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第1回 地域メディアコンテンツ研究会

平成14年12月10日(火)
14時00分〜16時23分
総務省1101会議室



 
【安藤室長】  定刻となりましたので、地域メディアコンテンツ研究会第1回会合を開催させていただきます。
本日は皆様ご多用のところご出席いただきまして、まことにありがとうございます。
座長が選出されるまでの間、事務局のほうで進行を務めさせていただきます。
初めに、本研究会開催に当たりまして、稲村・総務省政策統括官よりご挨拶させていただきます。
【稲村政策統括官】  きょうは大変師走のお忙しい中、ご参集を賜りまして、ありがとうございます。
ご案内のとおり、ブロードバンドの整備につきましては、いろいろやっております。つい数年前は、ほかのアジアの国に遅れをとったとか、いろいろご批判がございましたが、そういう意味での整備というのは相当進みまして、価格の面でも相当下がってきている。あるいはFTTHがそこまで来ている、高速道路は建設されつつあるが走っている車が少ないという指摘もございます。インフラの整備だけではなくて、コンテンツの流通・促進などをどう利用するかということでの重点を置いた取り組みが大切だと考えております。
そういう中で地域のほうでいろいろ固有のコンテンツ制作・配信の先端的な取り組みが見られるということでございます。グローバルと言いつつ、片方でローカルな世界もあるわけでございますから、あるいはローカルの固有のものがグローバルに貢献するんじゃないか−−グローバルと言ったら大げさですが、少なくとも日本全国に貢献するんじゃないかという視点もあろうかと思います。
この研究会では、そうした地域社会の生活のレベルでのブロードバンドコンテンツの制作・流通に関する取り組みの実態、課題、潜在的なニーズの調査・検討をいたしまして、制作推進に当たっての参考の材料とさせていただくということで、大変お忙しい方ばかりですが、各放送関係、ケーブルテレビ関係、コンテンツ関係にご参集賜りましたものでございます。
多少動き出した感じもございます。今まで全くビジネスにならなかったところが、何とかなりつつあるとかということでございますし、またビジネスだけではなくて、本当に社会経済に役に立つというジャンルもあろうかと思います。活発なご議論をご期待申し上げまして、ご挨拶とさせていただきます。この関係では補正予算も要求中でございまして、また具体的な政策の実施についてもいろいろ参考にさせていただければと思います。
自治行政局からもご出席をいただいておりますので、感謝を申し上げます。
【安藤室長】  続きまして、本日、配布の資料の確認をさせていただきます。
資料につきましては、議事次第の下のほうに配布資料の一覧がついております。1から6までですが、6につきましては、枝番の6−1、6−2と、2つございます。皆様、それぞれご確認ください。もし不足がございましたら、事務局のほうまでおっしゃってください。
それでは、第1回でございますので、皆様方から自己紹介をいただきたいと思っております。資料1の構成員名簿に従いまして、天野構成員から自己紹介をお願いしたいと思います。なお、恐縮でございますが、大変きょうは時間が切迫しているということもございますので、お1人30秒程度でお願い申し上げたいと思っております。よろしくお願いします。
【天野構成員】  江戸川大学の天野です。
私の専門は都市社会学で、住民合意型のまちづくりに関心を持ちながら研究を行ってきました。平成六年度から五年間、財団法人あしたの日本を創る協会の情報基盤整備検討委員を務めさせていただき、情報環境を活用した地域づくりの事例調査と、地域づくり運動を支援するための情報システムの検討をするようになったことをきっかけとして、地域情報化関係の調査研究や社会活動をするようになりました。先の委員会は、「検討」の二文字がついていますが、たまたま別の補助金が取れて研究室でサーバーを立てることができたので、私が中心となってシステムの構築を行い運用も始めました。その後、財団でもサーバーを持てるようになったので、このシステムは現在、財団と研究室の二つのサーバーで運用しています。
現在は、地域情報化と教育の情報化、CGを用いた景観シュミレーションによるイメージシェアリングや情報共有に基づいた住民合意型のまちづくり等についての調査研究及び実践活動を行っております。よろしくお願いいたします。
【石川構成員】  高知県で情報化担当の理事をしております石川でございます。
全庁にまたがる調整ですとか、あるいは基盤の整備、そういったものを担当させていただいております。よろしくお願いいたします。
【佐野構成員】  茨城大学人文学部の佐野と申します。
もともとNHKにずっと勤めておりまして、その関係で数年前に茨城大に移りまして、コミュニケーションというか、メディア関係の講座を担当しております。私の興味、関心というのは、メディアの現状ということもありますけれども、1つは教育メディアということもありまして、そういう中で何か寄与できるものがあればいいかなと思っております。それと、ご存じのように、茨城県というのは民間放送局というのがない日本全国で唯一の局でございまして、そういう中で逆に新しい地域メディアがより活躍できる空間というか、そんなのがあるのかなとも思っておりますので、そういう意味でも多少勉強もしていきたいと思っております。よろしくお願いします。
【鈴木(稔)構成員】  パシフィックキャピタルジャパンという投資顧問会社の鈴木でございます。
私はちょうど私の目の前にいらっしゃる中根さんとご一緒に、セゾングループでメディアの仕事を少しやらせていただいておりました。そのときに民間会社47社とNHKMICOという会社をつくらせていただきまして、最初の専務を少し務めさせていただきました。MICOで欧米と番組の取引をやったときに、日本と一番違うと思ったことは、コンテンツについてファイナンスとリーガルマターが一緒になってやっている欧米と、日本ではほとんどファイナンスもリーガルも入ってこないコンテンツという差を感じておりました。やがてこれはそうならなくなるはずだという思いがありまして、かなり関心を深めてコンテンツ回りの方たちとおつき合いをしております。どうぞよろしくお願いします。
【鈴木(祐)構成員】  NHK放送文化研究所の鈴木でございます。隣の鈴木稔さんとは、鈴木、鈴木で並んでおりますが、親子でも親戚縁者でもございません。
私はNHKのほうでは放送のデジタル化のことについて調査をさせていただいております。今、国策として地上波がデジタル化しようとしておりますが、こういう席で言うのも何ですが、恐らく大変なことになるのではないかというふうな気がしておりまして、その中においては、この地域メディアコンテンツというのは大きな役割を果たすだろうと思っております。そういう意味でこの研究会に大変期待しておりますので、ぜひいろんなことを教えていただきたいと思います。よろしくお願いします。
【小林構成員】  東京大学の社会情報研究所の小林でございます。
私は現職を今年度いっぱいで退官になるので、そういう年がらで、例えばケーブルテレビで言うと、下田のケーブルとか、地域情報化も最初のころからいろいろの面でおつき合いはしておりますし、そういう中でいろいろの体験を踏んできたことが少しはお役に立つのではないかというふうな感じで参加させていただいております。よろしくお願いいたします。
【高橋構成員】  鳥取県米子市から参りましたサテライトコミュニケーションズネットワークの高橋と申します。
私は通信衛星を介しまして、全国のケーブルテレビ140局のネットワークを2年半前につくらせていただいております。それと地元ではケーブルテレビとかプロダクションをやっておりまして、そういったことを業務としております。よろしくお願いいたします。
【中根構成員】  テレビ埼玉・社長の中根と申します。
全国独立U局が13局ございまして、私はテレビ埼玉でございますが、系列局と違うのは自社制作番組比率は約60%でございます。系列ローカル局は多分10%に満たないと思いますので、これからのデジタル化をどう乗り切るかはコンテンツ次第ということで勉強したいと思います。よろしくお願いします。
【西澤構成員】  こんにちは。世田谷区の情報政策課長をしております西沢と申します。よろしく お願い申し上げます。
ご承知のように、世田谷区は東京23区の中の最大規模の人口、80万人おります。区内の状況につきましては、ケーブルテレビが3社あるということで、なかなかケーブルテレビだけでの情報提供というのが統一的にできないということでございます。
私ども情報政策課では、今、基盤の整備をしているところですが、区民の方々のインターネットの接続率が59%、それからパソコンの保有率が62%というような状況がございます。そういったわけで地域の情報化というものに取り組んでおるところですが、私どもの関心としては、生活に密着した情報をいかにきめ細かに届けるのかという観点でございまして、今後の情報化、特に動画の世界では、こうした生活圏での話題や必要な情報を届ける、それどのように選択をしていくのかというのが課題だということで、常日ごろから考えております。本研究会はそういった意味では大変役に立つ研究会だと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
