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資料8−3−A


公共分野におけるアクセシビリティの確保に関する研究会 報告書(案)
誰でも使える地方公共団体ホームページの実現に向けて 第1部


公共分野におけるアクセシビリティの確保に関する研究会
報告書(案)
 誰でも使える地方公共団体ホームページの実現に向けて
平成17年 月 日
総務省

本報告書の構成と活用方法

本報告書は2部構成の本文と付録から成る。
第1部は、本研究会の検討の背景として、ウェブアクセシビリティの重要性の増大や国内外でのウェブアクセシビリティ基準検討の動きを整理するとともに、地方公共団体におけるウェブアクセシビリティ維持・向上の取組の現状を調査した結果をまとめている。また、調査結果をもとに地方公共団体におけるウェブアクセシビリティ維持・向上に見られる課題を抽出・整理し、第2部の検討につなげている。
第2部は、第1部で整理したウェブアクセシビリティの維持・向上に見られる課題を受けて、「みんなの公共サイト運用モデル」を提示し、さらに3つの地方公共団体でこの運用モデルを実践しその有効性を評価した実証評価の取組と結果をまとめている。
付録は、第2部で述べた「みんなの公共サイト運用モデル」で用いる手順書及びワークシート類をまとめたものである。なお、地方公共団体の現場でウェブアクセシビリティ維持・向上の取組を実践する場合には、最低限、この付録を利用するだけでも十分間に合うように注意が図られている。併せて、ウェブアクセシビリティ維持・向上の取組の全体像を紹介した第2部第1章を一読することで、さらに理解が深まるだろう。

(以下は、目次です。)

はじめに
本研究会が取り扱うテーマと範囲

第1部 公共分野のアクセシビリティ確保に関する課題検討

1.検討の背景・・・1
1−1 ウェブアクセシビリティ確保の重要性の増大・・・1
1−2 ウェブアクセシビリティの規格整備動向・・・6

2.地方公共団体のホームページ等の企画・運用におけるアクセシビリティ配慮状況・・・12
2−1 調査の目的と実施概要・・・12
2−2 調査結果・・・15
2−3 調査結果の考察・・・43

3.地方公共団体のウェブアクセシビリティに関する事例調査・・・46
3−1 調査の目的と実施概要・・・46
3−2 各地方公共団体におけるウェブアクセシビリティ維持・向上の取組状況・・・50

4.電子申請におけるアクセシビリティの現状と課題・・・67
4−1 電子申請システムにおけるアクセシビリティの重要性・・・67
4−2 電子申請システムのアクセシビリティ確保の障害となる要因・・・67
4−3 既存の電子申請システムで見られるアクセシビリティの問題・・・68
4−4 対応の考え方・・・72

5.調査で明らかになった課題の整理・・・73

第2部 「みんなの公共サイト運用モデル」の策定

1.ウェブアクセシビリティ維持・向上の取組の全体像・・・79
1−1 モデル構築の基本的な視点・・・79
1−2 「みんなの公共サイト運用モデル」の全体像・・・81
1−3 「みんなの公共サイト運用モデル」の検討テーマと本研究会での検討範囲・・・84

2.ウェブアクセシビリティ維持・向上のための事前準備・・・87
2−1 基本方針の策定・・・87
2−2 取組体制の考え方・・・87
2−3 ウェブアクセシビリティに影響を与える対象の調査・・・88
2−4 目標・実施計画の設定・・・88

3.ウェブアクセシビリティ維持・向上の取組の実施・・・90
3−1 ホームページ・リニューアル等の実施手順・・・90
3−2 ウェブアクセシビリティの維持・向上のためのワークシート・・・92

4.ウェブアクセシビリティ対応状況の確認・・・97
4−1 簡易点検ガイド・・・97
4−2 障害者・高齢者による評価手順・・・98
4−3 外部からの意見の処理手順・・・98

5.ホームページ・リニューアル等実施手順の効果・・・100
5−1 実証評価の概要・・・100
5−2 「ホームページ・リニューアル等実施手順」で得られた効果・・・107

6.今後の取組・・・112
6−1 課題と検討の方向性・・・112
6−2 「みんなの公共サイト運用モデル」の普及・・・113

本報告書で記載されている社名や商品名は、各社の登録商標又は商標です。

(目次はここまで)

はじめに

 インターネットと携帯電話の普及に代表される情報通信技術(ICT)の発展は、わずか10年余りの間に国民生活のスタイルを大きく変える新たな社会基盤を形成した。今や、電子メールやウェブ(World Wide Web)は国民にとって身近な情報メディアであり、これらは通信や情報提供だけでなく、様々なオンラインサービスの提供にも用いられている。
こうした新たなICT環境を踏まえて、公共分野でのICT利用も新たな段階を迎えている。政府機関をはじめ、ほとんどの地方公共団体がインターネット上にホームページを公開しているだけでなく、ICTを活用して各種の行政サービスを提供する電子政府・電子自治体サービスの実現が、重要な政策課題として推進されているところである。
しかし、インターネットの社会基盤としての重要性が高まり、ICTを活用して提供される公共サービスが充実すればするほど、それらのサービスが利用できない場合の不利益も深刻となり、障害者や高齢者も含めたあらゆる人々がそれらのサービスを利用できること、すなわちアクセシビリティの確保が重要な課題として浮上することとなった。重度の身体障害者の中には窓口に出向いて行政サービスを利用することが困難な人も多く、公共分野のホームページやウェブシステム(注1)では十分なアクセシビリティの確保が特に強く求められる。
このような現状認識に基づき、本研究会では平成16年11月から8回にわたって会合を開き、公共分野におけるアクセシビリティ確保の現状把握と、地方公共団体が実施すべき具体的な対応のあり方を検討してきた。本研究会の発足に先立ち、昨年6月にはウェブアクセシビリティをテーマとする「JIS X 8341-3」(注2)が策定された。工業標準化法第67条には「国及び地方公共団体は、買入れる鉱工業製品に関する仕様を定めるとき日本工業規格を尊重しなければならない」とあり、公共ホームページ等の調達においてはJIS X 8341-3の内容を十分に踏まえる必要がある。また、公共ホームページ等においてはウェブページの追加・更新等も頻繁に行われることから、アクセシビリティ確保のためには調達だけでなく、日常的な運用の際にも十分な配慮が求められる。
本研究会では、JIS X 8341-3が示すアクセシビリティの要件を踏まえて、地方公共団体がホームページやウェブシステムの構築等に際して、実際にアクセシビリティの維持・向上を実現するための体制、手順、方法を検討し、具体的なウェブアクセシビリティ維持・向上のための運用モデルである「みんなの公共サイト運用モデル」として取りまとめた。
なお、本研究会ではICTを活用した公共サービス、中でもインターネット上で提供するホームページやウェブシステムに焦点を当てて検討を進め、ウェブアクセシビリティの確保を主テーマとしている。しかし、アクセシビリティの確保は、本来、公共サービス全般に求められる課題である。本研究会で策定した「みんなの公共サイト運用モデル」をひとつの例として、ICT活用サービスはもとより、あらゆる公共サービスにおいてアクセシビリティ確保の取組がさらに進展していくことを期待する。

(脚注)
1.電子申請や施設予約、データベース検索等をウェブサイト上で行えるようにするシステムのこと。
2.「高齢者・障害者等配慮設計指針−情報通信における機器、ソフトウェア及びサービス−第3 部:ウェブコンテンツ」

平成17年 月
公共分野におけるアクセシビリティの確保に関する研究会

本研究会が取り扱うテーマと範囲

アクセシビリティとは

 本研究会のテーマは、公共分野のホームページ等におけるアクセシビリティの現状と課題、そして今後の公共分野のホームページ等におけるアクセシビリティ維持・向上の土台となる運用モデルを示すことである。
  「アクセシビリティ」という言葉は日本語ではなじみが薄いが、言葉の意味は「使いやすさ」あるいは「利用できること」と説明されることが多い。ホームページ等に限らず、様々な製品や建物やサービスの「使いやすさ」という意味でも用いられる。
  本研究会のテーマである「ホームページ等のウェブサイトのアクセシビリティ」(以下、ウェブアクセシビリティという。)とは、高齢者や障害者といった、ホームページ等の利用になんらかの制約があったり利用に不慣れな人々を含めて、誰もがホームページ等で提供される情報や機能を支障なく利用できることを意味する。「使いやすさ」という点では、ユーザビリティの概念と重複する点が多いが、本研究会では特に障害者・高齢者でも支障なく利用できるホームページ等をいかに実現するかに重点を置いた。

対象となるホームページ等の範囲

 今回、本研究会が検討の対象としたのは主に地方公共団体が提供するホームページ等である。ただし、本研究会で検討したウェブアクセシビリティ維持・向上のための運用モデル(以下「みんなの公共サイト運用モデル」という。)は、政府機関や独立行政法人等の公的機関、さらには民間も含めたホームページ等のアクセシビリティ維持・向上にも有益であると考えている。
  また、本研究会の対象は、ホームページで提供される各種情報だけでなく、様々な機能やそれらを実現するウェブシステムも含んでいる。例えば、利用者が情報を入力する入力フォーム、情報検索機能、音声や動画の再生機能、各種プログラムのダウンロード、これらを組み合わせて実現する電子申請をはじめとする各種サービス等である。これらの機能・サービスを提供するプログラムやシステムの構築・提供においても、アクセシビリティの維持・向上が十分に行われるべきであり、本研究会で策定した「みんなの公共サイト運用モデル」の対象にはこれらが含まれている。
  さらに、インターネット上では提供されない住民向けシステム、例えばKIOSK端末で提供される情報サービス等でも、情報表現やインタフェースにウェブ技術を用いている場合には本研究会で策定した「みんなの公共サイト運用モデル」がウェブアクセシビリティの維持・向上に有効であり、積極的な活用が望まれる。

各種規格等との関係

 ウェブアクセシビリティについては、平成16年に日本工業規格の指針JIS X 8341-3が制定された。本研究会では、JIS X 8341-3を踏まえて、そこに示されているウェブアクセシビリティの要件を検討し実現する具体的な運用モデルを示すことを目指した。したがって、「みんなの公共サイト運用モデル」の検討にあたっては、JIS X 8341-3との整合性に極力留意するとともに、一部のワークシートはJIS X 8341-3の技術解説書(注3)を参照する形式とした。ただし、JIS X 8341-3はその具体的な実現方法や手順を限定していない点には注意が必要である。つまり、本研究会で策定した「みんなの公共サイト運用モデル」は、あくまでもひとつの実現案を提示しているに過ぎず、これ以外の手順や形式を排除するものではない。
  現在、W3C(注4)ではWCAG(注5)2.0の検討が進められている。また、ISO(注6)においても、ウェブアクセシビリティに関する規格の検討が始まっている。ただし、これらについては本報告書の執筆時点では内容が確定していないため、「みんなの公共サイト運用モデル」の検討の下敷きとはせず、その動向を示すに留めた。

(脚注)

3.ウェブ開発者がJIS X 8341-3を理解するための参考書。JIS X 8341-3:2004「高齢者・障害者等配慮設計指針−情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス− 第3部:ウェブコンテンツ」技術解説(http://www.jsa.or.jp/domestic/instac/index.htm
4.World Wide Web Consortiumの略。ウェブ上で利用される技術の標準化を行う国際団体。
5.Web Content Accessibility Guidelinesの略。W3Cに設置された組織であるWAI(Web Accessibility Initiative)が策定したウェブアクセシビリティに関するガイドライン。現行バージョンの1.0は1999年に策定されたもの。
6.International Organization for Standardization(国際標準化機構)の略。工業標準の策定を目的とする国際機関。

第1部
公共分野のアクセシビリティ確保に関する課題検討

(1ページ)
1.検討の背景

1−1 ウェブアクセシビリティ確保の重要性の増大

1−1−1 インターネットの普及と利用の動向

 インターネットの普及は進展し、平成16年末のインターネット利用人口は7,948万人、人口普及率は62.3%、世帯普及率も86.8%に達している。
  またインターネットは幅広い分野の情報収集に高い比率で利用されており、いまや日常生活に欠かせないメディアとなっている。

図表1−1 インターネット利用人口の推移
出典:総務省「平成16年通信利用動向調査」

(以下、棒グラフ。データは次のとおり。)

平成9年末 1,155万人
平成10年末 1,694万人
平成11年末 2,706万人
平成12年末 4,708万人
平成13年末 5,593万人
平成14年末 6,942万人
平成15年末 7,730万人
平成16年末 7,948万人

(このグラフのデータは以上)

図表1−2 情報メディア別の情報収集用途(複数回答)
出典:総務省「ネットワークと国民生活に関する調査」(平成17年3月)

(以下、棒グラフ。データは、情報メディア別に、インターネット、テレビ、新聞、雑誌・書籍の順。)
ニュース
67.4%
84.0%
62.2%
6.2%

仕事の情報
61.6%
12.8%
26.0%
31.6%

勉強の情報
65.1%
11.9%
15.5%
45.2%

趣味や遊びの情報
88.6%
35.6%
11.6%
54.6%

旅行やお店の情報
80.3%
28.1%
11.5%
50.3%

生活情報
73.3%
45.9%
26.1%
28.6%

健康情報
62.9%
46.6%
20.5%
33.2%

(このグラフのデータは以上)

 また、体験や日々の暮らしを書き残すため、日記形式の簡易ホームページ「ブログ」(注7)を開設する人が平成16年から急速に増えており、今後ますますインターネットの利用は広がると予想される。

図表1−3 ブログの開設時期
出典:総務省「ユビキタス社会の動向に関する調査」(平成17年3月・ブログ開設者488人へのウェブアンケート)

(以下、帯グラフ。データは、次のとおり。)

平成14年以前
5.1%

平成15年
6.4%

平成16年
69.4%

平成17年
19.1%

(このグラフのデータは以上)

図表1−4 ブログの開設理由
出典:総務省「ユビキタス社会の動向に関する調査」(平成17年3月・ブログ開設者488人へのウェブアンケート)

(以下、帯グラフ。データは、次のとおり。)

体験や日々の暮らしを書き残したい 50.0%
情報や体験を他人と共有したい 31.8%
意見や考えを多くの人に示したい 27.5%
専門知識がなくても、簡単に情報発信できる 26.6%
流行っている 19.7%
トラックバック等によって、多くの人と交流したい 9.8%

(このグラフのデータは以上)

(脚注)
7.Weblogの略。自動ページ生成機能、他のページとの連携機能(トラックバック)、コメント機能等を有する。

(3ページ)
1−1−2 高齢者、障害者のインターネットの利用

 インターネットの利用率を年齢別に比較すると、かつては20代から30代といった比較的若い年齢の男性が利用者の大半を占めていた。いまだ50歳以上の利用率は10代〜40代に比べて低いものの、利用率は増加しており、特に60歳以上の高齢者の利用が平成13年末から平成16年末の間に2.43倍と、大幅に伸びている。

図表1−5 年代別に見たインターネット利用率
出典:総務省「平成16年通信利用動向調査」

(以下、棒グラフ。データは、平成13年末、平成16年末、平成13年末から平成16年末の増加率の順。)

6〜12歳
49.2%
62.8%
1.28倍

13〜19歳
72.8%
90.7%
1.25倍

20〜29歳
68.5%
92.3%
1.35倍

30〜39歳
68.4%
90.5%
1.32倍

40〜49歳
59.0%
84.8%
1.44倍

50〜59歳
36.8%
65.8%
1.79倍

60歳以上
10.7%
26.0%
2.43倍

(このグラフのデータは以上)

