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調査研究会


「デジタル化の進展と放送政策に関する調査研究会」
第11回会合 議事録

  1. 日時
      平成17年6月3日(金) 16時00分〜18時00分

  2. 場所
      総務省第1特別会議室(中央合同庁舎2号館8階)

  3. 出席者
        (1)  調査研究会構成員(敬称略、五十音順)
    伊東晋、隈部紀生、塩野宏、篠原俊行、新美育文、野村敦子、長谷部恭男、羽鳥光俊、
    舟田正之、村井純、山下東子(11名)
        (2)  総務省側
    堀江情報通信政策局長、小笠原大臣官房審議官、福岡情報通信政策局総務課長、
    安藤放送政策課長、浅見放送技術課長、南地上放送課長、今林衛星放送課長、
    小笠原放送政策課企画官、井上放送政策課企画官

  4. 議事
     (1)開会
     (2)議題
       WGにおける検討状況
     (3)閉会

  5. 議事録

      (1)開会
    塩野座長 それでは、デジタル化の進展と放送政策に関する調査研究会、第11回会合を開催いたします。本日は、小塚、濱田、両構成員が欠席というふうに伺っております。そのほかの方々、皆様、ご出席でございますので、会を始めさせていただきます。
     本調査研究会では、ワーキンググループを立ち上げた際、もう既に申し上げていることではございますけれども、ワーキングの検討状況について、まだ必ずしも整理されていない段階でも、逐次、こういったいわば親会の会合を持ちまして、そこで検討状況をご披露いただく。皆様の情報共有を図っていこうというふうにお話をしてまいりました。前回も既にこういった会合を開いたわけでございますけれども、本日は、各ワーキングの座長からその後の検討状況についてご報告をいただくということにしたいと思います。
     ご報告は、続けて全部やっていただきまして、その後、それぞれ関係のあることでもございますので、一括して審議あるいは質疑の時間を持つというふうにしたいと思います。そういうことでよろしゅうございますでしょうか。それでは、まず、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。
    安藤放送政策課長 それでは、お手元の資料のクリップを外していただければと思います。座席表、それから式次第に続きまして、横紙でございますが、新サービスに伴う制度的諸課題検討WG検討状況、一枚物でございます。この検討ワーキングの関連資料といたしまして、「デジタル時代のラジオ放送の将来像に関する懇談会」報告書要旨(案)というものがついてございます。その後に、衛星・ケーブルデジタル放送検討WG検討状況、横紙一枚物でございます。その後に、デジタル化と公共放送検討WG検討状況、横紙一枚物と、これに関連します資料といたしまして、縦紙でございますが、「NHKの16年度決算について」がついてございます。その後に、放送コンテンツ検討WG検討状況、横紙一枚物がついております。資料については、以上でございます。
    塩野座長 どうもありがとうございました。それでは、資料の不足等がありましたら、適宜、申し出ていただくことにいたしまして、早速、各ワーキンググループからの報告に移りたいと思います。


      (2)議題
        WGにおける検討状況
    塩野座長 まず最初でございますけれども、私から新サービスに伴う制度的諸課題ワーキンググループの状況について、ご説明をいたします。
     前回の会合、この一般的な親会の会合の後、2回ほど会議を開いております。それはお手元の資料に入っていると思いますけれども、新サービスに伴う制度的諸課題検討ワーキング検討状況として、第3回は4月27日、第4回の会合は5月17日でございました。それぞれ、そこにありますように、デジタル時代のラジオ放送に関して集中的に議論を、あるいは情報の提供をしてもらったということでございます。
     この2つのところは、事業者からのヒアリングと、それから「デジタル時代のラジオ放送の将来像に関する懇談会」の報告書、これが検討の素材になったわけでございます。このところでいろいろな新しい情報、それから、特に懇談会の報告書についていろいろ新たな知見を得たわけでございます。その懇談会の報告書要旨(案)は皆様のお手元に届いていますね。それもご覧いただきながらということになろうかと思いますけれども、この報告書の要旨は、大変わかりやすくといいますか、細かく考えるとなかなか難しいところがあるんですけれども、とにかくストーリー性を持って作られております。
     まず1枚目でございますけれども、ラジオの担う社会的役割を再認識しようということで、地域密着性、パーソナル性の高い情報の入手手段ということが掲げられており、さらに、新潟中越地震のところでは、きめ細やかな情報提供が可能になることが実証されており、災害対策として大きな可能性を持っているということがございました。
     ただ、そのラジオを取り巻く環境は必ずしも温かいものではございませんで、いろいろなメディアが出てきているということの状況が次のページに出ておりますけれども、それに対応して、デジタルラジオ放送に関する現在までの状況については、かなり厳しいものがある。で、言わずもがな、日本ではしょっちゅうやることですけれども、それでは外国はどうか。で、翻って我が国を見るとこうなので、こう直そう、というふうなお話にこれも大体なるようなところがございますけれども、その海外の状況を詳しく説明している時間的余裕はございませんが、大きく英国と米国の2つのタイプがあって、それぞれ展開がなされているということでございました。
     そこで、我々の方として重要なのは、デジタルラジオの今後の展開の方向性をどういうふうに懇談会等でお考えになっているかということでございますけれども、そこのところは3枚目の2段目でデジタルラジオの今後の展開に係る基本的視点ということで、モアチャンネルという位置づけをされているということでございます。最も身近なユビキタスメディアとしての新しい発想で、インターネットとも連携したサービス、ビジネスを考えることが求められているということのようでございます。
     そして、そのときの一つの言葉が、サービスモデル、ビジネスモデルの中のモアチャンネルとしての性格を徹底して、大いに多様化を図ろうではないかということで、サービスモデル、ビジネスモデルの確立のところで、既にある種、制度論が展開されているわけでございますけれども、その具体的な中身として、次のページのデジタルラジオの今後の展開の基本的枠組みのところが、我々のこの政策研究会に一番密接に関係してくるものでございまして、特にモアチャンネルとしての新規性、多様性を確保する観点ということで、かなり具体的な制度論も展開されております。つまり、全国サービスを導入する。それから、マルチプレックス方式のもと、多様かつ柔軟なチャンネル運営を認める。それから、既存アナログラジオ局の資産・ノウハウの活用を十分考慮する。つまり、軟着陸も図りましょう、そういうことでございました。
     こういった報告を受けまして、いろいろ意見交換をしたわけでございますけれども、基本的なコンセプト、つまり、ラジオの社会的役割につきもう一度新たな認識をするということで、一方において、地域に密着したメディアであると同時に、全国普及という意味でのシームレスな展開もあり得るだろうということ。そして、これからは特にモアチャンネルというか、あるいは多様化を狙おうではないかということ。それから、その実現の方法として、これはイギリスをモデルにしたということでございますが、そのイギリスのモデルは、先ほど、ちょっとご紹介しましたイギリスとアメリカのところに出ている左側のものでございますが、それをモデルにしたマルチプレックス方式をとる。この基本的コンセプトについては大体ご了解を得ているのではないか。皆様、そういうものとして今後とも進めていくということについて、反対はないというと消極的になりますけれども、結構ではないでしょうか、というふうなご印象だったと思います。
     ただ、この懇談会報告あるいはラジオ局の方々のご発言の中では、電波法制あるいは放送法制から見ると、まだこんな点があるのではないか、注意しなければならない点があるのではないか、という角度からのご発言もございました。あるいは疑問もございました。それから、もっとさかのぼっていえば、こういうふうにデジタル化していくと、テレビとラジオ、そんなにうまい具合に切り分けられるのか、人為的に切り分けることの意義をもう一度考えた方がいいのではないか、という趣旨のご発言もありました。そういった非常に基本的な問題から、今申しましたような制度的な観点からいいますと、視聴者の視点から見たマルチプレックス方式というものについての、もう少し視聴者に納得できるような説明の仕方がないのかなというご発言も、私がしているのかもしれませんけれども、発言もあったように記憶をしているところでございます。その中に、一種の軟着陸というものもあるものですから、もっと視聴者の点はどうなのでしょうか、というふうなことも議論の対象になりました。
     それからもう一つは、このマルチプレックス、詳しい説明をしている時間的余裕がないのですが、もし、構成員の方からご質問があれば、また事務局から正確に紹介してもらいたいと思いますけれども、一つの免許主体といいますか、とにかくたくさんあるチャンネルの番組に一々免許していくということではなくて、ごく少数、最初は1社ということになるかもしれませんけれども、1社ないし将来においてもごく少数の者に免許をする。そして、その免許を受けた人がかなり多数のチャンネル、帯域幅が広いということもございますので、そのチャンネルで放送するということですけれども、その放送の内容、コンテンツは、ここがイギリスのモデルを見たということなのだろうと思いますけれども、番組供給者として位置づけるということになります。
     これは、既に、確か衛星の方で一部分実現しているということでもございますけれども、昔話になりますが、CATVで空いているチャンネルについて別の方にお願いするということもあり得る、貸しチャンネル方式あるいは貸出し機方式などということを数十年前に議論したことがありますけれども、そういうものをもっと正面から認めるということのようでございます。
     そうしますと、編集権の範囲というのはどういうことになるのか。つまり、たくさんのチャンネルが出たときに、これは番組規律との関係でございますけれども、1チャンネルごとに番組規律というものが妥当する、特に中立公平の問題、政治的公平の問題でございますが、そういうことではなくて、数チャンネル見れば、大体右から左までの意見が出ているではないかというようなことでいいのか。相対的に見るのか、さらに細かく言えば、番組ごとに見るのかという議論が、もう一度、放送制度論としてはあり得るのではないかという議論がございました。
     それから、免許主体に対する規制のあり方といいますか、免許するのですけれども、今度、番組提供者に対して、誰に貸すかということは、これは免許主体の判断になるわけですけれども、そのときの選別があるとすると、そこに一定のルールを設けておく必要があるのかどうか。もうすべて、最初のことですから、ご自由におやりなさいというのがいいのではないかという意見と、ある種、公平性の原則みたいなものがここに働くのかどうかというような問題も議論されているところでございます。
     それからまた、先ほどの番組規律との関係で申しますけれども、編集権の範囲は、編集権はもともと免許主体にあるとしても、番組規律との関係で、番組提供者は何らの責任も負わないということになるのかどうか。つまり、百貨店で、食料品を売っているところが委託販売で、それが何事か起きたときに、当該貸し主の百貨店あるいはスーパーかどれでもいいんですけれども、それの責任と、それから当該食料品をつくった人といったようなことについて、物ですと、これは新美先生のご専門ですけれども、製造物責任の問題になりますが、こういった番組、いわゆるソフトについてどういうふうに考えたらいいのかといったような事柄。こういった点について、必ずしも懇談会の方ではご議論を詰めておられないような気もいたしましたので、今後、そういった点を議論すべきではないかということも議論になったところでございます。
