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「デジタル化の進展と放送政策に関する調査研究会」
第11回会合 議事要旨


  1. 日時
    平成17年6月3日(金) 16時00分〜18時00分

  2. 場所
    総務省第1特別会議室(中央合同庁舎2号館8階)

  3. 出席者
    (1)  調査研究会構成員(敬称略、五十音順)
    伊東晋、隈部紀生、塩野宏、篠原俊行、新美育文、野村敦子、長谷部恭男、
    羽鳥光俊、舟田正之、村井純、山下東子(11名)
    (2)  総務省側
    堀江情報通信政策局長、小笠原大臣官房審議官、福岡情報通信政策局総務課長、
    安藤放送政策課長、浅見放送技術課長、南地上放送課長、今林衛星放送課長、小笠原放送政策課企画官、井上放送政策課企画官

  4.  議事
    (1) 開会
    (2) 議題
    WGにおける検討状況
    (3) 閉会

  5.  議事の概要
    (本文中の記号の意味は、以下のとおり。
      ●…構成員の発言、○……総務省側の発言)

    (1) WGにおける検討状況
     各ワーキンググループの座長から、それぞれのワーキンググループにおける前回親会以降の検討状況について説明が行われた。
    (2) (1)に関する質疑応答
     主な内容は以下のとおり。

    技術的にテレビの1セグとラジオの放送が使う周波数帯は違うけれども、基本的には同じだというのが、一つポイントとして残るのではないか。ただ、当面は現状のテレビジョン放送とラジオ放送の概念をもとに少しずつ、境目がだんだん見えなくなっていくのではないか。
     デジタル技術の一番の特質は、一旦、1・0の世界にすれば、映像も音声も、全部同じように柔軟に扱えるということ。そういう技術的な利点と現状からの発展というものの間で多少のせめぎ合いが出てくるのではないか。

    コピーワンスに関して、コピートゥワイスというのも技術的にはあり得るのか。
    そのようなn回という回数の中で、家庭内ということを回数と読み変えて、利便性を少し担保する、という考え方の技術の提案もあり得る。
    コピーワンスというのが、何で1でなければいけないのかという説明は、法制度的にはおそらくできないのではないか。
    大変難しいところであるが、まずは、いわば制度面、法制面で、そのような考え方をどういうふうにコンセンサスを作るかという点。もう一つは、そういったことが技術的に可能かという点。さらにもう一つは、今回もうちょっと強く考えた方がいいということが議論された、利用の視点。実際に消費者から今までの使い方との違和感があるのではないかという意見を受け始めた、ということが委員の方あるいはメーカーの方から出てきている。そのメーカーあるいは放送事業者の方も、そういう声を受けとめて、他の点も含めて、もう少しいい方法ということの検討を開始している。
    コピーワンスの是非を巡る話は、コピーではなくてムーブではないかという用語の点と、1回きりというところから生ずる社会的な驚きや、それから感じる理不尽さ、不自由さという点の2層になっているのではないか。

    サーバー型放送について、著作権やそういった関係のものはどの程度整理されているのか。
    いろいろな議論があるが、サーバー型放送というのは、データといわゆる映像とが一緒に放送されていったものを蓄積していって、それを再利用するということのメカニズム。コピーワンスということを前提にすると、学校の先生が教材として再利用したり、地方自治体の中で再利用したりするときにどういうメカニズムで使えるのかという心配、疑問の声が上がっているところ。それに対して、技術は、そのような具体的な再利用を可能にするための放送を、現在、策定している途中。
    コピーワンスというのは唯一の選択という考え方ではなく、政策的にいろいろな考慮をして決まっていくものなのか。
    そのための議論を今、それぞれの立場を踏まえてよりよい方法を考えていくために行っているところ。

    デジタルになってコピーが非常に良質になってしまったので、コピーされる回数が増えれば増えるほど無制限に広がってしまうということを、コンテンツの制作者サイド、特にアメリカのハリウッドあたりは非常に恐れており、そのことをうまく納得させる方法を考えないといけないのではないか。アメリカでは、FCCによって、コピーワンス類似の放送フラッグが近々実施という段階であったが、FCCの権限ではないために違法であるという判決が高裁で出てしまっており、非常に大きな問題となっているところ。
     また、デジタル技術によって、流通自体が簡単になってしまったため、私的利用をどこまで認めるかというのが非常に難しい問題になっている。世の中の実態でどういうふうに流通するかというのを見極めながら、いつ、誰がそういったことをきちっとしていくのかということ自体が非常に大きな問題になっているのではないか。
     
    放送番組提供事業者は、CSの委託放送事業者だけではなく、地上放送事業者にも提供しているのか。
    ヒアリングで伺った事業者の場合には、自分が売り込めるような番組について、BSなりCSの事業者に売り込んでいるとのことであった。地上波の場合は、特にローカル事業者に売っているのではないか。
    良質の番組を少し安くてもCSの方に売って、地上放送ではもっと色々な稼げる番組で稼ぐ、という商売はよくあるのでなはいか。
    ヒアリングで聞いた限りでは、良質な番組は最初から売れないとのこと。
    どのメディアを優先するかは、番組供給事業者によってかなりばらつきがあるのではないか。先日の会社の場合は、ある種のプロモーションのためにCSに出す場合はあるけれども、そこで採算を考えるということはもうやらないという割り切りをした上で番組を出しているというケース。ただし、チャンネルを持つよりは時間帯を請け負う方がビジネスとしては良いとのことであった。