【二瓶構成員】  電通、テレビ局の二瓶でございます。お世話になります。よろしくお願いいたします。
私は今、電通のテレビ局の中で地上波デジタルの推進役ということで、社内横断チームの事務方をやっております。また、放送局さんのモバイルメディアへの取り組み、あるいはブロードバンドへの取り組み等々、新しいトライアル領域のサポートもさせていただいております。
先ほど、出がけに私どもの東名阪以外の放送局を担当しているセクションに確認しましたところ、ローカルエリアの放送局さんから年間約300番組ぐらい、私どもの部署に持ち込まれてくるそうです。電通の中での扱いが年間140億、他の広告会社さんの扱いも含めると大体東京のナショナルクライアントさんから200億円ぐらい、本社での売上げも含めますと、ローカルコンテンツと言われているものの市場が約500億、この位が地上波放送事業者のスポット扱いを除いた「番組セールスベースのコンテンツの市場サイズ」だそうです。
今までは広告会社というのは、どうしてもメディアのビジネスサイズにこだわって広告商売をしてきたわけですが、今後、地上波デジタル後のメディアのあり方論として、地域の放送局さんの担うべき領域みたいなことがいよいよ問われるかと思います。そういう中で今回ここでお話しになるようなコミュニティコンテンツ、地域メディアとしての取り組むべき領域みたいな部分がもっとクローズアップされるのではないかと考えております。そんな目線で参加させていただきました。今後ともよろしくお願いいたします。
【信井構成員】  信井文夫と申します。
全国地域映像団体協議会、耳慣れない団体でございますけれども、平成9年にできた団体でございます。北海道から沖縄まで、各地域に映像団体があるわけでございますが、それの全国組織でございます。名誉会長というのは、私が唯一現場を持たない人間で東京に住んでおるということで、名誉会長ということで肩書がついておりますが、東京の事務所を担っております。
平成11年度の政府補正予算でデジタル化のデータベース化という実証実験を行ったわけで、まさに実験だけで終わったわけでございます。地方に膨大なコンテンツを持っているプロダクションがあるわけでございますけれども、ほとんどロッカーで死んでおるという状況でございまして、これを何とか生かしたいということで、喜び勇んでこの委員にならせていただきました。ありがとうございました。
【松本構成員】  多摩美術大学で非常勤講師をしております松本と申します。
今、東京の荒川区のほうでIT先進都市推進委員会という、ブロードバンドの普及と、それからブロードバンドで配信するローカル・コンテンツについて考える委員会の委員をしております。それと三鷹市のほうで地元のNPOに協力して、ブロードバンドを利用した市民放送局の立ち上げ、及び市民や学生がそこで配信するコンテンツを企画制作していくための仕組み作りの活動も担当しています。こうした活動が何かしらこの研究会の役に立てればと考えております。よろしくお願いします。
【水野構成員】  皆様、初めまして。社団法人・デジタルメディア協会(AMD)の水野と申します。お世話になります。
こちらの社団法人は、約10年前に、今、進行してくださっている安藤室長様が、企画、立ち上げに参画してできた社団法人でございます。現在、コンテンツプロバイダーさん、いわゆるデジタルコンテンツ制作者の事業者さんを中心に、テレビ局、出版社、携帯のキャリアさんを含め、約100社の会員のある社団法人となっております。どうぞよろしくお願いします。
【米川構成員】  NTTのブロードバンド推進室の米川と申します。
先ほど、稲村様のご挨拶にありましたように、私どもはどちらかというと道路屋でございます。ただ、道路というのも、実際に車の車種ですとかトラヒックですとか、そういうものに応じてどんどん使いやすくしていかなければいけないと。そういう観点から単なるインフラという観点だけではなくて、新しいコミュニケーション、あるいは本当のブロードバンドの世界ってどういうふうになるんだろうかと、そういう観点からぜひご議論させていただければと思います。よろしくお願いします。
【安藤室長】  最後に、井上構成員、よろしくお願いします。
【井上構成員】  遅くなって、申しわけございません。富山県経営企画部情報政策課の井上と申します。
富山県のほうにおきましても、県発のいろんなコンテンツ、CATVさんと協力していろいろ発信させていただいておりますので、そういった情報提供等を通じまして、この研究会に貢献していきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【安藤室長】  ありがとうございました。
本日、所用によりシー・ティー・ワイの塩治構成員がご欠席でございます。
続きまして、総務省側のメンバーを紹介させていただきたいと思います。
私が安藤でございます。
私の隣に座っているのがコンテンツ室の課長補佐をしております梅村でございます。
稲村政策統括官。先ほどご挨拶をさせていただきました。
寺ア官房参事官でございます。
それから自治行政局から斉藤地域情報政策室長にご出席いただきました。
【斉藤・自治行政局
 地域情報政策室長】
 自治行政局の地域情報政策室長の斉藤と申します。
今、電子自治体の構築というのを進めておりますが、その中で平成11年度からデジタルミュージアム構想というのを推進しております。これは失われつつある地域文化を保存・継承いたしまして情報発信していくというものですが、それによりまして地域の活性化やまちづくりに役立てていただくと。
コンテンツですけれども、いわゆる文化財のような高尚なものだけではなくて、どちらかといえば住民が残したいと思うものはすべてローカルコンテンツであるというふうにとらえております。先ほど、稲村政策統括官のほうからローカルからグローバルへというお話がありましたが、まさに地域は実はコンテンツの宝庫でございまして、非常に我々はポテンシャルが高いというふうに認識しております。ぜひ、こういった財産をブロードバンドの時代に活用していきたいと。
実はつくるという面におきましては、コンテンツのデジタル化、いわゆるアーカイブ化について、財政支援措置、特別交付税という措置をしておるんですが、年々、その活用団体がふえておりまして、平成12年度に45の市町村、昨年度は53の市町村、今年度はもっとふえる勢いでございます。そういう意味では、つくるという部分はそれなりに今は浸透・普及をしてきているのかなと。
これからの課題は、こういったものをいかに流通させるかという、生かすの部分にあるというふうに考えております。例えば教育目的に使うとか、観光目的に使うとか、そういったことでいろいろ模索されている自治体も多いと聞いております。我々はそれに合わせてデジタルミュージアム構想そのものを、これから発展的にちょっと見直しをしていこうというようなことも模索しておりますので、ぜひこの研究会でいろんな議論にも加わらせていただいて、勉強させていただいて、今後の施策に役立てていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【安藤室長】  引き続きまして、本研究会の開催要綱についてご説明申し上げます。資料2をごらんください。
目的は、我々行政側で持っている目的でございまして、皆様方におかれましては、地域メディアコンテンツという素材を対象として、皆様方のご関心に基づくさまざまな側面からご貢献いただきたいと思っております。
これにつきまして、何かご質問、あるいはご意見等がございますでしょうか。なければ、このとおりとさせていただきたいと思います。
それから研究会の公開についてということで、資料3をごらんいただきたいと思います。
この会議については原則公開とすること。例外的な場合については、座長が必要と認める場合には全部または一部を非公開とすること。配布資料については、原則公開とすると。ただし、提出者から申し出があった場合にはその限りではないと。議事録につきましても各構成員の了解を得て公開とするということで、その公開に当たっては総務省のホームページに掲載するという内容でございます。
これにつきまして、何かご質問、ご意見等がございますでしょうか。それでは、このとおりとさせていただきたいと思います。
次に、開催要綱。資料2の4番の部分ですけれども、座長を選任いたしたいと思います。座長につきましては、(4)「座長は、学識経験者とし、構成員の互選により定める」となっております。
もし、お差しつかえなければ、事務局より東京大学の小林構成員をご推薦させていただきたいと思うのですが、いかがでございましょうか。
特に異議もございませんので、本研究会の座長に小林構成員を選出いたしまして、以後、議事の進行は小林座長にお願いを申し上げます。よろしくお願いします。
【小林座長】  ただいま、ご指名いただきましたので、ふつつか者でございますけれども座長を務めさせていただきます。
