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高度ICT人材育成に関する研究会(第3回) 議事要旨



  1.  日時
     平成19年11月19日(月) 15時00分〜17時00分

  2.  場所
     総務省 1001会議室

  3.  出席者
    (1)   構成員
      村岡座長、石島座長代理、大西構成員、大場構成員、筧構成員、北川構成員、斎藤構成員、佐久間構成員、重木構成員、大力構成員、中島構成員、原沢構成員
    (2) オブザーバー
      高橋参事官(内閣官房IT担当室)(神谷代理)、藤原課長(文部科学省高等教育局専門教育課)(徳岡代理)、八尋課長(経済産業省商務情報政策局情報処理振興課)、上田グループ長(日本経済団体連合会産業第二本部)(田島代理)
    (3) 総務省
      中田政策統括官、松井官房審議官、鈴木総合政策課長、松川情報通信利用促進課長、門馬イノベーション戦略室長、小原情報通信利用促進課課長補佐

  4.  議事概要
    (1)   開会
    (2)   議題
      1) 「第三回高度ICT人材育成に関する研究会(資料3-1)」、「高度ICT人材育成に向けたトヨタの取組み(資料3-2)」に基づき、それぞれ重木構成員、大西構成員による説明後、質疑応答が行われた。主な意見は以下の通り。

        【資料3-1 関連】
    どういった教育が必要かに関連するが、特定の大学または研究室とこうした取り組みをしたことはあるか。
    経団連でPBLなどを幾つかの大学と試行しているが、もっと実践的なPBLのやり方や、良いプロジェクト事例の説明を同時に行う必要があるのではないかという課題がある。
    職種のセグメント化により、全体がわからない者が増えていないか。
    それぞれの専門領域を極め、世界クラスを目指すという考え方と、全体を見るような立場に職種転換していくという考え方の2つがある。最終的には、業務と技術を両方見るプロジェクトマネジャー、技術的に全体をみるITアーキテクト、お客様の業務分析を専門的に行う業務コンサルタントの3つの職種に集約されると思う。また、プロフェッショナルCDPで職種を分類して育成にあたっているのは、ピラミッド型の組織で最終的に社長になるというモデルだけではなく、専門化した領域で会社に残ることも可能ということを示したかったからであるが、一方でコース変更の可能性も明示している。
    プロフェッショナルCDPの資格は4段階で認定しており、プロジェクトマネージャーの認定が最も進んでいるが、処遇とは結びついてはいない。これは、全員の資格の認定が進んでいないことと、資格を社内的なキャリアパスを認識するための手段と位置づけるのかが未整理なためである。
    【資料3-2 関連】
    情報システム本部の大卒採用は、技術系5名、事務系5名で、技術系は情報科学、工学部等の出身者を採用。分野配属前の教育は、工場実習、ディーラー実習、販売など技術系と事務系は同じ。
    自動車にコンピューター、制御ソフト等が数多く組み込まれるその統合化が重要となる中で、開発に携わる人のプレゼンスは上がっている。開発プロセスを見直し、企画・設計・製作をCADなどを使いながら並行的に行うようになってからは、電子系の人たちも開発の初期段階から関わるようになっており、エンジニアの下請けというよりは不可欠なパートナーとなっている。
    年間10人の採用で技術レベルを維持するために、同じ建屋の中でベンダーと一緒に仕事することにより、知見を共有している。また、組織としては、ITマネジメント部の中に社内の先端部隊をおいて外部接触をさせることにより、世間の水準を構築している。ただし、情報システム部内にはあまり競争という概念がないように思う。また、ロバスト性や信頼性は高いが、技術的に先端を走るものではない。
    ずっとIT系にいる者のモラルの維持については、海外の事業体に出向させ、経営管理から開発までの会社全体の動きを学んだり、人脈を作ったりすることが、人材育成上効果的だと考えている。システム系の社員と他の技術者の離職率はあまり変わらないが、どちらかと言えば一般の技術系の離職率の方が少し高いと思う。