 一方、障害者にとっても、インターネットは情報収集の手段としてだけでなく、社会との結びつきを強め、就労にもつながるなど、生活の上で大きな役割を果たすものである。障害者の多くが様々な支援技術(注8)を使用して、インターネットを利用している。
  視覚障害者の場合、画面の内容を把握することが困難となるが、画面読み上げソフトや音声ブラウザ(以下、「画面読み上げソフト等」という。)(注9)によって画面の文字を読み上げさせたり、文字を点字ディスプレイに出力するなどして利用している。弱視では、画面を拡大するソフトや装置を用いることで利用が可能となる。上肢に障害がある場合はマウスの操作が困難であったり、キーボードで操作できたとしても複数のキーの同時操作が難しいが、スイッチを用いて入力したり、画面上で操作できるソフトキーボード等を用いている。
  高齢者・障害者にとっても、健常者同様にインターネットは生活の中に確実に浸透している。しかしながら高齢者・障害者のインターネット、特にマルチメディア表現が豊富なウェブの利用においては、健常者に比べて様々な問題が発生する。支援技術を利用しても、健常者よりも閲覧に時間がかかるなど、多くの困難を伴っている。
  JIS Z 8071:2003(ISO/IEC Guide71:2001)「高齢者及び障害のある人々のニーズに対応した規格作成配慮指針」では、高齢者、障害のある人々の情報アクセスを最大限確保する方法として次ページの表(図表1−6 情報に関する箇条での配慮すべき要素)により、配慮すべき要素を示している。
  高齢者、障害者の利用上の問題への認識が無く、適切な配慮がなされていないと、支援技術そのものの利用にも支障が生じる。高齢者・障害者の利用の拡大に伴い、アクセシビリティの問題はむしろ大きくなっており、今後ますますその対応が求められる。

(脚注)
8.画面読み上げソフト、肢体不自由者向けの特殊入力装置等、障害者のパソコン操作を支援する専用の機器やソフトウェア。
9.画面読み上げソフトとはコンピュータの画面上に表示される内容を音声で読み上げるソフトウェア、音声ブラウザとはウェブページの内容を音声で読み上げるソフトウェア。

(5ページ)
図表1−6 情報に関する箇条での配慮すべき要素
JIS Z8071:2003(ISO/IEC Guide71:2001)「高齢者及び障害のある人々のニーズに対応した規格作成配慮指針」(日本規格協会発行)より転載。

(以下は、表の内容の説明)

表は、人の能力(心身の機能等)のうち、「感覚」、「身体」、「認知」、「アレルギー」において、情報(表示、注意表示、警告)に関する企画の箇条での配慮すべき要素を示したもの。
「感覚」は、さらに「視覚」、「聴覚」、「触覚」、「味覚/嗅覚」、「平衡感覚」に分類される。「身体」は、さらに、「(手の動きの)自由さ」、「操作」、「動作」、「筋力」、「発声」に分類される。「認知」は、さらに「知的能力/記憶」、「言語/読み書き」に分類される。「アレルギー」」は、さらに「接触/食物/気道」に分類される。
また、情報(表示、注意表示、警告)に関する企画の箇条での配慮すべき要素については、「代替様式」、「位置/レイアウト」、「照明/グレア」、「色/コントラスト」、「文字/大きさと形」、「分かりやすい言語」、「図記号/イラストレーション」、「音量/周波数」、「抑えた速度」、「区別しやすい形」、「扱いやすさ」、「使用期限表示」、「成分表示」、「表面温度」、「アクセシブルな経路」に分類される。

「視覚」において、情報(表示、注意表示、警告)に関する企画の箇条での配慮すべき要素は以下のとおり。
・代替様式
・位置/レイアウト
・照明/グレア
・色/コントラスト
・文字/大きさと形
・分かりやすい言語
・図記号/イラストレーション
・区別しやすい形
・扱いやすさ
・使用期限表示
・成分表示
・表面温度
・アクセシブルな経路

「聴覚」において、情報(表示、注意表示、警告)に関する企画の箇条での配慮すべき要素は以下のとおり。
・代替様式
・位置/レイアウト
・分かりやすい言語
・音量/周波数
・抑えた速度

「触覚」において、情報(表示、注意表示、警告)に関する企画の箇条での配慮すべき要素は以下のとおり。
・代替様式
・位置/レイアウト
・区別しやすい形
・表面温度

「味覚/嗅覚」において、情報(表示、注意表示、警告)に関する企画の箇条での配慮すべき要素は以下のとおり。
・代替様式
・使用期限表示
・成分表示

「平衡感覚」において、情報(表示、注意表示、警告)に関する企画の箇条での配慮すべき要素は以下のとおり。
・位置/レイアウト
・扱いやすさ
・アクセシブルな経路

「(手の動きの)自由さ」において、情報(表示、注意表示、警告)に関する企画の箇条での配慮すべき要素は以下のとおり。
・代替様式
・扱いやすさ

「操作」において、情報(表示、注意表示、警告)に関する企画の箇条での配慮すべき要素は以下のとおり。
・位置/レイアウト
・扱いやすさ

「動作」において、情報(表示、注意表示、警告)に関する企画の箇条での配慮すべき要素は以下のとおり。
・位置/レイアウト
・アクセシブルな経路

「筋力」において、情報(表示、注意表示、警告)に関する企画の箇条での配慮すべき要素は以下のとおり。
・位置/レイアウト
・扱いやすさ

「発声」において、情報(表示、注意表示、警告)に関する企画の箇条での配慮すべき要素は以下のとおり。
(特になし)

「知的能力/記憶」において、情報(表示、注意表示、警告)に関する企画の箇条での配慮すべき要素は以下のとおり。
・色/コントラスト
・分かりやすい言語
・図記号/イラストレーション
・抑えた速度
・区別しやすい形
・扱いやすさ
・成分表示

「言語/読み書き」において、情報(表示、注意表示、警告)に関する企画の箇条での配慮すべき要素は以下のとおり。
・代替様式
・位置/レイアウト
・分かりやすい言語
・図記号/イラストレーション
・抑えた速度
・区別しやすい形
・扱いやすさ
・使用期限表示

「接触/食道/気道」において、情報(表示、注意表示、警告)に関する企画の箇条での配慮すべき要素は以下のとおり。
・扱いやすさ
・成分表示

(この表の説明は、ここまで)

(6ページ)
1−2 ウェブアクセシビリティの規格整備動向

 ウェブアクセシビリティの問題が広く知られるようになったのは、1990年代後半のW3Cの指針策定からである。ここでは、JIS規格制定に至るまでの動きと今後の動向を概観する。

1−2−1 W3Cにおける指針検討の動向

 W3Cは、WWW技術の標準化と推進を目的として1994年に設立された国際コンソーシアムである。W3Cの活動領域は、WWW技術に関する情報提供、技術仕様の策定、新技術のプロトタイプ実装等である。
  W3Cでは、1997年4月にWAI(注10)というワーキンググループを設置し、ウェブアクセシビリティの実現方策の検討を開始した。WAIの活動には、以下のものが含まれている。
 
*ウェブアクセシビリティに関する指針の作成
  *ウェブアクセシビリティの評価、向上に用いるツールの開発
  *ウェブアクセシビリティに関する教材開発や啓発活動
  *ウェブアクセシビリティに関する研究・開発活動の把握

(1)WCAG1.0
  WAIでは、ウェブコンテンツのアクセシビリティ指針を検討しており、WCAG1.0が1999年5月にW3Cから勧告された。このWCAG1.0は、実質的に世界のウェブアクセシビリティ検討の標準ガイドラインとなっている。

(2)WCAG2.0
  WCAG1.0の勧告から6年を経過しているが、WAIではWCAG1.0の策定直後からWCAG2.0の開発を進めている。WCAG2.0は、WCAG1.0勧告後のWWW技術の進展やWCAG1.0への各種の意見を踏まえて検討が進められており、2001年8月に草案が公開された。2005年10月時点での最新ワーキングドラフトは2005年6月30日のものとなっている。
  WCAG2.0の特徴として、次の3つの要求事項を踏まえて作成されていることが  挙げられる。
 
1)技術非依存
  将来に渡って長期間利用するために、特定の技術に依存しないよう、本体の条文は技術非依存な形式で記述されており、個別技術に対応した技術文書が別途用意される。
 
2)明確な適合条件
  WCAG1.0がウェブコンテンツのチェックポイントの集合体になっていたのに対し、WCAG2.0は「達成基準」(Success Criteria)の集合となっている。これらの「達成基準」はコンピュータプログラムでテストできる、あるいは複数の専門家が同じ評価結果を得るという意味でテスト可能である。
 
3)わかりやすい
  より広い層に利用してもらうために、その項目が必要な理由を具体例を挙げて説明するなどわかりやすく説明する工夫をしている。
 
WCAG2.0は次に挙げるウェブアクセシビリティ4原則に基づいて13個のガイドラインが分類され、その下にガイドラインごとの達成基準が示される構成となっている。
 
1)Perceivable:利用者がウェブコンテンツを認知できること
 
2)Operable:利用者がウェブコンテンツのインタフェース要素を操作できること
 
3)Understandable:利用者がウェブコンテンツやコンテンツの制御を理解できること
 
4)Robust:ウェブコンテンツが現在だけでなく将来の技術によっても利用できること
 
WCAG2.0ワーキングドラフトには、WCAG2.0をどう適用するかの一般的なテクニック、達成基準のチェックリストや、HTML(注11)のテクニック、CSS(注12)のテクニック、その他のJavaスクリプト(注13)等のテクニックが記述されている。今後の検討を経てラストコールワーキングドラフトへと進むが、最終的なW3Cの勧告となるまでにはさらに時間を要する見込みである。

図表1−7 WCAG2.0の文書構成図
出典:World Wide Web Consortium

(以下、文書構成図の説明)

「WCAG2.0」の下に「General Techniques」、「Generated Checklists」が連なる。また、「General Techniques」及び「Generated Checklists」と相互に関係する形で「Generated Tests」が存在する。
「General Techniques」の下に、「HTML Techniques」、「CSS Techniques」、「 ...other Techniques」が連なり、「Generated Tests」の下に、「HTML TestSuite」、「CSS TestSuite」、「...other TestSuite」が連なり、「Generated Checklists」の下に、「HTML Checklists」、「CSS Checklists」、「...other Checklists」が連なる。

(この文書構成図の説明は以上)

(脚注)
10.Web Accessibility Initiativeの略。W3C内に設置された組織で、誰もがウェブを利用できるようにすることを目的とし、ウェブアクセシビリティに関するガイドラインの策定や普及・啓発活動を行う。
11.Hyper Text Markup Languageの略。ウェブページを記述するための言語。
12.Cascading Style Sheetsの略。ウェブページのレイアウト情報(フォント、サイズ、文字間、行間等)を指定するための規格。
13.ウェブブラウザ上で実行され、ウェブページに動きや対話性を付加するための言語。

(8ページ)
図1−8 JIS X 8341シリーズの構成

(以下、構成図の説明)

ピラミッド型の図となっており、3階層に分かれる。上段の階層には、基本規格として、ISO/IEC ガイド71(JIS Z 8071)が位置づけられ、中段の階層には、グループ規格として、「高齢者・障害者等配慮設計指針−情報通信における機器、ソフトウェア及びサービス−第1 部:共通指針」が位置づけられ、下段の階層には、製品・サービス等個別規格として、「第2部 情報処理装置」、「第3部 ウェブコンテンツ」「第4部 電気通信機器」「第5部 事務機器」、「その他」が位置づけられる。

(この構成図の説明は以上)

 現在のウェブアクセシビリティの事実上の世界標準はWCAG1.0であり、国内では次に詳述するJIS X 8341-3が策定されているが、JISと深い関連があり、影響を与えるISOでもウェブアクセシビリティを扱う規定を策定する動きがある。
  ISOに設置されているTC159(人間工学専門委員会)で審議中の規格 ISO/CD 9241-151 Software ergonomics for World-Wide-Web User Interfaces(ワールドワイドウェブのユーザーインタフェースの人間工学設計)が、ウェブのユーザビリティのみならず、アクセシビリティにも言及するようになった。
  この規格は2002年9月から審議が開始され、2005年4月現在DIS(Draft of IS)案を作成中であり、今後削除される可能性はあるものの、ウェブアクセシビリティの国際的な活動としてWCAG2.0とともに今後の動きが注目される。
(9ページ)
1−2−3 我が国におけるウェブアクセシビリティに関する規格の策定

(1)ウェブアクセシビリティに関する取組の経緯
  我が国では、1980年代から高齢化の進展が重要な政策課題として認識されていたこともあり、高齢者・障害者の情報通信利用促進に関する取組は1990年頃から継続的に行われてきた。
  ウェブアクセシビリティが課題として取り上げられたのは、WAIによるWCAG検討が進められていた1998年頃からであり、1999年5月には当時の郵政省と厚生省が開催した「高齢者、障害者の情報通信利用に対する支援の在り方に関する研究会」の成果として、「インターネットにおけるアクセシブルなウェブコンテンツの作成方法に関する指針」が発表された。
  この指針は、WCAG1.0を日本語訳したものであったため、日本語表記や発音の問題等のウェブアクセシビリティの課題が十分反映されていなかったことから、我が国独自のウェブアクセシビリティ指針の必要性が認識され、JISの制定に至ることとなった。

(2)JIS X 8341-3の制定
  平成12年9月、日本規格協会情報技術標準化センター(INSTAC)に「情報バリアフリー実現に資する標準化調査研究委員会」(略称:情報バリアフリー委員会)が設置され、情報バリアフリーのJIS化の検討が開始された。平成13年4月からは、正式に政府からの委託を受けて「情報技術分野共通及びソフトウェア製品のアクセシビリティの向上に関する標準化調査委員会(略称:情報バリアフリー委員会)」(委員長:山田肇 東洋大学経済学部教授、国際大学グローバルコミュニケーションセンター副所長)が組織され、情報バリアフリーに関するJIS原案の検討が進められた。3年間の検討期間を経て、平成16年5月から6月にかけて制定された「JIS X 8341シリーズ」は、「高齢者・障害者等配慮設計指針 −情報通信における機器、ソフトウェア及びサービス」と題され、第1部が共通指針、第2部が情報処理装置に関する指針、第3部がウェブコンテンツに関する指針となっている。
  その後さらに検討が重ねられ、平成17年10月20日には「第4部・電気通信機器」が制定され、平成18年2月には「第5部・事務機器」が制定の予定である。

図1−8 JIS X 8341シリーズの構成

 平成16年6月20日に制定された「第3部・ウェブコンテンツ」(JIS X 8341-3)は、WCAG1.0を尊重し、WCAG2.0の内容を踏まえながら、日本固有の問題やプロセスを取り上げて策定されたものである。JIS規格書は本体と付属書で構成されている。本体では配慮の原則的な考え方が示されており、付属書で具体的な配慮の方法を例示して紹介しているが、この例示は限定的な内容であった。そこで、平成17年7月には技術解説書のワーキングドラフトが公開され、より配慮の実践につながる指針とするべく、さらなる取組が進められている。