先ほど申し上げましたような事情で、この年ごろになると座長というのが回ってくるんですが、これはある意味でまとめ役で、むしろ和気あいあいとした中で−−このテーマの中でのローカルコンテンツは何かというのは、多岐にわたるし、わけのわからないようなところがあるし、日本の現在の社会の中にどれぐらいポテンシャリティがあるのかということもなかなかわからない部分ですので、知恵を出し合う場として、いい雰囲気の研究会になっていけば大変ありがたいし、そのために努力をしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、私の座長で議事を進めてまいりたいと思いますが、議事に入ります前に、私のほうから座長代理を指名するということが開催要綱にございます。
そういうことで、私から指名させていただきたいと思いますが、佐野構成員にお願いしたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。
それでは、佐野構成員に座長代理をやっていただくということで、一言、メッセージをいただければと思います。
【佐野座長代理】  さしたるメッセージもないんですが、先ほどの小林先生のお話にあったように、活発に積極的に意見を出し合って、楽しく、かつ実りのある研究会にしたいと。そのために私も努力したいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【小林座長】  ありがとうございました。
それでは、これからご案内の議事次第に従いまして、議事に入ってまいりたいと思います。
初めに、研究会の進め方について、事務局よりご説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【梅村課長補佐】  資料4に基づきまして説明させていただきます。
「研究会の進め方(案)」でございます。
1、検討事項。地域メディアコンテンツの制作・流通・保存・再流通(二次利用)等の実態及び課題。(2)、地域メディアコンテンツの可能性。(3)、地方公共団体等における地域メディアコンテンツの制作・活用ニーズ。(4)、地域メディアコンテンツの制作・流通促進のための具体的方策。
2、審議スケジュールということで、次のページのとおりとさせていただいております。本日1210日をもちまして第1回会合とさせていただき、来年6月中旬をめどに、約5回の開催を予定してございます。また、この研究会の会合に並行しまして、各自治体あるいは放送通信事業者等に対してアンケート調査の実施も行っていきたいと考えてございます。また、2回目からの会合につきましても、関係者のヒアリング等を進めていきまして、6月の中旬の第5回会合におきまして報告書を取りまとめさせていただきたいという想定をしてございます。
以上でございます。
【小林座長】  ありがとうございます。
ただいま、検討事項と、スケジュール的に来年の6月まで続くのだというご説明がございましたが、今の進め方につきましての事務局からの説明につきまして、何かご質問等ございませんでしょうか。
それでは、特にございませんようですので、ご了解いただけたものとして、資料4の進め方に基づいて、これからの研究会を原則進めていくということにさせていただきます。
次に、今回、第1回目でございますので、私のほうから、資料5になるかと思いますが、1枚紙で用意してきましたものについて、私なりにこの研究会で論議しなければならないことはこんなことなのか、あるいは検討していく物差しの幾つかはこんなものになるのかなということで、若干お話を申し上げて、皆様のご意見といいましょうか、若干の質疑を行いたいと思います。
最初は前置き的なことですが、私は社会学の出身なものですから、地域の問題を考えるというと地域社会学とか、60年代ですが、我々のころはまだ都市社会学と農村社会学というふうにはっきり分かれていた、それだけ都市と農村が別の原理で営まれていたという、そういう時代に社会学を学んだあれからいたしますと、戦後、日本の地域で何が起こってきたのかということを考えてみますと、この中にもかなりお年を召した、私ぐらいのお年の方がいらっしゃるので、ご記憶の方もいらっしゃると思いますが、当時、社会学者というよりは、エッセイストとしてというか、ルポルタージュ文学の1人の柱としてきだ・みのるという人物がおりました。彼の問題提起の書、ここに文字で記そうと思いましたが、すさまじい題名でありますので、あえて抜きました。それは「気違い部落周遊紀行」。
当時、彼は東京の八王子に住んでおりまして、そんなに今の八王子市外から離れていない、今は村でなくなりましたが、恩方村というところに住んでいた。恐らく、今だと陣馬街道中心地からものの10分から15分行けば、そこに着いてしまうあたりですけれども、そこにフランス帰りの社会学者として、ある種の隠遁生活を送る中で、その村落共同体の様子を克明に描き出した、研究書ではなくてルポルタージュ文学の一作をものにしました。
これを読んでみますと、ほんの八王子から十数キロとか20キロも行かないところでありながら、メディアはもちろん何もない。それから彼の言葉をかりると、四方を山に囲まれていて、世界のことについては当時の村民はほとんどリアルなイメージがない。毎日毎日の生活が山に囲まれた数十世帯の人たちとのコミュニケーションで朝が明け夜が暮れていくと。その中での相互の交際と自然とのつき合いだけがすべてであるというようなことが書いてあるわけです。50年代になりますが、そういう時代が東京のすぐそばといいましょうか、八王子のすぐそばで営まれていたということを考えますと、ここ四、五十年の間にいかに大きい変化が日本の中で起こってきたのかということだろうと思います。それはきだ・みのるの書いた本から10年ぐらいたった60年末ぐらいから、ずっとそういう動きがあるだろうと思うんですね。
そういう中で基本的に最近まで、一極集中化の中で常にローカルな部分というのは解体していったり衰退していったりするという、そういう相のもとで語られてきた部分があるだろうと。したがって、地方は−−この場合は八王子の恩方ではなくて、地方ということになってくるわけですが、地方はだんだんエネルギーを失っている、活力がなくなっている、したがって中央依存が進んでいる、そういうことで語られてきた部分が多かったと思うんですね。しかし、最近、そこらの事情がちょっと変わってきたというか、依然として、そういう衰退・解体の相のもとで語らなければならない、そのほうが多いのかもしれませんが、しかし、その一方で思いがけないところでものすごく元気のいい地域が出始めているということです。
きょう来ていただいて、後ほどお話を伺う北海道の西興部村というような場所も、実は私たち、失礼ながら、「どこだ?」という感じなわけですよね。恐らく、一時期まで、ある努力をしないと、今話をした解体・衰退の中でどうなっていくかという、そういう部分を抱えていたはずですけれども、そういう中で、それじゃ我慢ならないぜという形で、いろいろの意味で立ち上がっている地域があり、その立ち上がったところは、いろいろな形でそこで活力がまたよみがえり始めているという部分があるわけですね。
私は古い人間ですから、「自力更生」なんて、何かを思い出すような言葉をあれしましたが、自力更生意欲の有無によって、かなり落差が出てきているのではないか。しかし、その落差が出てきている元気のいい部分は、ポコッポコッと取り上げられているんですが、全容がよくわからないという部分があります。全容がわからないので、今起こっていることは、恐らく西興部村なんかもそうでしょうが、明らかになったところに、みんな見学に行くわけですね。そこの役所の窓口の方は、そういう見学の応対に忙殺されて、ふだんの仕事ができないみたいな状態が出ているということがあります。
しかし、それは数少ないのか、結構どっこい、あっちこっちでそういう動きが根づき始めているのか、そこらのところをまず知りたい、明らかにしたい、こんな例もありますというようなことを持ち寄る場に、ここがひとつなっていったらいいのではないかなと。その中で、元気のいい地域と、依然沈滞している地域との分布というのか、あるいはそのトータルな構造が日本社会の中で今どういうふうになっているのかというあたりを、6カ月ある中でできれば見取り図的にだんだん明らかにしていけないかなと。そういう知恵というか情報をお寄せいただきたいなというのが、私の座長としての希望の1つであります。
次は、メディアの展開というところから……。どうも年を食うと、歴史をたどって、そこから学ぶみたいなアプローチが非常に好きになりまして、また古い時代から始まるわけですが、先ほど、ちらっと申し上げましたように、八王子の恩方村のきだ・みのる的世界から、日本がある意味で、象徴的には池田内閣時代の所得倍増政策あたりから、どんどん日本全体の地域構造が変化を来たしてきて、ある時点から、つまり社会学の中で農村社会学と都市社会学のすみ分けが難しくなってきた。というよりも、農村社会学が成り立たなくなってきた。今、農村社会学というのを正面切って名乗っていらっしゃる方は、私も社会学をかなり離れて長くなりますが、ほとんどおられなくなったんですね。で、何となくあいまいな地域の社会学なんていう領域が出てくる。
したがって、恩方村的な構造というのは日本からほとんどなくなってしまうわけですが、そういう地域社会が変化する中で、最初に地域メディアとして出てきたのは有線放送電話であるだろうし、それから−−あえて「ケーブルテレビ」と書かないで「CATV」と書いたわけですが、そのときの「C」はコミュニティであったわけですけれども、要するに地域に根ざしたテレビメディアという形で、先ほどちょっとお話をしました伊豆の下田とか長野県とか、そういうところでケーブルテレビを始めて、難視聴解消をするなら、それと並んだ形で地域に貢献するメディアになろうよという、ある種のCATVロマン主義みたいなものが70年ぐらいから開始された。
