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(1)開会
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塩野座長 それでは、ただいまから、デジタル化の進展と放送政策に関する調査研究会第10回会合を開催いたします。
本日は、村井さんがご欠席と伺っております。
今日のことでございますけれども、前回の会合で、本研究会について4つのワーキンググループを設けまして、それぞれWG座長を置きまして、そのもとで検討を進めていくということにお取り決めいただいたわけでございます。そして、ワーキンググループの検討状況については、必ずしも整理された段階ではなくとも、逐次、折を見て、この全体の研究会の場でご披露いただき、構成員の方々の情報共有を図るとともに、それぞれのワーキンググループでの審議にも資する、というふうに一応セットしたということになっているかと思います。
そこで、本日は、まず事務局の方から各ワーキンググループの検討状況についてご報告をいただく。一通り事務局にご説明いただいた後に、特に第3ワーキングに関する情報でございますけれども、英独仏の公共放送の状況につきまして、本研究会の事務をお願いしております三菱総合研究所からご説明をいただけるということでございますので、そのようにお願いをしたいと思います。
このワーキンググループの検討状況と各国の公共放送の状況につきまして、これを続けてご報告いただきます。それで、一括して皆様方の意見交換と申しますか、質疑の時間に割り当てたいというふうに思っております。それが終わりました後で、事務局から放送分野における外資の間接支配規制に関する検討の状況について説明があるということでございますので、これをお聞きするということにしたいと思います。ということで、今日は、大体において基本的には情報の共有を図る、それが主たる課題だというふうに思っております。
それでは、まず、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。
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安藤放送政策課長 配付資料の確認に先立ちまして、事務局よりご紹介させていただきたいのでございますが、前回の会合以降、総務省の方で人事異動がございまして、藤岡審議官が代わりまして、今度、小笠原審議官になってございます。
小笠原から一言ごあいさつさせていただきます。
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小笠原大臣官房審議官 小笠原でございます。よろしくお願いいたします。
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安藤課長 それでは、配付資料につきまして確認させていただきます。お手元の資料、クリップを外していただきますと、座席表、式次第に続きまして、資料1といたしまして、「WGにおける検討状況」、横紙のものがございます。その後ろに、資料1関連ということで、これはワーキング1関連の資料でございますけれども、参考1といたしまして、「放送政策の基本的な考え方や視点、メディアの位置づけについて」という資料。それから、これもワーキング1の関係でございますけれども、参考2といたしまして、「デジタルラジオを巡る論点(一覧)」、2枚物、横紙でございます。それから、同じくワーキング1関連でございますが、参考3、「放送局に対する外資規制について」。それから、参考4、これはワーキング3の関係でございますが、「英独仏の公共放送機関」ということで、横紙のものがございます。その後ろに、参考5といたしまして、「日本放送協会平成17年度収支予算及び事業計画の概要」。それから、参考6、これはワーキング4、放送コンテンツワーキングの関係の資料でございますけれども、「今後の検討課題例」というものがあります。その後に、構成員限りということで、資料2といたしまして、「放送局の外資規制に関する法改正の基本的な考え方」、縦紙の資料がございます。
そのほか、第8回会合、第9回会合の議事録もお手元に配付させていただいております。
資料は以上でございます。
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塩野座長 どうもありがとうございました。
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(2)議題
1) WGグループにおける検討状況 |
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塩野座長 それでは、先ほど申しましたように、最初に事務局から各ワーキンググループの検討状況の説明をお願いいたします。
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安藤課長 それでは、お手元の資料1をごらんいただければと思います。
1ページ、おめくりいただきまして、新サービスに伴う制度的諸課題検討ワーキングの検討状況でございます。
第1回目の会合では、メディア環境の変化あるいは今後検討を進めていく上での放送政策の基本的な考え方や視点、メディアの位置づけ等につきまして事務局から説明の後、質疑が行われたところでございます。
その中では、例えば放送政策の基本は、放送法第1条に規定されている目的の実現にあるということであろうけれども、技術の進展等々、時代時代に応じた取組やそのための枠組づくりが必要だというようなご意見。あるいはメディア環境が大きく変わっていく中で、放送産業も足腰を強くしていくということが一つ重要な政策課題なのではなかろうか。そのことと、一方で言論表現の多様性を保障していくという政策目標、この両者のバランス、調和のとり方が、今後、非常に重要なポイントになってくるのではないかといったようなコメント。それから、デジタル化により課金がどの程度易しくなるのか。これは、今後の放送サービスの展開や政策にもいろいろと影響してくる面があるのではないか、といったようなご意見があったところでございます。
それから、第2回会合では、「デジタル時代のラジオ放送の将来像に関する懇談会」、これは総務省の方でやはり今、開催している懇談会でございますけれども、その審議経過及び放送分野における外資規制につきまして、それぞれ前者は当該懇談会の事務局から、後者は本研究会の事務局から説明の後、質疑が行われたところでございます。
まず、「デジタル時代のラジオ放送の将来像に関する懇談会」の関係では、英国と日本におけるラジオの広告収入について、日本の場合、ここ10年来、非常にラジオの広告収入は伸び悩みの状況が続いているわけでございますけれども、英国では多チャンネル、例えばロンドンでは54チャンネルぐらい聴取可能だということでございますけれども、そういった多チャンネルサービスを展開する中で、きめ細かくターゲットを絞った放送をする。例えば育児チャンネルでありますとか、キッチンチャンネルとか、非常にセグメント化した、ターゲットを絞ったサービスを展開、提供することによって大きく市場を伸ばしている、といったような説明があったところでございます。
それから、デジタルラジオの将来を検討する上での大前提となりますところのVHF帯での周波数確保の見通し等について質疑があったところでございます。
それから、先行事例であります英国のデジタルラジオの事業構造について説明がありまして、英国の場合にはハードとソフトが分離しておりまして、ハードは送信会社が担当し、ソフトについては複数のチャンネルを束ねて編成するマルチプレックスと、そのもとで放送を行う個々のステーションという、3階層構造になっているといったような説明があったところでございます。
それから、今後のデジタルラジオの番組編成については、イギリスのような特定セグメントにターゲットを絞ったようなチャンネルでマーケットを広げるという観点も必要ではないか。すなわち、今の我が国のラジオ放送というのは、どちらかというと総合編成的な形になっているわけでございますけれども、今後、マーケットを広げていく上でイギリスのようなやり方といったような観点も必要なのではないか、といったご意見がラジオ懇談会の中であったというご紹介があったところでございます。
それから、放送分野における外資規制につきましては、ここにありますような、外資による間接支配を規制する必要性について、あるいはデジタル化と外資規制の関係について、あるいはCATVで外資規制を撤廃した理由等について質疑がなされたところでございます。この点につきましては、後ほど、資料2でまた補足的にご説明させていただければというふうに考えております。
次に、衛星・ケーブルデジタル放送検討ワーキングの関係でございます。このワーキングの関係につきましては、実をいいますと、親会で既にプラットフォームでありますスカパーさん、あるいはCS委託放送事業者の団体であります衛星放送協会さん、それから広告料収入によるところのBS民放さん、それからケーブルテレビ連盟さんからはお話を伺っておったところでございますけれども、BSの有料放送事業者さん、あるいは衛星放送事業者としてのNHKという観点からのお話はまだ伺っていなかったということもございまして、BS有料放送事業者及びNHKという観点で、WOWOW、それからNHKさんからお話をそれぞれ伺った後、質疑を行ったところでございます。
まず、WOWOWさんからは、やはり今後はデジタルハイビジョン放送が中心になっていくのではないか。WOWOWの場合、現在、アナログ放送とデジタル放送の会員数、3対1で、まだアナログの方が3ということで多いわけでございますけれども、今後、デジタルの会員数を最大限ふやすべく取り組んでいきたいということでございます。
それから、将来展望といたしまして、インターネット広告収入がラジオ広告収入の金額を抜いたということで、テレビ広告といえども安泰とはいえない。やはり有料放送事業を産業として育成していくことが重要なのではないかといったようなご意見。それから、WOWOWとしては、今、ハリウッドの映画が6割近くを占めているわけでございますけれども、今後、オリジナル作品作りなど、コンテンツサプライヤーとしての発展も視野に入れて事業展開していきたい、というような発表があったところでございます。これを受けた質疑の中では、デジタルへの転換と受信機の普及について、およそ新しいサービス、揺籃期には受信機の普及に時間がかかり、つらいものである。カラーテレビの場合でも5%普及するのに7〜8年かかった。そういう中にあって、BSデジタルは3〜4年で5%を超えたということで、非常に短期間で揺籃期を過ぎることができたということで、これは非常にありがたく思っているところである、というようなWOWOWさんのコメントがあったところでございます。
それから、スクランブルと料金不払者への対応について質問がございました。これについては、B−CASカードの登録をして初めて視聴が可能になる。登録後、不払いが3カ月続けば解約で、視聴できなくなるというご説明がありました。
それから、BS放送のこれまでの発展についてどういう要因が大きく寄与したのかという質問に対して、1つ目は、やはりNHKが先導したということ。それに基づいてメーカーが受信機をきちんとつくってくれたということが大きかったのではないか、というWOWOWさんのコメントがあったところでございます。