     それからもう一つ厄介なのは、ダウンロードした音楽に課金する場合、これが一体何なのであるか。有料放送という議論になるのか、そうではない、単なるサービスに対する対価でございますということになるのか。そのサービスは一体誰がやるのかといったような、そういった多少細かな議論も必要になろうかという議論もしております。
     そういった、やや放送政策といいますか、政策そのものよりは、放送制度あるいは放送法制の観点からの議論をこちらの方でさせていただいたということでございますが、先ほど申しましたように、基本的なコンセプトは大体これでご同意といいますか、ご賛同を得たというふうなことでございます。そういうことでございますので、今後の我がワーキンググループ、新サービスに伴うワーキンググループとしては、まだ残されたものはたくさんありますけれども、いわゆる携帯端末向け地上デジタル放送のあり方が、直近の課題として、デジタルラジオのあり方と密接に結びついた問題として出てまいりますので、この点について、ラジオ、テレビの事業者からのヒアリングを実施して参りたいというふうに思っております。
     それから、本研究会が開催されて以来、いろんな問題がどんどん出てきておりますが、外資規制のあり方については、我々のワーキンググループでヒアリングをし、さらに若干の情報の提供を、前回、この親会でもしたところでございますが、この点はもう既に法案として動いているところでございます。そのほかに、マスメディア集中排除のあり方など、本研究会が開催されて以降、いろいろな問題も出ておりますので、そういった課題にも取り組んでいきたいというふうに思っているところでございます。
     私の報告は以上でございます。いろいろご質問もあろうかと思いますけれども、最初に申しましたように、まず、それぞれのワーキンググループからのご報告を徴するということにしたいと思います。
     そこで、続きまして、衛星・ケーブルデジタル放送ワーキンググループの検討状況を、舟田WG座長、よろしくお願いいたします。
    舟田構成員 衛星・ケーブルワーキンググループについては、次の紙になります。検討状況という一枚紙が配付されていると思います。
     第2回と第3回ということで、2回やりました。第1回は、既にご報告いたしましたように、NHKWOWOWからヒアリングということで、実は、まだこのワーキンググループではヒアリングしかやっていません。もちろん、ヒアリングの中でいろいろ議論はしているわけですが、まだ基礎的な実態調査のようなことになっております。
     個別具体的なことに入りますが、第2回には、ジュピターテレコムと地域のケーブル事業者からヒアリングを行いました。ジュピターテレコムは、ご存じのとおり、MSOの最大手でございますが、ここでは3つの事業、電話、高速インターネット、テレビをバンドルサービスというふうに呼んでおりましたけれども、力を入れている。しかも、かなり伸びているということであります。テレビ、インターネット、電話、3者合わせて1家庭平均 7,000円ぐらい収入があるということで、もちろん、通信事業者との競争は激しいわけですけれども、今後とも市場の活性化の中で推進していきたいということでありました。
     それから、ケーブルにおけるコンテンツの考え方、これが一番私どもにとっては関心があるわけですが、テレビはエンターテインメントだ、どうやったらおもしろい番組を提供して見てもらえるかということになる。そうしますと、コンテンツの選択基準は単なる価格よりも内容だということを強く主張しておられます。そういう意味では、コンテンツの内容をよくして、多チャンネル市場全体のパイを拡大するということが、ケーブルなり番組供給事業者、あるいはスカパーの共通課題であるというような考え方でありました。
     私もちょっと質問して、従来はケーブルが番組供給業者に対して番組を買うときに叩いているのではないか、叩く競争ということもあったのではないかというようなことを聞いたんですけれども、確かに今のところ、今、供給しているのは古い再送信物が多いということで、これでは困るというふうに認識している。専門チャンネルとしてのチャンネルの差別化も不十分だ。ですから、もっと充実した内容であれば、それなりに金を払うというような対応をしたいということでありました。いずれにしろ、有料放送市場全体としては高い成長率ということで、この事業者によると、最近5年間で、1年で21.3%の伸びだということで、需要はあるというようなことを強調されておりました。
     それから、今後の事業戦略についてですが、一つは、MSOとしての特色を生かしてケーブル事業運営のノウハウの提供などのような、先ほどのバンドルサービス、テレビ、インターネット、電話、そういうサービス以外にも、さまざまなサービスの事業化をしたいというようなことも言っていましたし、また他方で、これもMSOの方と話すと必ず出てくるわけですけれども、地域密着というケーブルの特徴はどうなっているかということについては、コミュニティチャンネル番組を改善ということもおっしゃっておられました。さまざまな、もう少し智恵があり得るのではないかということです。
     ただ、もう一つ、まだこれは企画の段階のようですが、従来の番組供給業者から受けるだけではなくて、自前の番組ネットワークみたいなものを作っていきたい。全国で多くのケーブル事業を展開しているということもあり、自前の番組ネットワークということをやりたいというようなことが印象に残りました。同じようなことは、後で第3回の会合でも、番組供給市場の再編みたいな芽が事業者の中からもできているかなという感じであります。
     それからもう一つ、2番目は、地域のケーブル事業者からも、これはその中では比較的革新的なことをいろいろやっている事業者でございますが、県全体の幾つかのケーブル事業を光ファイバーで結んで――名前を出していいんですね。ここには出ていませんけれども、私、どこまで出していいのかわからないんですが、富山県ですけれども、県全体に同一の放送を実施するというようなことでございます。例えば映像の双方向機能として「お元気井戸端談義」というのも予定しているということで、さまざまな新しい機能も考えているということであります。
     それで、先ほどと同じことですが、コンテンツ調達について同じようなことを聞いたんですけれども、聞けば当然かもしれませんけれども、いいコンテンツが欲しい。いいコンテンツであれば、お金を払ってもやりたいというようなことはおっしゃっていました。もちろん、一番力を入れているのは自分のコミュニティチャンネルで、これについてはタイムシェアリングで、7つでしたか、8つの県内のケーブルのコミュニティチャンネルを時間に切って1つのチャンネルでやっている。その中でさまざまな工夫が可能になるし、一種の競争のような状況も生まれるというようなことでございました。コミュニティという自主番組の制作、交換に力を入れているということであります。
     それ以外の番組調達についても、先ほどのジュピターと同じようなことで、番組は内容が勝負なんだから、安かろう悪かろうではだめだ、いい番組が欲しいというようなことでした。
     次の第3回は、一転して、逆の番組供給事業者の方からお聞きしたんですけれども、こちらから聞くと非常に気持ちが暗くなりまして、なかなか事業運営が難しいことをお二方とも強調されておられました。
     それで、1、2とありますけれども、1は、ある番組供給事業者でございますが、番組の対価は非常に安い。今、ここではパッケージとして売っているわけですけれども、一覧表を作って売り込んでいるけれども、とにかく安い。到底、さまざまな費用を考えると、なかなかペイしない。私どもの関心の一つは、番組供給事業者と委託放送事業者の違いといいますか、そういうようなことであったわけですけれども、この事業者は、確かに自分たちも委託放送事業者になろうかと検討したことがあるけれども、やめた。到底、事業運営の成算が立たないというようなことで、では、番組供給事業者としてもなかなか成算が立たないわけですけれども、この事業者はむしろ番組制作会社で、番組制作を地上波から委託を受けて、その後、戻ってきて、自分の著作権となったものについて番組を売っているということですね。
     もちろん、これからそういう放送番組の二次利用、制作事業者が著作権が自分に戻ってきたものについての二次利用を展開したいということで、ここでは番組のメタデータ、どういう番組で出演者はだれでどうのこうのということについてデータベースを作って、より合理的な取引の前提を作りたいというようなことでありました。この方向は、一事業者だけではなくて、恐らく全体としてもあるのではないかなと思いますけれども、今のところは自分で一覧表をつくって売込みに行っている。細々とやっている。番組供給についてはですね。そういうことになるわけであります。ちょっと順序が逆になったかもしれませんけれども、今は、そういうことで、番組制作会社に戻ってくるような、いわゆる完パケ物についての二次利用の問題でありました。いずれにしろ、権利処理が非常に大変だし、お金がかかるということで、なかなか成算が立たないということでありました。
     それから、最後ですけれども、もう一つの番組供給事業者は、ドキュメンタリーの制作を主としてやっている事業者で、ドキュメンタリーといいますか、あるいはもう少し広く良質な番組ということになりますと、衛星放送事業といいますか、ケーブルも含めて、非常に経営の状況は悪くなっている。その会社自体も、もちろんかなり……。衛星の多チャンネルが始まったのが89年か90年ですから、かなり前なんですけれども、どんどん下がっているということであります。特にBSCSについては市場が狭い。で、なかなかペイしないということであります。
     ペイパービュー方式とかいろいろあるではないかというような議論も出たんですけれども、制作費を回収するというのはなかなか難しい。そういう意味で、最初から少数のコアに向けた番組制作というのは、なかなか難しい。やはりこのドキュメンタリーをつくっている方の持論だろうと思いますけれども、この親会でも大分前のヒアリングに出ていたと思いますけれども、巨大な地上波というものがあって、それと比べるとBSCSというのは余りにも小さい。しかも、少なくとも良質な番組という意味では、むしろ、悪化のスパイラル傾向が進んでいるんだ。そういう意味で、なかなか突破口が見つからないというような状況であるということでした。
     そういうことで、2回、会合をしたわけですけれども、この2回については、私は、一つは、前半のケーブル事業者から見ると、衛星もそうだと思いますけれども、エンターテインメントの産業としての発展をどうしたらいいかという面があり、他方では、多チャンネルなんだから多様な番組あるいは良質な番組をどうやって確保していくのか。コンテンツの面では、そういう2つの面に目を向けて政策として考えるべきかなというのが一つ。
     もう一つは、コンテンツの制作・供給というものの市場がなかなかできない。今のところ、非常に小さな範囲にとどまっている。CSの場合、1本、2万円、3万円で売っているというようなことで、BSの場合はまだ1けた上なんですけれども、到底、それでは事業としてやる気にならないというようなことなのかもしれません。今後、それをどうやって離陸させていくのか。さっきのメタデータについてのデータベースなり、あるいは取引の仕方、取引秩序みたいなものを今後どうやって作っていくのか。
     その2つについて、ちょっと参考になったかなという気がいたしました。以上です。
    塩野座長 今後の計画みたいものをちょっと……
    舟田構成員 では、一言。私どもの任務の一つはプラットフォーム事業、先ほど、番組供給事業と委託放送事業といいましたけれども、もちろん、もう一つ、制作事業とあるわけですけれども、今度はそれを束ねるプラットフォーム事業の位置づけということがあるので、今後はそれについて勉強したいと思います。
    塩野座長 どうもありがとうございました。
     それでは、続きまして、デジタル化と公共放送検討ワーキンググループの検討状況のご説明に移りますが、本日、濱田WG座長はご欠席ですので、事務局の方から代わってご説明いただきましょうか。