これは例えばアメリカのようにビジネスとしてのCATVビジネスをやってきますと、採算の合わないローカルメディア、地域チャンネルというのはどこもやりたがらない。したがって、規制としてやらねばならないという、要するにパブリックアクセスチャンネルとか、コミュニティアクセス、あるいはエデュケーショナルチャンネルは必ず持たねばならないという、規制の枠の中でやらせるという感じだったわけですが、日本の場合は進んでやろうという、そういう気運が最初のころあったわけですね。それはいまだにしっかり根づいている部分があって、ケーブルテレビビジネスにかわってきてからも、依然としてそういう動きはあちこちでしっかり根づいている。
私もときどき三重県なんかに行くんですが、三重県のケーブルテレビは、今の知事のあれなんかもあって、結構ネットワークを組んだり、あちこちに育成策をやっていますけれども、その中での地域の中に根ざしたケーブルテレビというのはどういうものでなければならないのかという発想は依然としてあるだろうと思います。これはだんだん有線放送電話が場所によってはブロードバンドネットワークに変身してくる。ローカルの中で有線放送電話システムを変えていく中で、それが東京なんかも顔負けの高速のブロードバンド網に変わっているというような部分があったりしますので、歴史的には一番長いんですが、これからまたそれをどういう形で生かし直していくのかというふうな問題があるだろうと思います。
それからもう一つ確認しておかなければならないのは、2点目と3点目に関係することでありますが、先ほど私が地域情報化に結構最初のころからコミットしてきたという話をしました。これはご承知のように1980年半ばぐらいから、意識的な政策として、当時の郵政省や通産省を先頭に、そのあと自治省なんかも加わって進められてきた、ある意味で地域メディアコンテンツを育んだかもしれない政策であったと思います。
しかし、これも私ぐらいの世代の皆様方は実際の体験としてお持ちかと思いますが、当時はいわゆるニューメディア技術というものが、残念ながら技術のレベルで未成熟であった。ですから、政策に基づく構想は考えられても、それを実現するための使えるリーズナブルなコストの使い勝手のいいメディアがあるかというと、右を向いても左を向いても何もないという状況だったわけですね。
したがって、恐らく、そう言ってもだれも反論はなさらないと思いますけど、キャプテンシステムのような当時の技術を使って、なおかつテレビ受像機と電話回線で何とか使えるという妥協の産物としてのキャプテンシステム、一般名で言うと例のビデオテックスというものですけれども、ありとあらゆるというか、多くの地域情報化政策がこのキャプテンシステムに依存したという部分があります。回線は2400bps で、キャラクタージェネレーターがないので日本語はトロトロと出てくるというようなレベルで、結局きめ細かい情報を伝えようにも、字数が1画面あたり百数十字しか出てこないというふうな、そういうものに依存せざるを得なかったということが、私はある意味で当時の地域情報化の熱を冷ましたとは言いませんけれども、ブレーキになったというふうに考えております。
そういうことから考えますと、80年後半から90年でしょうけれども、私はエンコーダーの民主化なんていう言い方をしているわけですが、別にエンコーダーという言葉を使わなくてもいいかと思うんですけれど、要するに受信機だとか受像機だとか再生機というのは、これはみんなデコーダーなわけですが、何かを表現する、それを発信する、しかもそれが非常に低価格でというか、それならおれでも買えるなというようなレベルのものが続々と出始めてきたのは、やっぱり90年代に入ってからですし、それの最たるものがインターネットになってくるのだろうと思います。
しかも、それはある意味でエンコーダーの融合で、例えば今私たちの研究所でEラーニングの実験というのを三重大と四日市大でやっているわけですね。これはそれ自身もある意味でエンコーダーなんですけれど、私、原理的にどういうあれかわかりませんが、ISDN回線を2本束ねてという回線構成で、3元で、私たちの研究所を発信基地といいますか、ベースにして、私たちの研究所のスタッフが週がわりで「IT時代を生きる」という基本テーマでレクチャーをし、それに基づいて残りの半分を四日市大や三重大に集まった市民の人々とその問題について検討するというようなことをやっているんですが、これを四日市ケーブルの方が四日市大学の会場で録画して、そして三重にはCATVで−−恐らく地元はそのままリアルタイムで流していると思うんですけれども−−流すと同時に、これの勧進元になっているDCSというNPOのサーバーに入れて、ストリーミング送信で、開講している間−−今ちょっとサーバーが調子が悪くてあれだと言っているんですが、DCSのホームページからケーブルテレビがとったビデオを再送信しているというふうなことをやっています。
これはそこに書いてありますエンコーダーの融合化ということで、時差を設け、1つのリソースをいろいろな形で使い合って、最大限の視聴効果というか、それを上げる、要するに接触率を上げる。昔の映画におけるマルチウインドウというようなことを、私たちのような貧乏研究所もいろいろな仕組みつくってやると、原理的には日本じゅうの人たちに見てもらえるというような環境が出来上がる。これがエンコーダーの民主化、エンコーダーの融合ということで、しかも組み合わせが無限になってきた。いろいろのバリエーションの中で、いわばいろいろのエンコーディングシステムが出来上がっていくということですね。
ですから、今の流れというのは、要するに地域メディアの展開というメディア論、あるいはメディア技術の展開を考えてきたわけですけれども、そういう意味ではエンコードする、言いかえれば、それこそコンテンツがあれば、さっきのあれで言えば、元気のいい地域からの発信したいという意欲があれば、それをいろいろのいわばエンコーダーを使って広めるという条件は急速に整っていますし、さらにブロードバンド化が進む中で、それはもっと多様性、現実味、手軽さ、安さというのが出てきていると思います。そこには当然、先ほど言いましたCATVからケーブルテレビ、ケーブルメディアもありますし、それからこの中にもご自身で取り組んでおられる地上波デジタルの可能性、どういうふうに使っていくかというふうな問題も、エンコーダーの融合に1枚かむ新しい役者として、今、控えているんだろうと思います。
そこで最後に、そんな話をした上で、この研究会で考えてみたいことということで、1つは先ほど申し上げましたし、1番目のところに書いてありますが、地域の活力の現状をできるだけ幅広く、かつ網羅的にすくい上げてみたいと。一生懸命何か産婆役的なことをやらなければならない現状なのか、既にちょっと一刺激与えると地域の活力ある情報が、コンテンツがどっと出てくる情報なのか、そういうあたりを確かめてみたいということであります。
そのとき、ただ、考えなければならないのは、1つは先ほど申し上げましたように、地域は多様である、地域メディアコンテンツと言ったときの地域ってどんなふうにとらえたらいいのかというと、一般的に地域メディアというと、何となくそれこそ地方のことを思い浮かべてしまうわけですね。しかし、きょうの構成員の皆様方の中には、そういう地域を彷彿とさせる地域の方もいらっしゃいますし、また世田谷というような地域を踏まえて出てきていらっしゃる方もおられるわけです。
ですから、私たちは地域と言ったとき、そこに傍線が引いてありますが、rural localか、あるいはこういう言葉があるんですが、rurban。rurbanというのは、要するにurbanとruralを一緒にした、完全な農村地帯と都市との間のrurbanなんてことがあります。それから八王子なんていうのはsuburbanで、ベッドタウンみたいなところですね。それから大都市真っただ中。いずれにも、これはローカルな問題、世田谷には世田谷ローカルな地域の環境というものがあるでしょうし、八王子は八王子で、rurbanなところはrurbanですね、ruralはrural で、それぞれのその地域の事情があるし、それぞれの地域ごとに求められるメディアコンテンツというのは違っているのではないか。
きょうは西興部の日下さんが来ていらっしゃいますので、そういうことを含めて、3つほど北海道関係のホームページを集めてまいりました。
一番レベルの高いところから言いますと、これは北海道庁が主催しているわけですが、このホームページをつくっている会社は、要するに委託しているところは、すべてこれは札幌にある会社なんですね。これ自身が第1回電子自治体大賞とかもらっているわけで、デザイン的には私の感じでは大したことはないし、ここらはヤフーのページを彷彿させるような、何もあれはないんですが、中身が結構微に入り細に入りするわけです。これは今、温泉・銭湯というのをやったわけですが、ここに銭湯なんてサイトがあるわけですね。要するに、個人の人だと思うんですけど、札幌とか函館にある銭湯をほぼ網羅しているわけですね。その銭湯に行くとどういう湯船があって、ビールが幾らで売られているみたいな、そういうところまで入っているわけですね。