(3)ウェブアクセシビリティ関連ツールの整備・提供
  JIS X 8341-3が制定されるまで、国内でアクセシビリティが確保されたホームページ等を作る際の指針としてはWCAG1.0が広く用いられていたが、WCAG1.0は膨大な数のチェックポイントの集合体であるため、それらを人手で点検するのは現実的でなく、効果的に点検を行うプログラムが必要とされた。米国では「Bobby」等、いくつかのチェックツールが早期から提供されていたが、これらはインタフェースや点検結果レポートが英語で作られているため、国内での使用に向かなかった。
  そこで、総務省では、平成13年から平成15年にかけて、情報通信アクセス協議会ウェブアクセシビリティ作業部会の協力を得つつ、ウェブアクセシビリティ点検システムの開発を進め、「J-WAS」(平成13年)、「ウェブヘルパー1.0」(平成14年)、「ウェブヘルパー2.0」(平成15年)として提供した。これらは、WCAG1.0に準拠した基準でウェブアクセシビリティを点検するプロセスを提供するもので、J-WASとウェブヘルパー1.0はサーバーで提供するASP型、ウェブヘルパー2.0はパソコン上で稼動するアプリケーションソフト型となっている。
  また、ウェブアクセシビリティの必要性の認識が広がるにつれ、無料のものも含め民間が提供するアクセシビリティチェックツールも増えており、ホームページ制作ソフトのアクセシビリティ点検機能も充実する方向にある。

(12ページ)
2.地方公共団体のホームページ等の企画・運用におけるアクセシビリティ配慮状況

2−1 調査の目的と実施概要

2−1−1 調査の背景と目的

 我が国の電子政府は、平成17年度末を目標として整備が進められているが、その整備にあたっては利用者の視点を徹底し、行政情報の入力やオンラインによる手続を便利でわかりやすいものとすることが必要であるとしている。
  また、電子自治体サービスの整備も急速に進められており、同様の配慮が求められる。第1章で述べたように、ウェブアクセシビリティについては平成16年 6月にJISが制定されているが、JISについては、工業標準化法第67条において、国及び地方公共団体は調達にあたりJISを尊重することとされていることから、地方公共団体がホームページ等を調達する際には、担当者がその過程にJISを正しく反映させることが要求される。しかし、地方公共団体のホームページ等については、結果として公開されるウェブコンテンツのアクセシビリティ評価は実施例があるもの、その企画・制作・運用段階での配慮状況や体制整備については実態を示すデータが存在しない。
  そこで、地方公共団体におけるホームページ等の企画・運用に関する実態を調査し、「みんなの公共サイト運用モデル」の策定に資することとした。

(13ページ)
2−1−2 調査概要

 本調査の実施概要は下記のとおりである。

 *調査名:ウェブサイト等の企画・運用に関するアンケート
  *調査対象者:全国都道府県及び市区町村ホームページ等の企画・運用担当者
  *調査方法:オンライン及びファクシミリによる回答
  *調査期間:平成17年2月15日から3月17日まで
  *有効回答数:1215サンプル
  *市区町村(人口規模別)
   ・5千人未満 150サンプル
   ・5千人以上1万人未満 242サンプル
   ・1万人以上5万人未満 536サンプル
   ・5万人以上10万人未満 116サンプル
   ・10万人以上 135サンプル
   ・都道府県 36サンプル

図2−1 人口規模別回答比率

(以下、円グラフ。データは次のとおり。)

5千人未満(12.3%)
1万人未満(19.9%)
5万人未満(44.1%)
10万人未満(9.5%)
10万人以上(11.1%)
都道府県(3.0%)
不明(0.0%)

(このグラフのデータは以上)

(14ページ)
2−1−3 調査項目

 本アンケートの調査項目は下記のとおりである。

 1)ウェブアクセシビリティの認識
  2)ウェブアクセシビリティ向上の取組状況
  3)ホームページの構築、リニューアルにおける対応状況
  4)日常的なホームページ更新における対応状況
  5)ウェブシステムの導入におけるアクセシビリティ
  6)アクセシビリティ向上の課題等
  7)団体情報

(15ページ)
2−2 調査結果

2−2−1 提供しているホームページ等

(1)ホームページの総ページ数
  ホームページの総ページ数の平均は3716.1ページとなった。人口1万人未満の地方公共団体の大半は5百ページ未満である。また、都道府県のほとんどが1万ページ以上となっている。

図表2−2 ホームページの総ページ数

(以下、帯グラフ。データは、百ページ未満、5百ページ未満、千ページ未満、5千ページ未満、1万ページ未満、5万ページ未満、5万ページ以上、不明の順。)

全体(N=1215)
25.5
37.9
9.3
14.6
3.5
5.0
1.4
2.7
5千人未満(n=150)
60.7
32.7
4.0
1.3
0.0
0.7
0.0
0.7
1万人未満(n=242)
45.5
42.6
3.7
5.0
0.0
0.0
0.0
3.3
5万人未満(n=536)
20.0
50.0
12.9
12.9
0.4
1.1
0.0
2.8
10万人未満(n=116)
0.9
28.4
16.4
41.4
7.8
2.6
0.0
2.6
10万人以上(n=135)
0.7
5.9
7.4
34.1
22.2
23.0
3.7
3.0
都道府県(n=36)
0.0
0.0
0.0
0.0
5.6
55.6
33.3
5.6

(このグラフのデータは以上)

(2)モバイルサイトの有無
  モバイルサイトを提供している地方公共団体は全体の39.7%であり、規模の大きな地方公共団体ほど提供している比率が高まる。都道府県は100%が提供している。

図表2−3 モバイルサイトの有無

(以下、帯グラフ。データは、提供している、提供していない、不明の順。)

全体(N=1215)
39.7
59.6
0.7
5千人未満(n=150)
14.7
83.3
2.0
1万人未満(n=242)
28.9
71.1
0.0
5万人未満(n=536)
35.4
63.8
0.7
10万人未満(n=116)
52.6
46.6
0.9
10万人以上(n=135)
76.3
23.0
0.7
都道府県(n=36)
100.0
0.0
0.0

(このグラフのデータは以上)

(17ページ)
2−2−2 ウェブアクセシビリティの認識

(1)ウェブアクセシビリティの認知度
  ウェブアクセシビリティの「内容を知っている」のは全体の74.1%である。人口が5千人未満の地方公共団体では「まったく知らない」が約2割を占める。5万人以上の地方公共団体のほとんどが「内容を知っている」。

図表2−4 ウェブアクセシビリティの認知度

(以下、帯グラフ。データは、内容を知っている、聞いたことはあるが内容は知らない、まったく知らない、不明の順。)

全体(N=1215)
74.1
20.8
5.1
0.0
5千人未満(n=150)
47.3
33.3
19.3
0.0
1万人未満(n=242)
61.6
31.4
7.0
0.0
5万人未満(n=536)
75.4
21.6
3.0
0.0
10万人未満(n=116)
95.7
4.3
0.0
0.0
10万人以上(n=135)
95.6
4.4
0.0
0.0
都道府県(n=36)
100.0
0.0
0.0
0.0

(このグラフのデータは以上)

(2)JIS X 8341-3の認知度
  JIS X 8341-3の「内容を知っている」のは全体の28.2%だが、地方公共団体の規模が大きくなるほど認知度が高まり、都道府県は100%が「内容を知っている」。

図表2−5 JIS X 8341-3の認知度

(以下、帯グラフ。データは、内容を知っている、聞いたことはあるが内容は知らない、まったく知らない、不明の順。)

全体(N=1215)
28.2
38.4
33.3
0.0
5千人未満(n=150)
8.0
36.0
56.0
0.0
1万人未満(n=242)
10.3
38.4
51.2
0.0
5万人未満(n=536)
21.3
44.8
34.0
0.0
10万人未満(n=116)
49.1
40.5
10.3
0.0
10万人以上(n=135)
73.3
24.4
2.2
0.0
都道府県(n=36)
100.0
0.0
0.0
0.0

(このグラフのデータは以上)

(3)ウェブアクセシビリティ必要性の認識
  「首長筆頭に一般職員も必要性を認識している」地方公共団体は全体の1.8%である。「サイト管理者等の職員の一部が認識」の比率が44.9%と最も高いが、地方公共団体の規模が大きくなるにつれて、「サイト管理者等の職員の多くが認識」の比率が高まる。

図表2−6 ウェブアクセシビリティ必要性の認識

(以下、帯グラフ。データは、首長筆頭に一般職員も必要性を認識、サイト管理者等の職員の多くが認識、サイト管理者等の職員の一部が認識、サイト管理者のみが認識している、必要性はほとんど認識されていない、不明の順)

全体(N=1215)
1.8
10.8
44.9
22.8
19.8
0.0
5千人未満(n=150)
0.0
4.0
31.3
18.0
46.7
0.0
1万人未満(n=242)
0.4
2.1
33.9
28.9
34.7
0.0
5万人未満(n=536)
1.3
9.7
46.5
27.1
15.5
0.0
10万人未満(n=116)
1.7
17.2
54.3
24.1
2.6
0.0
10万人以上(n=135)
5.9
27.4
61.5
5.2
0.0
0.0
都道府県(n=36)
11.1
30.6
58.3
0.0
0.0
0.0

(このグラフのデータは以上)

(20ページ)
2−2−3 ウェブアクセシビリティ向上の取組状況

(1)アクセシビリティの確保の取組状況
  「既に十分に取り組んでいる」と認識している地方公共団体は全体の2.6%であり、「不十分であり、今後取組を進める」と「今後取組を進めていく予定」がともに4割弱となっている。地方公共団体の規模が大きくなるにつれ、「不十分であり、今後取組を進める」比率が高まる。

図表2−7 アクセシビリティ確保の取組状況

(以下、帯グラフ。データは、既に十分に取り組んでいる、不十分であり、今後取組を進める、今後取組を進めていく予定である、今後も進める予定はない、その他、不明の順。)

全体(N=1215)
2.6
38.6
36.5
18.1
4.2
0.0
5千人未満(n=150)
0.7
14.7
40.0
39.3
5.3
0.0
1万人未満(n=242)
0.4
18.2
44.2
31.4
5.8
0.0
5万人未満(n=536)
2.2
34.5
43.7
15.9
3.7
0.0
10万人未満(n=116)
1.7
69.8
23.3
0.0
5.2
0.0
10万人以上(n=135)
8.1
78.5
11.9
0.0
1.5
0.0
都道府県(n=36)
11.1
86.1
0.0
0.0
2.8
0.0

(このグラフのデータは以上)

(2)アクセシビリティに関する基本方針のホームページへの掲載
  アクセシビリティに関する基本方針をホームページに掲載している地方公共団体は全体の6.9%であり、人口10万人以上の地方公共団体や都道府県では掲載している比率が高まる。

図表2−8 アクセシビリティ基本方針の掲載

(以下、帯グラフ。データは、掲載している、掲載していない、不明の順。)

全体(N=1215)
6.9
93.1
0.0
5千人未満(n=150)
0.7
99.3
0.0
1万人未満(n=242)
1.7
98.3
0.0
5万人未満(n=536)
3.7
96.3
0.0
10万人未満(n=116)
6.0
94.0
0.0
10万人以上(n=135)
25.2
74.8
0.0
都道府県(n=36)
50.0
50.0
0.0

(このグラフのデータは以上)

(3)アクセシビリティが確保されたウェブページ作成のための指針
  「独自の指針等を定めている」地方公共団体は全体の13.5%、「JISやWCAGを参照する」は7.8%であった。人口1万人未満の地方公共団体のほとんどには、「指針となるものはない」。10万人以上の地方公共団体の約半数、都道府県の8割が「独自の指針等を定めている」。

図表2−9 作成のための指針

(以下、帯グラフ。データは、独自の指針等を定めている、JIS X 8341-3やWCAG1.0を参照する、指針となるものはない、不明の順)

全体(N=1215)
13.5
7.8
78.6
0.1
5千人未満(n=150)
0.0
2.7
97.3
0.0
1万人未満(n=242)
0.8
4.5
94.6
0.0
5万人未満(n=536)
6.5
7.3
86.0
0.2
10万人未満(n=116)
22.4
15.5
62.1
0.0
10万人以上(n=135)
53.3
13.3
33.3
0.0
都道府県(n=36)
80.6
13.9
5.6
0.0

(このグラフのデータは以上)

(4)ウェブアクセシビリティの主管部署
  「情報政策、情報システム関連部署」が担当しているのは全体の36.3%、「広報広聴関連部署」は20.3%であった。規模の小さな地方公共団体ほど「担当する部署は決まっていない」。人口10万人以上の地方公共団体や都道府県は、「広報広聴関連部署」が担当する比率が高まる。

図表2−10 ウェブアクセシビリティの主管部署

(以下、帯グラフ。データは、情報政策、情報システム関連部署、広報広聴関連部署が主に担当、福祉関連部署が主に担当、その他、担当する部署は決まっていない、不明の順)

全体(N=1215)
36.3
20.3
0.3
1.7
41.2
0.1
5千人未満(n=150)
22.7
11.3
0.7
1.3
64.0
0.0
1万人未満(n=242)
34.7
9.9
0.4
0.8
54.1
0.0
5万人未満(n=536)
39.2
17.2
0.4
1.5
41.6
0.2
10万人未満(n=116)
48.3
22.4
0.0
0.0
29.3
0.0
10万人以上(n=135)
31.1
51.1
0.0
5.9
11.9
0.0
都道府県(n=36)
41.7
52.8
0.0
2.8
2.8
0.0

(このグラフのデータは以上)

(5)ウェブアクセシビリティの目標や実施計画の設定
  「目標を設定し実施計画を策定」している地方公共団体は全体の1.7%で、「具体的な目標は設定していない」が9割となっている。都道府県は約45%が目標を設定している。

図表2−11 目標や実施計画の設定

(以下、帯グラフ。データは、目標を設定し実施計画を策定、目標は設定しているが計画はない、具体的な目標は設定していない、不明の順)

全体(N=1215)
1.7
7.5
90.6
0.2
5千人未満(n=150)
0.7
1.3
98.0
0.0
1万人未満(n=242)
0.0
2.9
97.1
0.0
5万人未満(n=536)
0.4
4.9
94.4
0.4
10万人未満(n=116)
0.9
14.7
84.5
0.0
10万人以上(n=135)
8.9
20.7
70.4
0.0
都道府県(n=36)
13.9
30.6
55.6
0.0

(このグラフのデータは以上)

(6)実施計画の定期的な評価
  ウェブアクセシビリティについて「目標を設定し実施計画を策定」している21地方公共団体のうち、職員が定期的な評価を実施しているのは42.9%であった。外部評価は行われていない。

図表2−12 定期的な評価の実施

(以下、棒グラフのデータ。データは次のとおり。)

職員が定期的な評価を実施している
42.9
外部の人が定期的な評価を実施
0.0
定期的な評価は実施していない
57.1

(このグラフのデータは以上)

(7)ウェブアクセシビリティに関する職員教育
  職員教育で最も多いのは「ウェブページ制作の研修の中で」の14.7%であり、職員教育を実施していない地方公共団体は77.9%であった。規模が大きな地方公共団体ほど教育を実施している比率が高まり、都道府県では100%の実施となる。人口10万人以上の地方公共団体や都道府県では、「独自の資料等を制作・配布し啓発」や「アクセシビリティの研修を実施」の実施率も高まる。

図表2−13 職員教育

(以下、棒グラフのデータ。データは次のとおり。)