それから、広告放送が制度的に可能であるのに、実際にはあまり行われていないという点について、それはなぜなのでしょうかねというご質問があり、この点については、WOWOWさんの視聴者、要するに、契約者というのは、広告を見るつもりで契約したのではないという意識が非常に強いということで、広告を入れるといっても、なかなか難しい面があるんですよ、というご説明があったところでございます。
それから、WOWOWさんの場合、非常に多様な出資者で構成されているわけでございますけれども、それが経営に与える影響について質問がありました。その点について、多数の株主がいることで、経営上、特に不都合だというようなことはない、というようなご回答があったところでございます。
それから、NHKさんからは、ハイビジョン放送について、研究着手から今日に至るまでの取組等についてお話がありまして、その後、質疑があったということでございます。ここにありますようないろいろな点について質疑があったということでございます。
次に、デジタル化と公共放送検討ワーキングの関係でございます。
第1回の会合では、NHKの平成17年度収支予算及びドイツの公共放送について、前者については事務局から、後者については鈴木構成員から報告の後、質疑が行われたところでございます。
まず、平成17年度のNHK収支予算につきましては、一連の不祥事の影響で、受信料収入が対前年度比で予算ベースで72億円減という大変厳しい状況にあるわけでございますが、再生、改革に向けたさまざまな取組、措置を盛り込むとともに、事業運営の工夫により経費を節減することにより、収支均衡予算を堅持する。これは、後ろの方の参考資料5を見ていただければ、そうなっているわけですけれども、堅持しているといったようなこと。
こういったNHKの収支予算に対して、総務大臣意見としては、やむを得ないとした上で、予算に盛り込んだ各種措置にとどまらず、効果が見込まれると思われる措置について、組織を挙げて全力で取り組み、視聴者、国民の早期の信頼回復に努めるよう求めた、とのことについてご説明の後、質疑があったということでございます。受信料収納の関係でございますとか、不払者に対する措置あるいは総務大臣意見の内容等について質疑を行ったということでございます。
それから、ドイツの公共放送につきましては、鈴木先生から、ドイツにおけるデジタル化の現状や公共放送をめぐる議論等についてご紹介があり、その中で、例えばドイツの公共放送におけるガバナンスについて、各州の放送協会内部に放送委員会というものが置かれておりまして、そこが会長の人事や予算の承認を行う。さらに、経営委員会が設置されておりまして、そこが業務の監督、監視を行っているというようなご説明がありました。
それから、ドイツの公共放送におけるインターネットの利用については、番組関連に限りサービスの提供が認められている。広告とスポンサーシップは禁止されておるということでございます。日本同様、公共放送のインターネット利用については、新聞界あるいは民放界から、その利用の抑制についてのご要望、ご意見があるということのご紹介でございます。
そのほか、ドイツ公共放送の関連団体の活動の規律等について質疑が行われたところでございます。
それから、第2回会合では、イギリスの公共放送及びフランスの公共放送について、前者につきましては長谷部先生から、後者については事務局シンクタンクから説明がありまして、その後、質疑が行われたということでございます。イギリスの公共放送につきましては、長谷部先生から、実をいいますと、BBCは2006年末、特許状更新ということになるわけでございますが、それに際してのBBCのあり方を示した政府のグリーンペーパー、これは本年3月2日に公表されているわけでございますけれども、それについてご説明をいただいたところでございます。
これに関連いたしまして、BBCの新規サービス導入時におけるOfcom 、通信庁の審査でございますとか、BBCのインターネットサービスについて、サービスの提供に世論の反対は少ない。民間サービスと競合するスポーツや娯楽分野から一部撤退した等のご説明があったところでございます。
また、BBC本体(公共サービス分野)と子会社(BBC Worldwide) との番組取引について質問がございまして、これは本体のガイドラインに沿いまして契約取引がなされているといったようなご紹介がございました。
それから、BBC及び商業放送の多チャンネル化に対する評価と今後についての質問がございまして、この点については、イギリスの場合、商業放送は地上デジタル放送、実をいいますと、ITVが倒産して撤退しておりまして、こういった中でBBCが地上デジタル放送を展開することについての批判は少ない、というご紹介があったところでございます。
それから、フランスの公共放送につきましては、フランスの公共放送局の財源、体制等について、現状のご説明があったところでございます。それを受けて、公共放送の財源あるいはインターネットサービス、それから、地上デジタル放送の開始の動向等について、質疑、説明がなされたところでございます。
これら、ドイツ、イギリス、フランスの公共放送のところにつきましては、後ほど、別に取りまとめ資料を用意してございまして、シンクタンクさんの方からご説明させていただきますので、不足の部分につきましては、そちらの方で補足させていただければというふうに考えております。
次に、放送コンテンツ検討ワーキングの関係でございますけれども、第1回会合では、本ワーキングにおける今後の検討課題として、今後、導入が見込まれる新たな放送サービスにおけるコンテンツ利用に関するルールのあり方、それから、デジタル時代において放送コンテンツの安全な流通を担保する手段のあり方について、NHK、民放、メーカーの専門家にもオブザーバー参加いただきながら質疑が行われたということでございます。
まず、1点目の、今後、導入が見込まれる新たな放送サービスにおけるコンテンツ利用に関するルールのあり方の関係では、コピー制御等によって保護されるべき放送コンテンツの範囲について、構成員の方から、例えばニュースまでも含めたすべてのコンテンツに保護が必要なのかというようなご質問がございまして、この点について、オブザーバー参加しておりました放送局さんの方からは、原則としてすべてのコンテンツに保護が必要であるというような考え方が示されたところでございます。
それから、デジタル放送の現在のコピー制御というものが、コピーフリー、コピーネバー、コピーワンスの3種類となっている点について質問があり、なぜ、コピートゥワイスみたいなものが認められてないのかといったような質問があったところでございます。この点については、経緯的には、技術的な要因でありますということでございまして、コピー制御を示すビットが2ビットだったということもありまして、この3種類に限定されたというような専門家からのご説明があったということでございます。
それから、サーバー型放送における新たなコピー制御ルールについて質問がございました。これは、現在、規格の標準化の計画が進められているところでございまして、その中でコピー制御の柔軟化についても検討を行っているところである。例えば家庭内のネットワークのような同一ネットワーク内ではコピー可などの可能性も模索されているというような説明があったところでございます。
それから、デジタル時代において放送コンテンツの安全な流通を担保する手段のあり方については、放送コンテンツ保護を担保するための放送受信機にエンフォースメント、すなわち、保護の仕組みを遵守させる機能を盛り込む、その盛り込ませ方のあり方について、一つは、そういうコンテンツ保護の機能を持たない機器が実際に流通し、現実に弊害が生ずるといったような事態が生ずる前に法規制すべきであるというお立場の見解と、そうではなくて、実際に弊害が生じてから事後的に規制する方が技術の開発等々の可能性を束縛しなくていいのではないかというお立場と、2つの見解が示され、その間で意見交換がなされたということでございます。実際に、この辺について民民間でどのような検討がなされているかという質問、いわゆる無反応機器に対する対応の検討については、なお、今現在、メーカーさんと放送事業者の間で意見交換が進められているという、その検討の状況についてのご説明も併せてあったところでございます。
それから、第2回会合では、その一方のお立場にあります日本民間放送連盟さんの方から、知的財産戦略本部という総理をヘッドとする政府の戦略本部があるわけでございますが、そこで毎年策定しております知的財産推進計画、いわゆる行動計画でございますけれども、その2004の見直しに関連して民放連さんの方から意見を出しているわけでございますけれども、その意見についてご紹介をいただいた後、質疑を行ったということでございます。その民放連さんのご意見はどういうご意見だったかといいますと、デジタル時代に対応したデジタルコンテンツの私的利用の範囲について、民放連さんとしては、デジタル化によってコンテンツの送受信やネット上の流通が極めて容易になるということからしますと、それに対応して私的使用の概念というものをもう少し明確化しないと、なかなか権利者の理解を得て良質なコンテンツを提供することが難しくなるというような観点から、知的財産戦略本部の方にご意見を出しましたというご説明。
それから、技術的保護手段の回避に対する法的規制(2)のくだりについては、民放連さんとしては、この点については事前の法規制がやはり必要なのではないかというご意見を知的財産戦略本部の方に出した、というご説明があったところでございます。
意見交換する中で、(1)の点については、やはり権利者の理解、視聴者の利便性との間のバランスをとることが重要であるという点。そして、すべての関係者にとって、ウィン・ウィンの関係、すなわち、権利者、放送事業者、メーカー、すべてにとってマーケット拡大なり、また一方、視聴者にとっても利便性が向上するような関係というものを作ることが重要であって、そういうコンテンツ保護ルールというものを作っていくことが重要であろう、という点では関係者の認識は一致したということでございました。
それから、デジタル時代における放送コンテンツの課金のあり方についてご質問がございまして、この点については、サーバー型放送では視聴回数による課金、番組単位でのコピーの課金など、そこら辺についてできるだけ柔軟な利用が可能になるようなシステムの検討が、今、なされているというご紹介があったところでございます。
それから、デジタル時代における放送コンテンツの柔軟な利用を可能とするインフラについて。すなわち、これはどういうことかといいますと、放送だけではなくて、例えばブロードバンドみたいなところにコンテンツを提供していく、といったようなことを可能としていく上でどうしていったらいいのかという点についていいますと、これはやはり何といっても放送、ブロードバンド、双方の分野においてセキュア、すなわち、安全性が確保されるような流通を確保するインフラの確立というものは不可欠であるということで、そこら辺に向けた研究開発というものが、今後、さらに重要になってくるので、ここら辺を進めていかなければいけない、というようなコメントがあったところでございます。
