90年、正確に言うとアメリカでも91年1月からということになります。年表の上では、日本はちょっと遅れてはじまりました。その技術は現在のTCP/IPの使用開始が、1983年です。つまり技術の準備は先行していました。そういった歴史を参考にしますと、現時点で考える手がかりとしては技術的なほうは今の時点でも相当に見えているのでしょう。特にここにいらっしゃるご専門の方は大変お詳しい方が多いと思います。将来のことは考えにくいところではあっても、手がかり、足がかりというのは現状あるんだろうと思います。それに比べると、先ほどの議論のような資本でありますとか投資という部分は、確かに少し展開を見ないとわからないということだと思います。この研究会では、その部分も相当ご経験の方がいらっしゃるので、私は大変いろいろ聞かせていただきまして参考にさせていただいています。
通信・放送の融合というあたりになりますと、いわゆるNGNというキーワードが何カ所か、今回も出てきています。NGNというのは、現在のところ一口には簡単に言えないところでございます。ただ、相互にかぶるといいますか、オーバーラップする話題がありますから、十分双方で情報交換、意見交換をしていきたいと思います。
一言だけ申し上げれば、NGNと言っているのは、電話のバックボーンを切りかえるというのが非常に狭い意味です。その部分に関しても従来のインターネット側の技術というのは万全ではない。それから、マルチキャストを相当展開されている方がいますが、一応私がIPの技術側だと割り切って言いますと、現状のマルチキャストというのも幾つか技術的な課題が残っています。1カ所から送信してみんなが見られるというためには、やはり途中のルーターなりスイッチでデータの複製をしているわけです。その部分の設備というのは、多少従来のものよりは潤沢にする必要があるということです。一例を申し上げれば、アメリカの大学で非常によく使われているアメリカ製のルーター、これはシェアが一番高いメーカーではないんですけれども、その機器ではIPv6のマルチキャストは十分対応できていないというのがIP側の現状です。そういった部分でまだまだ技術的な課題もありますので、この時点で将来の作戦を立てるというのは非常に適切な時期だと思います。
【多賀谷座長】 会議が始まる前に後藤先生と話をしていたんですけれども、ある種の記事等を見ると、日本の場合に、NGNで通信事業者がいけばケーブルテレビは存在し得なくなるというような議論をしていますけれども、このNGNの話は日本では固定系、NTT等通信事業者が、ヨーロッパでは移動体が中心にこういう議論をしているそうでありますけれども、将来的にどうなるかというのは、まだちょっと予断を許さないところがあります。
そういうNGN的な話は専らヨーロッパから聞こえてくるので、アメリカの場合にそれがどうなるか。特にアメリカの場合にはCATVのネットワークがかなり席巻しているわけです。そこでもしアメリカの場合にNGN的な議論をした場合に、CATVはどうなるかといったら、当然、そう簡単にはいかない話になるでしょうし、ほうっておくとかつてのISDNのときの議論のように、アメリカの場合はデファクトスタンダードのほうでいってしまうのかもしれませんので、そこら辺の話、それぞれの地域でどうなるかというのはおそらく今後もうちょっと見ながら、しかし乗りおくれてしまったら大変だなということで、非常に戦略的な判断をこれから迫られる数年になるだろうと思います。
【後藤座長代理】 今の関連です。今回の資料の中にも、国際的な標準であるとかリーダーシップという事項があります。通信の側では、携帯電話の例ですと、PDCという日本の方式は技術的な合理性もあり、当時の電波の割り当て等も考えて、非常に日本的にきっちりつくって性能もよく、また現在、携帯の端末も非常に高品質のものでよろしいんですけれども、それが世界的にはなかなか通用しないという状況があります。もちろん売ってはいるんですけれども、端的には数量が出ないということになっていると思います。それは、十分反省する必要があるんではないかなと思います。
国際的な標準化というときに、今座長のご指摘のように、ヨーロッパ側は国別1票ということになると、みんなばらばらで国が幾つあるというようなことを言います。一方で、まとまってやろうということになるとそれぞれの国は日本より小さいので、そうなるとヨーロッパ全体が固まってくる。携帯においては典型的にGSMの大成功ということになっているんだと思います。NGNはヨーロッパ側から言うと、その波に乗ってやってきているという感覚があると思います。その辺は総務省のご指導のもとで、いろいろなところで日本も対抗して作戦を立てているんですが、どうも日本一国ということよりは、どこか日本と一緒にやるといいと思ってくれるような国があって、なるべくそういう形のフォーメーションでいくというのが、これから標準化のときに必要ではないかなと考えています。今ジュネーブでいろいろ通信の方でご苦労の方の話を聞くたびに、私はそう思っておりますので、ケーブルテレビに関しては以前にサーベイがございましたが、国際的な状況を考えると、相当に国々で事情が違うようですが、うまい具合に日本にとってもメリットがある、組む相手の国にとってもメリットがあるというようなフォーメーションができるものであれば、そういうのも一つの手かなと考えています。通信のほうでは、そういう作戦をそろそろ考えないといけないときだろうと思っている次第です。