つまり、何が言いたいかというと、結局、北海道庁が主催するポータルの中に、こういう個人のレベルの情報まで入っていて、ですから銭湯みたいなことで幅広くて奥深い情報が個人のホームページにも導入することによって出来上がっていくというふうなことがあります。その一たんを示しただけですけれども。したがって、この中には、恐らく札幌という、urban でいいかと思うんですが、urban local なものから−−これはたどっていけば、当然、西興部のホームサイトなんかにも行くわけで、それぞれのホームページがかもし出すニュアンスなんていうのは違うわけですが、例えばインターネットの中におけるご承知のポータルという情報を整理する手法によって、リンクの1つの言いかえかもしれませんけれども、こういうことによって地域メディアコンテンツのあり方というふうなものが大きく変わってくることがあります。
これは西興部村なんかも入るわけですが、ここが西興部村になるわけですが、今、オホーツクのこのエリアの方々が、オホーツクファンタジアという名のもとで、お互いに協力し合いながら地域興しをやっていこうといういろいろな動きがあって、これもつまり−−網走がurban かというと、ちょっとあれですけど、しかし、この中で言えばurban であり、そこにsuburban local、rurban local、それから完全なrural local が一緒になって広域的に何かやる。こういうふうな結合も実はこのホームページの上から入っていけるということ、つまり、側面からインターネットのポータルなりリンクという手法が市町村間の結合を応援しているような構造が出始めているということが言えるだろうと思います。
これは西興部村のリンクにあったんですが、恐らくこれは日下さんのあたりから話があるかもしれませんが、田澤由利さんという、奈良県出身で、ワイズスタッフという会社ですが、さっき会社概要を見ましたら、一応登録は自分の生まれた奈良県にあるんですけど、だんなさんの転勤で北海道の北見に来ておられるんですね。そこでSOHOのあれを起こして、全国の女性を組織して、こういうふうな業績をそれぞれのSOHOのメンバーが上げている。しかし、今、挙げた女性の方は、また、だんなさんが転勤すると北見を去って、次の転勤先でまたこういうものを起こされる、ある種のゲリラ的な……。ご自身はだんなさんに従って移動をするようなことをされているんですけれども、インターネット上では定点になるようなことがあるわけですね。どこに行っても一貫して仕事をしている。
こういうふうなことも地域メディアコンテンツを考えるときに、今、たまたまこの人は北見から発信しているけれど、全国的な動きをしていくかもしれないというふうなことで、こういう人を含めて、これからエンコーダーが民主化し、使い勝手もよくなり、安くなってきているわけですが、これからはこういうふうなエンコーディングの主役を、どんどん組織したり、見つけたり、活躍したい場をつくっていく。それは行政だってエンコーディングの主役であるわけですし、そこに「市民アンド/オア私民」と書いてありますが、さっきの銭湯はどこにあるぞという中には、左側の市民は余りいないわけです。シチズンという部分はなくて、趣味の世界になるわけですから、私民になるわけですが、それは1人の人間が市民であり、なおかつ私民であってもいいし、私は私民のところで勝負するぜみたいな形での主役でもいいわけですが、そうした人たちの役割があるだろう。当然、NPOがあるだろうし、地域企業だって、別に全国企業でもいいけれども、こういうエンコーディングの主役の可能性を求めていくことがあるだろうと。
最後に、そういう中で私はやっぱり地域メディアを活性化させる大きな起爆剤というのは、一に地方自治のあり方にかかっているのだろうと。小泉さんはどこまでおやりになるかわかりませんけど、自分のことは自分で考えなくちゃという、そういう精神が出てくる。防衛と外交は国に任せて、教育から福祉から、できるだけ地方で考えて、地方に合ったものにしようよというふうな雰囲気が。したがって、これは財政の地域移譲なんかも当然関係してくるわけですが、私は地域メディアというか、元気のいい地域がどんどんふえてくるかぎは、これからの地方自治政策がどういうふうな形で進んでいくのかということにかかっているだろうと。
そういう意味では、まさにこの研究会が、郵政省のあれではなくて、自治省と一緒になった総務省の中で行われるという意味では、この研究会のテーマは非常に格好なテーマではないのかと。ぜひ、旧自治省と旧郵政省が手に手を取って、地方自治政策、メディア政策を進めていくと、地域メディアコンテンツの活性化は、十中八、九とは言いませんが、ガクッと進むのだろうと思います。
5分ほど予定の持ち時間を経過いたしましたが、私の出だしのお話ということにさせていただきます。どうもありがとうございました。
私の話は大したあれじゃなくて、きょうは日下さんのお話がメインでございますので、5分かそこら質疑応答といいますか、コメントや何かいただけるようでしたら、大変ありがたいですし。
【中根構成員】  どうもありがとうございました。
1年ほど前に郵政研究所月報の中に、田園情報社会だったか田園情報都市とかいう、そういう提言が3回に分けてございました。これは私、非常に関心を持っておりまして、今のお話と非常に共通した項目があると思うんです。例えば埼玉県は700万の人口を持って、あるところは大都市であり、あるところは田園なんですね。そういう中で私どもの独立U局がいかに情報発信の根源を求めるかといいますと、私はやはり田園情報文化都市みたいな、都市というかコミュニティと言ったほうがいいんでしょうね、そういうものが非常に概念として重要だと思ってまいりまして、そういう考え方で私どもの局を運営しているのであります。
最近の情報としては、川口市にスキップシテイ、これはNHKの世界に誇るアーカイブ、これを設立するのに私もいろいろ関連してきたんですが、そういう基地、それから北のほうに本庄市があるんですが、そこには映像と環境の、早稲田大学の大学院が2、3年後に設立されると。こういった地域の動きがありまして、テレビもインターネットも、また電話も、いろんなメディアがたくさんあるわけではございますけれども、私は今までの系列ネットワークの時代から、新しいいろんなメディアを総合的に使いこなすネットワークの時代に来ているんじゃないかと。
その場合に一番大事なのは、今お示しがあったようなコンテンツ、小さな小さな情報でも、ものすごく重要なコンテンツ。それからもう一つさらに重要なのは、今までの秩序みたいなものと全く関係なく、ネットワークの創造みたいなものを進めていくことによって、デジタル化のよさ、自治体もそうでしょうし、放送局もそうでありましょうし、また移動体通信もそうだろうと思うし……。そういうのを進めていく組織が日本にはないんですね。だから、そういう新しいメディアコーディネーターみたいなものを。今ちょうどいいチャンスなのではないかと、お話を聞きながら感じましたので、これは私は1つご提案したいと思います。
【小林座長】  ありがとうございました。
ほかに。もうお一方、お二方ほど、コメントがございましたら。
【天野構成員】  小林先生のお話をすごく興味深く伺ったんですが、私が先ほどの「あしたの日本をつくる協会」で島根のほうを調査しましたときに、県のホームページから個人のところへリンクを張るのはいけないというふうなことで、かなりいろいろ議論があったんですけれども、北海道の場合はそれが可能になっているわけですが、そのときの議論ですとか、どういうふうな形でそれが可能になったのかというのをご存じでしたら、教えていただきたいんですが。
【小林座長】  私は日ごろウオッチャーとして見ているだけで、まだあれですけど、先ほど申し上げましたように、このホームページは勧進元は北海道庁ですけど、中のサイトを見ていきますと、札幌のデザイン会社とか札幌のホームページ制作会社とか、そういうのがかんでいるんですね。恐らく、そういう中にはNPO的なものもあるのではないか。三重の情報化なんかやっていても、研究助成金みたいなのを出しても、NPOの人がやると非常にきめ細かい配慮をするわけですね。本当に使えるのかというあたりを確かめながらやるような部分があって、私はまだ内輪の話は聞いていませんけれども、北海道庁は金は出すし基本的なポリシーはあれするけれど、できるだけいわば北海道の息吹をあれするようにと。この中に「北海道人宣言」なんていうのが、まず最初にあるわけですね。理念が大体それに沿う限りだったらどんどんやってちょうだいみたいな感じではないかと。
ですから、実際のあれは聞いていませんけれど、恐らく組織論的には、官のやつと個人の趣味のページがあれするのはいけない、なんていうふうなことはやめようよみたいな、そういう申し合わせというか、真の意味のポータルにしようよみたいなことが、当然それはどこかでネゴシエーションされたと思うんですけど、それを実現しているから、こういう……。だから、何が出てくるかわからない北海道庁主催のポータルみたいな感じになっているんだろうと思います。私もそこは調べてみたいなとは思っていますが。
ほかにいかがでしょうか。