    安藤課長 それでは、デジタル化と公共放送検討ワーキングの検討状況の横紙をご覧いただければと思います。本ワーキングでございますけれども、5月31日に第3回の会合を開催しておりまして、NHKの方から、同日、総務大臣の方に提出されましたNHKの平成16年度決算の概要等について、ご説明いただいたところでございます。NHKの16年度収支決算の概要は既に新聞等でも報道されてございますので、ご案内の面もあろうかと思いますが、下の参考についているとおりでございます。
     太枠のところが16年度の収支決算ということでございまして、事業収入は15年度決算に比較しまして26億円の減。うち受信料収入が 6,410億円ということで、15年度決算に比較いたしまして、約68億円の減となっているということでございます。 一方、事業支出の方でございますけれども、 6,592億ということで、これは15年度決算に比べますと、13億円の増ということでございまして、全体といたしましての事業収支差金、事業収入から事業支出を差し引いた差金は75億円ということで、平成15年度決算に比較しますと40億円の減という形でございます。この75億円のうち、71億円を債務償還に充当しておりまして、収支過不足が3億円という形になってございまして、それぞれ15年度決算との比較ではマイナス6億円、マイナス33億円という形になっているということでございます。
     これを当該年度、すなわち、16年度収支予算と比較したものが下の表ということでございまして、それぞれこういう形になっております。事業収支差金につきましては、16年度収支予算で71億円を予定しておったところでございますけれども、さまざまな事業支出のやりくり等々によりまして決算では75億ということでございまして、3億円ほど差金が多く出ているという形になっております。この3億円につきましては、翌年度以降の財政安定のための財源として繰り越しているということでございます。
     それぞれの要因については、右側にちょっとコメントさせていただいているところでございます。まず、受信料収入が68億円の減収になった要因でございますけれども、大きい要因といたしましては、不祥事関連の支払拒否・保留の件数が16年度末で74.7万件になったという点。それから、受信料契約の年度内の増減でございますけれども、契約総数がもともとは増を予定しておったわけでございますが、16年度は実質で28万件の減となっているということです。15年度は15万件の増でございました。一方、衛星契約の増加でございますけれども、15年度は実績で42万件の増になっておりましたが、16年度は35万件にとどまった。これは、もともと予算段階では衛星契約は60万件の増を予定しておりましたので、そこに至らなかったといったようなこと等がございまして、これらの要因が複合的に絡み合いまして、受信料収入が68億円の減になったということでございます。
     一方、これに対して増収にも取り組んでございまして、番組活用収入の増。例えば韓国ドラマ、「冬ソナ」とかですね。ああいったものの活用等による収入を得ておりまして、決算・決算での比較では副次収入が25億円の増収になっているということでございます。その他の収入につきましても16億円の増収ということで、全体としては事業収入の減が26億円に圧縮されているということでございます。
     一方、事業支出の方でございますけれども、事業支出の方は事業運営費を業務改革等の推進によりまして、決算・決算比較で98億円支出減という形になっております。主な内容は、括弧内に書いてあるとおりでございます。しかしながら、決算・決算で98億円の事業運営費の節減をしたわけでございますが、実をいいますと、16年度もデジタル設備投資を進めておりまして、それに伴う減価償却費の増がございます。その結果といたしまして、全体としては決算・決算で比較いたしますと、左側の表にありますように、事業支出は13億円の増という形になっておるということでございます。
     収支過不足については、先ほど申し上げましたとおりでございまして、全体で3億円ということでございます。受信料収入は非常に厳しい状況ではありましたけれども、経費節減等の努力によりまして収支均衡予算を堅持した、というのが16年度のNHK決算の概要ということでございます。
     このような説明の後、質疑が行われたわけでございますけれども、主な質疑の項目といたしましては、左側の上の方に挙げておりますような事項ということでございます。受信料支払い拒否の動向について、どういう状況になっておりますかという質問につきましては、NHKさんの方からは、不祥事関連の支払拒否・保留件数が16年度末で、先ほど申し上げましたが、74.7万件に達しておるわけでございますけれども、職員の訪問活動による再生、改革に向けた取組の説明、あるいはご理解いただく活動、そういったものでございますとか、コールセンターの活用、さらには外部の一流企業のOBの営業経験者等による特別対策チームの設置等々に取り組んでおるところでございまして、全力でこれの回復に努めてまいりたいというお話がございました。
     それから、受信料収納コストの関係。そういった支払保留・拒否の方々にいろいろと粘り強く説得していくということになれば、相当程度のコストがかかるのではないか。そこら辺は結果としての費用対効果の面でどうなのでしょうか、というご質問があったわけでございますけれども、協会の方からは、確かに粘り強く説得していくということになると、いろいろとコストがかかるのではあるけれども、それによって理解いただき、お支払いいただくようになれば、長期にわたって受信料をお支払いいただけるという面もありますし、さらに他への波及が抑制され、あるいは、むしろ周りのまだ支払保留等をされている方々に対してのいろんな意味での効果というものも期待される。そういう意味では、長期的に見て大きい効果が得られるので、これは頑張っていかなければならないというご説明がありました。
     それから、こういう厳しい中で業務改革についてどのように取り組んでいく方針なのか、というご質問があったわけでございますけれども、NHKの命はやはり番組にあります。したがって、その番組の質を落とすことは決してできない。これは一層充実していく必要がある。そういう意味からしますと、共通部門、管理部門のコストの削減等々、いろいろやっていかなければいけないのではないかというようなお話がありました。
     それから、コスト削減のためのアウトソーシングについてはどのような取組をしているのかというお話がございまして、受信料収納については、個人契約を結ぶ地域スタッフへの委託でありますとか、営業拠点の社員だけではなくて、法人への委託等々、さまざまな工夫を、今、展開しているところであるというようなお話がありました。
     それと、今、進めております地上デジタル放送やハイビジョンへの設備投資の関係についてのご質問がございまして、これについては、それなりのコストを要するところでありますけれども、最大の課題ではあるということでありまして、これについては、厳しい状況の中ではあるがしっかり取り組んでいくというお話があったということでございます。
     こういうお話を伺ったところでありますが、今後でございますが、次回には、こういった状況の中でのNHKさんとしての今後の取組みについて、ワーキングの方でまたお話を伺う機会を設けさせていただこうかなというふうに考えているところでございます。
     概要は以上でございます。
    塩野座長 どうもありがとうございました。いろいろご質問もあろうかと思いますが、とりあえず先に進ませていただきます。
     それでは、最後になりましたけれども、放送コンテンツワーキンググループの検討状況のご説明をお願いいたします。村井WG座長、よろしくお願いいたします。
    村井構成員 お配りいただきました資料にあります、第3回、第4回会合というのは、それぞれ4月12日と5月13日に開催されたもので、書かれてあるような項目について議論をさせていただきました。
     まず、第3回の会合では、デジタル放送における安全なコンテンツ流通の担保のあり方について、つまり、一旦、放送されたコンテンツが流通する中でコピー制御などの安全なメカニズムを担保するためにはどのような方法がありうるのかについて検討いたしました。具体的にはヒアリングを実施したわけですが、デジタル放送におけるコンテンツというのは、制作者の立場、放送事業者の立場、それからメーカーの立場、それぞれの視点がございまして、そういったそれぞれの立場からのヒアリングが必要だということで、それぞれの方に発表をお願いいたしました。当然、今の三者以外にも立場はありますでしょうし、あるいはその三者の中でも異なるご意見が存在することも認識しております。そういったことを踏まえたうえでのヒアリングということで議論を行いました。
     基本的には、既に始まっておりますデジタル放送にはコピー制御方式がございまして、幾つかの経緯から現行のものができているわけですが、この背景についてもヒアリングを行っております。このコピー制御方式も、後で申し上げますけれども、現状でのいろいろな認識の違いのもととなるわけですけれども、現状の方式に至った経緯に関しましても、それぞれの立場における経緯がございまして、コピー制御に対する視点、あるいは方式が出来上がるまでの流れというのも幾つかできております。つまり、非常に難しい意思決定の中で現行のシステムができているという背景がわかってきております。
     次に、それぞれの立場の現状認識ということでございますけれども、まずコンテンツ制作者の側のご意見から述べさせていただきます。コンテンツ制作者にも先ほど申し上げましたように、幾つかの立場があるだろうということでございますけれども、一つの議論としましては、例えばデジタルオーディオの世界におけるコピー制御に関して、コピーコントロール機能が導入されたCDが一度世の中に出たのですが、それが廃止の方向に動いているというような内容があり、基本的にはユーザーの使いやすさということと、安全性を担保するための技術としてのコピープロテクションのようなものとの対応が非常に課題になってくるだろうということが、コンテンツ制作者の一つのご意見としてありました。コピープロテクションのような機能がユーザーの賛同を得られるようにするためにはどうするかという悩みの中で音楽CDを中心とした産業というのはいろいろな変化と経験を積んでいるので、こういうことも含めて参考にしていく必要があるのではないかということだと思います。
     続きまして、放送事業者の側のご意見を伺った中では、利用者の利便に関しましては、現行のコピーワンスというコピー制御方式についてのご意見がございました。具体的にコピーワンスとは、1回録画をしてしまえば、その次に録画――コピーをするということは、基本的にはできない。すなわち、「2回目の」コピーをすると元が消えるというメカニズムでございますが、そのコピー制御方式で利用者の利便は担保できるのではないかというご意見をお持ちの方もいらっしゃいました。
     そのほかにも放送事業者の側のご意見としては、コンテンツを提供していただく方に対する立場としては、インターネットで家庭の中に放送コンテンツが入り、それから、その家庭内での私的利用を超えてコピーがつくられる、あるいはインターネットなどを活用して家庭の外へ伝送される、こういうことを何とか防ぐことが番組を提供していただく方への責任であるというような考え方に立った上で、現行のコピーワンスという方式が既に導入されているが、既存のコピー制御方式の改善も含め、例えばDTCP−IPというような新しいメカニズムの導入を検討する余地はあると考えながら、議論を進めているという認識を伺いました。
     それからメーカーの方のご意見ですけれども、現行のコピーワンスというコピープロテクション機能が付いた商品をいろいろと具体的に販売し、デジタル家電のマーケットが活性化し始めたという状況の中で、まずは改めてコピーワンスという言葉の説明をさせていただきますが、現状は、空から降ってきた電波を1回録画する、これが既にコピーを1回した状態であり、もうワンスは終わっているのだから、ここから先はコピーではないというのがコピーワンスの定義なのですけれども、こういった言葉の定義の理解から始まって、消費者に正しく、コピー制御機能を導入する真意を理解していただくこともなかなか難しいということも含めて、コピーワンス機能付きの商品を使い始めた消費者の方からの混乱というのがだんだん増え始めているというようなご報告も受けました。