ウェブページ制作の研修の中で
14.7
独自の資料等を制作・配布し啓発
4.9
アクセシビリティの研修を実施
3.7
自主的な学習を支援する仕組み
1.5
専門書を配布し自主的な学習を促す
1.3
eラーニングを提供
0.9
その他
1.7
特に職員教育は実施していない
77.9

(このグラフのデータは以上)

(以下は表。データは、全体(N=1215)、5千人未満(n=150)、1万人未満(n=242)、5万人未満(n=536)、10万人未満(n=116)、10万人以上(n=135)、都道府県(n=36)の順。)

ウェブページ制作の研修の中で
14.7
2.7
2.5
9.1
26.7
47.4
69.4
独自の資料等を制作・配布し啓発
4.9
1.3
0.4
1.7
5.2
21.5
36.1
アクセシビリティの研修を実施
3.7
0.0
0.0
0.6
2.6
16.3
47.2
自主的な学習を支援する仕組み
1.5
0.7
1.7
1.7
1.7
1.5
0.0
専門書を配布し自主的な学習を促す
1.3
1.3
0.8
0.9
0.9
2.2
8.3
eラーニングを提供
0.9
0.0
1.7
0.6
0.0
1.5
5.6
その他
1.7
0.0
1.2
0.9
1.7
6.7
5.6
特に職員教育は実施していない
77.9
94.7
92.1
85.4
67.2
34.1
0.0

(この表のデータは以上)

(8)職員教育の必要性
  職員教育の必要性は認識しているが、「どのようにすべきかわからない」地方公共団体は68.7%であった。必要性を「認識しており、今後実施する予定」は13.0%だが、人口5万人以上の地方公共団体では比率が高まる。

図表2−14 職員教育の必要性の認識度

(以下、帯グラフ。データは、認識しており、今後実施する予定、どのようにすべきかわからない、職員教育の必要性は感じない、その他、不明の順)

全体(n=947)
13.0
68.7
10.3
7.3
0.6
5千人未満(n=142)
10.6
69.7
14.1
4.9
0.7
1万人未満(n=223)
9.9
69.5
13.9
6.3
0.4
5万人未満(n=458)
12.2
70.3
9.2
7.6
0.7
10万人未満(n=78)
23.1
65.4
1.3
9.0
1.3
10万人以上(n=46)
26.1
52.2
8.7
13.0
0.0
都道府県(n=0)
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0

(このグラフのデータは以上)

(9)利用者や外部専門家の意見を取り入れるための仕組み
  仕組みがあるのは全体の2.0%である。「ない。現在検討中である。」は全体の15.2%だが、都道府県では3割となっている。

図表2−15 外部からの意見を取り入れるための仕組み

(以下、帯グラフ。データは、ある、ない。現在検討中である。、ない。検討の予定もない。、不明の順)

全体(N=1215)
2.0
15.2
82.6
0.2
5千人未満(n=150)
1.3
16.0
82.0
0.7
1万人未満(n=242)
1.7
9.5
88.8
0.0
5万人未満(n=536)
0.6
13.6
85.6
0.2
10万人未満(n=116)
4.3
20.7
75.0
0.0
10万人以上(n=135)
5.9
22.2
71.9
0.0
都道府県(n=36)
5.6
30.6
63.9
0.0

(このグラフのデータは以上)

(29ページ)
2−2−4 ホームページの構築、リニューアルにおける対応状況

(1)ウェブページの制作者
  ホームページの構築、リニューアルにおいて「すべて職員が制作した」地方公共団体は全体の25.7%、「一部を業者に発注した」は25.0%、「すべて業者に発注した」は45.7%であった。10万人以上の地方公共団体や都道府県では、一部又はすべて業者に発注した比率が高まる。

図表2−16 ウェブページの制作者

(以下、帯グラフ。データは、すべて職員が制作した、一部を業者に発注した、すべて業者に発注した、その他、不明の順)

全体(N=1215)
25.7
25.0
45.7
2.6
1.1
5千人未満(n=150)
27.3
14.7
55.3
0.0
2.7
1万人未満(n=242)
25.6
21.9
48.8
2.9
0.8
5万人未満(n=536)
26.5
21.6
47.6
3.2
1.1
10万人未満(n=116)
32.8
31.9
31.9
2.6
0.9
10万人以上(n=135)
19.3
42.2
35.6
3.0
0.0
都道府県(n=36)
8.3
52.8
38.9
0.0
0.0

(このグラフのデータは以上)

(2)ホームページ構築・リニューアルにおける業務手順
  業務手順が「明確に定められ、監督者もいた」のは全体の21.4%だが、人口10万人以上の地方公共団体や都道府県では比率が高まる。人口1万人未満では「明確には定められていなかった」が約7割となった。

図表2−17 業務手順の明確化

(以下、帯グラフ。データは、明確に定められ、監督者もいた、明確に定められていたが担当者任せ、明確には定められていなかった、不明の順)

全体(n=616)
21.4
17.9
58.9
1.8
5千人未満(n=63)
14.3
15.9
68.3
1.6
1万人未満(n=115)
11.3
16.5
71.3
0.9
5万人未満(n=258)
19.8
18.6
58.5
3.1
10万人未満(n=75)
18.7
21.3
58.7
1.3
10万人以上(n=83)
38.6
16.9
44.6
0.0
都道府県(n=22)
59.1
13.6
27.3
0.0

(このグラフのデータは以上)

(3)ホームページ構築・リニューアルにおけるアクセシビリティ対応
  アクセシビリティへの配慮は「制作途中で委託先業者と要件を検討」が14.2%で最も多く、次いで「制作途中で職員が試用して評価した」が14.0%であり、「特に何もしなかった」は58.5%である。規模の大きな地方公共団体ほどアクセシビリティに配慮した比率が高まる。都道府県は、ほとんどが何らかの対応を実施しており、最も多い項目は「発注で指針への準拠を要件とした」の61.1%であった。

図表2−18 アクセシビリティ対応

(以下、棒グラフのデータ。データは次のとおり。)

発注で指針への準拠を要件とした
6.7
発注で確保を要件とした
12.4
制作途中で委託先業者と要件を検討
14.2
制作途中で職員が試用して評価した
14.0
制作途中で外部の人が試用して評価
1.3
検収時に音声読み上げソフトを使用
4.9
検収時に職員がチェックツール使用
4.7
検収時に外部の人が評価した
0.8
その他
5.8
特に何もしなかった
58.5

(このグラフのデータは以上)

(以下は表。データは、全体(N=1215)、5千人未満(n=150)、1万人未満(n=242)、5万人未満(n=536)、10万人未満(n=116)、10万人以上(n=135)、都道府県(n=36)の順。)

発注で指針への準拠を要件とした
6.7
0.0
1.2
2.4
9.5
24.4
61.1
発注で確保を要件とした
12.4
4.7
6.2
13.1
18.1
23.7
16.7
制作途中で委託先業者と要件を検討
14.2
7.3
7.0
14.7
10.3
25.2
55.6
制作途中で職員が試用して評価した
14.0
7.3
8.7
11.2
17.2
34.1
33.3
制作途中で外部の人が試用して評価
1.3
0.7
0.0
0.6
2.6
5.2
5.6
検収時に音声読み上げソフトを使用
4.9
1.3
1.7
2.6
3.4
19.3
25.0
検収時に職員がチェックツール使用
4.7
3.3
2.9
3.0
3.4
15.6
11.1
検収時に外部の人が評価した
0.8
0.7
0.4
0.2
1.7
3.0
2.8
その他
5.8
4.0
4.1
5.0
10.3
8.9
8.3
特に何もしなかった
58.5
78.7
74.4
61.6
46.6
20.7
2.8

(表のデータは以上)

(32ページ)
2−2−5 日常的なホームページ更新における対応状況

(1)更新体制
  「特定の担当部署がすべて作成・更新」している地方公共団体が29.2%と最も多く、規模の小さな地方公共団体ほど、その傾向が強い。都道府県は「各部署がそれぞれ作成・更新」が61.1%である。

図表2−19 更新体制

(以下、帯グラフ。データは、特定の担当部署がすべて作成・更新、各部署がそれぞれ作成・更新、各部署が作成し担当部署が最終確認、原稿は各部署、HTML化は担当部署、その他、不明の順)

全体(N=1215)
29.2
22.3
18.7
21.5
8.1
0.2
5千人未満(n=150)
48.0
12.0
8.7
20.0
10.7
0.7
1万人未満(n=242)
38.0
15.3
11.6
26.4
8.7
0.0
5万人未満(n=536)
31.0
21.8
16.8
24.3
6.0
0.2
10万人未満(n=116)
12.9
31.9
30.2
16.4
8.6
0.0
10万人以上(n=135)
6.7
29.6
38.5
12.6
12.6
0.0
都道府県(n=36)
2.8
61.1
25.0
2.8
8.3
0.0

(このグラフのデータは以上)

(2)日常のホームページ更新におけるウェブページ制作者
  「すべて職員が制作している」地方公共団体が67.7%と最も多い。人口10万人以上では「一部を業者に発注している」比率が高まり、都道府県では75.0%となっている。

図表2−20 更新における制作者

(以下、帯グラフ。データは、すべて職員が制作している、一部を業者に発注している、すべて業者に発注している、その他、不明)

全体(N=1215)
67.7
21.1
8.3
2.7
0.2
5千人未満(n=150)
62.0
16.7
17.3
3.3
0.7
1万人未満(n=242)
74.0
14.5
9.9
1.7
0.0
5万人未満(n=536)
70.3
19.2
8.0
2.2
0.2
10万人未満(n=116)
76.7
18.1
2.6
2.6
0.0
10万人以上(n=135)
57.8
33.3
3.0
5.2
0.7
都道府県(n=36)
16.7
75.0
2.8
5.6
0.0

(このグラフのデータは以上)

(3)ホームページの自動生成システム(CMS等)の導入
  ホームページの自動生成システムを全庁又は一部で導入している地方公共団体の割合は全体の約3分の1だが、都道府県では3分の2となる。人口5万人以上10万人未満の地方公共団体では「全庁で導入している」割合が37.3%と高い。

図表2−21 CMSの導入
(以下、帯グラフ。データは、全庁で導入している、一部で導入している、導入していない、不明の順)

全体(n=1078)
21.7
11.0
66.9
0.4
5千人未満(n=118)
13.6
10.2
76.3
0.0
1万人未満(n=214)
16.4
8.9
73.4
1.4
5万人未満(n=480)
21.3
9.6
69.0
0.2
10万人未満(n=110)
37.3
10.0
52.7
0.0
10万人以上(n=123)
25.2
15.4
59.3
0.0
都道府県(n=33)
27.3
36.4
36.4
0.0

(このグラフのデータは以上)

(4)更新における業務手順
  更新の業務手順が「明確に定められ、監督者もいる」地方公共団体は25.6%、規模が大きな地方公共団体ほど「明確に定められ、監督者もいる」比率が高まり、人口10万人以上では57.0%となっている。

図表2−22 更新の業務手順の明確化

(以下、帯グラフ。データは、明確に定められ、監督者もいる、明確に定められているが担当者任せ、明確には定められていない、不明の順)

全体(N=1215)
25.6
22.2
52.0
0.2
5千人未満(n=150)
10.7
14.0
75.3
0.0
1万人未満(n=242)
12.0
22.3
65.7
0.0
5万人未満(n=536)
23.9
22.6
53.2
0.4
10万人未満(n=116)
40.5
24.1
35.3
0.0
10万人以上(n=135)
57.0
23.7
19.3
0.0
都道府県(n=36)
38.9
38.9
22.2
0.0

(このグラフのデータは以上)

(5)日常のホームページ更新におけるアクセシビリティ対応
  「指針は挙げないが、要件とする」が最も多く16.4%、次いで「具体的な指針への準拠を要件とする」の11.4%であった。一方「特に何もしていない」は65.8%であった。規模が大きな地方公共団体ほど何らかの配慮をする比率が高まる。人口10万人以上の地方公共団体や都道府県では「具体的な指針への準拠を要件とする」、1万人以上10万人未満では「指針は挙げないが、要件とする」地方公共団体が多い。また、都道府県では「公開前にチェックツールを使用」も約20%にのぼった。

図表2−23 更新におけるアクセシビリティ対応

(以下、棒グラフ。データは次のとおり。)

具体的な指針への準拠を要件とする
11.4
指針は挙げないが、要件とする
16.4
公開前に画面読み上げソフトを使用
2.3
公開前にチェックツールを使用
4.3
公開前に外部の人が点検する
0.2
その他
5.1
特に何もしていない
65.8

(このグラフのデータは以上)

(以下は表。データは、全体(N=1215)、5千人未満(n=150)、1万人未満(n=242)、5万人未満(n=536)、10万人未満(n=116)、10万人以上(n=135)、都道府県(n=36)の順)

具体的な指針への準拠を要件とする
11.4
1.3
1.7
3.9
22.4
42.2
77.8
指針は挙げないが、要件とする
16.4
7.3
8.3
17.5
25.9
28.9
13.9
公開前に画面読み上げソフトを使用
2.3
0.7
0.8
0.7
4.3
10.4
5.6
公開前にチェックツールを使用
4.3
2.7
3.3
3.9
2.6
6.7
19.4
公開前に外部の人が点検する
0.2
0.7
0.4
0.0
0.0
0.0
0.0
その他
5.1
1.3
1.2
5.0
7.8
13.3
8.3
特に何もしていない
65.8
88.0
86.4
71.3
41.4
20.0
2.8

(表のデータは以上)

(6)利用者の意見を収集する窓口
  窓口を「用意している」、「用意していない」地方公共団体が半々となった。規模が大きな地方公共団体ほど窓口を「用意している」比率が高まり、人口10万人以上の地方公共団体や都道府県では約8割が「用意している」と回答した。

図表2−24 利用者の意見の収集窓口

(以下、帯グラフ。データは、用意している、用意していない、不明の順)

全体(N=1215)
50.5
49.4
0.1
5千人未満(n=150)
34.7
65.3
0.0
1万人未満(n=242)
37.2
62.8
0.0
5万人未満(n=536)
51.7
48.1
0.2
10万人未満(n=116)
52.6
47.4
0.0
10万人以上(n=135)
77.0
23.0
0.0
都道府県(n=36)
83.3
16.7
0.0

(このグラフのデータは以上)

(38ページ)
2−2−6 ウェブシステムの導入におけるアクセシビリティ

(1)ウェブシステムの導入実績
  電子申請等のウェブシステムの導入実績が「ある」のは全体の24.3%であり、規模の大きな地方公共団体ほど、導入実績がある。

図表2−25 ウェブシステムの導入実績

(以下、帯グラフ。データは、ある、ない、不明の順)

全体(N=1215)
24.3
75.6
0.1
5千人未満(n=150)
9.3
90.7
0.0
1万人未満(n=242)
15.3
84.7
0.0
5万人未満(n=536)
19.4
80.6
0.0
10万人未満(n=116)
37.1
62.9
0.0
10万人以上(n=135)
53.3
46.7
0.0
都道府県(n=36)
69.4
27.8
2.8

(このグラフのデータは以上)

(2)アクセシビリティの対応状況
  ウェブシステム導入時にアクセシビリティに「十分に対応した」のは全体の5.4%であり、「対応はしなかった」が40.3%であった。人口10万人以上の地方公共団体や都道府県では「対応はしたが、まだ不十分」と認識している地方公共団体が最も多い。

図表2−26 アクセシビリティの対応状況

(以下、帯グラフ。データは、十分に対応した、対応はしたが、まだ不十分、十分かどうか判断できない、対応はしなかった、不明の順)

