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資料2−3 |
渡辺隆行 (東京女子大学現代文化学部) 第2回 公共分野におけるアクセシビリティの確保に関する研究会 24 December, 2004 http://www.comm.twcu.ac.jp/~nabe/data/MIC-W3C/ スライド2:目次 "The power of the Web is in its universality. Access by everyone regardless of disability is an essential aspect." -- Tim Berners-Lee, W3C Director and inventor of the World Wide Web 1.W3C 2.WAI 3.WCAG WG 4.WCAG 2.0 5.International Standard Harmonization 6.まとめ 7.付録:Webのアクセシビリティを構成する要素 スライド3: 1. W3C (World Wide Web Consortium) WWW技術の標準化と推進を目的とした,会員制(年会費700万円)の国際企業コンソーシアム * W3Cの考えるWebのゴール: Universal Access, Semantic Web, Web of Trust. * 活動領域: > Architecture: Webを支える基盤技術(HTTP, XML, Web Services, ...) > Interaction: ブラウザなどのユーザが利用する技術(HTML, MathML, SVG, CSS, ...) > Technology and Society: 実社会で利用する際に必要となる技術(P3P, Semantic Web, ...) > Web Accessibility Initiative: 障害者を含む誰もが使えるWeb(ガイドライン,ツール, ...) * WGがW3Cの活動中心:問題分析,仕様策定,テストスィート作成,実装を探す. スライド4: 2. WAI (Web Accessibility Initiative) 技術,ガイドライン,ツール,教育普及,研究開発によってWebアクセシビリティを追求 * WAIの活動内容 > Technical Activity: 技術,ガイドライン,ツールを開発 * Protocols and Formats WG: W3Cが定める仕様のアクセシビリティをチェック * Web Content Accessibility Guidelines WG * Authoring Tool Accessibility Guidelines WG * User Agent Accessibility Guidelines WG * Evaluation and Repair Tools WG > International Program Office Activity: 関連組織との連携 * WAI Interest Group * Education and Outreach WG * Research and Development Interest Group * WAI Coordination Group * 最近のWorking Drafts > Web Content Accessibility Guidelines 2.0, 19 November 2004 Working Draft;WCAG 2.0 Call for Review (2005年1月3日〆切) > Authoring Tool Accessibility Guidelines 2.0, 22 November 2004 Last Call Working Draft; ATAG 2.0 Call for Review (2005年1月18日〆切) スライド5: 3. WCAG (Web Content Accessibility Guidelines) WG * WCAG 1.0:勧告 > Web Content Accessibility Guidelines 1.0 (WCAG 1.0) W3C Recommendation, 5 May 1999. > Techniques for WCAG 1.0 suite of W3C Notes, 20 September 2000 * Techniques for Web Content Accessibility Guidelines 1.0. * Core Techniques for Web Content Accessibility Guidelines 1.0. * HTML Techniques for Web Content Accessibility Guidelines 1.0. * CSS Techniques for Web Content Accessibility Guidelines 1.0. * History of changes to the techniques. * WCAG 2.0 Working Drafts (2004年11月19日公開): > Introduction to Web Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.0 Working > Draft Documents > WCAG 2.0 > General Techniques for WCAG 2.0 > HTML