     ハードディスクに1回コピーしたものをDVDに移そうと思ったら、ハードディスク上の元のデータは消えなければならないわけですが、DVDの表面が少し汚れていたりすると、前半がDVDに、後半がハードディスクに泣き別れるみたいなことが起こってしまうわけです。そういうようなことが、消費者にとって経済的損失になりうるのですが、なかなかコピーワンス機能がわかりにくいということが現状としてありますし、そもそもアナログ放送のときにできていたことがデジタル放送ではできなくなる、ということが消費者にどうやって理解してもらえるのかという課題があります。例えば、単身赴任のお父さんにあるテレビ番組を録画して送ってあげようと思ったときに、今まではコピーしてビデオカセットを送ればよかったのですけれども、コピーワンス機能付きの商品では、ハードディス上にある番組をコピーしてDVDに入れて送ったら、お母さんと私は見られなくなるから、お父さんには送るのをやめようねといったことになるとしたら、家庭不和が起こるのではないかというようなことも考えられるわけで、そういうような今まで出来たことができなくなるという意味も含めて、このような事態にマーケットの視点に立った消費者にわかりやすい説明をしていくためにどのような対応ができるのかということをメーカーの方は相当お悩みになっておられ、消費者との間でいろいろな立場に成り代わって説明されているということもご報告を受けました。
     現時点でメーカーが置かれている状況を踏まえると、ユーザーにとっても、あるいは他のいろいろな意味でもコピープロテクションをかなり強くしていくような放送方式が消費者のためになるかという議論はなかなか認められにくく、先日話題になったブロードキャスト・フラッグが米国でいろいろな議論を呼んでいるように米国等諸外国におけるコピー制御を取り巻く環境も日本同様いろいろと容易に解決しがたい課題を抱えており、なかなかコンセンサスを得られにくいような背景もございますので、そういう海外における現状も踏まえて今後コピー制御に関しては考えていくべきだろうというようなことだと思います。
     それから、第4回の会合は、デジタルコンテンツの流通を促進するという背景がございまして、もちろん、電波で放送するのが地上デジタルの放送なわけですけれども、電波を補完するために既存の通信インフラをどのように利用できるかを検討いたしました。その目的としましては、もちろん、デジタル放送のコンテンツが確実に条件不利地域にも届くということが重要だということだと思います。その際、2011年という一つのデッドラインがあり、それに対して地上デジタル放送は全国普及しなければなりませんし、当然現行の視聴者が受けているサービスは最低限担保されつつ、もちろん、普及後のサービスの発展ということも視野に入れて考えなければいけない、こういうことでございます。
     検討項目としましては、一つは技術的にそもそも既存の通信インフラを活用することができるのかどうかということでございます。それに関しましては、やはり実際に見る人、あるいは見方であるとか、利用の仕方、こういうようなことを踏まえたうえで意思決定をしていく必要がございますので、そういう意味では、既存の通信インフラを活用した伝送実験を実施して有効性を検証していくことが必要になります。発表の中では、幾つかの通信インフラを活用した技術をお伺いすることができました。例えば公共施設まで通信インフラを活用して配信しておいて、ギャップフィラーで個別の受信をする方式は、受信の側は、トランスペアレントといいますか、普通の放送を受けているのと同じように受けることができるのですが、そのような形で既存の通信のインフラをうまく利用するということを伺いました。
     その他にも技術が進歩し現時点ではいろいろな配送方法が考えられており、いろいろな光ファイバーの技術、WDMを使った波長で分けて、既存の光ファイバーの中での伝送のパスを利用するという方式、あるいはブロードバンドのインターネットが今後普及していく、あるいはもう既に普及しているというインフラ環境の整備を踏まえたブロードバンド・インターネットを利用した配送方式、更に、バックエンドでの配送にインターネットを利用するのか、あるいは最後の個別配信のところで利用するのか等、技術的には幾つかの方法で可能性があるだろうということで、これらの方式に類似した技術も、既存のデジタル放送あるいはケーブルなど、既存マーケットの中で育っている技術というものもございますので、最初に申し上げました2011年に地上デジタル放送の全国普及のためにどのように既存の通信インフラが利用できるのか、ということを見極めていく必要がございます。
     そのための実証実験であるわけですし、そして、その実証実験を進めるに当たっては、実験を実施するための条件(コンディション)を考えていく必要がある。例えばこういう条件(コンディション)ならばこういうこともあり得る、というような、ルールやガイドライン、制度的な意味というものが必要でございます。そして、そもそもどういったクオリティーの映像が実証実験として認められるのかという技術的なことにつきましてもNHK、民放、それぞれの方から、その実証実験に関する一つの条件(コンディション)としてこういうことを考えたらどうか、という具体的な項目の提案をいただいているという状況でございます。
     それらの項目は、放送としてのやらなければいけない、あるいは守らなければいけないような概念、それからメカニズム、具体的には当該地域の全チャンネルの伝送であるとか、同一性の保持であるとか、遅延の回避であるとか、その地域内へ再送信を限定するであるとか、そういった幾つかの条件がございまして、そういった技術的な条件をクリアした既存通信インフラが補完的な利用という位置づけを守れるのかどうかについては、今度は制度的な意味でのチェックポイントとなってまいります。つまり、技術的な意味のチェックポイントと、制度的な、ルール的な意味でのチェックポイントの両方があり、これらを踏まえた上で実証実験をすべきであるというふうな議論になっております。これが第4回の会議で話し合われた内容です。
     全体を通じての大変重要な考え方としましては、この地上デジタル放送におけるコンテンツの流通ということの中で1つはソフト面で、知的所有権の問題を解決していくことであり、もう1つはハード面で、2011年のデッドラインベースで確実に地上デジタル放送が全国にサービス提供されるということでありますが、その実現のためには当面2つの問題があるのではないかと考えております。1つの問題は、多様なサービスを実現する通信技術、あるいは通信のインフラ、そしてそれと、デジタル放送のハーモニーといいますか、これらの技術を連携させ、調和していくことよって私たちの国にハイクオリティーなテレビジョン放送を実現し、最高のコンテンツマーケットにこのデジタル放送を発展させ、当然、世界の中でも非常にクオリティーの高い最高のマーケットにしていくことが大変重要になるだろうということであります。これが1つ目の視点ではないかと思われます。この最高のコンテンツマーケットの創出が重要なのですけれども、その実現のためには2つのアプローチが議論の中で出てきたかと思います。1つは、2011年にアナログが停波するのですから、その中で放送としての公共性ですとか、通信との役割分担というのを、先ほどのような条件(コンディション)を確実に守った上で、放送と通信の補完的な利用をどうやって進めるかということを実証実験を基盤に進めていくということで、2011年のアナログ停波というときに現行の視聴者が受けているサービスは提供できる状況ができていないと困るわけですから、この部分に関しましては議論の中では「なりふり構わず」という言葉も出てまいりました。つまり、これを確実に実現しなければならないという使命が1つはございます。
     2つ目は、先ほど申しましたような最高の映像環境が整ったマーケットができるということであれば、やはり2011年で、すべてのミッションが実現するわけではないのですから、2011年以降に何が起こっていくのかということを段階的に考えていく必要があるわけで、その長期的なビジョンの中ですぐれたデジタルコンテンツをつくる人材が集まるクオリティの高いマーケットというものができていくということが非常に大きな役割としてあるというような視点があると思います。そのために何をするかということで通信光ファイバーやインターネットとの関係を考えていくという視点も、もう一点、重要だろうと思われます。こういう2本の柱で考えていくというような議論がなされました。
     以上でございます。
    塩野座長 どうもありがとうございました。
     いろいろ中身の濃い議論を短い時間でご紹介いただきまして、どうもありがとうございました。ただ、座長の考えがところどころ入り込んでいたようなところもありますので、ちょっと違うのではないかというコメントがあれば、まずそれを、それぞれのワーキンググループ、2つ、3つ、ご参加の方もおられると思いますので、もし、こんな点もありましたというようなことがあれば、ちょっとつけ加えていただければというふうに思います。
     なかなかおっしゃりにくいところもあるかと思いますが、私、不案内ですので、ラジオの方はあまり技術的なことは言わなかったんですけれども、その点について、いろいろ専門の方からのご意見もあろうかと思いますが、伊東委員、何か私が言ったことにつけ加える、あるいは訂正をしていただくところはありますか。私は、要するに、テレビとラジオの境目がなくなりますというような話もありました、というふうにちょっとぼやかして申しましたが。
    伊東構成員 申し訳ございませんが、第4回目の会合で、マルチプレックスが話題に上ったときには出席できなかったものですから……
    塩野座長 その前のときですね。
    伊東構成員 もう一つ前の第3回につきましては、テレビの1セグ放送とラジオのデジタル放送が使う周波数帯は違うけれども、技術的にはほぼ同じシステムであるというのが、やはり一つのポイントとして残ると思います。ただ、ラジオの方ではあくまでも静止画を含めた音以外の情報は、トリガーとして使いたいというようなお話もされていましたので、当面は現状のテレビジョン放送とラジオ放送の概念に基づいているものの、少しずつ、その間の融合といいますか、境目がだんだん見えなくなっていくような方向で進んでいくのかなと感じております。
     デジタル技術というものの一番の特質は何かといえば、一旦、1、0の世界にすれば、映像も音声も、動画であれ、音楽であれ、データであれ、基本的には全て同じように扱えるというのが一番大きな特徴でございます。すなわち、一旦、1、0にすると、色々な情報を本当に柔軟に処理できるという大きな利点が生じますので、そのような情報の使い方を制限するということになると、その方法に関してまた難しい面も出てくることになると思います。デジタル方式の技術的な利点と、現状の概念や制度をもとにした発展というものの間で多少のせめぎ合いが出てくるのかな、ということを改めて感じた次第でございます。
    塩野座長 どうもありがとうございました。
     ほかに、それぞれのワーキングのところでは何かございますでしょうか。
     もし、継ぎ足しということも含めて、ご質問等々があれば、ご質問あるいはご意見を承りたいというふうにしておきたいと思います。
     多少時間もございますので、どなたからでも結構でございますから、自分のワーキングについてのこういった考え方、あるいは追加的なご意見、あるいは他のワーキングに対するご質問等、どういう形でも結構でございますから、よろしくお願いをいたします。
     どこからでも結構でございますが、では、まず一番素人っぽいところから始まりますが、村井さんのところは我々の方といろいろ関係があるものですから、あれなんですけれども、2つばかり、差し当たりありまして。我々のところでは、新しいサービスということで、サーバー型のことをいろいろ議論しようということなんですけれども、それを議論する前に、今のそちらの方の著作権あるいはそういった関係のものがある程度整理されてないと、サーバー型放送が放送であるか、放送でないかとか、いろいろ議論してみても始まらないところがありますので、こういった点について、いつごろ我々の方に上がってくるのか、ということがまず一つ。
     それから、もう一つ簡単な質問として、コピーワンスなんですけれども、コピートゥワイスというのも技術的にはあり得るわけですか。
