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資料6−1−H


障害者・高齢者による評価手順(第2次案)

これは、15枚のスライドをテキスト化したものです。

スライド0(表紙)
資料6−1−H
障害者・高齢者による評価手順(第2次案)
2005年7月13日
「公共分野におけるアクセシビリティの確保に関する研究会」事務局
総務省 Ministry of Internal Affairs and Communications

スライド1
■障害者・高齢者による評価の重要性

・障害者・高齢者ユーザに設計・構築中、あるいは運用中のウェブサイトを実際に閲覧・操作してもらうことによって、チェックシートや点検ツールでは分からなかった問題点を把握し、アクセシビリティ向上に役立てることが重要。

・アクセシビリティ担当部署職員は、必ず(最低1回以上は)ユーザの評価現場に立ち会う経験が必要である。

−障害者・高齢者を含む多様な利用者がウェブを利用していることを理解し、アクセシビリティ確保の必要性を認識するため。
−障害に応じて、多様なウェブ利用特性があることを理解するため。
−障害に応じて、多様なウェブ利用環境があることを理解するため。

スライド2
■「障害者・高齢者による評価手順」の位置づけ

・ユーザ評価には、専門家に依頼したり、専門の器材・部屋を用いて実施する等、様々な方法がある。
「障害者・高齢者による評価手順」は、専門家や専門の器材・部屋に頼ることなく、ユーザ自身の利用環境を活用して、自治体のアクセシビリティ担当職員自らが簡易にユーザ評価をコーディネート・実施し、アクセシビリティ向上に役立てられる方法を紹介するものである。

・ユーザ評価は基本検討から運用までの各段階で行うことが望ましいが、特に初期段階で「ユーザニーズヒアリング」を行うことは重要であり、その結果を仕様検討に活かすことによって、より多くの人に使いやすいウェブサイトを作り出すことができる。

・また、実際に制作が行われた後に、最低限のアクセシビリティを確保するためには、テンプレート・画面サンプル制作時の「テンプレート・サンプル点検」、公開後の「定期点検」を行うことが最低限必要となる。

スライド3
■障害者・高齢者による評価を行う上での留意事項

・事前に障害についての理解を深めること。
・健常者よりも、評価に参加する負担が大きいことを認識した上で、テストを企画すること。
・不快になる言葉は使わないこと。
・障害の原因や内容について、必要がないのに聞かないこと。必要がある場合は、本人の了承を得てから聞くこと。
・不明な点があれば、福祉担当職員に相談しながら行うとよい。
・ユーザ評価の実施目的や得られた結果の活用方法を説明し、理解を得た上で実施すること。
・ユーザ自身をテストしているのではなく、ウェブサイトをテストするのだということを強調すること。
・評価の際に録音や撮影(カメラ、ビデオ)を行う場合は、本人の許可を取ること。
・自治体によって対応方針は異なると思われるが、謝金や謝礼についても検討すること。
スライド4
■障害者・高齢者のウェブ利用上の主な問題点 (1)

・障害者や高齢者は、利用者の身体条件によって様々な環境でウェブを利用している。
・ウェブを利用する際に問題となる点も、利用環境に応じて異なる。

<全盲>

ウェブ利用環境
・テキスト情報を音声化してくれる「音声読み上げソフト」をキーボードで操作し、ウェブサイトを利用する。
・点字を習得している場合、テキスト情報を点字出力する「点字ディスプレイ」を使う人もいる。

ウェブ利用上の主な問題点
・ウェブページ上の画像やFlash等に代替テキスト(Alt文)がない場合に、内容を知ることができない。
・テーブルでレイアウトする際に段組が適切でないと、情報の意味する順序と読み上げの順序に矛盾が生じ、理解が難しくなる。
・リンク文の表現が不適切だと必要な情報を探すのが困難になる。

<弱視>

ウェブ利用環境
・見え方や見えやすい条件に多様な個人差があり、それぞれの人の見え方に応じた工夫をしてウェブを利用している。
・画面に顔を近づける、パソコンやブラウザ等の設定で文字の大きさや配色を変更する、画面拡大ソフトを利用する、等。