それから、技術的保護手段回避に対する法的規制の関係については、ここにありますような点について質疑がなされたということでございまして、まず技術的保護手段に伴うコストの負担について。これは、コンテンツ保護のために受信機にかかる費用を消費者に転換することが本当に適当なのか。要するに、受信機にそういった機能を載せるということは、その分、機器の価格が上がるということで、それは消費者が負担するということになるので、それが本当に適当なのだろうかというご質問があったわけでございますけれども、これは消費者に良質なコンテンツを継続的に提供していく上で不可欠なものである、というようなご回答が民放連さんからあったところでございます。
それから、不正流通を抑制する方策を検討する際の基本的視点について質問がありまして、不正流通防止のために最も効果的な施策というのは、適正な対価によるコンテンツ提供を続けることではないか、というコメントがあったところでございます。
それから、いわゆる無反応機器に関する規制のあり方については、事前規制と事後規制という2つの立場があるわけでございますけれども、事前規制については、いわゆる技術開発の抑制効果を危惧するご意見というものがあったということでございます。
概略、現時点の検討状況は以上のようなことでございます。
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塩野座長 どうもありがとうございました。各ワーキンググループでの進捗状況は多少でこぼこがあるようですが、それについてのご意見等は、また後に承るといたしまして、先ほど、ご案内いたしましたように、今日、わざわざおいでいただきました三菱総研の方から、英独仏の公共放送についてのプレゼンテーションをお願いいたします。
どうか、よろしくお願いいたします。
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安江株式会社三菱総合研究所チームリーダー それでは、お手元の参考4という資料に基づきましてご説明したいと思います。
まず1ページ目に、各国の公共放送機関ということで組織等についてまとめてあります。イギリスの場合は、ご存じのように、BBCがありまして、ほかに非営利法人として Channel4というのがある。フランスの場合は、機関がたくさんあるんですけれども、まずテレビとしましては、France2、3、5というのがありまして、ほかにRadio France、ラジオ局。それから、海外県向けの放送をやっているRFO、国際放送をやっているRFI。それから、ドイツと共同で行っておりますARTEというテレビ局がございます。そのほかに、番組のアーカイブをやっておりますINA、国立視聴覚研究所というのがございます。ドイツの場合は、ドイツ放送連盟、ARDとZDF、これが大きなところで、テレビ放送もやっているわけですけれども、ほかにラジオをやっているドイチェラント・ラジオと、国際放送をやっているドイチェ・ベレ、フランスと共同でやっているARTE。こういったところが公共放送機関ということになります。
放送機関の性格といいますか、設立根拠のようなものですけれども、イギリスの場合は、ロイヤル・チャーターによって設立されていまして、業務内容等につきまして「協定書( The Agreement)」等によって定められているということになっています。
フランスの場合は、1986年放送法と通称されているコミュニケーションの自由に関する法律というのがありますけれども、それの中で各公共放送機関の設立が条文において定められているということになっていまして、業務内容等についてはCSA、これは放送を所管する独立の行政機関ですけれども、そことの「条件明細書」という契約書のようなものにおいて定められています。それから、資金についてですけれども、ARTE以外については政府が 100%出資していて、ARTEについては仏独の政府が50%ずつの資金負担を行っているという形になっています。
それからドイツの場合ですけれども、ドイツは基本的には州ごとに放送機関が設立されているということで、一番大きなARDというのは、各州の放送法及び州間協定に基づいて設立された9つの州放送協会というのがございますけれども、それと連邦法によって設立された国際放送をやっているドイチェ・ベレというものが連合している形。この連合体としてARDというのがございます。それから、第2ドイツテレビという全国テレビ放送をやっているところですけれども、これは、州間協定に基づいて単独の団体として設立されている。それから、ラジオにつきましても、州間協定に基づいてドイチェラント・ラジオが設立されているということになります。ドイチェ・ベレは、先ほど言いましたように連邦法に基づいて成立されていまして、ARTEの場合は、フランスの項でも述べましたように、仏独の条約に基づいて設立されているという形になっています。
各機関のガバナンス体制、経営管理体制になりますけれども、BBCの場合は、ご存じのように、現在は経営委員会というのがございまして、これが事業を監督している。それから、BBCの会長を任命する権限を持つということになっていますけれども、今年の2月に文化・メディア・スポーツ省が出したグリーンペーパーという中で、この経営委員会の改革がうたわれている。それで、通称ということになりますけれども、BBCトラストというものを経営委員会にかわって設置するということで、委員の構成等につきましては、あまり大きな変更はないんですけれども、より透明性を高めるという形で改革していくということになります。それから、日常的な経営については、理事会というものを別途設置しているということになります。それから、BBCが行うサービスの内容につきまして、特に基本サービス以外のところについては、競争的観点から市場へのインパクトについて Ofcomが審査を行った上でBBCトラストが別途、公益性というものにかなうのかという点で審査していく。そういう形で許認可をしていくようになっております。
フランスの場合は、やはり経営管理委員会というものが各公共放送会社の経営を行うという形になっておりまして、経営管理委員会は14名の委員、任期5年で構成されています。まず、上下両院の議長が任命する国会議員が各1名ずつ、2名になります。それから、政令によって政府の代表者が5名任命されます。それから、先ほど申しました規制機関であるCSAからやはり5名任命されている。あと2名、放送局の従業員の代表として任命されているということで、合計14名になっております。で、委員長はCSAが任命する形になっていまして、放送機関の中で一番大きなフランス・テレビジョンの社長についてもCSAが任命する形になっています。
放送機関の行う事業内容については、政府との間で目標手段契約というのを5年ごとに結ぶ形になっていまして、そこで事業計画を定めていくという形になります。これはフランス・テレビジョン等の放送機関と、それから政府ですね。政府の方は文化・コミュニケーション相と経済財政産業相が代表して調印する形になっているんですけれども、こちらの方が契約を交わすという形をとっております。この一種の事業計画的なものに沿って、毎年の予算、決算というものを国会に提出して、審議、承認を受けるという形で事業内容についての許認可を受けているという形になっています。
ドイツの場合はたくさんありますので、もう少し複雑ですけれども、まずARDの場合については、9つの州放送協会とドイチェ・ベレが出ていますので、各州の放送協会の中から幹事放送協会というのが輪番で選ばれていく。そちらが全体の共通的な業務を行っていく形になっています。それぞれの州放送協会につきましては、先ほど、各ワーキングの報告の中でもありましたけれども、放送委員会というのが設置されている。これらの人数等については、各放送協会によって異なるんですけれども、基本的にはこちらの方が最高機関として権限を持っているという形になります。それから、実際の業務につきましては、経営委員会が別途ありまして、こちらが業務遂行状態を監視していくという形になっております。
それから、全国機関でありますZDFにつきましても、やはりテレビ委員会といった委員会が設置されていまして、そちらの方で人事権も含めた権限を持って監修を行っているという形になっております。また、その業務状況についても、やはり経営委員会というものが別途ある、そういった構造になっております。
次に、所有チャンネル等ということで、どういった状況かということを公共放送との比較の上で商業放送もあわせて整理したのが2ページになります。
イギリスの場合ですと、まず公共放送はテレビ、ラジオ、それからBBCの場合、商業子会社が衛星チャンネルを持っているということになりまして、BBCのテレビは地上アナログが2波、地上デジタルが8チャンネルということになっています。ラジオの場合は、そこに書いてあるとおりになります。
それで、商業放送を見ますと、テレビの場合は地上アナログが2波、 Channel3と Channel5ということになりますね。それから、衛星デジタル、 Sky Digitalが有料放送を行っているという形になります。ラジオは、全国が3波と、ローカルで 264局という形になっております。
フランスの場合は、地上が3波ということで、テレビ放送を行っている放送局は4つあるんですけれども、うち1波、F5とARTEというのが16時間と8時間という形で、1チャンネルを分けて共同使用している形になっております。それから、海外県,海外領土向けにはRFOが別途、テレビ放送を行っているという形になっております。ラジオにつきましては、Radio Franceが4波持っているほかに、国際放送あるいは海外領土向け放送が行われているという形になります。
商業放送の場合ですと、テレビは地上アナログが3波。もともと公共放送だったんですけれども、民営化されたTF1と有料放送であるCanal PlusとM6という3つの民放がございます。それから、衛星デジタルですけれども、これが3波あります。ラジオについては、全国が約15のネットワークとローカルで 1,300ぐらいの局があるという形になっています。
ドイツですが、地上アナログが2波、ARDとZDFが全国のアナログ放送をやっている。ほかに、ローカルということで、各種放送協会がそれぞれ各地域ごとにやっているということでございます。衛星アナログにつきましては、ARDとZDFと加盟各州放送協会が地上アナログのサイマル放送を行っている。それで、デジタルにつきましては、サイマル放送+ARDとZDFのデジタル専門チャンネルというのを各3チャンネルずつ、サイマルプラス6チャンネルという形で別途行っております。それから、あと国際放送と、一部地域ですけれども、地上デジタルが若干行われている。そういう状況になっております。ラジオにつきましては、国内がアナログ2波、それからローカルと国際放送とデジタルという形になっております。
商業放送の場合ですと、テレビですけれども、地上アナログについては11波あるという形になっていますけれども、基本的には衛星・ケーブルでの配信が主であって、地上はそれらの補完的な位置づけとして一部地域で行われる、そういった状況となっております。それから、衛星については、アナログが13波、デジタルが1波といった形。ラジオについてもそこに書いてあるとおりになります。
以上が、放送局の機関の概要と放送波の状況ですけれども、次に、財源ということで、受信料制度等ということで見たいと思います。3ページになります。