全体(n=295)
5.4
23.7
25.8
40.3
4.7
5千人未満(n=14)
0.0
21.4
28.6
35.7
14.3
1万人未満(n=37)
0.0
13.5
27.0
59.5
0.0
5万人未満(n=104)
1.0
19.2
22.1
53.8
3.8
10万人未満(n=43)
7.0
11.6
39.5
30.2
11.6
10万人以上(n=72)
9.7
34.7
25.0
29.2
1.4
都道府県(n=25)
20.0
48.0
16.0
8.0
8.0

(このグラフのデータは以上)

(3)ウェブシステム導入におけるアクセシビリティ対応
  ウェブシステムのアクセシビリティ対応は「発注で確保を要件とした」が最も多く18.6%、次いで「制作途中で委託先業者と要件を検討」が16.3%である。「特に何もしなかった」は44.7%となった。人口1万人以上10万人未満の地方公共団体は「発注で確保を要件とした」、人口10万人以上と都道府県は「制作途中で委託先業者と要件を検討」の比率が高まる。

図表2−27 ウェブシステム導入におけるアクセシビリティ対応

(以下、棒グラフ。データは次のとおり。)

発注で指針への準拠を要件とした
6.4
発注で確保を要件とした
18.6
制作途中で委託先業者と要件を検討
16.3
制作途中で職員が試用して評価した
13.2
制作途中で外部の人が試用して評価
1.4
検収時に音声読み上げソフトを使用
3.1
検収時に職員がチェックツール使用
1.0
検収時に外部の人が評価した
0.7
その他
12.2
特に何もしなかった
44.7

(このグラフのデータは以上)

(以下は表。データは、全体(n=295)、5千人未満(n=14)、1万人未満(n=37)、5万人未満(n=104)、10万人未満(n=43)、10万人以上(n=72)、都道府県(n=25)の順)

発注で指針への準拠を要件とした
6.4
0.0
0.0
0.0
0.0
15.3
32.0
発注で確保を要件とした
18.6
14.3
13.5
21.2
16.3
15.3
32.0
制作途中で委託先業者と要件を検討
16.3
14.3
5.4
11.5
9.3
20.8
52.0
制作途中で職員が試用して評価した
13.2
14.3
2.7
9.6
9.3
19.4
32.0
制作途中で外部の人が試用して評価
1.4
0.0
0.0
0.0
0.0
2.8
8.0
検収時に音声読み上げソフトを使用
3.1
0.0
5.4
1.0
0.0
6.9
4.0
検収時に職員がチェックツール使用
1.0
0.0
0.0
1.0
0.0
1.4
4.0
検収時に外部の人が評価した
0.7
0.0
2.7
0.0
2.3
0.0
0.0
その他
12.2
21.4
5.4
8.7
18.6
12.5
20.0
特に何もしなかった
44.7
42.9
70.3
56.7
39.5
30.6
8.0

(表のデータは以上)

(41ページ)
2−2−7 アクセシビリティ向上の課題等

(1)アクセシビリティ向上の取組を進める上での問題
  地方公共団体規模に関わらず、「担当職員の理解や知識が十分でない」ことを問題に挙げた地方公共団体が最も多く、全体の65.8%となった。また、小規模な地方公共団体は「優先度が低く予算等が配分されない」や「所管部署が明確でない」、大規模な地方公共団体は「異動によりノウハウが引き継がれない」も問題となっている。

図表2−28 取組を進める上での問題

(以下、棒グラフ。データは次のとおり。)

担当職員の理解や知識が十分でない
65.8
優先度が低く予算等が配分されない
49.7
異動によりノウハウが引き継がれない
33.0
効果的な支援ツール等がない
32.2
所管部署が明確でない
26.2
制作途中や完成時の評価が難しい
25.8
更新による低下を防ぐのが難しい
14.8
発注時の要件の定め方がわからない
13.9
利用者の要望等を得る仕組みがない
10.9
能力を持った業者が育っていない
8.4
所管部署に強い権限がない
7.7
その他
6.9

(このグラフのデータは以上)

(以下は表。データは、全体(N=1215)、5千人未満(n=150)、1万人未満(n=242)、5万人未満(n=536)、10万人未満(n=116)、10万人以上(n=135)、都道府県(n=36)の順)

担当職員の理解や知識が十分でない
65.8
61.3
65.7
65.1
63.8
71.9
80.6
優先度が低く予算等が配分されない
49.7
56.7
53.3
51.9
48.3
33.3
30.6
異動によりノウハウが引き継がれない
33.0
32.0
31.0
29.1
27.6
51.1
58.3
効果的な支援ツール等がない
32.2
26.0
31.0
33.4
34.5
31.1
44.4
所管部署が明確でない
26.2
35.3
33.1
26.1
19.8
14.1
8.3
制作途中や完成時の評価が難しい
25.8
15.3
19.8
24.8
37.9
39.3
33.3
更新による低下を防ぐのが難しい
14.8
4.7
9.9
14.4
23.3
27.4
22.2
発注時の要件の定め方がわからない
13.9
17.3
16.9
14.6
12.9
6.7
0.0
利用者の要望等を得る仕組みがない
10.9
16.0
12.0
10.1
10.3
8.9
5.6
能力を持った業者が育っていない
8.4
14.7
8.3
7.6
6.0
7.4
5.6
所管部署に強い権限がない
7.7
3.3
3.7
6.7
9.5
16.3
30.6
その他
6.9
7.3
6.2
6.2
6.9
7.4
19.4

(表のデータは以上)

(2)国等に期待する支援
  「チェックツールや作成支援ツールの紹介」が最も多く54.2%、次いで「デザインテンプレートの整備」の48.0%であった。規模の大きな地方公共団体では「定期評価を実施するための評価手法の整備」や「情報提供サイト等」への期待も大きい。

図表2−29 国等に期待する支援

(以下、棒グラフ。データは次のとおり。)

チェックツールや作成支援ツールの紹介
54.2
デザインテンプレートの整備
48.0
職員向けの標準集合研修プログラム
37.8
職員向けのeラーニングプログラム
37.5
情報提供サイト等
25.5
定期評価を実施するための評価手法の整備
21.9
職員のスキル評価・認定
12.8
外注業者等のスキル評価・認定
10.7
その他
5.8

(このグラフのデータは以上)

(以下は表。データは、全体(N=1215)、5千人未満(n=150)、1万人未満(n=242)、5万人未満(n=536)、10万人未満(n=116)、10万人以上(n=135)、都道府県(n=36)の順)

チェックツールや作成支援ツールの紹介
54.2
51.3
55.4
58.6
46.6
45.2
52.8
デザインテンプレートの整備
48.0
52.0
49.6
49.6
43.1
40.0
41.7
職員向けの標準集合研修プログラム
37.8
44.7
39.3
37.1
32.8
34.8
36.1
職員向けのeラーニングプログラム
37.5
45.3
35.1
35.6
46.6
35.6
27.8
情報提供サイト等
25.5
25.3
24.0
24.1
27.6
26.7
47.2
定期評価を実施するための評価手法の整備
21.9
16.0
16.5
19.2
28.4
38.5
38.9
職員のスキル評価・認定
12.8
12.0
15.7
13.2
11.2
11.1
2.8
外注業者等のスキル評価・認定
10.7
3.3
11.6
9.7
17.2
17.0
5.6
その他
5.8
4.7
3.7
6.2
6.9
5.9
13.9

(表のデータは以上)

(43ページ)
2−3 調査結果の考察

2−3−1 地方公共団体の人口別の傾向

 
  人口規模別のクロス集計結果から、下記の傾向を見出すことができる。

(1)規模の大きい地方公共団体ほど、以下の事項に当てはまるようになる。
  *ウェブアクセシビリティ、JIS X 8341-3の内容を知っている。
  *アクセシビリティが確保されたウェブページ作成のために独自の指針等を定めている。
  *ウェブアクセシビリティの主管部署が定まっている。
  *職員教育を実施している。
  *ホームページ構築、更新時の業務手順が定められ、監督者もいる。
  *更新時は各部署でウェブページを作成する。
  *更新時に具体的な指針への準拠を要件とするなどアクセシビリティに対応している。
  *利用者の意見を収集する窓口がある。
  *ウェブシステムの導入実績がある。

(2)人口10万人以上の市や都道府県では、以下の項目の比率が高い。
  *ホームページにアクセシビリティに関する基本方針を掲載している。
  *ウェブアクセシビリティの研修を実施、独自の資料等を制作・配布し啓発を実施している。
  *ホームページ制作の一部又はすべてを業者に発注している。
  *発注時に指針への準拠を要件とする。
  *制作途中や研修時に職員が評価等を行い、アクセシビリティに配慮している。
  *異動によりノウハウが引き継がれない。

(3)人口5万人未満の小規模地方公共団体では、以下の項目の比率が高い。
  *ウェブアクセシビリティ、JIS X 8341-3の内容を知らない。
  *ウェブアクセシビリティの必要性はほとんど認識されていない。
  *アクセシビリティが確保されたウェブページ作成のための指針はない。
  *ウェブアクセシビリティを担当する部署は決まっていない。
  *職員教育は実施していない。
  *ホームページ構築、更新時の業務手順が明確に定められていない。
  *アクセシビリティ配慮は特に何もしていない。
  *日常的な更新は特定の担当部署がすべて制作・更新している。
  *利用者の意見を収集する窓口は用意していない。
  *優先度が低く予算等が配分されない。

 以上のように、地方公共団体の人口規模によってアクセシビリティ確保の取組状況やホームページの企画・運用体制、課題等が異なり、小規模地方公共団体では取組が遅れている現状が明らかとなった。

(44ページ)
2−3−2 ウェブアクセシビリティ確保における課題

 アンケートの結果から、ウェブアクセシビリティ確保に「既に十分に取り組んでいる」と認識している先進的な地方公共団体が、企画、制作、運用の過程において、どの程度ウェブアクセシビリティ維持・向上の取組ができているかを検証した。

図表2−30 先進的な地方公共団体の動向

(以下は帯グラフ。データは次のとおり。)

アクセシビリティ主管部署
  決まっている(93.5%)
  決まっていない(6.5%)
ウェブサイト構築・リニューアルの手順・監督
  手順も監督者も決まっている(57.1%)
  手順のみ(19.0%)
  決まっていない(23.8%)
ウェブサイト更新の手順・監督
  手順も監督者も決まっている(58.1%)
  手順のみ(22.6%)
  決まっていない(19.4%)
利用者の意見収集窓口
  ある(77.4%)
  ない(22.6%)
基本方針の掲載
  している(51.6%)
  していない(48.4%)
目標と実施計画の設定
  設定している(19.4%)
  目標のみ設定(22.6%)
  目標も設定していない(58.1%)
意見を取り入れる仕組み
  ある(16.1%)
  検討中(25.8%)
  検討もしていない(58.1%)

(このグラフのデータは以上)

 先進的な地方公共団体においては、下記の項目の実現が進んでいる。

 *主管部署が定められている
  *ホームページ構築・リニューアルの業務手順が明確に定められ、監督者もいる
  *ホームページ更新の業務手順が明確に定められ、監督者もいる
  *ホームページ上に利用者の意見を収集する窓口を用意している

 一方、先進的な地方公共団体においても、以下の項目は実現できていない。

 *ホームページへ基本方針を掲載している
  *目標を設定し実施計画を策定する
  *利用者や外部専門家の意見を取り入れる仕組みがある(注14)
 
現状では、先進的な地方公共団体であっても、ウェブアクセシビリティ対応の基本方針や目標設定、外部との連携の仕組み等が実現できていないところが多い。この結果は、多くの地方公共団体で、ウェブアクセシビリティの確保が継続的な改善プロセスではなく、ホームページ・リニューアル時に取り組む一過性のものとして認識されている可能性を示すものと考えられる。

(脚注)
14.例えば、「庁内に利用者・専門家等を委員とする委員会を立ち上げている」、「外部NPO等と連携して協議会を立ち上げている」など。

(46ページ)
3.地方公共団体のウェブアクセシビリティに関する事例調査

3−1 調査の目的と実施概要

 本研究会では、地方公共団体の現実の業務の中で実践可能なウェブアクセシビリティ維持・向上のための運用モデルを示すことを目指している。そのためには、策定する運用モデルが、地方公共団体の現実の業務手順と十分な整合性を持つことが不可欠である。そこで、運用モデルの策定にあたって、地方公共団体で実際に行われているホームページやウェブシステムの調達、運用の業務手順と、そこで取り入れられているアクセシビリティ維持・向上のための取組内容を具体的に把握するため、詳細な事例調査をした。

3−1−1 調査内容

 本事例調査では、特に次の2点について、実際の業務事例を詳細にヒアリングし、把握することに努めた。

(1)地方公共団体におけるホームページ等の調達・運用業務の手順
  ホームページ・リニューアル、日常のホームページの運用、地域住民が利用するウェブシステムの調達について、複数の地方公共団体へのヒアリング調査により実際の業務手順を詳細に調査した。

(2)対象地方公共団体で実践されているアクセシビリティ配慮の内容と手順
  (1)の調査と合わせて、各地方公共団体のホームページ等調達・運用業務において、どのような形でアクセシビリティ維持・向上の取組がなされているかをヒアリング等により詳細に調査した。また、アクセシビリティ維持・向上に向けての課題や今後の取組方針についても調査した。

(46ページ)
3−1−2 対象地方公共団体

 本事例調査では、次の4つの地方公共団体に対してヒアリングを行い、ホームページのリニューアル、日常のホームページ更新、ウェブシステムの調達について、詳細な調達業務プロセスを調査した。
  地方公共団体のICT関連部署の位置づけや人員構成は、地方公共団体の規模によって大きく異なる。小規模の地方公共団体では、ICTを所管する専門部署がなく、ICT関連の専門知識を持つ職員がいない場合も多い。そのため、ICT関連の調達業務プロセスは、地方公共団体の規模によって大きく異なることが予想される。そこで、調査対象地方公共団体の選定にあたっては、対象地域の人口規模が異なる4団体を選定した。
  ヒアリング調査対象となった地方公共団体は、以下に示す4団体である。

(1)熊本県
  人口 185万人 (平成17年9月現在)
  「だれもが暮らしやすく豊かなくまもと」を目標にユニバーサルデザインの取組を積極的に進めている。ウェブアクセシビリティにも早い時期から取り組んだ先進県のひとつ。

図表3−1 熊本県のトップページ
http://www.pref.kumamoto.jp/

(2)東京都世田谷区
  人口 81万人 (平成17年11月現在)
  東京23区で最大の人口を抱える大規模地方公共団体。区のホームページも約4000ページと大規模。独自のアクセシビリティ指針を早くから整備するなど、ウェブアクセシビリティの先進地方公共団体のひとつ。

図表3−2 世田谷区のトップページ
http://www.city.setagaya.tokyo.jp/index.shtml

(3)長野県伊那市
  人口 6万5000人 (平成17年3月現在)
  長野県南部の天竜川流域に位置する。米・野菜・花き・畜産等の農業の他、電気・精密機械等の製造業が多く立地する。日系ブラジル人が多く居住するため、ホームページにはポルトガル語のウェブページも用意されている。ホームページは約3,000ページ。平成18年3月31日に、高遠町、長谷村と合併し新伊那市となる。
 