ウェブ利用上の主な問題点
・HTMLやCSSで文字が固定サイズで指定されていたり、文字情報が画像で提供されていると、ブラウザ等の設定変更で文字を拡大することができず、問題になる。
・画面を拡大して利用する場合は、画面全体のレイアウト構成や、動きのあるコンテンツの把握が難しくなる。

<色覚障害>

ウェブ利用環境
・ある色とある色の組み合わせが判別できない、または判別しにくく、モニターのコントラストや輝度を調整したり、文字色と背景色を変換して利用している。

ウェブ利用上の主な問題点
・色の組み合わせが不適切に用いられていたり、強調や意味の違いが色だけで表現されていると、文字や図の判別ができなかったり、色を使ったナビゲーションが理解できないといった問題が発生する。

スライド5
■障害者・高齢者のウェブ利用上の主な問題点 (2)

<聴覚障害>

ウェブ利用環境
・基本的に健常者と同じ環境で利用しているが、警告音を画面点滅などの形で表示するよう設定して利用している人もいる。

ウェブ利用上の主な問題点
・画面と一緒にBGMや効果音が流れていても気がつかない。
・音声つきの動画では、字幕やテキストによる解説がないと、内容が十分把握できない。
・手話を使って会話をしている人の場合、難しい文字表現が分かりにくいケースがある。

<肢体不自由>

ウェブ利用環境
・病状や障害の状況によって身体の動かせる機能や程度に多様な個人差がある。
・キーボードの設定変更や、特殊な入力装置・支援ソフトを利用するなど、様々な状態・利用環境でウェブを利用している。

ウェブ利用上の主な問題点
・マウスの正確な移動が難しい場合、スクロールが必要な縦長のページや、ページごとにボタンの位置が統一されていないサイトは、マウスポインタの大きな移動が負担となる。
・リンク箇所が小さかったり、隣同士のリンクが近づきすぎている場合や、マウスを乗せた時だけ表示されるメニューを選択する場合など、マウスポインタの細かな操作が困難。
・ウェブページのリンクや画面上のソフトキーボードを順にスキャンさせ、スイッチ等で選択している場合、マウスのようにリンクを1クリックで選択することができず、TABキーでひとつずつリンクを移動して選択するのと同じ状態で、1ページに含まれるリンク数が多いと、目的のリンクに辿りつくまでに大変な労力と時間が必要になる。

<高齢者>

ウェブ利用環境
・加齢に伴い、視覚・聴覚が変化するため、視覚障害者・聴覚障害者双方と共通の問題が発生する。
・パソコンを購入したままの初期設定で利用しているケースが多い。

ウェブ利用上の主な問題点
・個人差はあるが、IT関係の専門用語や新語は苦手な人が多く、複雑な操作の習得も負担となる。
・たくさんのサイトを調べているうちに現在の位置や履歴を見失ったり、ボタン名が英語になっていると操作を敬遠するという問題がある。
・直前に見ていた画面に戻る操作がページによって異なるため、戸惑う現象も多く見られる。

スライド6
■ユーザニーズヒアリング(1) 概要

障害者・高齢者モニターに日常のウェブの使い方について説明を受けるとともに、実際に現在公開しているウェブサイトを閲覧・操作する様子を観察しながら操作についてモニターから意見や感想を聞く。

■実施目的:
障害者・高齢者モニターのウェブの利用方法を理解し、現在公開しているウェブサイトの課題を把握することによって、障害者・高齢者ユーザにとって問題なく利用できるようリニューアルの際の仕様検討に活かすため。
(ウェブサイトを開設していない自治体の場合は、規模が同程度の他の自治体のサイトで評価を行ってもよい。)

■実施時期:
基本検討時

■評価テストの実施者:
アクセシビリティ担当部署職員(外部専門機関の活用を含む)

■評価モニター:
障害者(1名は音声読み上げソフト利用者を含む)、及び高齢者 合計3人以上
ITリテラシーが高い方、そうでない方の両方を含めると望ましい

スライド7
■ユーザニーズヒアリング(2) ヒアリングの流れ

・調査モニターへの協力依頼
−個別に障害者・高齢者ウェブユーザを探すのが困難な場合は、地元の障害者団体、シニアネット、盲学校などに協力を依頼するとよい。

・操作課題の設定
−提供しているサイト内から、3つ程度の課題を設定する。課題は、サイトの中から1問につき15分間以内に情報を探し出すクイズ形式にする。

・モニターに日常のウェブ利用方法について聞く
−職員は評価モニターの家や職場等、実際の利用環境を再現できる場所に出向く。まず、普段のウェブ利用について説明してもらう。