イギリスの場合ですけれども、ご存じのように受信許可料といったものと、BBCのブランドを生かしてということになりますけれども、各国等にそれぞれ販売している番組等を含めた販売収入、それから政府交付金、こういった構成になっております。フランスの場合は、受信料収入のほかに広告収入、広告放送が認められていまして、それがもう一つ大きな柱になっているといった形になっています。ドイツの場合も、やはり受信料と広告放送収入、そういった形になっております。
それらの受信料徴収の法的根拠ですけれども、イギリスの場合は特許状+無線電信法ないし放送法といったものになっております。フランスの場合は、放送法において受信料というものが位置づけられた上で、毎年の政府予算がフランスの場合は法律という形になっているんですけれども、政府予算法の中で年額ですとか徴収方法といったものが定められております。それから、ドイツの場合は、放送受信料に関する州間協定というものを必要に応じて改定していく形で受信料を定めているという形になります。
年額については、そこに書いてありますように、各国によってカラー、モノクロですとか、テレビとラジオとか、そういった形態が分かれているんですけれども、最新の年額がそこに書いているとおりになっております。
改定につきましては、イギリスの場合は、基本的には2006年まで、毎年、物価スライド制という形になっていまして、所管する文化・メディア・スポーツ大臣が大蔵省の同意を得て決定していくということで、議会には報告のみということになっております。フランスの場合は、国会が毎年の政府予算法の中で決定するわけですけれども、その前提としまして、先ほど、ご説明した議会に提出する報告書に基づいて承認されていく、そういう形になっております。ドイツの場合については、公共放送の財源に関する独立の審査機関KEFというのがあるんですけれども、そこが答申を出して、それに基づいて州の首相会議というもので合意した後に各州でそれぞれ個別に議決していくといった形になっております。
罰則等についても、各国について、それぞれそこに書いてあるように定められているという形になります。
それから、公共放送と商業放送の事業規模ということで、それぞれどのぐらいのシェアになっているかということですけれども、具体的には、次の4ページにグラフにしてありますが、そちらをごらんいただくのがいいかと思います。上の段は、最初に申しました公共放送の財源構成ということになりまして、下の段が、今申した公共放送と商業放送の事業規模ということになります。
まず、財源の方をちょっと振り返りたいと思うんですけれども、イギリスの場合ですと、受信料が約7割、75%、4分の3ぐらいということになります。ドイツについては80%ぐらいということで、フランスの場合は若干受信料の比率が低くて、64%。その分、広告で補っている。そういった構成になっております。
公共放送と商業放送の事業規模につきましてですけれども、ドイツとイギリスは大体同じぐらいの比率になっていますけれども、7対3ぐらい。フランスの場合は、もともと公共放送だったTF1、一番大きな局ですけれども、そちらが民営化されたということもあると思うんですが、商業放送の方が大きな事業規模になっている。そういった形になっております。
最後、新サービス、特にインターネットを通じたサービスということになるかと思いますけれども、そういった動向についてまとめてございます。
イギリスの場合ですが、既にインターネットを通じたオンラインサービスが行われていますけれども、こちらについて、まず枠組みとしましては、先ほど言いましたように、BBCがインターネットサービスを行うということが競争的観点から市場に影響を与えないか、ということを Ofcomが審査した上で、それを受けて、通った後、BBCトラストが、そのサービス自体がBBCの公益性という観点で問題がないか、はみ出してないかということを行う。そういった枠組みになっています。
具体的なサービスの内容に即していいますと、BBCがニュースとか報道、あるいは討論フォーラム、教育といった番組について関連する内容をインターネットで提供することについての批判はないということですけれども、ゲームサイトといいますか、ゲームを子供向け番組等でつくって提供したり、あるいはエンターテインメント情報を提供するということについては、BBCがやる公益性があるのかという批判もある。そういった状況と伺っています。
フランスについては、公共放送が、先ほどいいました条件明細書の中で新しい技術に取り組んでいくということが定められているんですけれども、公共放送によるインターネットサービス提供に関して、まだ具体的な議論というのは見られない。賛否ともないということです。
ドイツですけれども、ドイツもやはりARD、ZDFがオンラインサービスを開始しています。内容については、ニュースですとか、番組関連情報ということで、広告は禁止されているということになっていますけれども、商業放送もやはりオンラインサービスを実施しているということで、受信料に関する議論と関連してということもあるんですけれども、公共放送があまりオンラインサービスをやると、商業放送の方が圧迫されるとか、そういった議論も一部ではあるということで、若干そういった意見があるという状況でございます。
駆け足になりましたけれども、以上でございます。
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塩野座長 どうもありがとうございました。先ほど、ご紹介するのを忘れまして申し訳ありませんでした。ご紹介いただいたのは、株式会社三菱総合研究所、チームリーダーの安江様でいらっしゃいます。どうもありがとうございました。ご一緒にご出席の主席研究員の中村秀治様、何かコメントをおつけになることはございますでしょうか。よろしいですか。それでは何か質問があったときに、どちらからでもお答えいただくといたしまして、以上、ワーキンググループの進捗状況と、それから特に、公共放送のワーキンググループでプレゼンテーションをしていただいた三菱総研の方に、もう一度ここで、重要な情報でございますので、情報を共有するということでプレゼンテーションしていただいたわけでございます。
そういうことで、公共放送に限らず、それぞれのワーキンググループ相互の情報交換ということもございますと同時に、公共放送に関しても、どうぞ適宜ご質問、ご質疑いただければと思います。
なお、濱田さんが急ぐ必要があるということですので、今の公共放送についてのコメントが何かあればいただけますでしょうか。と申しますのは、ここ、デジタル化の進展の話ですので、デジタル化の進展と公共放送のあり方がどういうふうに関係するかということも含めて、それはあるいは今後の検討課題になるかとも思いますけれども、コメントでもいただければと思います。
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○ |
濱田構成員 ありがとうございます。ちょっと別な用事で先に出ます。申し訳ありません。
先ほど、公共放送ワーキンググループの方の検討状況について、ご説明をいただきましたが、今、座長の方からお話がありましたように、特にデジタル化の問題に関わってどういう課題が出てくるかという、ここは本格的な切り込みまではまだ至っておりません。ただ、そういう議論の前提となる基本的な公共放送の制度のあり方について、少し比較制度的な視点からまず考えてみようということを始めているところでございます。そういうことをベースにして、では、デジタル化。これは、インターネットの話などは、ちょいちょい既に出ておりますが、広くどういう問題が生じるかということをこれから検討していく段階になっています。
公共放送のあり方をめぐって、今、ご案内のように、いろんな課題が出てきておりますが、それはそれとして、やはりこちらの研究会は目先の動きとは別に、やや長期的にデジタル化の問題を含めて公共放送のあり方を考えるということですので、できるだけクールに議論を進めたいというふうに思っております。それから、やはりデジタル化の進展ということを考えていきますと、視聴者、国民の側のニーズがどうなのか、ということをきちんと見据えてやっていかなければいけないというふうに思っておりますので、今まで、どちらかといいますと、事業者あるいは制度の側から、そういう接近をしてまいりましたが、今度は利用者の側からの検討を少しやってみようかと考えているところでございます。
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○ |
塩野座長 どうもありがとうございました。それでは、皆様からご自由に、順序は問いませんので、どうぞ、適当にご質問いただければと思います。
それでは、私の方からちょっとお伺いしますが、まず公共放送の方ですけれども、この組織でごく普通の、基本的なスタイルは、どこまでさかのぼればいいかという問題はありますけれども、大体英独仏的なものがずっと基礎にはあるわけですね。それで、最近、これを根本的に変えようという動きは少なくとも現時点ではない、そういうふうに理解してよろしいのでしょうか。これは三菱総研の方に伺ってもよろしいんですけれども。
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○ |
中村株式会社三菱総合研究所部長 基本的に従来型のスタイルを変える動きはないようです。イギリスのグリーンペーパーの3月2日の発表の中の受信料の議論にも、受信料制度をそのままBBCの財源確保として存続するのが望ましいのではないだろうか、そういう結果も出ております。
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○ |
塩野座長 ちょっと変な質問ですけれども、公共放送に対する信頼が揺らいでいるということはないですか。
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○ |
中村部長 そこら辺の議論は、特に出ていないと思います。
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○ |
塩野座長 それから、続いてでございますけれども、BBCのトラストはどこが変わったんですか。先ほど、事務局からのご説明にもありましたけれども、ちょっとよくわからないところがありまして、一つは、どこが変わったのかという点。それから、BBCのトラストが新規サービスを行う場合には、公益性の観点から審査するというんですけれども、日本法的な観点から見ると、これはBBCの内の機関なんですね。それが公益性をみずから判断して、それで行こうということだとすると、バイアスがかかるので、それはだめだ、というのが最近の日本の反応だと思うんですけれども、その点、イギリス人はおかしいとは思わないのでしょうか。
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○ |