      2) 「ICT人材をめぐる現状と課題(資料3-3)」、「検討項目(案)(資料3-4)」に基づき、事務局より説明後、討議が行われた。主な意見は以下の通り。
       
    このように人材をきちんと区別すると、大学はどの人材を育成できるか、企業内教育ではどの人材を育成するかという議論になる。企業内教育は各企業が独自にやるだろうし、大学教育で全てができるわけではない。ICT人材をこのように分けるべきかどうかについても議論をすべき。
    ソフトウェアエンジニアリングはITスペシャリストの一部ではなく、独立したグループに位置づけるべき。ソフトウェアエンジニアリングは製造技術そのものであり、ITスペシャリストより1つ上の職種グループに入ってくると思う。そういう職分がきっちりと確立されていないために、プロジェクトマネジャーに負荷がかかってしまうのではないか。
    多く並べると全て育成するということになるので、例えば、ソフトウェアエンジニアリングという人材を1つ決めておく方がいいような気もする。
    大学で、ソフトウェアエンジニアリングの現場を見たり聞いたりチャンスがないことは問題。しかし、大学卒業時点で何の専門であることを強く言うことに意味があるのか。高度人材は、結局は仕事をしながら、15年、20年のスパンで育つのではないか。大学教育には、世の中や社会の仕組みに対する広い見識や人間力、コミュニケーション能力等の基本的な意味での知力や体力をつけることが求められているのではないか。ただ現実にはできていないと言われるかもしれないが、これには教養と専門の仕組みの問題も絡んでいる。学部の4年間で電気・機械といった基礎を教養と併せてしっかり勉強し、修士の2年間でITに関してトレーニングするということも考えられるが、学部で知力、体力、人間力の教育がどうやればきちんとできるかまで返って考えないと、うまくいかない。
    全部がわからなくても、できることからするというやり方もある。
    自分で何かを動かしたい、勉強したい学生と、意欲ある先生として企業からトップの人が2年でも3年でも来て教えてくれる場を作ることが、ナショナルセンターの議論において重要なファクターになる。その際、全ての大学について同じ議論をするのではなく、ターゲットをどういうところにおくか、ターゲットとする人材をどうするかが重要。
    新しいものを作るとしても、どういう能力が必要かといった議論をすると、前向きになるのではないか。
    MITのMOTコースは、必ずしも学部の卒業生がそのまま来るのではなく、実務経験を積んだ社会人、ある程度会社の将来を担う目処がついた人が来るところであった。若手が通うことにインセンティブになるような機関であれば、うまく回るのではないか。
    学習意欲が非常に高い社会人学生に対して教えるべきことは、ソフトスキルやヒューマンファクターなどに収斂するような気がする。問題解決的な現場の知識等は、教育機関が全て教えるのは無理。ヒューマンスキルの話になると、コミュニケーション力や発想力とは何なのか、どうしたら教育できるのか、教育できるような言葉になっていないのが問題。海外では、教育できるスキルとしてブレークダウンされていることが多い。コミュニケーションがとれるか、きちんとした文章が書けるか、論理的な思考ができるかは本来学部レベル以下でやるべきことだろうが、この業界にとって必要かつ強化すべき要素はその中にあるのではないか。知識については、コンピュータサイエンスを除きそれほど深いものではないので、仕事をしながらでも学習可能。
    企業の側ではかなりOJTに偏った教育をしているが、これは経験でしか学べないと強く感じているため。大学にOJTを持ち込むのは適切かという判断もあり、経験や歴史を体系化したものに専念して学校で教えられないか。もっと効率的に知識と経験とのバランスを取って学校で教えられないか。
    J-07策定の経験を踏まえると、知識を学ぶ分については、思い切って整理すれば、1年分となるかもしれない。そこから先は、PBLや実習などでコミュニケーション能力をつけさせるような時間をつくることが大事。企業側のアイデアを入れながら、やっていくのかなと思う。
    ヨーロッパの大学でも1年でやっているが、学生は勉強に3倍の時間をとる。日本人は授業時間しか勉強しないので、不可能なのではないか。
    欧米でできてなぜ日本でできないのか。日本の大学ではなぜ学生が勉強しないのか、なぜ大学で1年分しか専門を勉強できないのか、卒論は必要なのか、医学部と同様ITのトップについては6年で再設計すべき時期にきているのではないかなどの議論が必要である。知識がないと企業でOJTをやっても効率が悪いので、大学では知識だけでも学んでおいてほしい。人間性については大学でも企業でも育成は難しいので、採用の段階で選ぶしかない。ナショナルセンターをつくるとしたら、ITの専門家だけではなく、プレゼンテーションやネゴシエーションなど、大学の中でも別系統の先生との連携も必要ではないか。
    どの年齢で何を教えるのかをきちんと設計したほうが良いのではないか。大学で専門を1年間しか教えられないのは、大学院があるためだと思う。大学院を切り離してICUのような形の教育に切りかえるという手もあるのではないか。
    求める人材像は、ITSS等のスキルマップとイコールのように捉えられてきたが、これはスキルであって人材像ではないのではないか。当社では、専門スキルは各職場に任せ、ベーシックにある人間力、ソフトスキルを社員にどうやって蓄積していくか、与えていくかに焦点を当て始めた。そこで教えているリーダーシップ技術やコミュニケーション技術など、大学で教えられるものもある気がしている。ベーシックなところは、社会とのかかわりをもう少し早く体験してもらうことではないか。会社としてももっと早く経験する場を与えることなど、社会とのかかわりを持つ形で人材育成を展開できるのではないか。
    知識・知恵について、いろいろなレベルでどこが育成できて、どのようにそれを行うのかということを、まとめていただきたい。
    アウトプットは人材と考え、10年以上のスパンでナショナルセンターがどうあるべきかの議論をしてほしい。ナショナルセンターが、卒業した人材を自信を持って大丈夫だと折り紙をつけ、企業もそれなりの処遇をするということを考えてほしい。

    (3)   閉会
以上


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