【質問のポイント】
 ・利用時間、利用目的、よく利用するサイト
 ・利用環境(支援技術の利用、パソコンの設定変更等)
 ・工夫している点、困っている点 等

・モニターによる閲覧・操作
・モニターの操作の様子を観察 操作についてモニターの意見を聞く
−評価モニターに、現在のウェブサイトのトップページを閲覧してもらい、印象を聞く。
−ウェブサイト内を自由に閲覧・操作してもらった後で、操作課題を実施してもらう。モニターには、随時自分の操作を説明してもらい、感じたことや考えたことについて意見を言ってもらう。
−職員はモニターの閲覧・操作現場に立会うことによって、操作の様子を観察するとともに、モニターから随時意見を聞く。

【観察・意見収集のポイント】
 ・このウェブサイトの良い点
 ・このウェブサイトの使いづらい点、操作につまづいた点
 ・改善要望 等

・アクセシビリティ対応検討
−職員はモニターの観察・意見収集結果から、現在のまま活かす点、改善が必要な点、ユーザに配慮が必要な点等を整理し仕様検討に活かす。

スライド8
■ユーザニーズヒアリング(3) 課題設定の考え方

・現在のページや機能が利用者にとって使いやすいものであるか検証できるような課題を設定する。
・利用者における実際の利用シーンを想定した上で、幅広い視点から課題を設定する。
・課題設定の視点(例)
−リニューアルを考えているページから必要な情報が入手できるか。
−住民の日常生活に関する情報や緊急情報が入手できるか。
−利用者のアクセス数の多いページが使いやすいものであるか。
−表のあるページや、文章やリンクの多いページから必要な情報が入手できるか。
−複雑な機能や操作を必要とするページは問題なく利用できるか。
・課題(例)
−例1)あなたの家でダンボールをごみ出しをしたい場合に、何曜日に回収があるでしょうか。
−例2)お子さんが夜中に急に熱を出したとします。今夜あなたの家の近くで開いている病院はどこでしょうか。

スライド9
■テンプレート・画面サンプル点検(1) 概要
障害者・高齢者モニターが、実際にテンプレート・画面サンプルを閲覧・操作する様子を観察するとともに、操作についてモニターから意見や感想を聞く。

■実施目的:
仕様に沿って作られたテンプレート・画面サンプルが、障害者・高齢者ユーザにとって問題なく利用できるかを点検し、対応に活かすため。

■実施時期:
トップページを含む主要なテンプレート・画面サンプルができた段階
(トップページの情報整理やサイト構成の検討が終わり、主要ページのデザイン案がHTML化された段階。トップページは実際のコンテンツが大まかに配置され、各ページに共通するナビゲーション部分が出来上がっていることが望ましい。)

■評価テストの実施者:
アクセシビリティ担当部署職員、又は受注業者(外部専門機関の活用も含む)  

■評価モニター:
障害者(1名は音声読み上げソフト利用者を含む)、及び高齢者 合計3人以上
ITリテラシーが高い方、そうでない方の両方を含めると望ましい

スライド10
■テンプレート・画面サンプル点検(2) 点検の流れ

・調査モニターへの協力依頼
−個別に障害者・高齢者ウェブユーザを探すのが困難な場合は、地元の障害者団体、シニアネット、盲学校などに協力を依頼するとよい。

・テンプレート・画面サンプル操作手順の設定
−トップページ及び主要なテンプレート・画面サンプルの操作手順を決定
例)トップページを一通り閲覧した後、ナビゲーションから問合せページを開き、問合せフォームに記入する。

・モニターによる閲覧・操作
−評価モニターは、トップページを閲覧後、リンクが張られた主要ページを閲覧・操作しながら、随時、考えたことや感じたことについて意見を言う。

・モニターの操作の様子を観察、操作についてモニターの意見を聞く
−職員は、モニターの閲覧・操作現場に立ち会い、操作の様子を観察するとともに、モニターから随時意見を聞く。