安江チームリーダー 私の方から説明するのが適当かどうかがあるんですけれども、今、ご指摘のような点もあって、BBCトラストというのは、経営委員会と比べまして、より外部的な組織といいますか、経営委員会がある意味で半分内部的な位置づけであったという非難といいますか、指摘もあったので、より外部的なものにするというのが一つの改革のポイントになります。それは、委員の選び方とか、議論を透明化するとか、それから、オフィスを外部に置くとかそういったことも含めて、BBCとは一線を画すという位置づけを明確にするということであります。その上で、そういった公益性の議論というのも、これまでのようにあいまいな形ではなくてできるのではないか、という期待といいますか、ねらいを持って改革されているということだと思います。
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○ |
塩野座長 どうぞ。
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○ |
長谷部構成員 このワーキンググループでは、イギリスについては私の方からご説明をしたので、一言、二言つけ加えさせていただきますと、基本的には、ただいま、三菱総研さんの方からご説明があったとおりでございます。それから、BBCトラストは、前と一体どこが違うのか、という塩野座長からのお尋ねですが、ご案内のとおり、去年の春にいわゆるハットン・リポートが出まして、BBCのガバナンスのあり方について、かなり強い批判がなされ、その結果、BBCの経営委員長、会長がお二人とも辞任をするという事態を招いたことは広く知られているところですが、その折の批判の一つの焦点は、現在のBBCの経営委員会というのが2つの役割を兼ねている。要するに、BBCの事業のあり方を監督するという役割と同時に、BBCの事業のチアリーダーもやっている。その2つの役割を兼ねているという点でした。ハットン・リポートに至る事案の中では、政府とBBCとが対立をしたわけですが、そのときに、政府の側の苦情をあまりまじめに受け取らなくて、もっぱらチアリーダーとしての役割に徹してしまい、きちんと監督をしていなかったのではないか、というところが一つの批判の的になっております。ですから、この監督者としての立場と事業を盛り立てるという役割は分けた方がいいであろう。そこで、BBCトラストというものはもっぱら監督者としての役割を持たせよう。そういうことになっております。
また、塩野座長の方からご質問のありました新規サービスについて、公益性について審査をするということですが、実は、現在でもハットン・リポートの実態を受けた後に、現在の経営委員長をしておりますマイケル・グレードさんが行ったBBC内部での改革で、既にこれは始めていることです。何かBBCの方で例えば新規のチャンネルを開始したいというときには、市場へのインパクトを超える公益性がちゃんと確保できるのかということを経営委員会の方で現在は審査をするということになっております。その機能をBBCトラストにも持たせよう、そういうような考え方になっております。以上でございます。
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○ |
塩野座長 いろいろ教えていただいて、ありがとうございます。
BBCは、要するに、私は外部性がどの程度かということを聞いたんですけれども、日本法的にいうと、何かやっぱりNHKの一部のように見えるんですけれども、このトラストは、むしろ政府の機関というふうに考えた方がよろしいですか。
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○ |
長谷部構成員 BBCトラストは、あくまでBBCの機関です。つまり、これは、従来からBBCの経営委員会がそうだったんですけれども、BBCの経営委員会がBBCを監督している。それ以外には監督者は―― Ofcom側が部分的に監督する領域はございますけれども、基本的にはBBCの経営委員会が監督をしているのであって、それ以外のものは監督はしない。それがBBCの自律を守っているというのがイギリスのよき伝統だ、そういう理解だと思います。
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○ |
塩野座長 ありがとうございます。要するに、フランスとの違いというのが、そこではかなり明確に出ていますね。どうもありがとうございました。
では、隈部さん、かねて外国放送にお詳しいということですけれども、何かつけ加えて、皆さんに、今日、提供された以外にもこういう情報もあるよということで、ご指摘いただければと思いますが。
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○ |
隈部構成員 今、長谷部さんからご説明があったとおりで、大体尽きていると思うんですけれども、既にハットン・リポートの後、BBCが独自にグレード経営委員長のもとで改革を進めまして、かなり先取りをして今度のグリーンペーパーの内容のことをやっております。
例えばBBCの執行部と経営委員会を独立させるために、今まではBBCの建物の中にあった経営委員会を別の建物に既にもう移しています。それからもう一つは、事務局は今までBBCの執行部の方がやっていたんですけれども、それもグレード委員長になってから、別によそからかなりの政府の高官を務めていた人を長に持ってきまして、そして独立した事務局みたいな存在を作りました。それも既にもう実行しております。
したがって、今度のBBCトラストというのは、今、そういうふうに変わってきている経営委員会と果たしてどこまで違うかというのは、まだもう少し、グリーンペーパーからホワイトペーパーという最後の決定が出るまで様子を見ないとわからないんですけれども、どうもかなりの程度、ネーミングは変わりましたけれども、BBCの経営委員会の既にやっている改革をなぞってやっているな、という印象を私は受けております。ただ、長谷部先生がおっしゃったように、ハットン委員会でも相当批判された後でございますし、5月5日にイギリスは総選挙がございますので、それに向けて、非常に透明性を高めるという点を強調してこういう格好になったのだということでございまして、実際、それではBBCトラストがどういうふうにこれまでの経営委員会と違ってくるかというあたりは、さらに国民の一般の視聴者のコメントを聞いているところでございますから、それが5月31日までだったと思いますので、それに基づいて政府が次に今年中に出すホワイトペーパーを見ないと、最終的にはちょっとわからないという感じでございます。
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○ |
塩野座長 どうもありがとうございました。
各ワーキンググループの進捗状況に照らし合わせて、自分のところよりも遅れているとか、進んでいるとか、そういうコメントもいただいて結構だと思うんですけれども、今日、お伺いしたところでは、全体的にちょっとスピードが落ちているような感じがしますが、そこは事務局として少し宿題が多過ぎたということですか。
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○ |
安藤課長 いろいろな案件が重なりまして、事務局の方の対応が必ずしも十分できなかったということがございまして、先生、ご指摘のように、全体にやや作業が確かに少し遅れぎみの部分も出てきておりますが、これから頑張って参りたいと思います。
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塩野座長 ここは学者グループの集まりですから、期日を設定してどうこうしなければならないということではありませんけれども、学者はとかくゆっくり議論をしがちですので、事務局の方で少しせかさないとなかなか進まないというふうには思いますが、しかし、それでも知財の関係になると議論が非常に激しくなる。今、世の中一般がそうなんですが、今日は村井さんがおいででないので、知財にはほかにどなたか・・・・・・。村井さんにかわって何かコメントがありますか。やっぱり知財の方は非常に激しいやりとりといいますか、意見の対立が明確なようにも思いますけれども。
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○ |
小塚構成員 コンテンツワーキングに出席しての印象ですけれども、一方では確かに技術の進み具合を見ますと、従来のコンテンツとは違ったことを考えなければいけない、そういう意識を皆さんがお持ちのようですね。他方で、しかし、それをしようとしますと、今度は、視聴者を含めた、あるいは一般の、視聴者でない機器のユーザー等も含めまして皆が非常に不便になる。そこの両方を満たす解がどうもなかなか見つけられないというのが印象でして、そこでそれぞれの方向からご意見をおっしゃると、どうしても激しい対立になる、そういうことのようです。
それで、ワーキングでも議論が出たり、私も質問させていただいたりした点、例えば無反応機器というのはそもそも何ですかとか、それから、こういう技術的保護手段のかけ方はこれ以外にないのですかとか、これをかけてしまうと、今度、家庭内利用まで制限されませんかとか、そういうような議論が交わされているという状況です。
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○ |
塩野座長 ちょうどいいあれですが、無反応機器については、どなたに説明していただけばよろしいですか。伊東さんが一番よろしいですか。
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○ |
伊東構成員 コピー制御について、先ほど、2ビットというお話がございましたが、その情報が番組と共に流れてきたときに、その2ビットの情報に沿った動きをしない機器。要するに、コピーをしてはいけませんよ、という情報が来ているにもかかわらず、それは無視してコピーができるような仕組みになっている機器という意味だと思います。そんなことでよろしいでしょうか。
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○ |
安藤課長 はい。
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○ |
塩野座長 で、それが市販されると意味がないということですか。
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○ |
伊東構成員 はい。一部の機器はきちっと放送事業者あるいはコンテンツホルダーの意思に従ったコピーコントロールをしているのに、一部の機器はそうではなくて、自由にコピーができるということになりますと、ユーザー側から見れば、後者の方がある意味で便利ですねということになって、コピー制御に関する全体のバランスといいますか、統一がとれなくなるということだと思います。
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○ |