それでは、きょうは、先ほど来お話を申し上げておりますように、西興部村の日下さんに遠路はるばる来ていただいておりますので−−大変失礼ですが、どこにあるかわからない、「そこはどこだ?」というふうなところで、しっかり地域メディアそのもののインフラの構築と、その中でのコンテンツ制作みたいなことに日ごろ努力しておられる立場から、とりわけどういうきっかけでここまで来たのかというようなことも含めて、これからの議論の手がかりになるようなお話をしていただければと思います。よろしくお願いいたします。45分ほどお話しいただいて、そのあと質疑応答をしたいと思います。
【日下】  初めまして。私、北海道の西興部村から来ました日下といいます。本日はこの研究会にお招きをいただきまして、ありがとうございます。
10月に、構成員になられておりますパシフィックキャピタルジャパンの鈴木さんが西興部村に来られたことがご縁で、今回こういう席にお招きをいただいたわけですが、ふだん、視察の相手はしておりますが、このような席でものをしゃべるというようなことは全くしておりませんので、多分ふだん聞き慣れているようなお話の趣向とはちょっと違ったような趣向の話になろうかと思うんですが、そこら辺はご勘弁をいただきたいなと思います。
今回、メディアコンテンツ研究会ということで、うちがやっているもののコンテンツに対する考え方というのは、今回これから皆さんが研究会の中でつくり上げていくものと、多分大きくかけ離れている部分もたくさんあるだろうと。特に地域性にこだわってできている、いわゆる今回のマルチメディアなものですから、そういった意味ではちょっとずれた部分もあろうかと思いますが、そこら辺についてはご勘弁をいただきたいと思います。
それでは、まずお話をする前に、先ほどもちょっとお話の中にありましたように、西興部村ってどこにあるのかと。当然、わからないと思います。僕も東京の何区がどこにあるのかと言われてもわからないので。ここに紋別市というのがあるんですが、紋別市ぐらいは、ひょっとしたら流氷ということでご存じの方もいるのかなと思います。紋別というのはオホーツク海に面していまして、そこから約30分ほど内陸、山間に入ったところに、うちの村、西興部村があります。
西興部村は人口が約1,250人ぐらい、一時、多いときには4,500を数えたんですが、当然、過疎のあおりをどんどん食いまして、90%が森林である西興部ですが、木材も、今の景気は15年前から変わっておりませんので、そんなあおりも受けて、西興部村は1,250人の人口と、今現在、農家は20戸を切っております。すべて酪農業。畑作はない。これは歴史的な部分と土地柄がありまして、牛飼いしかできないという地域性があります。そんな中で、いかに地域を活気づけていくか、守っていくかというようなことで、いろんな施策を打ってきています。そういった部分の中の1つが、ある意味、今回のマルチメディアだった部分があるわけです。
当然、どこの市町村もそうですが、西興部村は総合計画というものを立てて、その総合計画に基づいてどんな地域づくりをしていくかというようなことを進めてきたわけです。西興部村のマルチメディア館は隅のほうにあるんですが、至って典型的な農山村でして、当然、産物も山菜ですとか、それから楽器工場。これは昔の木工場の名残りになるんですが、今は木工場がない分、エレキのギターをつくって、高次加工をして出荷をするというような形で、唯一、木工の名残りを残しているというようなことでございます。ただ、ここはうちの誇れる事業所でして、うちの独身者の大半がここに勤めているということで、よその市町村から、エレキというのはなかなか魅力的なものがあるらしくて就職に来てくれる。こんな影響もあるので独身住宅も建てるというようなことで、人口の安定にも一役買っているのかなと。
エリンギって、聞いたことがあろうかと思いますが、ここ何年前ですか、4、5年前から脚光を浴びつつある茸ですが、ステーキにして食べるとおいしいということなので、うちで生産加工施設もやっています。
今お話をした生産施設というのは、うちの産業を支える基盤です。
今度は福祉。西興部村の高齢化率は約30%を超えていますので、福祉にかなりの地域づくりを求めなければならないという実態があります。福祉のまちづくりをするのに、これはケアハウスなんですが、約30人ぐらい入っています。軽費老人ホームですね。特別養護老人ホーム、これも50世帯入っています。知的障害者更生施設、これも50世帯入っています。福祉に携わる入所利用者だけで120130人います。当然、これを支えるスタッフが7080名います。当然、そのスタッフにも家族がいます。ですから、約300人近い福祉人口がいるということです。ですから、平成7年の国勢調査から今回の平成12年の国勢調査で、61人、人がふえている。なぜかというのは、こういう人口の影響が非常に大きい。年間、20人ぐらいお亡くなりになりますから、5年間続くと100人お亡くなりになっているはずなんです。ところが、こういうことで人口の安定化を図っているということで、福祉というのはうちの村にとってある意味立派な産業になっているという実態もあります。ですから、そういった部分にかけるうちのスタンスも、いろんな施設を建てたりして、人口の安定化、就労の場の安定化を図っているという流れがあります。
それから、うちみたいな村は、よそから人が来てくれなけば地域は活気づかないというのがあります。当然、地元に住んでいる人だけが仲よく、「こんにちは」、「おはよう」とやっていてもいいんですが、やっぱりよそから人が入ってこないと活気づかないんですね。それで、ホテルを建てて。これ、何で西興部村みたいなところにこんなホテルを建てるのかと、当然皆さん思うかと思うんですが、宿泊施設がない自治体というのは活気づかないんです。会議もやれない、何もやれない。民宿だけでは人を集めて会議ができないんですね。やっぱり、こういったものを。大した建物じゃないんですけれども、うちとしては地域の住む人がそこで何かをする、活気をつける、そういったものにもこういったものが必要ということで、これは平成7年に建てたんですが、こんなような施設をある程度整備をしてきました。
これは平成元年に、うちはJRが廃止になったんですね。廃止になったことによって、まちの真ん中に空洞的な地域ができた。レールを全部はがしたわけですから。そこにこういったホテルですとか病院、それから今見えているマルチメディア館だとか、いろんな公共施設をつくって、まち並み再開発ということで地域づくりを改めてやりましょうということでやってきた歴史があります。
例えばホテルが建てば、ホテルに来た方が何をするんだと。やっぱりそういう時間をつぶす場所。うちがこのマルチメディアをやるときに、アンケート調査をした経緯があります。「マルチメディア」という言葉がわかりますかと村民にアンケートしたら、50歳以上の人はほとんどわかりませんね。コンピューターという極めて機械的な反応がアンケートの答えです。それでマルチメディアってそんなものじゃないでしょうと。何か触れてみましょうということで、こういう施設をつくって、体験と交流というものを1つの村づくりの施策にしようということで、こんな遊ぶ施設をつくっている。
これは木工おもちゃの建物で、自分らで遊んで、触れて、さわって、つくって楽しみましょうという体験型の木工施設ですが、木の夢と書いた「木夢(こむ)」。それから今回のマルチメディア館、IとTと夢で「IT夢(あとむ)」。それから道の駅もありまして、道の駅は「花夢(かむ)」。何でも「夢」をつければいいということじゃないんですが、希望の持てる言葉ということで、全部「夢」という言葉をつけて。
うちは都市と山村の交流。一村一品を含めて自然を生かすものは生かす。これは鹿牧場。野生の鹿です。野生の鹿がそこで少しずつふえていっている。これで鹿肉を見ると、何となく、ここでかわいいねと言って、ここでつぶしているのかという話があるんですが、そんなことはないです。これは冬場になるとハンターがどんどん入ってくるんですね。どんどん撃って、置いていくんです。買ってくれと。それをしたのが缶詰で、こっちはまだ育てている最中なので。つぶして産業にはしていませんから。
当然、自然は自然の中に溶け込める建物が必要だということで、田舎は田舎っぽく、自然の中で自由に遊び回れるようなコテージだとかログハウス、こんなものをつくって、できるだけ村外から息吹きを吹き込んでもらおうというようなことでやってきました。
先ほどから建物を見ていただくと、何となく気づかれたかと思うんですが、ほとんどオレンジなんですよ。うちの公共施設、JR跡地はほとんどオレンジで統一しています。色彩の統一というのは、まちづくりの中でイメージをつくる色ということで、非常に明るい色ということで、こんなことを公共施設を含めてやってます。当然、住民にも協力を願っていますから、そういったもので色をつければ何十万の補助を上げましょう、だから皆さんで色彩統一をやりましょうと。何十年もかかる事業です、これは。ただ、やっぱり気づいたときに始めなければならないので、それが今少しずつ動き出してきた。こういう花づくりも、少しずつ動き出してきた。花づくりなんかは、海外に住民を行かせて視察して、毎年20人ぐらい研修をしてくるようなこともずっとやっています。