【観察・意見収集のポイント】
・情報が正しく取得できるか
・情報がわかりやすく整理されているか
・制作者の意図した配慮点が正しく認識されるか
・操作が大変だった箇所はないか 等

・アクセシビリティ対応検討
−観察・意見収集結果から、問題点や改善点を把握し、対応の優先度を決め、アクセシビリティ確保に活かす。

スライド11
■検収・定期点検(1)概要

提供しているウェブサイトについて操作課題(クイズ)を設定し、障害者・高齢者モニター等に課題に取組んでもらい、サイト使い勝手等について、事後アンケートに回答してもらう。

■実施目的:
更新されたウェブサイトが、障害者・高齢者等ユーザにとって問題なく利用できるかを点検し、対応に活かすため。

■実施時期:
・検収点検は、ウェブサイトの一般公開前にモニターに試験公開できる場合
・定期点検は、ウェブサイト公開・運用開始後、毎年1回程度

■評価テストの実施者:
・検収点検は、アクセシビリティ担当部署職員、又は受注業者(外部専門機関の活用も含む)
・定期点検は、アクセシビリティ担当部署職員(外部専門機関の活用も含む)
 
■評価モニター:
障害者(1名は音声読み上げソフト利用者を含む)、高齢者、及び健常者 合計5〜6人以上。地域特性に応じて、外国人や子供、若者なども含めるとよい。
ITリテラシーが高い方、そうでない方の両方を含めると望ましい

スライド12
■検収・定期点検(2) 点検の流れ

・調査モニターへの協力依頼
−個別に障害者・高齢者等ウェブユーザを探すのが困難な場合は、地元の障害者団体、シニアネット、盲学校などに協力を依頼するとよい。

・操作課題の設定
−提供しているサイト内から、3つ程度の課題を設定する。
−課題は、サイトの中から1問につき15分間以内に情報を探し出すクイズ形式にする。
例1)もし災害が起きた場合、あなたの家から一番近い避難所はどこでしょうか。○○(マルマル)市のウェブサイトの中から探し出してください。
例2)○○(マルマル)町のモバイルサイトでは、今年から保養所の空き状況が検索できるようになりました。では、7月20日には、あと何人泊まれるでしょうか。

・モニターによる操作課題実施
・モニターによる事後アンケートへの回答
−モニターは自宅等で操作課題を行い、事後アンケートに回答してもらう。(職員が立ち会える場合は、その場で操作を観察し、操作した感想や意見を聞くとよい)

・アクセシビリティ対応検討
−アンケートの結果から、問題点や改善点を把握し、対応の優先度を決め、アクセシビリティ確保に活かす。

スライド13
■検収・定期点検(3) 課題設定の考え方

■検収点検:
・追加・更新ページや追加・改善機能が利用者にとって使いやすいものであるか検証できるような課題を設定する。
・課題設定の視点(例)
−追加・更新したページから必要な情報が入手できるか。
−追加機能が使いやすいものであるか。
(追加・更新ページが多数に及ぶ場合は、下記定期点検の課題設定の視点(例)に沿って点検対象ページの優先順位付けを行う。)

■定期点検:
・利用者における実際の利用シーンを想定した上で、幅広い視点から課題を設定する。
・課題設定の視点(例)
−住民の日常生活に関する情報や緊急情報が入手できるか。
−利用者のアクセス数の多いページが使いやすいものであるか。
−表のあるページや、文章やリンクの多いページから必要な情報が入手できるか。
−複雑な機能や操作を必要とするページは問題なく利用できるか。

スライド14
■検収・定期点検(4) 事後アンケート

■回答方法:
メールによる回答(職員による聞き取りや、FAXによる回答でもよい)

■アンケート項目(例):
・操作課題に対する結果と評価
−クイズの答え
−答えを見つけるまでの所要時間(15分以内に探し出せたか)
−情報取得の難しさ(非常に簡単/簡単/難しい/非常に難しい 等)

・ウェブサイトの使いやすさの評価
−使い方のわかりやすさ(非常にわかりやすい/わかりやすい/わかりにくい/非常にわかりにくい 等)
−自分の位置のわかりやすさ
−文章表現のわかりやすさ
−アクセシビリティ配慮の度合い
−再利用意向

・自由意見

以上



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