小塚構成員 ちょっと補足させていただきますが、現在の著作権法、それから不正競争防止法で、コピー制御信号を外すことについては権利侵害であると規定をし、著作権法は罰則規定も入っていたのではないかと思いますが、この無反応機器なるものは、コピー信号を外すのではなく、コピー信号に反応しないだけなので、これによっては規制できないという、そういう問題意識のようです。ただ、私は席上で確認させていただいたのですが、具体的にそういうものがもう出ているのか、あるいはどういうメーカーがお作りになるのか。つまり、世界に名立たる電機メーカーさんがそういうものをお作りになるとは思われないので、一体どういうところで作られているのですか、ということをちょっと確認したのですが、それについて、どうも「無反応機器というものが技術的にはあり得る」という問題意識で進んでいる段階のようでして、例えば秋葉原にそういうものが並んでいるかとか、まだそこまでのところは認識が共有されてないようです。
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○ |
塩野座長 それでは、私どもが先ほどご紹介したような次第で、とにかく何でも突っ込まれそうなワーキンググループですけれども、まだ基本的な勉強の段階ということで、すぐこれからどうのということもございません。それから、今日、後ほど、ご説明があります間接規制の問題につきましても、基本的には、今、別に動いておりますので、それの情報は承っているということでございますけれども、こちらの方で、ワーキンググループで先行して審議をして結論をするという状況にはございません、ということを申し上げておきたいと思います。
ただ、そういうことですので、いろんな問題が出てくると、これはどうかなということで、私どものところでも取り上げようかどうしようかということでいろいろ議論しているところがございます。議論といいますか、それぞれの方々がお考えのことだと思います。例えば昨今のお話ですと、放送と通信の融合と申しますか、技術的な融合ではなくて、経営的な問題がいろいろ起きていますけれども、実は、マスメディアの集中排除原則というところから切り込んだ、そういった問題についての切り口というのは、まだあまり私自身も勉強したことはございませんし、外国法制のこともあまりよく存じませんので、そういった新たな切り口も、論点もあるかなというふうには思っているところでございますが、気のついたものをどんどん取り入れていくと切りがありませんので、だんだんに重要な論点ごとに整理をしながら動いていくということになろうかと思います。
それから、デジタルラジオの方は別の研究会が進んでいるということでもございますので――これは業者の方もお入りですか。
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○ |
安藤課長 はい、そうです。
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○ |
塩野座長 産業界の方がお入りで、大分煮詰まっているということでございますけれども、そちらの情報を得た上で、また我々の方も制度化しなければならないものは制度化していく、というような運びになろうかというふうに思います。
そういうことで、一挙に全部ご報告をするというよりは、多少私どもの方も、ほかと同じかもしれませんけれども、個別論点で、これは先行してある種の結論をまとめた方がいいと思うものはまとめていくということになろうかと思います。差し当たり、ラジオが一番早く行くことになるかもしれません。
そこで、舟田さんのところが一番ゆっくりしているんですけれども、これはヒアリングの都合なんかもあるということをお伺いしましたが、今後のご予定はいかがになりますか。
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○ |
舟田構成員 もちろん、これはまだ事務局と相談中ですけれども、もう少し事業者間の取引というものの実態をきちんと調べないと、政策なり制度というふうにいかないのではないかということで、まだ一度WOWOWさんとNHKからヒアリングを受けただけですので、今後、もう少し事業者側からの情報というものを取ろう、そういう段階でございます。確かに遅れています。申し訳ないです。
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○ |
塩野座長 もし、ほかにご質問がなければ、今日、もう一つ、先ほど、ちょっとご案内いたしました間接規制の問題について皆様に情報を提供したいということで、事務局が用意しておりますので、そちらの方に移らせていただいてよろしゅうございますでしょうか。
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2) 放送分野における外資の間接支配規制に関する検討状況について |
○ |
塩野座長 それでは、事務局の方からご説明をお願いいたします。
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○ |
安藤課長 それでは、お手元資料2をごらんいただければと思います。これに基づきまして、放送局の外資規制に関する法改正の基本的考え方について、ご説明させていただければと思います。
まずは、検討の背景でございます。大変恐縮でございますけれども、お手元資料の5ページをお開きいただければと思います。ここに国内法人における外国人株主の持株比率の推移、昭和25年から平成15年度までの推移のグラフが載ってございます。電波法、放送法を制定した昭和25年から30年代、40年代、50年代前半あるいは60年代まで、大体1%から5%の範囲で外国人の保有比率というのは推移してきておったところでございます。それが、平成に入りまして、とりわけ12年以降、急激に外国人の持株比率が高まってございまして、平成15年では19.7%ということでございます。この割合と申しますのは、事業法人あるいは金融機関と並び立つほどの比率ということでございまして、そういう意味で、我が国の株式市場における外国人のウエートというのは非常に高まってきているのが近年の状況ということでございます。
最初のページにお戻りいただければと思います。二重囲みのところでございますけれども、このような近年における我が国に対する対内投資の増加、それから、我が国における株式保有・出資のあり方の急激な変化等、電波法制定当時には想定していなかったような事態の出現、こういったものを踏まえまして、現在、外国人による直接出資のみを対象としておりますところの放送局に対する外資規制のあり方を見直そうとするものでございます。
次に、見直しの具体的な内容でございますけれども、まず1点目といたしまして、対象は地上放送。地上放送について間接出資規制を導入する方向で、今、検討を進めているところでございます。
その理由でございますけれども、地上放送の場合、国民的財産である電波、公共の電波を使用するものでございますけれども、その中でもとりわけ有限希少性が強い分野である。それから、 4,800万のすべての世帯に受信機が普及しておって、政治、文化、社会などに非常に大きな影響力を有するメディアであり、言論報道機関として非常に重要な役割を担っている。それから、災害対策基本法上の指定地方公共機関に位置づけられるなど、災害時や国家安全保障に関わる有事における国民の情報伝達手段として大きな役割を担っている点。そして、諸外国を見ましても、こうした分野については間接出資規制が導入されている。こういったような理由から、地上放送についてこれを導入しようということでございます。
なお、衛星につきましては、英国、米国、フランス等において、まだ適用されている事例もなく、しかも、我が国においてかなり普及してきているとはいえ、まだ発展の段階であって、地上放送が担っているような役割を担うには至っていないことから、今回は対象としないということでございます。
それから、間接出資規制の基本的な枠組みでございますけれども、これにつきましては、情報通信分野の先例でありますところのNTTにおける間接出資規制の例を参考にして、今、検討を進めているところでございます。
具体的にNTTの例というのはどのようなものかということでございますけれども、お手元資料の4ページをお開きいただければと思います。ここにNTT法における外資規制の仕組みというものがございます。NTT法の場合には、外国人の直接保有株式数と外国人の間接保有株式数を合わせた数値が、NTTの総議決権数の3分の1未満という形になっております。すなわち、直接保有部分で何%以下、間接保有部分で何%以下という形ではなくて、両者の和が一定の議決権数未満になるように規律するという形になっているということでございます。
その間接保有株式の計算方法でございますけれども、下の図の左側でございます。一定のすそ切りがございまして、NTTに対する主要株主、要するに、一定議決権数以上を持っている日本法人について、これまた一定の議決権数以上、一つの日本の法人の主要株主として外国法人が出てきている、そういったものを計算の対象とするということでございまして、具体的には、すそ切りのパーセントは、NTTの場合にはそれぞれ10%ということでございます。すなわち、NTTに対して総議決権数の10%以上を保有している日本法人に対して、外国法人B、これは1の外国法人がということですが、1の外国法人がその日本法人Aの議決権数の10%以上を保有している場合に対象といたしましょう。そのカウントの仕方は、例えばここでは20%、20%となってございますが、それぞれ 100分の20× 100分の20で 100分の4、4%。この場合には、外国法人Bは、日本法人Aを経由してNTTの株式議決権数の4%を保有するというような形で計算する。それと直接保有数と合算して計算する。こういうような形になっているということでございます。
お手元資料のまた1ページにお戻りいただければと思いますけれども、こういったものなども参考といたしまして、放送局における間接出資規制の関係をどうしていこうかということでございますけれども、まずは、やはり間接出資の部分と直接出資の部分の合計が5分の1を超えない、という形で進めていきたいというふうに考えておるところでございます。すなわち、現行の外資規制比率5分の1未満は、間接出資を導入した際にも、これを変更しない。
右側の図でいいますところでは、直接出資Cに加えてA× B、これは一定のすそ切りをした上でございますけれども、A× Bで出てきた間接出資分とC、直接出資分を加えたものが5分の1未満という形で、今、検討を進めているところでございます。間接出資の場合のすそ切りといいますか、一定割合以上を出資の計算の対象とする、そのパーセントのところでございますけれども、これについては今後、省令で規定することとしております。NTTの場合も省令で定まっているわけでございますけれども、省令で規定する方向で、今現在、検討を進めておりまして、その際の参考といたしましては、10%がNTTの間接出資規制の対象のメルクマール。5%となりますと、証取法の大量保有報告書の報告義務対象ということでございまして、こういったようなものなども参考としながら、各方面のご意見等も伺いながら、今後、定めていきたいと考えているところでございます。
それから、このような間接出資規制を導入する場合、所要の規定の整備が必要でございまして、それが2ページでございます。