【音構成員】 今出てきた話と少し違う形になるかもしれません。前回私が発表の機会をいただいたときには、ちょっとだけ触れさせていただいたんですけれども、今日のお話の中でも中心的な議論になりましたのは、MSOの問題だったかと思います。MSO志向というのは、言うなれば規模の経済といいましょうか、そのことによって、オペレーターの事業展開をどういうふうにしていくのかという話なのかなと思うんですけれども、この研究会自体オペレーターが中心なんでございますが、その中でやはり一つの方向性としては、西会津町のやられたように多様なサービスを展開していく。MSOの最近の議論で言えば、まさにトリプルプレーですとかという話で、複数のサービスをやっていく。先ほどの座長のお話にありましたように、そのネットワーク化ができないかという方向性が一つはあるんだと思うんです。
ただ、多分そこへ行くステップのちょっと前なのかもしれませんけど、もう一つは番組供給に関してのある種のネットワーク化というものの問題。こちらのほうは比較的早く進んでいるんだと思うんですが、そのことで言いますと、ちょっと変な言い方なんですけれども、これは多分私が一番第三者的なので言いやすいんだと思うんですけれども、やっぱり既存の放送事業、特に民間放送事業の事業形態といいましょうか、営業形態の中で番組供給がなされているという状況があって、そのことがどうもこの市場といいましょうか、マーケットを大きくしていない部分があるのではないのかなと、以前から思っておりました。
別な言い方をすると、日本のケーブルテレビというものが、新たなシンジケーションマーケットのような形でコンテンツ流通に、まだうまく成長していないであろうということでございます。それは多分ケーブルテレビに限らず、衛星放送もCSのマーケットも同様の問題だと思うんですけれども、そのあたりのことというのは、もう少しいろいろ考えられるのではないのかなと思います。
一点目は多分委託放送事業、番供というのは表裏一体なわけですけれども、その番組セールスの仕方みたいなものというのが、より高度化していく必要があるのではないか。そのことによって、オペレーターも含めて産業規模を大きくしていくことが十分できるのではないのかなというのが一点目でございます。
それからもう一点は、この研究会ですと高橋さんがおいでいただいて、少しお仕事をご紹介していただきましたけれども、これは非常に大変なことなんですけれども、今回たびたび話題になりました、ローカルコンテンツのある種の流通の仕方というんでしょうか、それも売れるコンテンツにするということのご努力というのは、もっとできるんではないのかなと思います。
今私が申し上げたのは、非常に民民に近いところの話が多いんだと思うんですけど、とはいいましても、さまざまな形でそれが展開できるような支援の仕方というものはあるかと思いますし、現にそういうことをやっている諸外国の事例というのはありますので、そのあたりのことも含めて、少し検討をする必要があるのではないのかなということを思いました。
【多賀谷座長】 それでは議題2は以上にしまして、最後の議題に移りたいと思います。当研究会も今回で開催8回目となりますので、報告書の取りまとめに入りたいと思います。事務局にて目次案を作成しましたので、これをたたき台に検討したいと思います。それではお願いします。
【井上地域放送課課長補佐】 それではお手元の資料8−3「『2010年代のケーブルテレビの在り方に関する研究会』報告書目次(案)」に基づき、ご説明させていただきたいと思います。目次案ということでございまして、冒頭「はじめに」がございまして、「現状認識」を触れる。その後で「ケーブルテレビのあるべき姿に向けた課題と諸方策」を触れて、最後に「まとめ」ということを考えてございます。
個別に見てまいりますと、「現状認識」の1つ目のところで、放送を取り巻く環境として通信・放送融合、地デジの2011年デジタル化、それからそれに伴う国の政策展開等について触れる。それで実際のケーブルテレビの実態が今どうなのかということで、加入世帯数、経営状況等について触れる。ケーブルテレビの変化の潮流、多様なサービスを提供していたり、双方向性を利用した行政との連携、ご議論いただきましたMSOとか事業者間の連携の今の状況を触れると。
今後の「ケーブルテレビのあるべき姿に向けた課題と諸方策」として一項立てまして、最初に、今ご議論いただいている将来、10年後、2010年代(2015年)のケーブルテレビのあるべき姿というのを、我が国を取り巻く環境、福祉社会、高齢社会等含めてここで考える。その中でケーブルテレビが果たすべき役割は何なのか。具体的な事業展開、サービス面でどうする、技術面をどうするのか、今ご議論のあったMSOのような経営面等をどうするのかというのがございまして、その後で、その2010年代のケーブルテレビのあるべき姿に向かって、ある程度将来の見込める2010年代までに、どういった課題をクリアして、どういった課題に対して諸方策を講じていくかというのを、ここの項で論じたいと思います。まずサービス面の課題、それから技術面の課題、経営面の課題、制度面の課題等に触れまして、それについての諸方策、前回ご議論いただいたような課題と諸方策のところを、さらにブラッシュアップしたものを考えてございます。