    村井構成員 はい、現行の仕組みはさておきまして、考え方としましては、そういったn回という回数の中で、家庭内での私的利用に限って回数を読み変えて、その利便性を少し担保する、という考え方の技術の提案も考えられるということを伺いました。
    塩野座長 法律のサイド、私が今、法律を代表するという意味ではありませんけれども、コピーワンスということは、何で1でなければいけないのかという説明は、恐らく法制度的にはできないと思うんですね。では、いろんな人と相談して、コピートゥワイスはどうでしょうか、コピーサードはどうでしょうか、トリプルはどうでしょうか、そんな話は可能なんですか。
    村井構成員  大変難しいところだと思うのですけれども、まずは家庭内とか、個人であるとか、そういう利用の範囲がどの程度であるかというような大枠の中でのコンセンサスをどのように設定する必要があります。次に、個人的利用の範囲などを、どうやって技術的に具体化していくかということで、それら落としどころが確定したら、技術的にそういうものを追及していくということだと思うのですね。ですから、8回までは大丈夫とか、5回までならば良いだろうといったからといって、その5回がどういう経緯で決定されていくかは、大変難しい問題だと思うのです。いずれにせよ、そういったでき得る技術と、それから、コンセンサスがどう得られるかということの中で決定されていくと思います。整理しますと一点は、そういったことでの、いわば塩野さんのおっしゃられるような制度面、法制面での考え方についてどのようにコンセンサスをつくるかという話があります。それからもう一点は、コンセンサスがなされた利用範囲が技術的に可能かという点。 さらにもう一点は、今回検討する中で幾つか話題として出てきて、これをもう少し強く考えた方がいいということが何度か委員の方からも議論されましたのは、利用の視点です。利用の視点での今までの感覚、従来慣れ親しんだテレビでの感覚ということの中でのコピーワンスに対する違和感であります。わかりやすさやコピー制御のようなものをどういうふうに作り上げるのかということも、率直に申し上げますと、今までのコピーワンスの仕組みができてくるプロセスの中では、そこまで考えている暇はなかったのではないかというような、意見もヒアリングの中でございました。そうした委員の方からの意見、あるいはメーカーの方が、今、実際に消費者から受け始めた意見の中には、今までの使い方と違和感があるのではないか、という意見が出てまいりました。そのことについて伺ってみますと、そのメーカーあるいは放送事業者の方もそういう声を受けとめて、塩野さんがおっしゃるような意味も含めて、もう少し良い方法の検討を開始されている、こういうことだったと思います。
    塩野座長 何か今のところでございますか。
     山下さん、どうぞ。
    山下構成員 素人代表で……。私もこの話のときには出席していたんですけれども、そのときのコピーワンスの是非をめぐる話というのは2層になっているのかなと素人考えですけれども思いました。
     1つは用語の問題です。コピーというのは、原本が置いてあって、もう一枚、全く同じものをつくるのを、パソコンでやるときも、機械でコピーするときも、それをコピーというので、コピーワンスというような名前で実際に機器が流通して、デジタル対応になっていくと、これはムーブだと認識されると思います。一般の話でいうと、コピーではなくて、オリジナルがなくなるので、これはコピーワンスではなくて、やっぱりムーブワンスというのか、ムーブでしかない。コピーはできないんだというのが一般的な用語の感じではないかという話が出まして、私もそうかなと思いました。パソコンなどでコピーするというのと、そうじゃなくて、オリジナルはなしにしてムーブするというのとが違うということ位は、一般の人も判ってきているかなという気がします。
     それが用語のことですが、ムーブというふうに名前を変えたとしても、社会的な驚きと、それから感じる理不尽さとかそういったものは、やっぱりかなり深刻なものではないかというふうに思いました。それについて、どうしてここまで話が進んでしまっているのだろうか、というような素人的な気持ちもいたしました。放送事業者の方もメーカーの方もおられて話を伺っていると、どうもお立場お立場で随分と……。そうしなければならないと思ってしておられる方と、いや、ちょっと変なんじゃないかと思われている方と、何か認識の違いもあるようにも思いました。
    塩野座長 どこが変なんですか。ワンスがおかしいということですか、それとも……。用語の点は、今、わかりましたけれども。
    山下構成員 もし、ムーブではなくて、普通の一般的な意味のコピーだとしても、なぜ、1回しかできないのかということですね。それでは、もし、2回以上やりたいのだったら、例えば 100円払ったらもう一回できるとか、そういう柔軟な何かオプションがないと、1回こっきりといわれると理不尽な感じがします。自分も映ることもあるわけですね、道を歩いていてとか。そういうのだと、録って、みんなに配りたいけれども、それもできないのか。お金を払ってもだめなのか。そこに何かものすごく大きな不自由さを感じる。そういうような意味です。
    羽鳥座長代理 用語ですけれども、僕はムーブと覚えていたんだけれども、コピーワンスという言葉を使っているんですか。
    村井構成員  これもよく話題になる論点でなかなか難しいのですけれども、コピーワンスのワンスは、空から降ってきた放送を録画したところが既にワンスなのです。そのため、コピーワンスである以上、録画した録画機からさらにどこかに移すというのは、もはやコピーではなくて、ムーブになるわけで、つまり、もう録画機からはデータが消えてしまうということなのですけれども、そのときに、現行で販売されている機械などを見てみますと、例えばハイビジョンでハードディスクに録画しますと、これでワンスになりますので、コピーワンスの唯一回の録画するチャンスを使い切っているのです。したがいまして、この後、コピーが1回できるという話ではなくて、それを例えばDVDに書き込みますといったときには、ハードディスクの中身はなくなるわけです。ところが、実は、今の段階だとハードディスクに比べてDVDは少しクオリティーが落ちますので、そうすると、いいままで録画したものをDVDに移すとクオリティーが落ちてしまいます。しかも、元のクオリティーのいい録画はなくなってしまうということが起こってしまいます。こういう商品が、今、販売されておりそれが現状では普通なのです。消費者にとっては、実は、DVDに移したときにクオリティーが落ちてしまうという現状について、書いてなくはなかったのですが、それほど意識していなかったのが現状でしょう。そのあたりについて意識をし始め、更に先ほどのご報告で申し上げましたように、ハードディスクからDVDへの書き込みをしている際に何かの途中で障害が起こったら、データが泣き別れてしまうようなこと等々もだんだん経験をし始めたという時期が今きております。
     そういう意味で、先ほどの山下さんのおっしゃられた名前の問題というのが今後出てくる問題としてあります。このコピーワンスという言葉にしても、羽鳥さんや山下さんにとってのコピーワンスがあり、それからパソコンなどで覚えられているムーブという概念もあり、そして放送の中で使われている意味などもあり、そのようなバラバラな認識を例えば新しい言葉ですから周知徹底すればいいという考え方もあると思います。それから、新しいメカニズムが正しく多くの人に理解されるということも何らかの方法で考えなければいけません。そして、実際のデジタル録画機器の使い勝手が、今までのビデオや録画のライフスタイルと少し変わってくるということを、どのように消費者あるいは産業全体として考えていくかということも課題として存在します。現状はコピーワンスに関しましてはこういった問題があるということだと思います。
    塩野座長 どうもありがとうございました。それから、先ほど、ちょっとご質問したサーバー型はどういうふうに上がってきますか。
    村井構成員  サーバー型放送に関しましては、いろいろな議論があるわけですが、ここの第3回、第4回の会合の中で特にそのことが詳しく触れられたということではございませんけれども、私なりの理解では、サーバー型放送というのは、ご存じのように、データといわゆる映像とが一緒に放送されていったものを受信機側で蓄積していき、そのデータや映像を再利用するというメカニズムだと思います。そのときにどういう再利用ができるのかということの中で、やはりコピーワンスということを前提にいたしますと、実は、その再利用というのは、例えば学校の先生が夜中の2時に教育放送でやった番組をもう一度利用して、どういうふうに加工して授業を組み立てようということを検討していく中に、このコピーワンスというものが入ってくれば、実際には活用したいと思った教育放送の番組をうまく活用できるのかという疑問がとてもたくさんあります。例えば地方自治体の中で地上デジタルを上手に使うことを決め、そこがサーバー型放送という形で放送されたコンテンツを再利用していこうといったときに、このコピーワンスがどういうメカニズムで使えるのかという心配といいますか、疑問の声が地方自治体の方からも上がっておりました。
     そういう教育現場や自治体の声に対しての技術の側はどういうふうに考えていくのかということで、今のところはサーバー型放送の中でのコピーワンスの考え方というのは、そういった、具体的に学校の先生が教材として再利用ができたり、地方自治体の中で具体的にサーバー型放送を再利用できたりするための放送の仕組みを、現在、策定している途中なので、その仕組みを活用すれば使いやすくなるということだったと思います。
    塩野座長 しつこいようで大変申し訳ないんですが、コピーワンスは、唯一の選択という考え方ではないんですね。そこが、要するに、政策的にいろんな考慮をして決まるものだというふうになってないと、どこの世界でもコピーワンスで終わってしまうので、もう何にもできないということになるんですが、今、いろいろ議論されているムーブでもあり、コピーワンスでもよろしいんですけれども、唯一の選択肢というお考えではないんですね。
    村井構成員  放送コンテンツWGの第3回の会合はそのための議論だったと思います。そして、先ほど申し上げましたように、いろいろな方がやはり、もっと改善をするという可能性を考えていくということの中で対応していくことだったと思いますので、現行が、先ほど議論がありましたように、それぞれの立場があり、それから新しくマーケットを開いたわけですから、利用者、それから今出ている機器とのコンシステンシー(連続性)というか、矛盾のなさということもマーケットの中ではとても大事な要素だと私は思いますので、そういったことを全部考えた上でのいい方法を考えていく必要があると思います。その中での選択肢として、現行の方法を踏まえた上で、あるいはマーケットニーズがあるということを踏まえた上でのもう少しいい方法を考えていく、ということも検討されていると伺っております。
    塩野座長 どうもありがとうございました。どうぞ、隈部さん。今の問題でなくても、どこからでも結構でございますから、どうぞ。
    隈部構成員 今の著作権の話については、確かにコピーワンスが、今、始まっておりますけれども、これをしないと、例えば一番代表的なのはハリウッドの映画なんですけれども、そこがなかなか放送できなくなるという現実があって、それからもう一つ、コピー制御の方式に使える帯域の狭さというものもありまして、とりあえずコピーワンスというのが始まっているというふうに理解しています。それが、今後、さらにいろいろ発展してきた場合、特に放送だけではなくて、ブロードバンドとかいろんなところでそういう同じコンテンツが流れるというようなことが出てきた場合には、それをさらに細分化して、コピーワンスとかコピートゥワイスとかなんとか、いろんなことというのは十分考えられることで、そして、放送事業者、メーカーもそれに向けた検討はしているというふうに説明を伺っております。ただし、いつということになると、まだ問題があると思いますけれども。
     いずれにせよ、デジタルになってコピーが非常に良質になっちゃったので、だんだんコピーされる回数が増えれば増えるほど無制限に広がってしまうということを、コンテンツの制作者サイド、特にアメリカのハリウッドあたりは非常に恐れておりますので、そのことをうまく納得させる方法を考えないといけない。それでいながら、さっき、アメリカの放送フラッグの話がちょっと出ましたけれども、これについては近々実施という段階だったんですけれども、実は、アメリカの連邦高裁で判決が出まして、放送フラッグは違法であるという結論が出てしまった。