まず1点目といたしまして、外資規制、今現在、直接出資規制になっているわけでございますけれども、株主名簿への記載請求が外国人から来た場合に、それに応ずると5分の1以上となってしまう場合。この場合には、現在、外国人からの請求について株主名簿への記載を拒否することができる。放送法52条の8にそういう規定があるわけでございますけれども、今度、間接出資規制を入れた場合、外国人に限らず、間接出資に係る日本法人からの名義書換え請求についても、同様に、5分の1以上となることとなる場合には、要するに、放送事業者さんの方で記載を拒否できる旨の規定の整備が必要となりますので、その関係。要するに、対象に外国人だけでなく、間接出資に係る日本法人も加えるという形での規定の整備を行うこととしております。
それから、2点目といたしまして、今度、間接出資を入れますと、これまで純粋の日本法人であった、それで株主名簿に載っておった、その日本法人が、期中に外国人によって株を取得されてしまった。で、外資比率が上がる。この場合には、既に株主名簿にその日本法人が載ってございますので、放送局さんの方で名義書換え拒否という形で対抗することができないということになります。このような場合には、そのような事態が生じたことによって5分の1以上となる場合には、その超える部分について、一部、議決権を有しないこととする旨の規定を放送法の中に設けるというふうに、今、考えているところでございます。
それから、その他所要の規定の整備ということで、経過規定等々について整備していくということで、今、考えているところでございます。
この件につきましては、先ほど申し上げましたような事情、背景のもとに検討を進めているわけでございますけれども、個別事案を一つの契機といたしまして、先ほどのような状況変化がある中で、できるだけ速やかに対応すべきという各方面からのお話もございまして、今次国会に提出するべく、今、作業を進めているところでございまして、現在、政府部内で詰めの作業、調整を行っているという状況にあるということでございます。まだ政府部内での詰め、調整の段階ということもございまして、大変恐縮でございますけれども、資料は本研究会構成員限りということになっております。
今現在の私どもの方での検討状況は、このような形になっております。
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○ |
塩野座長 どうもありがとうございました。
今の状況のご報告でございますが、何か特にご質問なりご意見等はございますでしょうか。
外資規制、間接規制であれ、直接規制であれ、これ自体を問い直すというのは、各国でもまだ動いてないんですかね。例えばCATVや何かは、割合早くなくなりましたよね。それから、衛星は入ってないということで、今、地上に一応限定はされていますけれども、随分昔からのドクトリンですけれども、このドクトリンそのものがおかしいという議論はまだあまりないんですか。
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○ |
安藤課長 基本的には米国あるいはフランス、イタリア、カナダ、豪州、韓国、みんな、やはり外資規制、間接出資規制も含めてやっているわけでございますけれども、英国では、実をいいますと、2003年にこの外資規制を外しております。これはある意味でいいますと、国内投資の促進という観点から、そういったことをやろうということでございますが、その際に、やはりいろいろと議論がございまして、外資規制という形ではございませんが、一定のメディア企業の合併に際して、メディアの多様性についての公益テストをする、そういった代替の手段を設けた上で撤廃。そういった動きは一部にあるところでございますが、大勢といたしましては、やはり直接出資、間接出資含めて外資規制を行うというのが、今のところ、基本的な枠組みになっております。
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○ |
塩野座長 日本人の論文はないんですか。
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○ |
安藤課長 そこら辺はちょっと・・・・・・。
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○ |
塩野座長 私が聞くのも随分見識を問われるところですけれども、私、今まで気がついてないものですから。あるいは篠原さん、ご存じですか。
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○ |
篠原構成員 いえ、知りません。
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○ |
塩野座長 今度、お調べいただいて・・・・・・。やっぱり非常に古典的なドクトリンですよね。マスメディア集中排除の原則とも並立し得るものではありますけれども、一方においてマスメディア集中排除の原則がいろいろ議論になっているときに、外資規制がそのままということになって、いよいよもっと強化しろということなんですけれども、その辺のドクトリンというか、あるいはドグマティックの今後のあり方みたいなものですと、ここの研究会に長期的な問題としてはなるかもしれませんね。
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○ |
新美構成員 関連して、よろしいですか。
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○ |
塩野座長 はい、どうぞ。
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○ |
新美構成員 ドイツもやはり外資規制そのものがあるようには思えませんが、どんな代替的な手段を使っているんですか。
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○ |
安藤課長 ドイツの場合には、別添1にございますように、各州法に基づいておりますけれども、要するに、独またはEU加盟国内の居住地要件がある例があるというのが一点でございます。それからもう一つは、やはりドイツの場合は、ドイツ番組、ドイツで制作された番組を流すということを免許の要件としておりまして、そういう観点で実質的に外国性の排除といいますか、ドイツ文化の保護といいますか、そういったようなところを実質上、担保している。要するに、外資規制にかわって、そういったところで担保しているというのが実態だというふうに私どもとしては承知しております。
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○ |
新美構成員 どうもありがとうございます。
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○ |
塩野座長 篠原さん、どうぞ。
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○ |
篠原構成員 逆に安藤さんのところから教えていただきたいんですけれども、さっき、これの表にもありますように、イギリスの場合は規制を撤廃しましたね。日本はこれからちょっと見直して、そういう外資制限ということでいえば、規制を強化するという方向だと思うんですが、この主要国の場合の外資制限ということに関しては、ベクトルはどっちを向いているんでしょうか。緩和の方なのか、ある特定の放送領域に関しては、むしろ、がっしり、もう少し厳しくする方向なのか。これは現在をストップした状態で見ているわけだけれども、過去との関係でどうですかということなんです。不勉強で申し訳ありません。
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○ |
安藤課長 これはなかなかあれなんですけれども、例えばアメリカの場合には1927年に通信法の中に外資規制を設けたわけでございますけれども、そのときはまだ直接出資規制だけだったのですが、1933年に、やはりそれだけでは実質が確保できないということで、苦い経験を経て、1930何年だったかの通信法の改正で入れたということでございます。
それから、ちょっとお待ちいただけますか、データを持ってまいります。
同時に直接出資、間接出資を入れた国もあれば、直接出資で動き出した上で間接出資を後から入れている国も、実をいいますと、このリストにあります国々の中でございまして、比較的最近に至って間接出資を入れている国もございます。ちょっと今、具体的なデータが手元にございませんものですから、そこはデータをもってご説明できないで大変恐縮でございますけれども、一概にすべての国々で緩和の方向に向かっているかというと、そうではない。
要するに、もともと我が国の場合、直接出資規制で行っておりますが、それは外国人の日本法人の株式保有割合が1%程度という状況で、直接出資で十分に実効が確保できていた。ところが、昨今の状況の中で、我が国の株式がある意味で非常に安くなっていて、実力に比べて株が安いので、外国法人にとって結構魅力的になってきておりまして、ここ数年で外国法人の日本法人の株式を保有する割合が随分上がってきているわけでございますね。そうしますと、規制強化というよりは、そういう状況の中で外資規制の実効を確保する意味からすると、間接出資のところを見ないと・・・・・・。本来、電波法で昭和25年に設けた、あるいは33年にちょっと改正しておりますけれども、その改正した趣旨というものが、その実質が確保できないという意味において、規制強化というよりは、規制の実質、もともとの政策目標の実質を確保するための制度的な手直しである、というふうにご理解いただいた方がいいのかなというふうに私どもとしては考えておるわけでございます。たしか韓国等でも、そこら辺は逐次手当てをしているかと思いますけれども、データが手元に来次第、そこは具体的なデータをもってご説明させていただければと思います。
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○ |
塩野座長 小塚さんにお伺いしますけれども、今の点で、つまり、直接規制と間接規制は、制度的にとにかく違うことは違うんですけれども、本質的にそんなにびっくりするほどのことなのか、それとも、株式会社あるいは証取法から見た場合には、先ほどから実質という言葉が出ていますけれども、法制度的に見て、ここで90度変えたとか、規制強化に乗り出したという、そういうふうなものなのか、ご専門のあれからいうと、どういう感触をお受けになりますか。
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○ |
小塚構成員 規制をするという前提に立てば、それほど大きな変化ではないのだと私は思いますが、先生が先ほどおっしゃったように、規制をするかどうかという本質問題については、今回、特に議論をしていないということではないかと思います。
ついでにちょっと伺いたいのですが、直接規制は比較的簡単でわかりやすいのですが、間接規制は、具体的にどういうふうになさるつもりなんでしょうか。つまり、例えば名簿の書換えのところで止めるという方法ですけれども、それは放送局の株式を買った者は、自分の株主が誰であるとか、そういうことを放送局側に伝えるというようなことになるわけですか。
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○ |
