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高度ICT人材育成に関する研究会(第4回) 議事要旨



  1.  日時
     平成19年12月17日(月) 14時00分〜16時00分

  2.  場所
     総務省 801会議室

  3.  出席者
    (1)   構成員
      村岡座長、石島座長代理(村越代理)、大西構成員(神崎代理)、大場構成員、筧構成員、北川構成員、斎藤構成員、重木構成員、大力構成員、中島構成員(大島代理)、原沢構成員
    (2) オブザーバー
      高橋参事官(内閣官房IT担当室)(神谷代理)、藤原課長(文部科学省高等教育局専門教育課)(高橋代理)、八尋課長(経済産業省商務情報政策局情報処理振興課)(永見代理)、上田グループ長(日本経済団体連合会事務局)
    (3) 総務省
      中田政策統括官、松井官房審議官、鈴木総合政策課長、松川情報通信利用促進課長、門馬イノベーション戦略室長、小原情報通信利用促進課課長補佐

  4.  議事概要
    (1)   開会
    (2)   議題
      1) 「高度ICT人材育成に向けた提言(資料4-1)」、「高度人材育成での産学官協調を伸ばせ 大学卒のレベル向上も忘れるな(資料4-2)」に基づき、それぞれ原沢構成員、筧構成員による説明後、質疑応答が行われた。主な意見は以下の通り。

       
    大学の中には、情報という名前が付いていても、本当に情報学科・IT学科と言えるのかという疑問があるものもある。これについて、東京大学の武市教授が定量的なデータを持っているので、フォローしてほしい。
    理工系情報学科協議会には、理工系で情報系の教育をしていると自ら名乗る学科が入っているが、現在の学科数は150である。仮に卒業生数を一学科60〜80人とすれば、卒業生は全体で9,000〜12,000人程度となる。これと、学校基本調査の22,000人との差が問題。22,000人が、J-07の基本に当たるところの全てカバーしているとは言えないのではないか。
    企業から見ると、情報系出身の割合はそれほど多くなく、10%程度。他の学科出身で、SEのプロになっている人もいる。「副専攻あるいは理工系基礎としてのIT教育のカリキュラム標準策定に着手」というのは、メーカーとしてはありがたいが、どのようなものを考えているのか。
    大学4年間(124単位)のうち約2年分(64単位)が専門教育に当てられるとして、その中の1年分相当について、共通のものはルール化しようとしている。例えば、2/3年分(24単位)、半年分(16単位)、1/4年分(8単位)として教えるとしたらこれだけをという形で、教えるべき項目を整理した。企業の方の意見も聞いてまとめたが、各単位セットの中で、何を入れるべきかについては、こういう場や企業・業界の方から意見をいただきたい。
    (入社して)少なくとも5年経った頃に、リーダーになってくれる人材を想定し、1年間に数名は1年〜2年の間、学校に戻して再教育をすることが望ましい。コア人材を確保することにより、年次が上がったときに全体を引っ張っていく力になる。
    5年くらいの実務経験を積んだ者には、どのような内容の教育がうまくマッチするのか。
    コミュニケーション能力を格段に上げるとか、銀行の業務知識を学校に勉強にくるわけではない。技術系の部分を体系的に学び直すことや、ベンダーフリーのことを発想できること、主要ベンダーの製品は全て知っていることなどが期待される。
    5〜6年経った人間を海外留学に出して、新しい技術等の本質を理解させたり、議論したりさせている。国内ではそのような環境が得られない。1年半か2年でかなりの実力をつけて帰ってきて、職場で普及させてくれる。アメリカの大学では、学部から来た人だけではなく、業務に詳しい方が学生として参加しているので、院生や先生も育つのだと思う。そういった場が日本に少ないことが、非常に問題である。
    トップ教育をしようということなら、緒方洪庵の適塾のように、自律エンジンをもった人間が集まり、学び教える場を作るべきだと思う。東大でも1年生に必須科目として情報学を教え始めたが、全く人気がない。原因は、教える人がいないということ。先生であり生徒でもある「めだかの学校」のような、互いに学び教えあえる場を作るのがいいのではないか。