ただ、これは旧NCN設備ということで出ているんですが、うちの村は先ほどから話が出ている難視聴というのは絶対逃れられない条件なんですね。平成元年から今回のマルチメディアができるまで、ほとんど再送信プラス自主放送という形でテレビをやってきました。その流れを受けて十数年たった今リニューアルが必要だということで、今回の光ファイバーを用いたというような形になっています。
当然、インターネットなんかも、うちはいまだにアクセスポイントがないんですね。アクセスポイントは今マルチ館を建てたので村がやっているんですが、アクセスポイントが入らない。これは将来的にも多分難しいというぐあいに言われています。やっぱりどう考えても西興部村では儲からないということなんですね。だから、線を引いてくれない、営業してくれないという実態があります。IS64は確かにできます。ただ、今、東京では100メガと言ってる時代ですから、64でどうするんだということになるんですが、フレッツだとかADSLだとかも来そうもないので、今回うちの村でマルチメディア事業化の中で入れたという形で動かしています。
今回、うちがマルチメディア事業をやった概要は、テレビと、FTTHという伝送路のシステムとITサービス。FTTHを選んだのは、昔、同軸でやっていて、同軸ではまずい点がたくさんあったんですね。将来的にインフラ整備をまたするのかというのは、なかなかできません。ですから、将来、先ほどからの話でコンテンツがどうなっていくかわからないのに、どんどん重くなってきている中で媒体を確保できるようにということでFTTHにしたというのが1つ。それから北海道は冬が半年です。同軸は500メートルに1カ所ぐらいアンプが入りますので。外のアンプをいじるというのは大変なんですね。うちの場合、離れている家で17キロぐらい離れています。その間に何も入りませんから、そういう意味では非常に維持もしやすいということでFTTHを選んでいます。
今回、うちの村がやったサービスのほうにお話を移させていただきたいと思うんですが、これがうちのコンテンツかということになると、コンテンツと言っていいのかどうなのか、ちょっとよくわからないんですが、まず、うちが事業を決めるときには……。うちは650戸なんですよ、世帯が。650戸が全部見えるんですね、うちみたいな地域は。当然、東京はこれだけ広いわけですから、1戸1戸は見えないですけれども、我々は1戸1戸の顔が見えるんですね。1戸1戸の顔が何を望んでいるのか、どんなものを欲しているのかというのは、1軒1軒わかります。その1軒1軒わかった中で、1軒1軒のわがままを聞いていては事業になりませから。その総体的な声というのは地域として大体つかみ取れます。それが今回選んだコンテンツにすべて反映しているというぐあいに考えています。
ですから、アンケートをやったときに、いみじくもこんなアンケートの答えがありましたね。お年寄りが、私たちはもういいんだけれども、子どもたちにやっぱりそういうマルチメディアはあてがってほしいという意見が相当多かったんですね。これはやっぱりマルチメディアという、ある意味、今の社会現象をお年寄りなりに理解しているんだなと。こういうものを地域に住む子どもたちに与えてやらないと、うちに住む子どもたちが多分大きくなって困るんだろうなという理解があったのかなと。だから、そういった部分で1人1人の顔が見えますので、その顔を見た中で我々は事業をどういうぐあいにしていくかということを、小さな村ですから、それぞれ部会を開いて、農家なら農家の声を、教育なら教育の声を、そんなものを聞きながらものをつくってきています。
CATVは当初うちの村は10チャンネルぐらいしかなかったんですね。10チャンネルの中で自主放送と言われるものを1つやっていました。土・日、取材に行って、それを編集して流すという行為です。1週間、同じ番組を流しています。生放送はしていません。人件費の関係上、どうしても生放送をするだけのスタッフを用意できないんですね。ですから、すべて編集放送です。これが今回の光ファイバーになったことによって、じゃ、生中継が始まったのかと。始まっていません。もっともっと財政も厳しくなってきていますから、その放送のために、6人、8人のスタッフを用意できません。ですから、同じです。
でも、住民は生中継を別に要求しているわけじゃないんですね。地域で起こったときには、地域の関係する人というのは、やっぱり地域行事に行くんです。だから、生放送をしても、家で見れるのはお年寄りだけの話であって、そこに参加者として行ってますから、中継は見れないんですね。中継をやっているのは議会放送だけです。議会は傍聴席はあるんですけれども、過去、傍聴席にほとんど人は来たことはありませんから。ですから、うちが編集して放送しているものしか見ていません。ただ、今回、中継が入るようになってから、中継を住民が……。お年寄りになりますね。平日、議会なので、皆さん仕事をしているので。見ていることの事実関係はわかりました。うちがミス音声を出したときに、電話がかかってきました。
「今の声、何だ」と電話がかかってきたので、ああ、少なからず見ている人はいるなということで、議会中継も今やっています。議会中継でいいのは、理事者側と議会側が今までにない緊張感を持って議会を進めるようになるということです。これは村民1人1人が見ているとなると、別にふだんは手を抜いていたという意味じゃないんですけれども、そういうお互いの緊張感が出ることによって、もっともっといい運びになる。
今回、NCN放送も、西興部コミュニケーションネットワークというんですが、そんな中で地域の人がうちに望んでいることは至って簡単なことです。自分が主役なんですね。みんな、「私を映さないで」と、よくやるんですけれども、あれ、「映さないで」と言うのは「映して」と言ってるんですね。やっぱり、映らないとおもしろくないんです。特に子どもなんかだったら大変ですよ。「うちの子どもが映ってない」って、電話来ますから。やっぱり運動会に出て、1列目を映して2列目が映らなかったら電話が来る。「何でうちの子、映らないんだ」と。やっぱり、うちの子が映っているのを見たいんですよ。
だから、地域コンテンツというのはそこにもとがあるんですね。例えばNHKでもどこでも、北の何とかかんとかとか、南の何とかかんとかって、沖縄をきれいに映したり、北海道の何かをきれいに映したりして放送されたときに、我々がそれをどれだけ見るかといったら、自分の番組以上に見ないですね。やっぱり自分たちが主役になっているものを見たいんです。だから、いろんな地域番組がつくられていますけれども、その地域を映されたときに……。例えば民放で所さんの1億人の何とかという番組がありますよね。自分のところも出たことがあるんです。自分のところが出たら、みんな見るんです、村民は。そして沖縄が出たら余り見ないんですね。隣まちとか近く、自分が行ったことのあるまち、知ってるまちが出ると見るんですよ。だから、やっぱり地域コンテンツって自分の足もとに近いところにものすごい意識があって、だからローカルになればなるほど、みんなそれぞれ地域にすごいこだわりを持っちゃうものですから、一元的なコンテンツで受け入れられるかということにならないんですね。
だから、うちは何の卓越した技術もなく、ただ住民がどんなことを期待しているのかというのをつまんで映像をつくっている。ですから、子ども、老人の番組が非常に多い。やっぱりお年寄りは最大の視聴者。子どもは何回も見る視聴者。そのうち、「次、だれだれちゃん転ぶから」から始まるからね。そういう子どもたちが喜ぶ、お年寄りが喜ぶ、住んでいる人が、「ああ、いいね」と見てくれる、そんな番組をつくっています。
それが今は十数年もたちましたので、約1,000時間コンテンツがあります。平成元年からの。ですから、亡くなった方もたくさんいますし、小さいころに、「僕はお父さんを継いで農家になります」と言って、全然違うところへ勤めている方もいますし、そういう歴史そのものが見えます。これだけたまって、すごく自分たちが感じました。特に今は市町村合併とか、いろんな問題が出てきて、ひょっとすると地域が地域でなくなる可能性もある。そうしたときに、このコンテンツは、うちが育った、我々がもとに戻ってつくることのできないコンテンツ、その希少価値観を小さいなりに感じています。
ですから、住民から、「何々の行事があるんだけど来てくれます?」というのはしょっちゅうありますので、できるだけニーズのあるものは行きます。1回行っちゃうと、毎年行かなきゃだめというのがちょっと残念です。例えば運動会を1回撮って、来年行かないと怒る。
「何で今年は来ないの?」って。やっぱり1回行っちゃったら、ずっと行かなきゃだめなんです。もう来てくれると思ってる。でも、横でみんな、お父さん、お母さん、ビデオを撮ってるんだよ。だけど、行かなきゃだめなの。それはうちの子だけ撮っているんです。全体を撮っていないの。だから、撮った人のやつ見たらおもしろくない。どこで運動会やってるのかよくわからない。
そういうような部分もあって、田舎なら田舎なりのコンテンツの中で撮れて、それが地域に喜ばれて受け入れられればいいんだなという、そういうスタイルでやっているのが、うちのコンテンツづくりというか、番組づくりという形になっています。だから、1人1人がコンテンツのネタという形ですよね。だから、10年、こんな光ファイバーになっても番組づくりは変わりません。これは装備で変わるわけではないので、地域づくりは変わっていません。