安藤課長 多分、一定のすそ切り――といっては言葉が悪いんですけれども――しますので、恐らく主要株主が対象になってくるということでございまして、事実上、そこは放送局さんの方で、主要株主として外国人さんがどの程度入っているかということについては、ご協力いただいてご報告いただく。あるいは場合によっては、大量保有報告等はオープンになっておりますので、そういったものでの把握等をあわせもって、放送局さんの方でそこら辺の状況を把握しつつ、名義書換え等々に対応していただくというような形になるのかなと。そこは、放送局さんの方の定款において一定のお約束事を定めていただいた上で対応する、といったようなことも場合によっては考えられるのかなというふうに思います。
それから、先ほどの篠原先生からのご質問の関係でございますけれども、米国の場合、1927年に直接規制を入れて、1934年に間接出資規制を入れております。フランスの場合は、1982年に視聴覚通信法の中で、直接、間接あわせて外資規制を入れております。イタリアは1990年。それから、カナダは1968年にそれぞれ直間あわせてセットで対応しています。それから、豪州の場合には、直接規制が1956年、間接出資規制は1990年ということでございます。韓国は、いずれも1987年に導入しているようでございます。あと、WTOでの議論でございますけれども、WTOでは、放送の分野における外国性排除については、それぞれの各国の歴史的、文化的諸事情を勘案し対応すべき事項であって、いわゆるスタンドスティルとか、そういったものの検討の対象とはならない、という扱いになっているところでございます。
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○ |
塩野座長 ほかに、どうぞ。
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○ |
山下構成員 今のお話で、英国については外資規制を外したのか、最初からなかったのか。今、聞き逃したかもしれないんですけれども。
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○ |
安藤課長 イギリスにつきましては、外資規制はもともとございました。もともとは全国及び地域の商業テレビ、国内衛星サービス及び全国及びローカルアナログラジオサービスについては、英国民またはEU加盟国民に限り免許を取得することができるという形になっておりまして、外資規制があったわけでございますけれども、先ほど申し上げましたような背景事情から、これを外し、一方においてメディア企業買収の際に多様性審査、公益性審査というものを行うという形になっております。
それからもう一つ、イギリスの場合は、先ほどのドイツと同じような状況がございまして、イギリス国内におけるコンテンツの多様性、公共性を担保するための一定の審査というものがやはり行われるという規定も実をいうとあるようでございます。
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○ |
山下構成員 それから、もう一つ伺いたいんです。今のは上限のことを伺ったんですが、各国、この上限ぎりぎりまで実際に外資規制、外国資本が入っているのか、それともそうでもないのかという実態。それと、そのときの外国資本というのは、同業者なのか、それとも全然関係なく、利益、配当金を受け取るようなつもりの会社なのか。そういうのも教えていただけないでしょうか。
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○ |
安藤課長 申し訳ございません。それについて、今現在、データを持ち合わせておりませんで、別途、わかる範囲で調べまして、先生の方にご説明させていただきたいと思います。
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新美構成員 私、民法系の学者なものですから、土地所有について外国人規制というのが日本でもかつてあったわけですね。それは、現在、法律は残っているけれども、事実上、骨抜きということだと思います。それは、結局、所有制限したってしようがないんだということがあったと思うんですが、この放送分野において資本規制することによって、ここに書かれているような目的を確保できるのでしょうか。
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安藤課長 この外資規制につきましては、電波というのが、もともと有限希少なんですけれども、それがさらに国際的に各国に割り当てられている非常に有限希少な公共性の高い国民的財産である。そういったものについては、一義的にはまず自国民が優先して利用すべきであるというのが、ある意味でいうと、各国共通の考え方でございまして、そういう意味で外資規制といいますか、まずは国内の自国民が利用する。その上で、もし余裕があれば、外国人さんにもご利用いただく、という基本的な考え方に基づいて設けられている制度です。
それに加えて、放送の場合には、一国の政治、経済、社会、文化、さまざまな分野に非常に大きな影響を及ぼすことにもなることから、一般の無線局に比べて、少し規律をし、一般無線局は例えば3分の1にして、放送局の場合は5分の1というような形にしておりますけれども、基本は自国民優先、そういう考え方に基づいて規律しているところでございます。したがって、この所有について、議決権というものに着目した上で規制するということについては、その政策目的を実現する上で有効な手段であるというふうに各国でも考えられておって、今日に至っているということでございます。
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塩野座長 それから、理屈では幾つかあって、政治、文化に大きな影響力について、今、新美さんの方からご質問があって、そこもあるだろうけれども、国民の共有財産であるという点が各国のあるいは共通の認識かなというご説明がありました。それは、私もこういう問題で議論したことはないんですけれども、よくアメリカ人は共有の財産ということを非常に強調しますね。むしろ、日本の方が、かつての公物論なんていうのはおかしいということで議論をするんですけれども、アメリカ人もそうですし、あるいはドイツの人もそういった議論があるのかもしれません。さらに、電波はそもそもという議論もありますので、そこから発しているというところも考えられないではないですね。
それから、先ほどからのお話で、別の対応の仕方、つまり、外国人のですね。これは、ある意味ではちょっと違って、文化の話になると思いますけれども、外国製の文化を排除しようというのはいろんなところでやっていて、日本が一番開けっ広げじゃないですか。フランスはまた別の形で、映画とかいろいろやっているというところがあるものですから、そこでむしろ随分開けっ広げなのに、何で所有関係だけ問題にするのかというご質問が出たのも、そういったところから来ていると思いますけれども、日本は放送政策について、そこをすぐ変えようなんていう気持ちはないわけですね。外国映画はやめよう・・・・・・
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安藤課長 そういうことは、今のところ、考えておりません。そもそも主体規律の方を中心にして、その番組内容につきましては、基本的には放送事業者さんの番組編集の自由というものを、自律というものを尊重し、それを前提としつつ、主体の多様性等々において健全な民主主義の発達でありますとか、我が国の放送の発展を確保していく、という基本ポリシーに立って政策を展開しておりまして、外資性のところについても、基本的にいいますと、やはりその所有、主体規律というところでそれを排除し、その内容につきましては、基本的には放送事業者さんの方の編集自律の中で対応していくのが基本というのがこれまでの考え方でございまして、そこについて現時点において変更するというような考え方は基本的に持ち合わせていない。
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塩野座長 先ほど、小塚さんの方からやや冷たい評価がありましたが、つまり、生き馬の目を抜く人たちの集まりなので、これで大丈夫かなというのは、ある程度歩どまりはあるんじゃないか。歩どまりはありますね。
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小塚構成員 先ほど、お聞きしたところによると、いわばお願いですね。主要株主から情報を収集するということですので、そのお願いが通るぐらいの大きさのところは、確かに歩どまりがあるということなのであろうと理解しました。
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篠原構成員 地上波に関していえば、外国性の制限を解除する以前に、実態としては日本というのは国産が全体的なパーセンテージからいったら圧倒的に多いと思うんですね。一部、洋画だとかそういうのは地上波でもやっていますけれども、それ以外は民放が始まった当時に比べても比率が低いと思うんです。問題なのは、衛星系だと思うんです。でも、批判的な意見というのはほとんどないじゃないですか。
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塩野座長 ほかにどうぞ。ありませんか。
それでは、今日、予定しておりましたことについての意見交換は大体終わったと思います。皆さん、大変お忙しいところ、それぞれワーキンググループに分かれて研究を進めていただいておりますが、なかなか日程調整等も困難だとは思いますけれども、事務局も日程調整にどうぞ力を入れて、それぞれのワーキンググループが順調に動くように対応いただきたいと思います。
何か特に、他のワーキンググループも含めて、あるいは自分のワーキンググループはこんなところがよくないとか、そういったお話でもあれば、ご指摘いただければと思いますけれども、羽鳥さん、何かありますか。野村さん、何かございますか。よろしいですか。
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(3)閉会 |
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塩野座長 それでは、予定の時間よりは少し早目ではございますけれども、特にご発言がなければ、これで終わらせていただきます。
三菱総研のお二方、どうもいろいろありがとうございました。最後までおつき合いいただきまして、ありがとうございました。
では、それぞれワーキンググループに立ち返ってやりますが、次回のこういった全体の会合は大体いつごろを予定していればよろしいですか。
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安藤課長 申し訳ありません。別途、またご相談させていただきます。
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塩野座長 それでは、今日はどうもありがとうございました。 |