Techniques for WCAG 2.0 > CSS Techniques for WCAG 2.0 > Client-side Scripting Techniques for WCAG 2.0 * 作成中: Other Techniques, Checklists, Test Suite for WCAG 2.0 スライド6: 4.1 Introduction to WCAG 2.0 WD WCAG 2.0のガイドライン本文は技術非依存に書かれていて,技術ごとの文書が別にある.Introduction文書は,この複雑な構成を利用者に理解してもらうための文書. * Introduction * WCAG 2.0本文の概要 * 技術ごとのTechniques文書:ガイドラインやコードの例 * 技術ごとのChecklists文書:WCAG 2.0適合か判定するチェックリスト * 技術ごとのTest suites文書:チェックツール用テストデータ * WCAG 1.0との差 * WCAG 2.0の文書構成図(W3Cより引用) スライド7: 4.2 WCAG 2.0 WDの構成 1.アクセシビリティの4大原則: WCAG 1.0はチェックポイントの集合であったが,WCAG 2.0は達成基準(Success Criteria)の集合.2.0は,人間がウェブを利用する際に生じる一般的な問題という立場に基づいた以下の4大原則に達成基準を分類. (1).Perceivable:利用者がウェブコンテンツを認知できる. (2).Operable:利用者がウェブコンテンツのインターフェース要素を操作できる. (3).Understandable:利用者がウェブコンテンツやコンテンツのコントロール要素を理解できる. (4).Robust:ウェブコンテンツが現在のみならず将来の技術に渡って利用できる. 2. 特定の技術に依存しないガイドライン :13個のガイドラインが4大原則に分類されている.(個々のガイドラインの内容は「4.4 Content of WCAG 2.0 WD」参照.) 3. ガイドラインごとの達成基準:レベル1からレベル3までの達成基準の定義,ガイドラインにより利益を受ける利用者の例やガイドラインの適応事例. スライド8: 4.3 WCAG 2.0 WD利用上の注意 * 技術非依存:技術の進歩が激しいウェブの世界で将来も適用できるように技術非依存に記述されている.しかし,技術非依存な記述は抽象的になるために,ガイドラインだけではわかりにくいという欠点が生じている. * Authoring tools:オーサリングツールは,アクセシブルなウェブコンテンツ作成を簡易にするので,ATAG 2.0 WDにも注意を払うべし. * User agent:WCAG 2.0に準拠したコンテンツを作成しても,標準仕様を満たさないユーザエージェントを利用する場合はアクセシブルにならない.そこでWCAG 2.0は,UAAG 1.0の優先度1を満たしたユーザエージェントが利用されると仮定. * 優先度ではなくレベル:WCAG 1.0のようにチェックポイントに優先度をつけるのではなく,達成基準を以下の3レベルに分類. > L1:通常の支援技術やユーザエージェントでウェブコンテンツを利用する際に,最低限のアクセシビリティを達成する基準で,すべてのWebコンテンツに適用できるもの. > L2:ユーザエージェントの能力をさらに活用する かつ/又は 障害者に特別なことを要求せずにアクセシブルなコンテンツを提案することによりアクセシビリティを向上できる基準で,すべてのWebコンテンツに適用できるもの. > L3:L1やL2以上の要求をする基準 * テスト可能な達成基準:すべての達成基準は,コンピュータプログラムでテストできる,又は複数の専門家が同じ結果を得るという意味でテスト可能であるべき. スライド9: 4.4 Content of WCAG 2.0 WD * Introduction * Overview of Design Principles * Principle 1: Content must be perceivable > Guideline 1.1 Provide text alternatives for all non-text content. > Guideline 1.2 Provide synchronized alternatives for mutimedia. > Guideline 1.3 Ensure that information, functionality, and structure are separable from presentation. > Guideline 1.4 Make it easy to distinguish foreground information from background images or sounds. * Principle 2: Interface elements in the content must be operable > Guideline 2.1 Make all functionality operable via a keyboard or a keyboard interface. > Guideline 2.2 Allow users to control time limits on their reading or interaction. > Guideline 2.3 Allow users to avoid content that could