図表3−3 伊那市のトップページ
http://www.city.ina.nagano.jp/

(4)愛知県清洲町
  人口:1万9000人 (平成17年6月現在)
  名古屋市に隣接するベッドタウン。小規模な地方公共団体ながら、各課職員のワーキンググループや、管理職も参加する委員会でリニューアルの方向性を検討した上で実施したウェブアクセシビリティの取組が外部から高い評価を受けている。平成17年7月に西枇杷島町、清洲町、新川町が合併し清須市となった。

図表3−4 清洲町のトップページ
http://www.town.kiyosu.aichi.jp/kiyosu/

(49ページ)
3−1−3 調査実施時期

 各地方公共団体へのヒアリングは、平成16年11月から17年2月にかけて実施した。ここで記述する各地方公共団体の業務プロセスとウェブアクセシビリティ維持・向上の取組状況は、ヒアリング実施当時もしくはそれ以前の時期に関するものである。

(50ページ)
3−2 各地方公共団体におけるウェブアクセシビリティ維持・向上の取組状況

3−2−1 ホームページ・リニューアルにおけるアクセシビリティ配慮

 ヒアリング対象となった各地方公共団体では、最近のホームページ・リニューアル業務プロセスの中で、何らかの方法でウェブアクセシビリティへの配慮を実施している。ただし、アクセシビリティ維持・向上の取組方法やタイミングは、地方公共団体によってかなり異なっていることがわかった。

(1)熊本県における取組状況

1)ガイドラインの整備
  熊本県では、県ホームページのリニューアルに合わせて、平成15年3月に「ユニバーサルデザインに対応した県庁ホームページ作成ガイドライン」を策定し、県庁内でホームページを制作する際のガイドラインとして参照を求めている。この作成ガイドラインでは、アクセシビリティ関連の事項として、文字の大きさ、PDFの扱いや色使い、音声ブラウザの対応等について定めている。

2)熊本県ホームページのリニューアル手順
  熊本県では、平成15年度に県ホームページのリニューアルを行い、平成16年3月に公開した。平成14年度まではホームページは情報企画課が担当していたが、主管部署を広報課に変更したのを機に、リニューアルを実施した。検討作業は広報課が中心となって進め、調達業務も担当した。また、専門的知識が必要とされる技術面でのフォロー等は情報企画課が担当した。
  熊本県では、以前から、お知らせ等の定型のウェブページは原稿入力だけで自動生成する「各課入力システム」を導入しており、このリニューアルでは各課入力システムの機能拡充も実施した。リニューアルにあたっては、各部局からの要望を広報課で取りまとめ、さらに広報課で検討した改善点を加えてリニューアル方針を作成し、一般競争入札方式によって選定された業者が行っているホームページ維持管理業務の一環として、リニューアルを実施した。

図表3−5 熊本県ホームページ・リニューアルの業務プロセス

(以下、業務プロセスの表の説明)

業務プロセスとしては、「企画」、「調達」、「開発・納品」があり、関係部署等としては、「広報課」、「情報企画課」、「各部局/各課(広報広聴主査を通じてなど)」、「外部委託業者」がある。
「企画」では、広報課が発案を行い、各部局/各課の改善要望を踏まえ、広報課が企画を作成する。
「調達」では、広報課において、調達仕様書により調達を行い、外部委託業者が受託する。また、情報企画課では、検証・査定を行う。
「開発・納品」では、広報課において、各部局/各課(広報広聴主査を通じてなど)が確認した設計案により、外部委託業者に開発を実施される。その際、外部委託業者は、作成ガイドラインを参照する。外部委託業者による納品を受け、広報課が検収を行う。

(この業務プロセスの表の説明は以上)

3)各部局、政策の個別ホームページ調達プロセス
  熊本県では、各部局、政策の個別ホームページを立ち上げるケースが多々あり、この場合は2)とは異なるプロセスで業務を行う。
  個別ホームページの場合は、主管の各部局・課が中心となって企画・調達を行うが、必要に応じて、企画段階で広報課と相談・調整した上で外部業者への発注を行う。技術面のフォロー等は情報企画課が担当し、納品は主管部局・課で検収している。

図表3−6 個別ホームページ調達の業務プロセス(熊本県)

(以下、業務プロセス表の説明)

業務プロセスとしては、「企画」、「調達」、「開発・納品」があり、関係部署等としては、「広報課」、「情報企画課」、「各部局/各課(広報広聴主査を通じてなど)」、「外部委託業者」がある。
「企画」では、各部局/各課が広報課に相談し、発案を行う。
「調達」では、各部局/各課において、調達仕様書により調達を行い、外部委託業者が受託する。また、情報企画課では、検証・査定を行う。
「開発・納品」では、外部委託業者が、作成ガイドラインを参照して開発を行う。外部委託業者による納品を受け、各部局/各課が検収を行う。

(この業務プロセスの表の説明は以上)

4)ホームページ・リニューアルにおけるウェブアクセシビリティ維持・向上の取組
  平成16年3月のホームページ・リニューアルは、ユニバーサルデザイン化が狙いのひとつであり、当初からウェブアクセシビリティに対する認識があった。ホームページ上で文字拡大・縮小や配色変更の機能を提供している。
  仕様書では県のホームページ作成ガイドラインに従うことの記述を盛り込んだ。

(2)世田谷区における取組状況

1)ガイドライン、マニュアルの整備
  世田谷区では、平成11年12月に最初のホームページ作成ガイドラインを策定し、この中でウェブアクセシビリティにも言及されており、指針と作成マニュアルが一体となった作りだった。その後平成13年8月にガイドラインを改訂し「ホームページ利用のガイドライン」とした。このガイドラインでは、詳細を別冊のマニュアルで記述する構成とし、これに対応して「ホームページ作成マニュアル」を別途作成した。画面読み上げソフト等への対応や文字サイズへの配慮等が、この作成マニュアルに盛り込まれた。
  平成14年10月の区ホームページ・リニューアルの際には、受注業者に「ホームページ利用のガイドライン」と「ホームページ作成マニュアル」を渡し、これらの基準に合わせてコンテンツを作成するよう指示した。

2)区ホームページのリニューアル手順
  世田谷区では、平成10年に最初の区ホームページを立ち上げ、平成14年10月にリニューアルを実施した。
  このリニューアルにあたっては、広報広聴課を中心に企画立案・業者への提案要求・業者選定・仕様確定を実施した。ただし、業者からの提案を受けた後の業者選定は、まず各課のホームページ担当者会議で候補を絞り込み、さらに広報広聴課、情報政策課、企画課の職員で構成する選定委員会が最終決定をした。
  業者選定後は広報広聴課から発注し、業者との詳細検討、画面デザイン確認、検収等の一連のプロセスを広報広聴課が担当した。

図表3−7 世田谷区ホームページ・リニューアルの業務プロセス

(以下、業務プロセスの表の説明)

業務プロセスとしては、「企画段階」、「提案要求から業者選定まで」、「開発・納品」があり、関係部署等としては、「広報広聴課」、「その他の区関係者」、「外部委託業者」がある。
「企画段階」では、広報広聴課が企画立案を行う。
「提案要求から業者選定まで」では、企画立案に基づき、広報広聴課において、提案仕様書(東京都のガイドラインを含む)により調達を行い、外部委託業者は提案仕様書に基づき、提案書を作成する。外部委託業者から提出された提案書によって、広報広聴課及びその他の区関係者が業者選定(各課の担当者会議で絞込、広報広聴課、情報政策課、企画課の選定委員会の最終決定)を行う。その後、広報広聴課により、ガイドライン・マニュアルを参照した上で発注が行われ、外部委託業者が受注する。
「開発・納品」では、外部委託業者が画面デザイン作成を行い、広報広聴課が画面デザインを確認するとともに、組織名、個人名、地名の読み上げ調整を行った上で、外部委託業者が画面デザインを完成させる。外部委託業者による納品を受け、広報広聴課が検収を行う。

(この業務プロセスの表の説明は以上)

3)リニューアル時のアクセシビリティ維持・向上の取組
  区ホームページ・リニューアルに際しては、まずウェブアクセシビリティ点検ソフトやコンサルティング業者を活用して、リニューアル前のホームページの問題点の把握を実施した。また、業者への提案仕様書に東京都公式ホームページガイドラインを添付し、さらに制作の過程では画面読み上げソフト等を意識して、人名や地名の読み上げを確認し、必要箇所にはルビを振るなどの対応をした。

(3)伊那市における取組状況

1)ホームページのリニューアル業務手順
  伊那市では、平成12年度にホームページのリニューアル検討を開始し、平成13年2月にリニューアルしたホームページを公開した。リニューアルの企画・立案は企画課広報広聴係が担当したが、技術面については企画課情報統計係がサポートし、その後の業務プロセスは情報統計係が中心となって進めた。
  検討はまず、庁内各課の代表(課長補佐)で構成するホームページ充実事業検討委員会で内容の見直しに関する情報収集を行い、その結果を踏まえて情報統計係が基本計画をとりまとめた。さらに、情報統計係で仕様書(「伊那市ホームページ充実事業に係る企画提案実施要領」)を作成し、提案コンペを実施した。業者選定後、受注業者を交えてさらに詳細な仕様検討、ホームページ構成検討を実施した。制作開始後の進捗管理、納品時の検収も情報統計係が担当した。

図表3−8 伊那市ホームページ・リニューアルの業務プロセス

(以下、業務プロセス表の説明)

業務プロセスとしては、「企画段階」、「提案要求から業者選定まで」、「開発・納品」があり、関係部署等としては、「企画課広報広聴係」、「企画課情報統計係」、「外部委託業者」、「庁内の広報委員会」がある。
「企画段階」では、企画課広報広聴係が企画立案を行い、庁内の広報委員会の意見を踏まえ、企画課情報統計係が基本計画を作成する。
「提案要求から業者選定まで」では、基本計画に基づき、企画課情報統計係において、提案実施要領・仕様書により、提案要求を行う。外部委託業者は提案実施要領・仕様書に基づき、提案書を作成。外部委託業者から提出された提案書によって、企画課情報統計係が業者選定し、発注を行い、外部委託業者が受注する。
「開発・納品」では、企画課情報統計係及び外部委託業者がサイト構成を検討し、外部委託業者が制作を行い、企画課情報統計係では進捗確認を行う。外部委託業者による納品を受け、企画課情報統計係が検収を行う。

(この業務プロセスの表の説明は以上)

2)ホームページ・リニューアル時のアクセシビリティ維持・向上の取組
  伊那市では、独自のアクセシビリティガイドラインは策定していない。
  ホームページ・リニューアルの際には、提案実施要領の中で「ウェブアクセシビリティの確保の必要性」に言及し、視覚障害者への配慮や文字を大きくすることなどを盛り込んだ。ただし、ウェブアクセシビリティの確保については、通常のホームページの他にテキストベースの「バリアフリーのホームページ」を設けるという対応をとった。

(4)清洲町における取組状況

1)ホームページのリニューアル業務手順
  清洲町では、平成9年から観光情報を中心としたホームページを業者委託で制作・公開していたが、平成15年4月に新ホームページへの移行を行うとともに、庁内各課の職員が直接ウェブコンテンツを制作する運用方式に切り替えた。ホームページ・リニューアルの検討は、次のプロセスで進められた。
  まず、全面リニューアルのきっかけとなったのは、行政情報が乏しいという旧ホームページに対する住民からの苦情であった。清洲町では助役を筆頭に各局部長が参加する情報化推進委員会で、ホームページに対する苦情の分析と住民の情報ニーズの検討を実施した。その結果、タイムリーな情報提供と積極的な情報公開を実現するために、各課が直接記事を作成し公開する体制が必要と判断され、各部署の職員で構成するワーキンググループを設けて、新ホームページの構成、運用方式を検討することになった。
  ワーキンググループは、各課から選出された10名程度の職員で構成され、ホームページ作成ソフトの購入と職員研修、ホームページ作成要領の整備、トップページデザインの検討等を行い、検討開始から6ヶ月間で新ホームページの構築までを実施した。検討過程では技術面のアドバイス等を外部コンサルタントに委託したが、ウェブページの制作はワーキンググループのメンバーが実施した。

図表3−9 清洲町ホームページ・リニューアルの業務プロセス

(以下、業務プロセスの表の説明)

業務プロセスとしては、「方針検討」、「WGによるホームページ制作」、「公開」があり、関係部署等としては、「情報化推進委員会(助役+各局部長)」、「総務部企画課」、「各課」、「その他」がある。
「方針検討」では、情報化推進委員会、総務部企画課が情報提供のあり方・制作体制等検討を行い、総務部企画課が予算の確保を行う。その後、総務部企画課及び各課から選出されたメンバーでWGを設置。
「WGによるホームページ制作」では、WGを開催する。WGでは、制作業者からのアドバイスを受け、ホームページの内容・構成・デザイン等を検討する。また、講師のアドバイスを受け、ホームページビルダー研修(基礎・応用)を行う。これを受け、WGメンバーのうち、総務部企画課メンバーがトップページ等を制作、各課メンバーが各ページを制作する。その際、ホームページ作成要領を参照する。その後、WG全体で調整を行う。
「公開」では、総務部企画課でテスト公開を行い、制作業者・議会からのアドバイスを受け、修正を行い、一般公開する。
なお、WG開始から公開までは半年かかった。

(この業務プロセスの表の説明は以上)

2)ホームページ・リニューアル時のアクセシビリティ維持・向上の取組
  清洲町では、独自のアクセシビリティガイドラインは策定していなかったが、地域の高齢者がIT講習会等でホームページ作成の知識を得、清洲町のホームページへの意見や苦情が届くようになり、リニューアルの際には高齢者・障害者への配慮が強く意識された。
  前述のように、清洲町のホームページ・リニューアルは、各部署の担当職員が集まったワーキンググループで仕様検討からコンテンツ制作までを実施した。ウェブアクセシビリティに関してはこのワーキンググループに外部制作業者を招いてレクチャーを受け、修正した。また、作成に際しては「ホームページ作成要領」により背景色の統一や色覚障害者に配慮した色の組み合わせについて最低限のルールを決めた。また、新ホームページは正式公開前にテスト期間を設けて仮公開し、外部からの意見を収集した。ここでも画像の代替テキストの入れ方等について意見があり、修正した。

(57ページ)
3−2−2 日常のホームページ更新でのアクセシビリティ維持・向上の取組

 ヒアリング対象地方公共団体では、日常のホームページ追加・更新業務においても、何らかの方法でアクセシビリティの維持・向上や確認が行われている。ただし、その手順や準拠する基準は地方公共団体によって異なっている。

(1)熊本県における取組状況

1)熊本県のホームページ更新業務手順
  熊本県では、県ホームページのうち、イベント情報やお知らせ等の定型のページについては前述の「各課入力システム」により、情報発信者である各課担当者が直接入力・更新を行う仕組みを採用している。この場合は、各課で入力された情報は「各課入力システム」で自動的にHTML化され、公開される。
  一方、上記以外の情報更新やウェブページの新規作成等については、情報を発信する各課で原稿を作成した後、広報課にウェブページ作成・更新依頼を提出し、広報課に常駐する受注業者のスタッフが制作・公開を行う流れとなる。
  このように、熊本県はホームページの主管部署である広報課が一括担当する部分と、情報発信者である各部局が個別に担当する部分が混在する業務構造となっている。


図表3−10 日常のホームページ更新・運用業務プロセス(熊本県)

(以下、業務プロセスの表の説明)