     これが違法というのはどういうことかといいますと、若干形式論ですけれども、FCC(連邦通信委員会)というところが放送フラッグを施行するということを言い出したわけですけれども、それはもう、FCCの規則で決められたのですが、それはいわゆる放送とか通信を管轄するところのFCCがやることではない。なぜかというと、コピーワンスとか放送フラッグというのは、一旦送った後の利用者がどういうふうに使うかということにかかわることだというのです。
     コピーワンスと放送フラッグはよく似たものとお考えいただけばいいと思うんですけれども、そうすると、結局、今のところ、その高裁の判決が出てしまったものですから、ストップせざるを得ないということで、FCCの規制は当面実施できなくなるという状態になっていまして、それでは、それをつくることを要求したアメリカの放送事業者とか映画業界、こういうところが一番のそれの推進者だったわけですけれども、それはどうするかというと、結局、議会に働きかけて別の法律をつくるほかないという方に、今、動いてきております。
     もちろん、連邦最高裁に持っていって争うということも可能ですけれども、どうも議論の過程でそれも有利ではないと見ているようなところがありまして、議会で改めて放送フラッグというようなものを実質的に担保するような新しい法律をつくるというふうに動いておりますので、そうすると、時間もかかることですから、当面、今年の7月からという放送フラッグの実施というのは、事実上不可能になってアメリカでも非常に大きな問題になっているということであります。
     それで、もともとこれは村井さんのご説明もありましたように、パーソナルユースというか、私的利用というのをどこまで認めるかというのが非常に難しい問題でして、アメリカでも私的利用を認めるということは最高裁の判決が出てできているんですけれども、しかし、私的利用というものの範囲というのが、まさにこのインターネット時代といいますか、デジタル技術によって、非常に流通自体が簡単になってしまったものですから、これをどこまでにするかというのを決めるのは、もう非常に難しい状況になっていると思うんですね。ですから、世の中の実態でどういうふうに流通するかというのを見極めながら、いつ、だれがそういったことをきちっとしていくのかということ自体が非常に大きな問題になっている、というのが現状ではないかと思います。
    塩野座長 どうもありがとうございました。舟田さんのグループのあれで、両挟みで大変だというお話があったんですが、よくわからないのは、放送番組提供者の方はCSだけではなくて、要するに、普通の地上にも提供しているんですか。要するに、BS専門番組制作会社とか、CS専門番組制作会社というのがあるのか、それとも、いろんな番組制作会社がありますよね、それが適宜作って、いろんなところに売り込んでいる、そういうふうにイメージすればよろしいんですか。
    舟田構成員  番組制作業者が多くの場合、地上波テレビ事業者の委託を受けて番組をつくる。完パケの場合には、現在では制作事業者に著作権が戻ることになっている。ただし、窓口権というか、窓口業務をどうするかは、放送事業者と制作事業者との契約でさまざまでありますけれども、ヒアリングで伺った事業者の場合には、自分が売り込めるような番組について、BSなりCSの事業者に売り込んでいるということですね。BS専門、CS専門というのはまずないのではないかと思いますけれども、この事業者はBSCS両方売り込んで……
    塩野座長 だから、地上放送にも売っているわけですね。
    舟田構成員  特にローカル事業者に売るわけですね。
    塩野座長 いやいや、だって、キー局だって、いっぱい買っているわけですからね。
    舟田構成員  キー局も買っていますが、キー局で作ったものですから、それをローカル局に売るという話は出ましたけれども。たまにキー局が買うのがあるかもしれませんけれども。
    塩野座長 だから、非常に公共性に燃えている会社だったら、いいものはCSに損してでも流して、バラエティーや何かでほかで儲けるというのは、よくある話ですよね、立派な企業としてはね。
    舟田構成員  今の話はどういうことでしょうか。一つの事業者がたくさんチャンネルを持っていて、どこかで儲けて、どちらかで……
    塩野座長 いや、そうではなくて、番組供給事業者というお話ですので、例えばテレビマンユニオンがあちこちに売って、仮にCSのこのチャンネルがとても良質な番組を送っているという評判が立った場合には、良質の番組を少し安くてもCSの方に売って、もっといろんな稼げるものは地上放送で稼ぐということであれば、そういう商売はよくあるのでなはいかというふうに思ったものですからね。
     だから、苦しい苦しいというのは、いいものばかり作って安く提供しようと思うから大変なので。どこだって、そうでしょう。百貨店だって、たくさん売れるのと、良質で余り売れないのと並べておくわけですからね。
    舟田構成員  少なくともこのヒアリングで聞いた限りでは、良質なものは売れないんです。最初から売れないんです。で、売れる番組を売りたいと思っても、たかが数万円という話ですから、ましてや、いわんや、中でプラスとマイナスを何とかとかいう話以前の問題だと思いますけれども、そこはどっちか違うのであれば……
    篠原構成員 私の理解では、地上波優先で、CSだとかに対してはあまり積極的ではないところが多いとは思うんですけれども、かなり番組供給業者によってばらつきはあると思うんですね。ただし、この前来ていただいたある会社の場合ですと、CSに出すということは、ある種のプロモーションというか、PR的なことになるから、やる場合はあるけれども、そこで商売というか、そこでも採算を考えるということはもうやらない、そういう割切りをした上で番組を出しているというケースだったですね。
    塩野座長 いや、商売というのはそんなものじゃないかと思うんですね。例えば、法律関係の出版社で教科書でもうけて、論文集で社会奉仕をする。
    篠原構成員 私、そのとき、確か質問をしたことで覚えているのは、せっかく地上波の放送局等に番組を下請なり請け負って制作するというよりは、お客さんである視聴者に直販というか、ダイレクトにサービスをできるわけだから、免許をもらった方がいいのではないか。認定してもらうということですかね、委託を。そういう形が、当初、90年代の後半、ああいうスカパーが出たころはそういう抱負を持って、希望を持って、そういうプロダクションや何かも考えていたところがあると思うんですけれども、10年近く見てみると、そういう動きが非常に萎えてしまっているので、どうかということを聞きましたら、この間、ヒアリングにいらっしゃったところでは、むしろ、チャンネルなんか持つよりは、時間帯なりを請け負ってやる方がビジネスとしてはいいのだというふうなことをおっしゃっていましたね。ということで、なるほどなということを感じました。以上です。
    塩野座長 どうもありがとうございました。
    篠原構成員 舟田さん、今の私の理解は間違っていますか。
    舟田構成員  いえ。
    塩野座長 それから、私の方で今後のことも考えるものですから、いろいろお伺いして大変申し訳ありませんが、これはすぐにご返事いただけるかどうかわからないのですが、先般、NHKの懇談会と申しますか、できたということがNHKで放送されて、きょうもそのお話がちょっと出ましたけれども、あれはいつごろに何かしらまとまったものができるというふうに踏んでおられますか。
    安藤課長 現在、私どもの方で日本放送協会さんから伺っているところでは、5月31日、NHK懇談会のメンバーが決まりましたということで発表されたということでございますけれども、6月中にもできるだけ早い段階に立ち上げた上で、年度末ぐらいに報告を取りまとめられれば、というようなお話を伺っておるところでございます。
    塩野座長 大分長いスパンですから、その間、濱田さんのワーキンググループでどういうふうなアプローチでこの問題を取り上げるかということは、濱田さんとも相談いたしますけれども、私、やることはいっぱいあると思うんですね。およそ公共放送とはどうあるべきかというのは大問題でございますので、必ずしもNHKの懇談会の結論が出るまで何もやることはないということはないと思います。
    安藤課長 そこら辺については、別途、よくご相談させていただきます。
    塩野座長 ほかに何かございましょうか。村井さん、どうぞ。
    村井構成員 質問なのですけれども、塩野さんの制度WGの会合の中でデジタルラジオの話が出てきたときに、あのときもお伺いしたかったのですが、聞き損なっていたのですが、デジタルラジオはモアチャンネルという概念でできるわけですよね。それを前提においてご質問をさせていただきたいのですが、テレビの場合だと、現在、何台の受信機があって、どういう人たちがどうやって使っていているかは別として、それらのテレビが停波に伴って、観られなくなることを食い止めるということが最低限の一つの攻防戦といいますか、そこを諦めるようではだめで、最低限現状を維持しなければならないということになっております。そこからプラスアルファで新しいマーケットができてくるわけで、テレビはプラスアルファを除いてこういうデジタルテレビの普及に際しての考え方の量的な目安というかイメージというもの、つまり目標設定のようなものがあるわけです。その一方で、そのモアチャンネルということも踏まえまして、ラジオを考えた際、今は例えばほとんどの自動車にラジオがあるわけで、多分、1億台ぐらい車があるとすれば、やはりラジオの受信機というのはそれに匹敵する台数があるのではないかと思われます。そうすると、そもそもこの既存のラジオをターゲットにするのか、そういうものがラジオだという中でその一部としてデジタルラジオが存在するのか、それとも、これはデジタルラジオであり、モアチャンネルなのだから、全然関係ないものとして考えていくのか。あるいは、別の観点では、今、何億台あるラジオの公共性ということ、あるいはそれとも全然関係ない新マーケットとしての考え方、そういうような議論が多岐にわたることに対してまずはこのデジタルラジオに関する議論のもとになっているようなデジタルラジオのビジョンのコンセンサスが必要だと思うのですけれども、それがどういうふうになっているのかというのを知らないのは私だけなのか、それともそういう議論をここでしていくのか、あるいはそれはどこか別のところでしていくのか。その辺のことを教えていただけますでしょうか。
    塩野座長 ここで情報通信政策局の所轄の問題を話してもあれなんですけれども、基本的にはこの問題は地上放送課で取り扱っているところで、地上放送課の先ほどお話しした懇談会の報告書が出て、それを放送政策、特に政策というよりも制度、放送制度としてどう受けとめるかというのがここでのお話ということになります。そうしますと、今、村井さんのおっしゃったような視点は、ちょっと逃げるようで申し訳ないんですけれども、どこでやるかということになると、地上放送課の方でやることになると思いますし、また、そういった事柄について議論といいますか、いろんなビジョンは描いておられるというふうに思います。ただ、私も資料を見た限りで、何億台あるのかという話はちょっと聞いてはおりませんけれども、ただ、ターゲットとしてどういうものをねらっているかという点はいろいろ議論をしているところだと思いますが、私が不正確に言うといけないと思いますので、何か今のご質問について……
    安藤課長 直接、所管がいないんですけれども、今の「デジタル時代のラジオ放送の将来像に関する懇談会」報告書要旨の一番最後のページに、ラジオ産業の市場推計予測というものがついてございます。ここでいうところの2005年の全体というのは、現在のアナログラジオの広告収入の規模ということでございますが、このラジオ懇談会で出ておりますような形でデジタルラジオサービスを本放送として開始し、多彩な新しいサービス、ここでいうところの新規サービス収入とありますけれども、いろいろ出ておりますが、こういったようなものが展開できるような形で事業が進められて参りますと、2015年には約 3,676億円。一つの予測でございまして、必ずこうなるかというのはありますが、10年では一応倍増するというような見込みも一つ期待として持っております。