最後に「まとめ」といたしまして、(2)の当面の課題と諸方策の中で、行政が関与しない、民間ケーブルテレビ事業者さん独自の話とか、ケーブルテレビ事業者さんの業界で取り組むべき話というのもございますが、その中でまとめといたしまして、国の政策としてやるべきことというのを、この3の「まとめ」のところで取り入れたいと考えてございます。
以上でございます。
【多賀谷座長】 それではただいまの報告書目次(案)につきまして、足りないところとか、ご質問、ご意見等ございましたら、ご自由に発言願います。
2の(1)と(2)が、順番は年度的に言えば逆といいますか、(1)というのは今日話した議論ですね。2015年ごろまでのケーブルテレビのあるべき姿。今日いろいろご議論が出て、1つに収れんしているわけじゃないですけれども、そのご議論をできるだけ盛り込む形で、それをここに書いていただくということになりますね。
ただ難しいのは、今日出てきた議論の中に、2015年までの話、それから当面の課題の話と、両方どうも入っているような気がいたします。そこを、中長期的な話か当面の話かということについて、おそらくある程度整理をしなければいけないと思います。それは報告書案のところでもう一回ご議論いただきますけれども、そういうことを含めて今、これはぜひ当面の課題に入れてほしいとか、何かご注文等ございましたら、ぜひお出しいただければと思うんですけど。
【藤本構成員】 目次のあり方は別に異論はないんですが、ケーブルテレビの議論をするときに、この果たすべき役割、さっきから中村さんが強調されておられる、これから先の日本で高齢化していく、あるいは地方と都市の差がますます広がっていく、こういう中で、ケーブルテレビがかくあってほしいという思いは多分皆さん共通で、これはもっと言葉を変えると、なくてはならん存在なんだと。おのおのの地方、地域において確固たる経営基盤を築いて、その中で豊かなローカル性をたたえながら、安全・安心というものに貢献してもらいたい、あるいはそうあるべきだという気持ちが強いと思うんですね。
そうしますと、この「ケーブルテレビのあるべき姿」の中の丸ポツの「果たすべき役割」というのが、確かに流れに沿って見ると環境はこうなっていくよ、でもこういう役割を果たしてほしいね、だからこういう課題があるねという中でも十分表現できるとは思うのですが、どこかでやっぱりケーブルテレビでないと果たせない地域における役割という公共性の側面をもう少し強調できるような構成がいいのではないかなと思います。ケーブルテレビは地域にとって必要だ。ところがそのためには、今のままほうっておくととてもそうはならないよ、こんなことになるよと。だからどうしよう、まずこういうふうな道筋が一つ考えられますね、という構成もあるんじゃないかなという気がいたします。
【多賀谷座長】 なるほど。要するにここで、果たすべき役割と具体的な事業展開が並行に書いてあるのが、やっぱりちょっと違和感を感じるわけですね。おそらく公共的なことも含めて、ローカルで果たすべき役割というのが別立てにあって、そのためにどういうふうに事業展開するかという展開に書くべきだというご意見だろうと。事務局、その点はもっともだと思いますので、そういう方向で練り直していただければと思います。
【井上地域放送課課長補佐】 わかりました。
【多賀谷座長】 それでは本日の議題全体につきまして、何かまだ話し足りなかったところとかコメント等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
本日は、ケーブルテレビ事業の運営形態に関する論点の整理と、2010年代後半のケーブルテレビのあり方、役割について議論をしてまいりました。MSOの今後のあり方とかその他、かなり重要な議論がなされたと思います。もちろん結論までは至っておりませんけれども、実質的な議論がある程度行われたと思います。そこでこの議論を踏まえまして、事務局においては報告書の素案等、資料の作成を行っていただきたいと思います。できればこの場でご意見をいただきたいんですが、どうしても言いたいことがあるというのでしたら、できるだけ早く事務局に、ペーパー等でご意見をお出しいただければと思います。
それでは、本日はこれで閉会したいと思います。次回の会合の予定等について、事務局からご連絡お願いします。
【井上地域放送課課長補佐】 本日はありがとうございました。次回は12月22日金曜日の14時からの開催を予定してございます。議題につきましては、本日の議論等も踏まえまして座長ともご相談の上、別途ご案内させていただきたいと思います。
事務局からは以上でございます。
【多賀谷座長】 それでは、本日の会合はこれで終了いたします。どうもありがとうございました。
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