業務プロセスとしては、「原稿作成」、「HTML作成」、「公開」があり、関係部署等としては、「広報課」、「委託業者(広報課常駐)」、「各部局/各課(情報発信者)」、「各課入力システム」がある。業務の流れとしては、HTML作成を各課で行う場合と、委託業者で行う場合がある。
HTML作成を各課で行う場合は、以下のとおり。
「原稿作成」では、各部局/各課が原稿作成し、各課入力システムに入力する。
「HTML作成」では、各課入力システムにより、HTMLが自動生成される。
「公開」では、各課入力システムにより自動公開となる。公開に当たっての確認は、各部局/各課及び広報課が行う。
また、HTML作成を委託業者で行う場合は、以下のとおり。
「原稿作成」では、各部局/各課が原稿作成し、広報課に作成依頼を行う。
「HTML作成」では、作成依頼に基づき、委託業者が、作成ガイドラインを参照し、HTMLを作成する。
「公開」では、各部局/各課及び広報課の確認後、公開される。

(この業務プロセスの表の説明は以上)

2)日常の更新作業におけるアクセシビリティ維持・向上の取組
  熊本県では、平成15年3月に策定した「ユニバーサルデザインに対応した検討ホームページ作成ガイドライン」を、庁内でのホームページ制作の指針としている。

(2)世田谷区における取組状況

1)世田谷区におけるホームページ更新業務手順
  世田谷区には約100の課があり、そのうち50課程度がホームページを公開している。ホームページ全体の規模が大きく、更新量も大きくなるため、世田谷区では各課がそれぞれ独自ホームページを持ち、運用管理も各課で行う方針をとっている。外部業者に制作を委託する場合も原則として各課で業者選定を行う。ただし、区のウェブサーバー上にある各ウェブページの更新システムにより、各課で作成したHTMLファイル等をイントラネット上の内部ウェブサーバーにアップロードすると、深夜に公開用サーバーへ転送され自動公開される共通の仕組みを導入している。
  区全体のホームページ主管部署は広報広聴課で、各課ホームページ担当者会議を年2回開催し、ホームページ作成ソフトの研修や区が作成したホームページ作成マニュアルの解説、ネット上のモラルの解説等を実施している。
  各課のホームページ更新・運用の手順は、課によって異なるが、例として平成16年に新設された「子ども部」のホームページ運用手順は次のようになっている。
  子ども部では「せたがや子育て応援ガイドWEB」という個別のホームページを開設している。このホームページで日常的に更新が発生するのはお知らせ情報であり、ホームページ作成の元になる情報は広報広聴課が発行する「広報せたがや」の記事である。広報広聴課から「広報せたがや」のデジタルデータを提供してもらい、子育て関連記事をピックアップして外部受注業者に渡し、HTML化を行う。HTML化したファイルを子ども家庭支援課の職員が読み合わせして内容を確認後、イントラネットのウェブサーバーへファイルをアップロードする。

図表3−11 各課ホームページの更新業務プロセス例(世田谷区)

(以下、業務プロセスの表の説明)

業務プロセスとしては、「原稿準備」、「HTML作成」、「公開」があり、関係部署等としては、「広報広聴課」、「子ども家庭支援課」、「外部委託業者」がある。
「原稿準備」では、広報広報課による広報紙の記事から、子ども家庭支援課が記事をピックアップし、外部委託業者にHTML作成を依頼する。
「HTML作成」では、外部委託業者によるHTML作成後、子ども家庭支援課が読み合わせを行う。
「公開」では、子ども家庭支援課が、HTMLをイントラへ転送、メール交換機、インターネット公開の手順を行う。
なお、原稿準備から公開までは4営業日。

(この業務プロセスの説明は以上)

2)日常の更新業務におけるアクセシビリティ維持・向上の取組
  世田谷区では、ホームページ作成マニュアルの中でアクセシビリティの維持・向上の方法や基準について記述し、年2回の担当者会議で広報広聴課が作成マニュアルを解説し、担当職員への周知を図っている。
  実際のホームページ追加・更新は各部署がそれぞれ担当しており、職員がホームページ作成を行う部署、業者に外注する部署と様々である。業者に外注する場合には、「ホームページ利用のガイドライン」を業者に渡して、準拠するよう仕様書に明記している。
  また、業者委託ではなく区職員が自ら作成したホームページについては、広報広聴課の職員が作成マニュアルを参照してチェックしている。

(3)伊那市における取組状況

1)伊那市におけるホームページ更新業務手順
  伊那市の日常のホームページ運用は、実質的には1名のホームページ担当者がほぼすべての業務を担当している。こうした体制は、中小規模の地方公共団体ではしばしば見られるものである。
  情報発信を行う各課から原稿が情報統計係の担当者に送られ、この担当者がホー ムページ作成ソフトを使ってHTML化している。ただし、定期的に発生する広報誌の記事掲載については、外部の制作業者へHTML化を委託している。
  HTML化の完了後、制作したホームページのプリントが稟議に付され、内容チェックが行われた後、ホームページ担当者が公開作業を行う。

図表3−12 日常のホームページ更新・運用業務プロセス(伊那市)

(以下、業務プロセス表の説明)

業務プロセスとしては、「原稿準備」、「HTML作成」、「公開まで」があり、関係部署等としては、「各担当課」、「企画課情報統計係」、「外部委託業者」がある。
「原稿準備」では、企画課情報統計係による市報いな資料により、外部委託業者へHTML作成を依頼。また。各担当課においては、原稿作成・リンク切れなどの修正依頼を企画課情報統計係に行う。
「HTML作成」では、企画課情報統計係の依頼により、外部委託業者がHTML作成する。また、各担当課からの依頼により、企画情報統計係がHTML作成を行う。
「公開まで」では、外部委託業者が作成したHTML、企画課情報統計係が作成したHTMLについて、企画課情報統計係が稟議し、公開する。

(この業務プロセスの表の説明は以上)

2)日常の更新業務におけるアクセシビリティ維持・向上の取組
  伊那市では、独自のウェブアクセシビリティガイドラインは策定していないが、日常のホームページ追加・更新の際にはホームページ担当者が公開前のコンテンツをウェブヘルパーで点検している。ただし、この点検は新規の追加・更新のみを対象としており、トップページをはじめとする既存コンテンツは対象としていない。
  また、市の広報誌記事については定期的に業者委託でHTML化が行われているが、この発注にあたってはアクセシビリティに関する要求は特にしていない。

(4)清洲町における取組状況

1)清洲町におけるホームページ更新業務手順
  清洲町では、新ホームページへの移行後、情報発信者である各部署の担当者が公開するホームページを作成する方式での運用を徹底している。具体的な業務プロセスは以下のとおりである。
  各課のホームページ担当者は、自らホームページ作成ソフトを使ってホームページで提供する記事のHTMLファイルを作成する。作成したHTMLファイルは各課で印刷し、課内での決裁をとって、その決裁プリントと電子ファイルを企画課のホームページ担当者に提出する。企画課のホームページ担当者は電子ファイルの内容を評価し、問題なければホームページに公開する。問題箇所があれば、各担当課の担当者へ修正依頼を行う。

図表3−13 日常のホームページ追加・更新業務プロセス(清洲町)

(以下、業務プロセス表の説明)

業務プロセスとしては、「HTML作成」、「公開まで」、「公開後」があり、関係部署等としては、「各課」、「総務部企画課」がある。
「HTML作成」では、各課においてHTML作成を行う。
「公開まで」では、各課において、HTMLをプリントアウトしたもので簡易決裁を行い、決裁後、プリントアウトしたものと電子ファイルを総務部企画課に提出。総務部企画課においてアクセシビリティ評価を行い、問題がなければ公開する。問題があった場合は、各課でHTMLを修正し、再度総務部企画課のアクセシビリティ評価を行い、問題がなければ公開する。
「公開後」では、総務部企画課において、公開業務終了後、プリントアウトしたものを保存し、電子ファイルを各課へ返却する。その際、各課では総務部企画課サイン入りのHTMLをプリントアウトし、保管する。
また、総務部企画課では適宜リンク切れ点検を行う。

(この業務プロセスの説明は以上)

2)日常の更新業務におけるアクセシビリティ維持・向上の取組
  清洲町では、ホームページ・リニューアルの際に独自の「ホームページ作成要領」を策定し、画像の代替テキスト設定の徹底等をルール化した。日常のホームページ追加・更新は、各課でHTMLを作成し、それをフロッピーディスクで企画課へ提出し、企画課からサーバーへアップロードする手順となっている。企画課ではアップロード前に提出されたHTMLの簡易評価を行い、問題があれば各課へ修正を依頼する。簡易評価の内容は、画像の代替テキストの有無、ページタイトルの付け方等である。

(62ページ)
3−2−3 ウェブシステム調達におけるアクセシビリティ維持・向上

 ウェブシステムの開発は、通常のホームページ構築と異なり、公開後のコンテンツの変更が困難なため、提案依頼時と業者選定後の仕様検討でのアクセシビリティ検討が特に重要となる。ホームページ・リニューアルと異なり、ウェブシステム調達ではヒアリング対象地方公共団体においても配慮が特になされていない事例もあった。

(1)熊本県における最近の調達事例での取組状況

1)業務手順
  熊本県では、現在、情報企画課において「情報システムの企画・調達・契約ガイドライン」の策定が進められており、試案が完成している。今後、このガイドラインに基づいて情報システムの調達業務を進めることになる。
  当該ガイドラインの調達事例として、熊本県電子申請受付システムがあるが、これは、熊本県及び県内市町村が共同で運用するシステムである。このシステムは、県及び県内市町村で構成する「熊本県・市町村電子自治体共同運営協議会」により、仕様の検討等を実施している。

2)アクセシビリティ維持・向上の取組
  熊本県の最近のウェブシステム調達例として「熊本県電子申請受付システム」の開発についてヒアリングした。
  このシステムの調達では、仕様書内に「使い勝手の確保」に関する記述が盛り込まれ、ウェブアクセシビリティへの配慮がうかがえるが、ウェブアクセシビリティの確保そのものを要件とはしていない。

(2)世田谷区における最近の調達事例での取組状況

1)業務手順
  世田谷区で平成15年2月に公開した「図書館予約システム」の調達プロセスは次のようになっている。
  図書館の蔵書検索・予約を行う図書館システムの導入が立案された平成13年度に、区内各図書館の代表で構成されるプロジェクトチームを結成し、仕様の検討を開始した。対外的な窓口として、中央図書館の事務調整担当者が仕様のとりまとめ、提案要求、提案書受付等の事務を担当したが、業者選定は前記プロジェクトチームで実施した。業者選定・発注後にプロジェクトチームと受注業者でミーティングを実施し、詳細仕様の検討を実施した。その後、業者からシステムのプロトタイプが提供され、プロジェクトチームで機能と画面デザインの検討・確認を実施した。また、納品後の検収もプロジェクトチームで実施した。

図表3−14 ウェブシステム調達業務プロセス例(世田谷区)

(以下、業務プロセス表の説明)

業務プロセスとしては、「企画段階」、「提案要求から業者選定まで」、「開発・納品」があり、関係部署等としては、「プロジェクトチーム(各館の代表者)」、「中央図書館・事務調整担当」、「外部委託業者」がある。
「企画段階」では、プロジェクトチームが発案、基本検討を行う。
「提案要求から業者選定まで」では、基本検討に基づき、中央図書館・事務調整担当において、提案仕様書により提案要求を行う。外部委託業者は提案仕様書に基づき、提案書を作成する。外部委託業者から提出された提案書によって、プロジェクトチーム及び中央図書館・事務調整担当が業者選定し、発注を行い、外部委託業者が受注する。
「開発・納品」では、ガイドライン・マニュアルを参照し、プロジェクトチーム、中央図書館・事務調整担当、外部委託業者による初回打ち合わせを実施する。その後、外部委託業者において項目整理を実施し、中央図書館・事務調整担当において該当要件リストの確認を行う。それを受け、外部委託業者においてプロトタイプ作成が行われ、中央図書館・事務調整担当において画面プロトタイプの確認を行う。次に、プロジェクトチーム(総合福祉センター職員を含む。)、中央図書館・事務調整担当、外部委託業者による機能検討、デザイン検討を実施する。それを踏まえ、外部委託業者においてアクセシビリティ評価を実施し、評価報告書とともに納品する。納品を受け、プロジェクトチームと中央図書館・事務調整担当において検収を行う。

(この業務プロセスの説明は以上)

2)アクセシビリティ維持・向上の取組
  世田谷区の最近のウェブシステム調達事例として、上記の「図書館予約システム」の調達業務についてヒアリングした。
  このシステムの調達では、検討初期からシステムのアクセシビリティ等が意識されており、業者選定においては各社のパッケージの画面を比較し、画面の使いやすさや見やすさを評価した。
  業者決定後には、「ホームページ利用のガイドライン」、「ホームページ作成マニュアル」を業者に渡し、これらの指針・マニュアルの中から遵守すべき事項を整理・提出させた。
  開発の初期段階では、業者から表示画面のイメージを提出させ、配色は文字の大きさ、コントラスト等を確認した。特に色の区別がつきにくい利用者にとって問題がないかについて、神奈川県が策定している「色使いのガイドライン」を参考にし、区の総合福祉センターの職員も検証した。
  納品前には受注業者がアクセシビリティの評価を行い、その評価報告書をシステムとともに提出させた。

図表3−15 世田谷区図書館予約システムの入力画面
http://libweb.city.setagaya.tokyo.jp/zousho/search.shtml

(3)伊那市における最近の調達事例での取組状況

1)業務手順
  伊那市では、平成16年4月に、「施設予約システム」を稼動させた。このシステムは、市内の体育館、グラウンド、生涯学習センター等16施設の空き状況の確認と予約がインターネットで行えるものである。施設予約システムの検討・調達は、以下のプロセスで実施された。
  本システムはもともと平成17年度以降に開発予定していたもので、平成15年7月に地域活性化センターの助成が決定したために急遽開発を行うことになったものである。主管課である生涯学習・スポーツ課スポーツ振興係が担当し、サーバー等の技術面について企画課情報統計係に相談して仕様書を作成した。平成15年10月に、4社に提案依頼を行い、提案コンペで業者選定を実施した。業者選定は、生涯学習・スポーツ課スポーツ振興係、生涯学習センター、企画課情報統計係で審査会を作り、提案評価と選定を実施した。業者選定後、業者と協議して詳細な仕様を決定した。その後の開発進捗確認は、生涯学習・スポーツ課スポーツ振興係と生涯学習センターの職員で実施した。平成16年3月にプロトタイプができ、業者がデモンストレーションを行い、改善要望を業者に出して最終的な手直しを実施した。

図表3−16 ウェブシステム調達業務プロセス例(伊那市)

(以下、業務プロセスの説明)