      これは、一つイギリスのラジオマーケット、これはデジタル化だけで進んだわけではなくて、広告主さんと放送事業者さんとの間を取り持って、ラジオ媒体の広告の価値というものを数値化して、いろいろセールスするというような機構をつくったり、いろんな要素を取り込んできたことによる成果でもあるわけですけれども、イギリスのラジオ市場というのは非常に大きく伸びておりまして、その仲介機能みたいなものは既にラジオの市場でも、日本でもそれを参考につくったわけでございますけれども、それと並んで、ラジオのデジタル化というものをこういった形でやっていくことによって、既存のラジオの持っているよさに加えて、デジタルならではの特性を生かした新しい分野を切り開いていきたい。 最近、ラジオ市場自体は、10年スパンで見ますと、いろんな新しいメディアに押されぎみでございまして、インターネット広告と市場規模がひっくり返ったりしている。若干元気を失いかけておったわけでございますけれども、こういった施策に取り組むことによって、再度、元気を取り戻し、ラジオの良さというんですか、音で伝えるというものの良さを生かしつつ、技術のメリットを最大限に生かした形の展開をしていきたい、あるいはそういうような展開を可能にしたいという思いで、こういう報告書がまとめられた。答えになっていないかもしれませんが。
    塩野座長 定性的な返事で、大体法律系の者がしゃべると定性的なお話になって申し訳ありませんが……
    村井構成員  いえ、私は定性的であることは大いに結構だと思いますし、これはある意味でマーケットの展望という形だと思うのですけれども、先ほどのコンテンツのコピープロテクションに関する議論も実際にスタートしてみたときに、利用者がどういうライフスタイルの中でこの放送というものと接していくかというところがやはり議論になったのだと思うのです。それで、私もこの資料を穴のあくほど見せていただいたのですが、これを読んでいても、誰がどういうところで使い、何人が使う、どういう状況で使うのかという利用のイメージと、それから、国民一人一人がラジオをどうとらえていくというようなイメージ、これがないのです。そうすると、これ(ラジオ産業の市場推計予測)がマーケットの展望であり、目標ならば、国民のラジオに対するイメージを把握した上で、マーケットを実現するためのビジョンを業界は創っていかなければいけないと思います。その上で、我々もこういった場で、国として、あるいは行政としてできること、すべきことに対する議論をするのだと思います。やはりそこのビジョンというのはどこかにないといけないのだろうという気がするのです。
    塩野座長 ありがとうございました。その点は、先ほどもまた定性的には申し上げたところで、つまり、この懇談会の報告書はやや産業界オリエンテッドな話で、利用者の視点というものがどうも見えてこないということは申し上げているところなので、それを私のところでやれといってもなかなか大変なことだと思いますけれども、大変重要なポイントだと思います。
      これは、時々、私、申し上げているんですけれども、放送法の問題を考える、あるいは放送事業の問題を考えると、どうも事業者オリエンテッドな発想でずうっと来ていまして、利用者オリエンテッドなところに方向を変えなければいけない、あるいはそれをベースにして議論しなければいけないということは、理屈としては言っているんですけれども、なかなか実行性が伴っていないというところがありまして、今のようなご指摘になったのだろうと思います。その点、志向するところは私も理解しているところでございますが。どうもありがとうございました。
    小笠原放送政策課企画官 今の点につきまして、十分な補足になるかどうかわかりませんが……。
      ワーキングの場で、事務局からちょっと言葉足らずだったかもしれませんが、このデジタルラジオの将来を考えていく上で、多分、キーワードを2つほど申し上げたかと思います。一つは、確かにモアチャンネルということでございますが、もう一点の重視すべきこととして、視聴者から見たときにラジオは変わったというふうに見せていくためにどういう制度が必要か。このワーキングでもヒアリングの中で幾つかご指摘がございました。例えばラジオという媒体に着目したとき、まさに村井先生からご指摘いただいた、どういう使われ方をするのかということについて、ラジオを媒体として使っている方のニーズとして、やはりできるだけユビキタスな環境でと。例えばカーラジオもそうかもしれませんし、それから、携帯受信機との連携ということもそうかもしれない。なるべく同じソースがそういったユビキタスな環境で出ていくような方向で考えると、視聴者にとっても、それから情報を供給する方にとっても、デジタルラジオというのは非常に変わったものとして映っていくのではないか、というご指摘がございました。
     そういう意味で、何回か、変わったという見せ方として、ユビキタスな環境になっていくこと。それから、イギリスのように非常に多チャンネル、専門性というふうに行くというのも一つの可能性ではないかということ。それからもう一つ、通信との連携ということで、例えば携帯の事業者さんからの期待もちょっとおっしゃっていただいたこともあったかと思います。
     したがって、今、村井先生がご指摘のとおり、モアチャンネルという性格上、確かにある期間のうちに強制移行ということとは立場をちょっと異にしている考えではございますが、一応基本的な思想として、視聴者からできるだけ便利に、かつ変わった姿になるということを一応志向して懇談会でも議論して参った、ということをちょっと補足させていただきたいと思います。
    塩野座長 今の答えでもなかなか満足はいかないと思いますけれども、予測が難しいんですね。どういうふうに予測されますか。これからラジオをどう使っていくかということについての方法ですね。今のも、大体こんなことかなという、定性的というようなお話でして、どういうふうにラジオが使われているかということについては、なかなか予測がつかないものですから、別に口ごたえしているわけではないんですけれども、こういう違ったサービスがあるといいかな、そういったアプローチですね。
    村井構成員 やはりデジタル化で、今、アナログでラジオが使われているということは、キープされるわけだから、その守備範囲は置いておいて、デジタル化のラジオとして新しい産業だとか使い方をクリエートしていくということなのか、それとも、今、何億台のラジオが動いていて、あるいは既存のラジオを使っている人たちが、今度はデジタル化された後も、そのデジタル化の中で既存のサービスを享受しながら、それにプラスアルファで新しいことをやっていくのか。どちらなのでしょうか。
    塩野座長 そこは、私の理解では、受信機の話が別に走っていますので、とにかく地上デジタルの受信機を普及させるということが非常に大きな柱になっています。そうすると、アナログはアナログで恐らく今のままで行くだろう。あるいは市場規模としては、実態問題として細っていくか、太っていくか、それはわからないけれども、それはそれとしてあるだろう。そこで、モアチャンネルという意味は、プラスアルファのサービスということで、そこで地上デジタルのラジオを聞ける受信機を普及させたい、というのも懇談会報告書の産業政策的なアプローチの一つとしてあらわれているというふうに私は理解しておりますが、その点、その理解でいいかどうか、事務局の方、いかがですか。
    小笠原企画官 基本的には、座長、ご指摘のとおりでございます。現在のアナログのラジオでも、座長に冒頭ご指摘いただきましたとおり、災害時の情報伝達の手段を初めとして、現在のアナログ放送でもそういった災害時等の基幹放送として、あるいは地方の情報発信の少なくとも一つの重要なツールとして、それはそれで一つの役割を果たしていく。それに、確かにプラスアルファといいますか、モアチャンネルという形でデジタルができるだけ視聴者の方々に便利な、目に見える形で変貌していくという姿を見せられるように、ということで検討してまいったということでございます。
    塩野座長 それで、具体的なイメージというのは、例えば村井さんの疑問は、番組イメージということでおっしゃっているんでしょうか。
    村井構成員 いえ、そうではありません。
    塩野座長 それとも放送局、チャンネルイメージとしておっしゃっているんですか。
    村井構成員 いいえ、今の小笠原さんのご発言が大体の答えだとしますと、例えば2030年でも、2050年でもいいのですけれども、今後デジタルラジオが普及した際、例えば今、災害時の放送を受けたとして、災害時に情報提供することは既存のラジオの一つの重要な役割ですけれども、デジタルラジオはその役割を考慮してデザインをする必要はないというわけですよね。
    小笠原企画官 いや、必ずしもそこまではあれしておりませんで……
    村井構成員 受信機が普及するのはとても大事なのですが、その受信機がまだ存在していない現状において新たに受信機をデザインしていくときに、例えば3億台をベースで受信機ができるということの中でデザインをすることと、1,000万台の普及を狙ってデザインをしていくということとは技術が違ってくるわけです。そのようなことを踏まえると、普及をすることが大事だと塩野さんはおっしゃられたわけですけれども、数量によって普及のためのデザイン論が変わってくると思うのです。そうすると、定めた普及目標の中でどういうふうにマーケットがデジタルラジオを活用していくのかも変化してきます。普及目標が、大体のポリシーですから、このポリシーがあって、その中からデジタルラジオの役割を組み上げていくプロセスにかかれるのではないかという中で、私はその普及のイメージをぜひ教えていただきたいのです。
    安藤課長 そこは非常に難しいところでございまして、3億台なら3億台のラジオのAMFMの簡便な受信機がある。そういう中でこういう新しい技術が出てきましたと。そのときに、ラジオについて申し上げますと、テレビと違って、強制移行ということがとれるかどうか。それは非常にデリケートな問題もございまして、ここはこのラジオ懇談会では、あるいはその前の地上デジタル放送に関する懇談会、平成10年にやっておりますけれども、このときには、結局、このときも今回もそうですけれども、基本的にはモアサービスだ、新規サービスをやるという位置づけの中で、結果として市場がいろいろと選んでいく中でどうなっていくかというのは、そこは市場の選択、利用者の方のある意味でいうと選択に委ねられる部分があるのかなと。
     したがって、やはりアナログの今のFMAMの受信機の簡便性がありますから、これはこれでずうっと行くのかもしれませんし、技術がどんどん進展していって、いろんなデジタルラジオサービスが出てきて、それがいろんな受信機を生み出していって、それが値段が安くなってきて、やがてアナログのラジオ機と同じような機器も出てきて、単に経営のために作るわけではなくて、そういうものも出てきて、いろんな形でそこが置き換わっていくのかもしれませんし、この懇談会ではそこは……
    村井構成員 考えていかないといけないのではないでしょうか。
    安藤課長 こうしなさい、ああしなさいとまでは言わない。そこはとにもかくにも、今、果たしているラジオの役割を十分踏まえつつ、デジタルの良さというものを生かしていく。そういう新規サービスとして導入していく。ただ、そのときに、サービスイメージとしては、「デジタルラジオの今後の展開と基本的枠組み」、後ろから2枚目についておりますけれども、サイマル放送枠というものを最低1セグメント確保し、アナログで流れているサービスもデジタルでも一応流れる枠組みというものは何らかの形で用意しながら、そこに追加してデジタルならではのサービスを入れていくという枠組みは用意をする。そういう中で、後はどう展開していくかというのを基本的には見守っていくというスタンスであって、いついつまでにアナログは全部移行するんだとか、そういうスタンスに立って報告書を取りまとめているものでは必ずしもない。
    村井構成員 行政としての立場はわかるつもりですけれども、お話を伺っておりますとつまり、マーケットが意思決定をして、デジタルラジオの今後の方向性はマーケットが決める、というのがポリシーだということでよろしいのですね。
    安藤課長 そういうことです。