cause photosensitive epileptic seizures. > Guideline 2.4 Provide mechanisms to help users find content, orient themselves within it, and navigate through it. > Guideline 2.5 Help users avoid mistakes and make it easy to correct them. * Principle 3: Content and controls must be understandable > Guideline 3.1 Ensure that the meaning of content can be determined. > Guideline 3.2 Organize content consistently from "page to page" and make interactive components behave in predictable ways. * Principle 4: Content must be robust enough to work with current and future technologies > Guideline 4.1 Use technologies according to specification. > Guideline 4.2 Ensure that user interfaces are accessible or provide an accessible alternative(s). * Appendices スライド10: 5. International Standard Harmonization * WCAG 2.0勧告化までの予定 WCAG 1.0は耐用年数を過ぎているので,WCAG 2.0の策定が急がれているが,予想以上の時間がかかっている. 1.Last Call WD: 2月目標だが早くても3月? 2.Candidate Recommendation: 春頃? 3.Proposed Recommendation: ?? 4.Recommendation: ??(遅くても2005年度中には勧告まで行くと思われる) * WCAG 2.0とJIS X 8341-3の協調 JIS X 8341-3:2004:WCAG 1.0を尊重し,WCAG 2.0 WDのよいところを取り入れ,日本固有の事情や日本の支援技術の事情に合わせてガイドラインを策定. > WCAG 2.0 WDとJIS X 8341-3:2004を比較して,WCAG 2.0に欠けているところ(言語に起因するアクセシビリティ問題など)をWCAG WGに提案した. > 言語や文化に起因する問題以外に,各国の支援技術のレベルなどに対する配慮や各国の法制度(Policy)などに対する配慮も必要か? WCAG WGは,ガイドライン本文は世界共通にすべきであるが, TechniquesやChecklistは各国の事情に応じたものがあってもよいと考えている.我々も,WCAG 2.0とJIS X 8341-3ができるだけ協調するようにしたい. スライド11: まとめ * Webの標準技術を策定する国際コンソーシアムW3Cには,Webのアクセシビリティを追求する活動ドメインWAIがある. * WAIでは,WCAG (Web Content Accessibility Guidelines),ATAG (Authoring Tool AG),UAAG (User Agent AG)などを策定するWGや,EO (Education and Outreach) WGなどがある. * WCAG WGは,2005年度中の策定を目指してWorking Draftを開発している. * WCAG 2.0 WDは,技術非依存のガイドラインと,技術ごとのTechniquesやChecklistなどの文書群で構成される. * ガイドラインは13個あり,ガイドラインごとにL1からL3の達成基準が定められている. * 達成基準はテスト可能なように記述されている. * JIS X 8341-3:2004は,WCAG 1.0を尊重し,2003年度版のWCAG 2.0 WDのよいところを取り入れ,日本固有の事情や日本の支援技術の事情に合わせて策定した. * JISにあってWCAG 2.0にないものをWCAG WGに提案し,WCAG WGの会議で議論した. * 国内の混乱を避けるためにも,WCAG 2.0とJIS X 8341-3ができるだけ協調するようにしたい. スライド12: 付録:Webのアクセシビリティを構成する要素 1) Webのアクセシビリティ問題の研究,理解 ユーザテストをしてWeb利用の問題点を明確にし,問題解決のための基礎資料をそろえる必要がある.また,Webアクセシビリティは人間がWebを利用する際に生じる問題なので,人間に関連することからソフトウェアに関連することまで様々な要因が絡んでくる.Web利用の問題点を体系的に理解して分類しておかないと,相互に関連した要因を正しく理解できず,問題解決に結びつかない.さらに,ユーザビリティとアクセシビリティを分離して考えず,ユーザビリティの広い枠内でアクセシビリティを検討した方がよいと思われる. 2) Web技術がアクセシビリティに配慮 Webに利用される技術は,W3Cが策定したものとそうでないものの2種類に分けることができる. W3CにはWAI (Web Accessibility Initiative)という活動ドメインがあり,W3Cで策定する技術がアクセシビリティに配慮するよう活動している.W3C以外で作成された技術の場合,このような配慮は保障されない.