      2) 「諸外国における高度ICT人材育成について(資料4-3)」、「高度ICT人材育成の必要性について(資料4-4)」に基づき事務局より、「提言案「高度情報通信人材育成の加速化に向けて―ナショナルセンター構想の提案―」概要について(資料4-5)」に基づき、日本経団連事務局上田情報グループ長より、説明後、討議が行われた。主な意見は以下の通り。
       
    個人的には、研究会では、1〜2個の課題について方向性を出して解決できればいいのではないかと思っている。また、最終的にどうなるかは別として、最初から今の学校の中でどうやっていくかという議論をすると、なかなか進まないと思う。
    技術と業務知識とコミュニケーション能力のうち、業務知識については、コンピューターシステムやソフトウェアの適用範囲が広くなる中、適用業務もどんどん広がっており、事前に全てを教えるわけにはいかない。新しい課題にぶつかったときに、その業務を短期間で習得して、分析して解決するような能力を確立していくことが必要なのではないか。
    そのためには、情報処理だけでなく、もう少し幅広い学問体系について学ぶ機会が必要ではないか。
    業務知識は千差万別という面はあるが、一方で細かいところまで体験してみないと実際のことは理解できないので、ケーススタディを実施するのがよい。
    高度ICT人材の育成の必要性について、もう少し議論した方がいいと思う。ICT産業の国際競争力をつけるための人材育成か、国力を上げるための人材育成かではアプローチが違うだろう。産業に関わらずICT人材は必要という観点が必要。また、ユーザ企業においてICT人材をうまく生かしていくという視点、また若手の社会人の育成という視点も必要。これらが継続的な取組みになるような仕組みを、まとめることが大事である。
    高度ICT人材育成は、産業界のためではなく、国のためにやるという整理が必要である。情報サービス産業の一部分についてみれば、どの企業も国内だけで競争しており、学生の質は同じハンディを背負うだけでありあまり関係ない。
    最終的には、市場メカニズムにより人材が育成されるようにするのが究極の目的だが、起爆剤となるような特別な手段も必要である。現在は、新入社員を学科を問わず採用するくらい学生に商品性がない。筑波と九州から、学生の奪い合いが起こるようにしたい。また、変わる可能性のある大学もあると思うので、大学が変わらないことを前提に議論すべきではない。技術者育成という教育に関しては、社会のニーズに応える大学と応えない大学で、教育費の投入額に差をつけるぐらいのことをすべき。
    教育型のプロジェクトはいくつもあるが、「先導的プログラム」も「魅力ある大学院」も期限がある。期限終了後に金がないから中止するということでは学生に対する責任が果たせず、苦慮している。研究はお金がないなりにできる部分もあるかもしれないが、教育については5年〜10年かけないと真の評価はできないし、長期的なビジョン等に基づいた、安定してできる体制を考えるべきである。そういう意味でナショナルセンターも大事だと思う。
    日本の大学は、19世紀のドイツの研究者育成を行う大学をモデルとしている。そうではなく技術者育成をするのであれば、技術者がお互いに学び、先生と学生が技術的な議論をしたり、学生が先生に憧れをもてるような場作りが必要である。トップの技術者を育成するなら、魅力ある技術者になろうとする人、そういうことに関心の深い大学の先生等、色々な人が集まる大学を作らないといけない。色々な年代の学生、海外からの学生がともに学び教える場が必要である。英語で講義、ディスカッション、インターンシップ、単位互換、学生・先生の交換を行う大学をつくってみる。そこで、どんどんプロジェクトをやらせていく。そうすることで、そこで色々なことを学び学ばせる体制を考える。そういう意味で、ナショナルセンターのようなところで全く新しい場づくりをやることが必要である。
    議論を聞いていると、企業から大学への要望が多いが、企業も変わらないといけないのではないか。大学に要望するだけでなく、企業側からも人を出して一緒にやりましょう、新しい構造をつくりましょうというのがいいのではないか。
    国のために人材を育成するという目的で、何らかの新しい仕組みが必要なのではないか。
    何を目的としてどのような人材像を目標に置くかはよく議論しておいたほうが良い。情報処理の技術知識が深い人を育てるのか、社会にICTを適用して問題解決をする人を育てようとしているのかは、大事なポイント。

    (3)   閉会
以上


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