    村井構成員 つまり、ラジオは公共放送として、あるいは公共的な役割の放送としてこうあるべきだというポリシーは立てずに、マーケットがどういう方向に行くかを決めるというのがポリシーだ、こういうことですか。
    安藤課長 そこのところは、しかし、デジタルラジオについてもサイマル放送もやりますし、そういう意味では、今のアナログFMが果たしている役割というものを一定程度確保するとともに、さらにいえば、隣にNHKさんが1セグメントで出ておりますけれども、やはりNHKさんがこういうサービスをやるというのは、ある意味でいうと、公共放送としてのラジオというものに取り組む意味合いというものは、先導的役割ももちろんあるわけですけれども、そこに込められているということでございまして、デジタルラジオだから公共性は一切なしで、ということでも必ずしもない。それは非常に微妙なバランスでソフトランディングを全体でしていこう、こういう内容になっている。そこは、先ほど、塩野座長がおっしゃられたように、全体としてのソフトランディングを図っていく、いろんな方面に気配りしたバランスの中でこういった形で世の中にデジタルラジオ放送というものを船出させて、その中で、しかし、ラジオの持てる公共性の良さというものも維持していきたい。
    村井構成員 デジタルラジオの普及をいろいろな形で政策として進めていくときに、非常に多くの、みんなが理解してくれるランゲージを私たちは持っている必要があるのではないかなという気がしています。それであるにもかかわらず、結局、何がポリシーなのかというのは、私にはなかなか理解することができないので、また個別に勉強させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。多分、ほかの方がわかっていることを希望いたします。
    塩野座長 それは、放送政策をどういうふうに考えるかということの一番根本の問題があろうかと思うんですね。今のお話の中で、特に地上放送課から出てきたのは、放送政策というよりは、放送事業の、特にラジオ事業の政策、促進策といいますか、そういった産業政策なんですね。ところが、今、村井さんがしきりに言っておられるのは、産業政策。もう一つ、先ほどのお話で、1億台と 2,000万台でも何でもいいんですけれども、それとはデザインが違うといわれたのは、それは技術政策になるのでしょうか。そういう問題。それから、最後に放送の公共性ということを言われたのは、これは番組政策の問題になるわけですね。ところが、そこのどの点を皆さんが了解してなければいけないかというのか、その辺も実は議論しておかなければいけないというふうに思うんですね。
      ただ、放送政策のなかなか難しいところは、今まで産業政策をあまりやったことがないのに一生懸命やり出しているので、そこはなかなかしんどいところがあるんですけれども、基本的な政策というのは、番組の公共性そのものを維持するということではなくて、いかに放送という表現の自由のマーケットについて公正さを保たせるか、そこの一点にあると私は理解しているんですが、もちろん、そのほかに公共性の意義とかいろいろありまして、それはまた後で長谷部さんからもつけ足していただくことがあると思うんですけれども。
      ですから、番組内容についてデジタルラジオ、それからアナログは、こうせい、ああせいという、そこまで放送政策といえるかというと、そこはなかなか、今までの放送政策のあれから行くとしんどいところがあると思うんですね。で、言えるところは、総合放送なのか、それぞれ非常に特化したものであるかというような話とか、それから、先ほど、ちょっと申しましたように、マルチプレックスというのを入れた場合に、番組規律をどういうふうに仕掛けておけば、放送法の一番の目的である公平性とかなんとか、あるいは意見の多様化の反映というのができるか。そういった議論でして、およそ、このチャンネルはそもそも災害放送に徹すべしとか、あるいはこのチャンネルはそもそも教育放送に徹すべしということは、だんだんなくなってきている。教育放送はまた別のカテゴリーとしてありますけれども、このチャンネルは公共でなければいけないということは、今まではやってきていない。放送はすべからく公共放送であるという建前で来ているものですからね。
      その辺の政策というものについての、これからも必要なことだと思いますけれども、我々としては何政策を志向しているのかという点は、だんだんに整理しておかなければいけない。そういうご注意としてはよく承りました。長谷部さん、何か……。
    長谷部構成員 村井さんのご指摘の点は、非常に難しい点だと私も思います。こちらの懇談会の方はイギリスのことを割とモデルにして議論されているようですが、ただ、イギリスも思ってないほどうまくいった、そういう例だと思うんですね。最初に手を挙げる企業体というのは1つだけで、とりあえずそれが特に全国サービスを利用してかなりうまく商売をしたので、ですから、今になってほかのコングロマリットは、おれたちも入れてくれふうに言ってきたりしているというところもありますので、確かにマーケットの動向にかなり依存するというところがあるのかなと思います。
      それから、村井さん、ご指摘の公共性という点、これはイギリスの場合、法制は複雑なんですけれども、基本的には96年法の制度がまだ生き残っていて、このデジタルラジオについては、デジタルサウンドプログラムサービスという免許制度のままのはずです。これは今度の新しい情報通信法でも変わってないはずでして、それは全国サービスについては政治的公平性を同じように要求をしております、一つ一つのサービスについて。で、そういうライセンスを持っている者でないとマルチプレックスは使ってはいけないということになっておりますので、ですから、そこは最低限のところは確保されている。その上で、あとは自由に商売をしてください、そういうことなのだろうと思います。
    塩野座長 どうぞ、羽鳥さん。
    羽鳥座長代理 先ほどのデジタル放送が、何でサイマルでなくて、モアチャンネルだということの発端は、やっぱりAMと同じぐらいの帯域でデジタル放送をやりなさい。それから、FMは大分広いけれども、でも、FMの上でデジタル放送をやりなさいというとできない。FMの中でもデータチャンネルというのが、データに使うような部分がありますが、その部分を使ってデジタルの格好で映像を、静止画を送るというようなことはできるわけですけれども、音の方まではとてもカバーできるようなことができなかったのが、やっぱりDAB、デジタル・オーディオ・ブロードキャスティングというのが先行している状態で、アナログラジオ放送としては、モアチャンネルでもいいから、デジタルの方に出ていくことを可能にするというような選択だったように思うんです。
     それで、音が大好き人間というのと、動画、テレビの方が大好き人間というのと、いやいや、静止画大好き人間というのも、写真集だとかなんだとか、いろいろ好きな方がおいでになるわけだから、そういうようなところに新しい可能性を提供していくというのは、既に出版のところであるとか、CDの部分であるのだと思うんですけれども、なるべくそういう新しい、例えば1セグメント放送のような仕組みを、伊東さんがご指摘になったような仕組みがあって、片や、1セグ放送、片や、デジタルラジオといったときに、同じこともできる、別なこともできるということになるわけで、それをどうしますかというのは、やっぱり競争の問題だと思うものですから、新しい手段をなるべく喜んで使ってもらえるような、例えばDABというサービスを追いかけて出ていくデジタルラジオ放送というのは、そのDABを超せるようなサービスが提供できるような可能性を追求していただく、それを許していただく、ということをお考えいただけたらと思うのでございますけれども。
     そのときに、著作権にも関連して、放送事業者が困っても困るし、ハリウッドが困っても困る、それから受信者が困っても話にならない。それがやっぱりあって、いろいろこうやってやろうと思ったんだけれども、制御はやめたとかいうようなことに動いていくのだと思いますから、本当は変えない方がいいんだけれども、変わってもしようがないかなというふうに、少し乱暴に私は思いますけれども。
     ついでにもう一つ、僕はおもしろい経験をしました。写真集を買ったんですね。「日本の野鳥」という写真集を買って、それにはCDが3枚くっついているんですけれども、それは本屋から買えないんですよ。出版社がつくっているCDなんだけれども、多分、あれはCDを売るというご商売と本を売るというご商売のすみ分けの関係で、写真集を買った本屋経由では取り寄せられなくて、取り寄せるんだったらインターネットで取り寄せてくれということを言われて、いやいや、商売というのは大変なものだなと。だけれども、写真集があって、鳥の声が別売りであっても、なかなかいいものだと思いましたけれども。
     だから、本当は一緒に売ってくれた方がいいんだけれども、ただのCDだったらくっつけることができる。多分、CDつきの本というのはありますけれども、写真集のCDはえらく高いんですよ。写真集よりCDの方が高いんです。だから、そういうのは本屋で扱えないという約束をしているのかなというふうに、すごくおもしろく思いました。
    塩野座長 どうもありがとうございました。大分時間がたちましたが、何かご発言ございましょうか。野村さん、よろしいですか。新美さんも、特にありませんか。それでは、少し時間を超過いたしましたが、議題に即した討議をこれで終わらせるということにいたします。


      (3)閉会
    塩野座長 そこで、次回以降のことですけれども、この研究会発足のときに、約束とまではいわなくても、一応こんなことになるのかなということで、7月か8月でしたか、ある種、取りまとめということも考えているということを申し上げました。ただ、この研究会はどんどん新しい問題ができてきたか、それから、どんどん動いているものですから、取りまとめといってもなかなか難しいところがございます。しかし、変わっているから落ちつくまで待とうといったら、いつまでたっても落ちつきませんので、時間を限って、そのときまでに取りまとめられるものは取りまとめておこう、そういうスタンスにならざるを得ないということだと思います。
     そこで、ワーキングにおきましても、7 月のぎりぎりいっぱいまでを目途として、事務局は8月にとも言っているんですけれども、私は8月はやらない方がいいのではないか。いろんな総合的考慮をすると、7月のぎりぎりいっぱいぐらいまでを目途に、ある種の取りまとめをワーキングにお願いをし、そして、それを全体として一つの、中間的なという言葉を使うかどうかということもありますけれども、ある種まとまったものを作っておきたいというふうに思いますので、各ワーキンググループの皆様方もそのことを念頭に置きまして作業を行っていただきたいと思います。
     その際、本日、ご報告いただいた事項とか、これからも少しはやるよというのも含めて、プラットフォームも入れて、ある種のものを出していただきたいということになりますけれども、そのほかに、今日、ご議論いただいた以外でも、例えば事務局からご報告いただいた外資規制の問題のように、本研究会が発足して以降に顕在化した問題がございます。例えばですけれども、集中排除の問題についても、新しい材料がいろいろ出てきているわけでございますので、ワーキンググループの委員の間で必要という意見があれば、その取扱いについても議論していただいてよいのではないか。この際、新しい問題を持ち出していただいてもよろしいのではないかというふうに考えております。
     取りまとめの期限まで、そう時間はございませんけれども、皆様、いろいろご苦労をおかけいたしますけれども、よろしくご協力のほど、お願いをいたしたいと思います。
     最後に、事務局から何かありましたらお願いします。
    安藤課長 今、座長からお願いいたしましたとおりでございまして、大変短時間でございますが、またいろいろとよろしくお願いできればと思います。
     そういう中でありますが、次回の会合及び各ワーキングの会合の時間と場所は、別途、確定し次第、ご連絡させていただければというふうに思っております。よろしくお願いいたします。
    塩野座長 どうもありがとうございました。
     それでは、本日の会合はこれで終了いたします。ちょっと時間を超過しまして、失礼いたしました。
  
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