ただし,米国で利用されるソフトウェアが,リハビリテーション法508条に対応するためにアクセシビリティに配慮しているなどの例もある. * W3C策定の技術:HTML,XHTML,CSSなど * W3C外部で企業などが独自に作成した技術:PDF,Flashなど PDFとFlashは,これまでのWebが提供しなかった有用な機能を提供しているため,現在のWebで頻繁に用いられている.Adobe社のPDFもMacromedia社のFlashも,ともにアクセシビリティ機能を持っているが,特にFlashは誰もが利用できる技術にはなっておらず,Webアクセシビリティの問題を生じている. スライド13: 続:Webのアクセシビリティを構成する要素 3) Webコンテンツ作成側がアクセシビリティに配慮して作成.(Authoring tool) もし,すべてのWebコンテンツがアクセシビリティに完全に配慮して作成されれば,既存のWebコンテンツを除いてコンテンツ作成側のアクセシビリティ問題は解決する.W3C WAIのドメインリーダであるJudy Brewer氏が強調するのも,オーサリングツールがアクセシビリティに配慮したWebコンテンツを作成できるようになることである.Webコンテンツの作成され方には,人間がエディタでタグを挿入しながら作成する場合,人間がオーサリングツールなどのWebコンテンツ作成ソフトを用いて作成する場合,ソフトウェアによって自動的に作成される場合などがある. 3.1) Web作者がアクセシビリティに配慮してWebコンテンツを作成:人間がエディタでタグを挿入しながら作成する場合,作者に求められるのは,HTMLやXHTMLやPDFなどのWeb技術のアクセシビリティ機能を最大限に活用することである. 3.2) オーサリングツールが自動的にアクセシビリティに配慮して作成:人間がオーサリングツールなどのWebコンテンツ作成ソフトを用いて作成する場合,Macromedia社のDreamweaver,IBM社のホームページビルダー,Microsoft社のFrontPageなどをはじめとする様々なソフトがある.これ以外にも,WebサイトでWebコンテンツを作成するようなツールもあり,これも1種のオーサリングツールかもしれない.いずれにしても,ソフトウェアで対応できる点はオーサリングツール側で自動的に配慮してWebコンテンツを作成することが求められる.では,オーサリングツールが自動的に対応できるアクセシビリティ上の配慮とは何だろうか?ここはもっとつめる必要があるかもしれない. 3.3) サーバサイド技術がアクセシビリティに配慮してソフト的に生成:ウェブが商取引など今までより広い範囲で利用されるにつれ,コンテンツがソフトウェアによって自動的に作成されるケースが増えてくる.また,サーバが提供しているデータを変換したり,複数のサーバからデータを収集してコンテンツを作成したりするエージェント的な仲介サーバが,利用者用のコンテンツを作成するケースも増えてくると思われる. スライド14: 続:Webのアクセシビリティを構成する要素 4) Web利用ソフトウェアがアクセシビリティ機能を利用できる.(User agent) たとえば,ブラウザによってスタイルシートの対応状況が異なっている.あるブラウザでうまくいくことが別のブラウザでは動作しないことも多い.せっかくWCAGなどのアクセシビリティガイドラインに準拠してコンテンツを作成しても,音声ブラウザやウェブブラウザなどのユーザエージェントが標準仕様に準拠していなければ,コンテンツを利用できない.したがって,標準仕様に準拠し,標準と考えられる技術を利用できるユーザエージェントが必要である. 5) Webの利用者に配慮が適合している アクセシビリティはコンテンツを人間が利用するときに生じる問題なので,利用者の特性・能力・環境・嗜好にコンテンツ提供の機能が適合していなければならない. 6) Webの製作者と利用者への教育 (Guidelineなど) アクセシビリティ問題をわかりやすく示し配慮すべき点を述べたガイドラインや,チェックリストやテストツールが必要.また,Web作者や中高生の段階での早期教育が必要. 教育しなければアクセシビリティ問題に気づかないし,対処方法もわからない. 7) Web作者のコストとメリットのバランス (法令) アクセシビリティ対応に手間がかからないことが必要. かけたコストに見合う利益がなければ自然には広がらない.Webは自由なメディアであった.だからこそここまで広がった.この自由さを不必要に制限してはいけないと思う.しかし,公共性の高いウェブサイトでは,JISよりも影響力のある方法(508条のような法令)でアクセシビリティを強制してもよいと思う. 8) Webサイトのデザインから保守にいたるまでのプロセス全体に注目 意味のあるimg要素にALT属性をつけるとか,見栄えはスタイルシートで指定するとか,そういう配慮だけで誰もが利用できるWebサイトができるとは思えない.そのサイトのターゲットユーザの分析,ユーザ要求の調査,サイトで提供する情報の整理から始まって,実装,評価,保守運用にいたるプロセス全体の中でアクセシビリティへの配慮を基本的なサイトの条件として考える必要がある.ウェブサイト構築プロセスの中で,どこに力を入れれば低いコスト(手間,費用)でアクセシブルなウェブサイトを構築できるのかを検討する必要がある. 以上 |