    NHKが立ち上げる懇談会については、いつごろまとまったものができると考えているのか。
    5月31日、NHK懇談会のメンバーが発表されたということであるが、6月中にもできるだけ早い段階に立ち上げた上で、年度末ぐらいに報告を取りまとめられれば、というように聞いているところ。

    デジタルラジオに関し、モアチャンネルということを踏まえると、現在たぶん何億台かがあると思われるラジオの受信機について、そもそもそれをターゲットにしてプラスアルファで新しいことをやっていくのか。それとも、全然関係ない新マーケットを考え、新しい産業や使い方をクリエートしていくのか。この議論のもとになっているそのようなビジョンのコンセンサスはどうなっているのか。また、そういうものは議論をここでしていくのか、あるいはそれはどこか別のところでしていくのか。
    基本的にこの問題は、別に「デジタル時代のラジオ放送の将来像に関する懇談会」の報告書が出ており、それを放送政策、特に放送制度としてどう受けとめるかというのがここでのお話。今挙げられたような視点は、その別のところでやることになるのではないか。
    「デジタル時代のラジオ放送の将来像に関する懇談会」報告書案要旨にラジオ産業の市場推計予測というものがついており、10年で倍増するというような見込みを期待として持っている。最近、ラジオ市場自体は、いろんな新しいメディアに押されぎみであったが、こういった施策に取り組むことによって、再度、元気を取り戻し、ラジオの良さを生かしつつ、技術のメリットを最大限に生かした形の展開をしていきたい、あるいはそういうような展開を可能にしたいという思いで、こういう報告書がまとめられたところ。
    誰が、何人で、どういうところで、どういう状況で使うのかという利用のイメージや国民一人一人がラジオをどうとらえていくのかというようなイメージを持った上で、それを実現するためのことを業界は創っていかなければならず、また、行政としてできること、すべきことに対する議論をしていかなければならないのではないか。
    放送法の問題を考える、あるいは放送事業の問題を考えるときに、ずっと事業者オリエンテッドな発想できており、利用者オリエンテッドなところに方向を変えなければいけない、あるいはそれをベースにして議論しなければいけないのではないか。
    このデジタルラジオの将来を考えていく上で、キーワードが2つ挙げられる。一つは、モアチャンネルということ。現在のアナログ放送も災害時等の基幹放送として、あるいは地方の情報発信の少なくとも一つの重要なツールとして、それはそれで役割を果たしていく。もう一つは、視聴者から見たときにラジオができるだけ便利に、かつ変わったというふうに見せていくためにどういう制度が必要かということ。それを志向して懇談会でも議論してきたところ。
    地上デジタルのラジオを聞ける受信機を普及させたい、というのも当該懇談会報告書案の産業政策的なアプローチの一つとしてあらわれているのではないか。
    受信機の普及は大事であるが、その受信機をデザインしていくときに、3億台をベースで受信機ができるということの中でデザインをすることと、1,000万台の普及を狙ってデザインをしていくこととでは、デザイン論が変わってくるのではないか。
    非常にデリケートな問題であるが、基本的にはモアチャンネル、新規サービスをやるという位置づけの中で、結果としてどうなっていくかというのは、市場の選択、利用者の方の選択に委ねられる部分があるのではないか。
    ラジオは公共放送として、あるいは公共的な役割の放送としてこうあるべきだというポリシーについてはどう考えるのか。
    デジタルラジオだから公共性がないということでは必ずしもなく、今のアナログFMが果たしている役割というものを一定程度確保するとともに、NHKがこのようなサービスを提供するというのは、公共放送としてのラジオに取り組むという意味合いが込められているのではないか。色々な方面に気配りしたバランスの中、こういった形で世の中にデジタルラジオ放送というものを船出させ、その一方で、ラジオの持てる公共性の良さというものも維持し、全体としてのソフトランディングを図っていきたい。
    放送政策をどういうふうに考えるか、ということの一番根本の問題があるのではないか。放送事業の、特にラジオ事業の促進策といった産業政策、さきほどデザインについて言われたような技術政策、それから放送の公共性といった番組政策。どの点を皆さんが了解してなければいけないかといったことも実は議論しておかなければならないのではないか。
     放送政策にはなかなか難しいところがあるが、基本的な政策というのは、番組の公共性そのものを維持するということではなくて、いかに放送という表現の自由のマーケットについて公正さを保たせるか、そこの一点にあるのではないか。
    「デジタル時代のラジオ放送の将来像に関する懇談会」の方はイギリスのことを割とモデルにして議論されているようであるが、ただ、イギリスも思ってないほどうまくいった、という例なのではないか。確かにマーケットの動向にかなり依存するというところがあるのではないか。
     公共性という点については、イギリスの場合、一つ一つのサービスについて政治的公平性が要求され、そういうライセンスを持っている者でないとマルチプレックスは使ってはいけないため、最低限のところは確保されている。その上で、あとは自由に商売をしてくださいということなのではないか。

    1セグメント放送のような仕組みで、デジタルラジオと同じこともできる、別なこともできるというときにどうなるかは、やはり競争の問題ではないか。新しい手段をなるべく喜んで使ってもらえるようなサービスが提供できる可能性の追求を考えてはどうか。


    次回会合は未定。
    以上



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