業務プロセスとしては、「企画段階」、「提案要求から業者選定まで」、「開発・納品」、「公開後」があり、関係部署等としては、「生涯学習・スポーツ課・スポーツ振興係」、「企画課情報統計係」、「外部委託業者」がある。
「企画段階」では、生涯学習・スポーツ課・スポーツ振興係が企画・立案を行い、基本計画を作成する。
「提案要求から業者選定まで」では、基本計画に基づき、生涯学習・スポーツ課・スポーツ振興係において、仕様書により提案要求を行う。外部委託業者は仕様書に基づき、提案書を作成。外部委託業者から提出された提案書によって、生涯学習・スポーツ課・スポーツ振興係、教育委員会、生涯学習センターによる審査会によって業者選定、発注を行い、外部委託業者が受注する。
「開発・納品」では、外部委託業者による仕様提案に基づき、生涯学習・スポーツ課・スポーツ振興係とともに仕様検討を実施する。これを受け、外部委託業者が開発を行い、生涯学習・スポーツ課・スポーツ振興係(生涯学習センターを含む)において進捗確認を行う。その後、外部委託業者にデモンストレーションを実施し、生涯学習・スポーツ課・スポーツ振興係、企画課情報統計係及び関係課による画面確認を経て、外部委託業者が納品、生涯学習・スポーツ課・スポーツ振興係において検収が行われる。
「公開後」では、外部委託業者がサーバ保守を行うとともに、生涯学習・スポーツ課・スポーツ振興係からのバグ修正依頼に基づきバグ修正を行う。また、生涯学習・スポーツ課・スポーツ振興係においては、改修について予算計上を行う。

(この業務プロセスの説明は以上)

2)アクセシビリティ維持・向上の取組
  伊那市の最近のウェブシステム調達例として「施設予約システム」の調達業務フローについてヒアリングした。
  このシステムの調達当時(平成15年)、本システムの調達主管課(生涯学習・スポーツ課スポーツ振興係)にはウェブシステムのアクセシビリティ配慮の必要性について十分な認識がなく、調達フローの中でもウェブアクセシビリティを特に意識した取組は行われなかった。
  また、短期間の開発だったため、使いやすさ等の評価についても開発途中では十分に行うことができず、発生したバグ対応が優先した。

図表3−17 伊那市施設予約システムの入力画面
https://shisetu.inacity.jp/jyumin/html/index.html

(67ページ)
4.電子申請におけるアクセシビリティの現状と課題
4−1 電子申請システムにおけるアクセシビリティの重要性
 電子申請システムは、電子政府・電子自治体が住民向けに提供する主要サービス項目のひとつであり、提供数が急速に増加している。電子申請システムでは、これまで書面で実施してきた公的機関への各種申請・届出がインターネット上で可能となり、その都度窓口に出かける必要がなくなるため、利用者に大きな便益をもたらすものと言える。
  この便益は、外出が困難で窓口での手続をとりにくい身体障害者にとって特に大きい意味を持つ。例えば、印刷された申請書類を読むことができない視覚障害者や、窓口を訪問できない重度の肢体不自由者は、従来は自力での申請や届出が困難だったが、電子申請システムを用いれば手元のパソコンと支援技術を使って自力での申請・届出が可能になることが期待される。
  しかし、電子申請システムのユーザーインタフェースが画面読み上げソフト等に対応しないなど、適切なアクセシビリティを確保できていない場合には、上記のような身体障害者にとっての便益が大幅に失われ、身体条件による便益の格差、いわゆるデジタル・ディバイドを発生させる恐れがある。このような事態を回避するため、電子政府・電子自治体サービスにとって、電子申請システムにおけるアクセシビリティの確保は重要な課題と言える。

(67ページ)
4−2 電子申請システムのアクセシビリティ確保の障害となる要因

 電子申請システム等のウェブシステムのアクセシビリティの維持・向上に向けた取組状況については、前述の地方公共団体に対するアンケートの結果でも5.4%が取り組んでいるに過ぎず、大幅に遅れている。一つの原因としては、そもそも電子申請システムのアクセシビリティについて意識が低く、庁内でも徹底していないことが挙げられる。3.で記述した地方公共団体へのヒアリング調査でも、ウェブアクセシビリティを担当している部署とは異なる部署がシステムを発注したために、アクセシビリティへの配慮が行われないままシステム開発が進んだという事例が紹介された。
  また、仮に電子申請システムのアクセシビリティに関して意識を持っていたとしても、十分なアクセシビリティを確保できないことが多い。受注側がJIS準拠のシステム開発ということで請け負ったとしても、実際の開発が始まると、想定する利用者によって対応範囲が変わってくる、利用技術の現状から電子署名のアクセシビリティ確保が困難、JIS対応のシステム開発は予想以上に作業が多いなど様々な問題が生じ得る。その原因として考えられるものは、発注時の要件の検討不足と受発注業者の意識の相違が挙げられる。特に以下の3点が注意すべき点として挙げられる。

(1)アクセシビリティの達成度はJISだけでは測れない
  JISは利用者への配慮の指針を明確にしているもので、アクセシビリティ達成度の目標値となる利用者配慮レベルは特に規定していない。利用者は誰で、どんな配慮が必要で、また、システムではどの程度のアクセシビリティを確保し実現できそうかという配慮レベルについて、サービス提供者が事前に検討し、達成度を測定するための目標を明確にする必要がある。

(2)電子申請システムはアクセシビリティに対応すべき範囲が広い
  通常のホームページの場合は、利用者が情報取得することが目的であり、アクセシビリティに関しても対応が比較的シンプルであるが、電子申請システムについては、情報取得だけではなく最終的にサービスを利用できることが目的となる。したがって、表示部分以外のサービスを設計・開発するバックエンド開発部門(プログラマーやSE)とアクセシビリティに関する意識を共有しつつ作業を進めなければならない。

(3)利用技術でのアクセシビリティ対応可能性の検討が必要
  利用される技術によっては、アクセシビリティの実現が難しいものがあり、そういった技術に関する情報については、事前に把握しておくことが必要である。例えば、現在、電子署名はJavaを利用して実装されているが、現在我が国で広く普及している画面読み上げソフト等はJavaに対応しておらず、画面読み上げソフト等を利用する視覚障害者は、自ら操作できない。

(68ページ)
4−3 既存の電子申請システムで見られるアクセシビリティの問題
 
 電子申請システムを構築するにあたって、具体的にどのような問題が発生するのかについて、電子申請システムを政府機関・地方公共団体等に納入しているベンダー各社からのヒアリングしたところ、現在提供されている電子申請システムでは、利用者が行う利用の準備作業も含めて、次のようなアクセシビリティ上の問題が見られるとの指摘があった。ただし、これらの問題のすべてがひとつの電子申請システムに見られるわけではなく、各ベンダーの提供システムによって該当する問題に違いがある。

(1)利用の準備段階で見られる問題
  電子申請システムの利用に際して、利用者はまず必要なソフトウェアのダウンロードやインストール、ブラウザの環境設定、民間認証局やオンラインバンキングの利用契約等を行う必要がある。これらの多くは、電子申請システム以外のホームページで申込みや利用操作を行う必要があり、それらのホームページのアクセシビリティに問題があるケースが見られる。

(2)電子申請の手順で見られる問題
  電子申請の利用手順や表示される画面遷移は各システムによって異なるが、次の点でアクセシビリティ上の問題が発生する場合がある。
 
*利用者登録、ログインのための情報入力フォームの読み上げやキーボード操作
  *申請様式や公文書のダウンロード操作画面の読み上げ
  *各種申請書類の入力フォームの読み上げ、キーボード操作
  *入力の時間制限
  *申請時に必要となる書類添付操作での読み上げ、キーボード操作
  *セキュリティの警告メッセージや、ファイル保存、印刷時にシステムが表示するメッセージやダイアログの読み上げ
 
これらの問題の中には、入力の時間制限のようにプログラムの変更で対応可能なものもあるが、日本語の画面読み上げソフト等の多くがJavaの読み上げに対応していないために発生している問題が多く見られる。ベンダーヒアリングで把握された問題の例を図表4−1に示す。


図表4−1 電子申請システムにおけるアクセシビリティ上の課題例
(以下は表の見出しです)
・区分
・項目
・読み上げ対応での課題例
・キーボード操作での課題例

(見出しはここまで。以下は、見出しにあげた4項目の順に表の中身を抜き出したものです)

・準備
・操作説明(マニュアル等)
・PDF等で提供する場合は、読み上げについて留意する必要がある。
・(空欄)

・準備
・動作環境の確認
・ブラウザによっては、機能設定(インターネットオプション等)の読み上げが正しく行われない。
・(空欄)

・準備
・必要なソフト等の事前インストール
・ダウンロードサイトのアクセシビリティに依存。
・ダウンロードサイトのアクセシビリティに依存。

・準備
・電子証明書の取得
・認証サービス提供サイト等のアクセシビリティに依存。
・認証サービス提供サイト等のアクセシビリティに依存。

・申請
・利用者登録
・Javaを使用している場合、入力欄等の読み上げが正しく行われない。
・Java を使用している場合、画面のスクロール等がキーボードのみでは正しく操作できない。

・申請
・ログイン
・操作パネルにJava を使用している場合、読み上げが正しく行われない。
・Java を使用している場合、一部キーボード操作に対応していない部分がある。

・申請
・入力等
・様式のダウンロード、入力欄等にJava を使用している場合、読み上げが正しく行われない。
・Java を使用している場合、画面のスクロール等がキーボードのみでは正しく操作できない。

・申請
・必要書類の添付
・ファイル選択ダイアログ等にJava を使用している場合、読み上げが正しく行われない。
・(空欄)

・申請
・電子署名の付与
・セキュリティ警告メッセージ等にJava を使用している場合、読み上げが正しく行われない。
・(空欄)

・申請
・保存、印刷
・印刷、ファイル保存のダイアログ等にJava を使用している場合、読み上げが正しく行われない。
・(空欄)

・申請
・手数料納付
・オンラインバンキングサイトのアクセシビリティに依存、オンラインバンキング専用カード上の記号や数字を入力しなければならないものもある。
・オンラインバンキングサイトのアクセシビリティに依存。

・申請
・申請状況確認、公文書取得
・Javaを使用している場合、読み上げが正しく行われない。
・(空欄)

・全般
・メッセージ表示
・メッセージダイアログ等にJavaを使用している場合、読み上げが正しく行われない。
・(空欄)

・全般
・無通信時間
・無通信時間を監視しており、オーバーした際にはセッションタイムアウトとなり、セッションが切られる。
・無通信時間を監視しており、オーバーした際にはセッションタイムアウトとなり、セッションが切られる。

(表の中身はここまでです)

出典:主要ベンダーヒアリング結果より取りまとめ

(72ページ)
4−4 対応の考え方

 電子申請システムの企画、開発、運用における配慮事項については、第2部で述べるが、国内で多く使われている画面読み上げソフト等ではJavaを読み上げることができないなど、障害者の利用において想定される技術的な問題については、当面、次のような対応をとることが有効と考えられる。

(1) 電子申請システムのユーザーインタフェース(画面表示等)に係る部分はHTMLベースとする。

(2) HTMLベースのユーザーインタフェースを実装する際には、各画面のアクセシビリティはJIS X 8341-3の要件に準拠する。

(3) 電子申請システムの内部処理にJava等を用いる際に自動的に発行される警告メッセージ等の表示については、利用者の安全性確保の観点から、現時点では信頼できる支援者のサポートを受けて本人が表示されたメッセージ内容を確認し、必要な回避策をとる。

(4) 運用中の電子申請システムについて、画面読み上げソフト等での読み上げやキーボードのみの操作及び主要支援技術での操作の問題点を把握し、問題点がある場合はその内容をホームページで情報提供し注意喚起する。

 なお、国内の画面読み上げソフト等の支援技術のJavaへの対応については、すでに一部のものではJava表示画面の読み上げ対応を開始しているほか、国内でJavaアクセシビリティAPIに関するドキュメントを整備する動きが活発化しており、Javaへの対応が遅れている画面読み上げソフト等でも、今までよりJavaへの対応が容易になると思われる。加えて、今後は、Java等を活用したより高度なウェブサービスが一層普及していくことが予想されるため、支援技術側での対応も進むことが期待される。

(73ページ)
5.調査で明らかになった課題の整理

 ここまでにまとめたアンケート調査、ヒアリング調査及び電子申請システムに関する調査の結果から、公共分野におけるウェブアクセシビリティ確保に関する様々な課題が明らかになった。ここでは、抽出された課題について、主として業務プロセスの流れに沿って整理する。

(1)調達業務プロセス全体、取組体制について
  ウェブアクセシビリティに対する職員の意識が低いこと、取組全体の基盤であり出発点となる取組体制や手順が整備されていないことが最初の大きな課題と言える。

(調達業務プロセス全体、取組体制に関する課題)
  *アクセシビリティの所管部署が明確でなく、関係部署の役割も整理されていない。
  *アクセシビリティに配慮した調達業務手順が確立されていない。
  *ホームページ担当部署と異なる部署がウェブシステム調達等を行う場合に、アクセシビリティの認識が共有されておらず、適切な対応がとられない。
  *アクセシビリティへの配慮は、担当職員の力量や意識に大きく左右される。
  *職員研修が十分に行われておらず、職員間の知識、スキルの差が大きい。
  *担当職員が異動すると、アクセシビリティの知識やノウハウが継承されない。

(2)ガイドラインの策定
  アンケート結果によれば、ウェブアクセシビリティに関するガイドラインを整備していない地方公共団体が多い。また、整備されたガイドラインについても、目的や用途が整理されておらず、性格があいまいになっている例が多い。

(ガイドラインの策定に関する課題)
  *ガイドラインを整備できていない地方公共団体が多い。
  *職員の担当業務等によって、必要になるウェブアクセシビリティに関する知識が異なるが、多くのガイドラインではそうした整理や切り分けがなされておらず、様々な内容が混在している。
  *JIS X 8341-3と各地方公共団体の独自ガイドラインとの関係が整理できておらず、内容の整合がとれない例がある。

(3)業者選定・発注
  ヒアリング調査では、発注にあたって業者の技術レベルを確認する方法がないこと、提案依頼にアクセシビリティ要件を具体的に盛り込むのが難しいことなどの課題が明らかになった。

(業者選定・発注に関する課題)
  *発注の際、業者のアクセシビリティ対応能力を確認する方法がない。
  *提案依頼書に含むべきアクセシビリティ要求事項が整理されていない。
  *業者選定後にアクセシビリティ要件の検討を行うプロセスが一般的だが、職員の知識不足等のために業者まかせになる。

(4)納品物の検査・検収
  アンケート調査結果から、多くの地方公共団体でホームページ等の納品・検収時にアクセシビリティ評価が行われておらず、またその評価手順も確立していないことが明らかになった。特に、ウェブアクセシビリティの達成状況の確認には特に有効な、障害者・高齢者による評価はほとんど行われていないのが実情である。

(納品物の検査・検収に関する課題)
  *制作途中でアクセシビリティを評価する仕組みが確立されていない。
  *納品物のアクセシビリティを評価する仕組みが確立されていない。
  *利用者参画の仕組みが確立されていない。
  *第三者による検査は有効だが、多くの地方公共団体では検査を外部に委託する予算や、第三者による検査を担当できる知識・経験のある職員の確保が難しい。

(5)日常のウェブページの追加・更新
  アンケート調査結果から、日常のウェブページ追加・更新においてウェブアクセシビリティ維持・向上の取組を実施している地方公共団体はまだ少なく、特に、障害者・高齢者が参画しての評価はほとんど行われていないことが明らかになった。

(日常のウェブページ追加・更新に関する課題)
  *専門的な技術・知識が十分でない職員でもアクセシビリティが確保されたホームページを作成できる方法や環境が確立されていない。
  *そのため、個々の職員のスキルや意欲によって結果が左右される。
  *公開後の品質管理プロセス、例えば障害者・高齢者を含む第三者によるアクセシビリティ評価等については、まだ検討や対応が進んでいない。


(報告書第1部は以上です。)



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