VODを利用する姿が最近ものすごく多くて、これから一番期待しているのは、お正月はびっちりVODのリクエストがかかると思います。お正月番組って、おもしろくないんですね。
「明けましておめでとうございます」って、ずっとやってる。朝から晩まで。そんなこともあって、皆さんも帰ってくるので、夜中じゅうかかっています、VODが。いろんなもの。冬に運動会を見るというのも楽しいものなんです、結構ね。毎年毎年、自分の成長と息子の成長とを比べながら見ている、そんなコンテンツをいつでも提供できる。
ただし、うちのVODというのは都市型と違って自分でリクエストしてお金を払うわけじゃないので、ですから全部に映ります。僕がリクエストしたやつは、30なら30というチャンネルに映っていますから、全村30チャンネルを入れたら、みんな見れます。それを見て、何だもうおれは走っちゃったあとかとなったら、またリクエスト。そうしたら3分ぐらいずれて同じ番組が出てくる。そんなのが2つ3つ並ぶことがしょっちゅうあるんですよ。やっぱり見るなら最初からという部分があってね。そうやって地域が地域なりに回っていれば。だから、この番組、いついつ何年前のこんなのがあるんだけど、それを入れてくれないかなんて、そんな要望もあります。当然、1時間のを入れるのに4時間ぐらいかかるんですよ、仕組みじょうね。もともとアナログのテープですから。だから、急に言われてその日というわけにいきませんが、要望があれば大体その週のうちに反映できるという形です。
残念なのは、1,000時間をハードディスクに落とせていない。これはお金がかかり過ぎる。1億以上かかりますよ、ハードディスクだけでと言われたので、ちょっと引いて、今、30時間ぐらいしかハードディスクを持っていません。ですから、その中に僕の趣味でピックアップしたやつを入れる。それは、時期、時期で変えていくというようなやり方をしています。
あと、コンテンツも、せっかく動画のコンテンツがありますから、例えばごみの分別収集だとか、そういったものを動画でコンテンツをつくって入れています。これは行政コンテンツなんですが、住民の方がよく電話してくるんです。ごみって何と何を分けるんだと。チラシを配ってもわからない。やっぱり担当者が説明しなきゃわからない。担当者が毎日毎日、土・日、役場に待機しているわけじゃないので。ほかの役場の職員が分別がわかると。これも残念ながら僕もごみの担当者じゃないので、これとこれ、キャップがどうだと言われたら、ちょっとわからない。そんなのをビデオに入れて、ビデオをVODで見れば、土曜でも日曜日の夜中でも、いつでも例えばごみの分別収集が見れると。そういう行政としての利用もあわせてやっている。
いかんせん、番組をつくるのに非常に手間と時間がかかりますので、僕だけでつくれない。当然、住民課の担当職員とシナリオ合わせして、編集というのは何日もかかるので、なかなかコンテンツがふえていっていないという事実もありますけれども、そういったものをつくって、できるだけまちの中のいろんな住民に役立つコンテンツをふやしていきたいという形でやっているところです。
先ほどもちょっとお話をしましたけれども、うちがこのマルチメディアを引くまでに、インターネット、ISDNを引いていた人は、正確な数字はわからないんですが、2030の話だと思います。ただ、どれだけ使っていたかというのは、ほとんど使っていません。お金がかかったんですね。当然、自分で利用するわけですから、お金がかかります。定額ではないので、子どもにはなかなか使わせられないんですね。子どもに自由に使っておきなさいといって、電話をそのままつないだまま遊びに行っちゃったら、それでアウトですから。だから、なかなかインターネットができる環境ではなかった。言葉は知っていたんですが。
それで、うちのほうはインターネットを何とかしてやっていきたいということで、今回事業の中で取り込んでいったんですが、そういう事業の中で取り組んでいった際に、うちの産業だとか、そういったものを全部見てものを選びました。インターネットというのはコミュニティサービスですね。農業、それから高齢者の福祉、学校、それから交流、こういった今の住民が何を望むのかというような部分を軸にしていったときに、いろんなコンテンツが出てきた。特にFTTHの部分で、牛舎の映像をとなってきたら、ちょっといろいろ問題があって、それなりの速度と将来的な速度を考えたら、今後の将来を見てFTTHだろうということで、FTTHにしてきた流れがあります。
視察に来られる方が、こうやって伝送路室だとか、いろいろ見られるんですが、そこに工事をやった人がいるわけじゃないので、僕もわからないなりに、これはこうですと、間違いも含めて話している場面もあるかと思うんですが、システムが複雑で相手が質問できないことが多く、とりあえず済ましちゃったりもしているんですが。
そんな中で、今回、ITサービスをいろいろ選んでいく中で、VOD、家庭の端末、こういう端末が全部入っています。全部の家に入っています。これは光を変えるもの。それからテレビは基本的に12チャンしかないの、それ以上はホームターミナルという話だったので。これは先ほどのVODをリクエストする端末であり、インターネットをやる、いわゆるミニパソコンの部類です。これとこれはセットなんですが、音声告知放送と言って、いわゆる緊急放送するシステムです。
ここに何でこんなものがあるかといったら、テレビとインターネットを切りかえるときに、このボタンを使いましょうと。全戸というのは非常にリスクがあるんですね。こういうテレビのあるうちも、こういうテレビのうちも、いろんなうちがあるんです。そうしたら、ピンが使える家、ピンが使えない家、ビデオ、1、2、3ある家、ビデオが1個しかない家、切りかえられないんですね。それで、こんなような切りかえスイッチを使うことによって、こっちはこっちと強制的に決めることによってお年寄りが扱えるようになる。そういう形であえてああいうわかるようなものを使いました。
いわゆる掲示板サービスというのは、うちの村の中でインターネットはこれによって非常に村民が使い出すようになっていますので、これはとりあえず体験だということで、どんどん好きに使わせています。ただ、VODについては、番組表とか何とかがありませんので、ですから、この画面を開いたときに、この中で選んでもらう形をとっています。最終的には、今のアナログテープを全部VODに置きかえられたときに、番組表を全部配りたいなと思っています。そうすると、落とすのが今度は早くなるので、容易にリクエストにも応えていける。今は言われても応えられないという仕組みがあるので、なかなかうまくいっていない、うまくいっていないというより、なかなか速度についていけていないので、そういった部分は今ちょっと宙に浮かせています。
掲示板、これは村内だけの掲示板です。ですから、例えばイベント情報だとか、それからカレンダーだとか、村民の自由に書き込むいわゆる掲示板だとかを、実際にここに掲示しています。非常に西興部は人が少ないですから、村民掲示板にはそんなに入ってきません。ただ、警察の駐在さんが掲示板を使って警察便りを張りつけてきたりだとか、それから花をつくっている人が、花は要りませんか?とか打ってきたり、パソコンを欲しい人が中古のパソコンだれか分けてくれと書いてきたり、西興部なりにも少しずつコミュニティが……。新しいコミュニティです、うちは。今までは回覧しかなかった。回覧から、こういったコミュニティに少しずつささり込みつつあります。これはもう少し様子を見ていって、どんなコミュニティに変わっていくのかというのをちょっと様子を見たいという形で推進しているページになります。
うちはパソコン補助なんかもちょっとやっていて。
10万なら3万払えば、7万、村は出しますから、それでどんどん推進して、今現在、150世帯ぐらいがパソコンを買いました。おじいちゃん、おばあちゃんがどんどん意欲的にささり込んできています。
音告というのは、さっき話したように、非常な安心感を与えるシステムです。テレビというのは、うちは生中継というのはしょっちゅうできませんので。音告というのは、災害があったり、山火事があったり、何かあったときに使う。災害が一番のメインと言われるんですね。ただ、うちはそんなに災害はない。そんなにいつも水が氾濫して水没するなんてことはないですから。山火事が数年に1回。普通の火事が年に1、2回。去年あたりは台風がドーンと来ましたけど、1、2年に1回被害が出るということで、あとは地域情報として潤滑油の役割を果たしています。ですから、住民からこんな要望があって始めたんですが、住民の訃報を流してくれということになっています。なぜか。このような地域に住んで亡くなったことがわからないで、あとで香典を持っていけない。それが地域のコミュニティなんです。だから、そういったものにも活用しているということです。
福祉については保健婦とお年寄りが話せる、こういうイメージです。どこでもあるものです。これはやっぱりお年寄りにとって安心なんです。病院に行くか話をするか、あとは本人が判断すればいい。ただ、福祉でこういうコミュニケーションをとることによって、例えば病院に行く回数が今のところ減っているか。減っていません。なぜか。病院でしゃべるのもコミュニティなんです、お年寄りは。行って、「きょうも元気だったんだね」とお互いに会話するのも、これは地域のコミュニティなんです。ただ、だんだんそういうことが、医療費、介護保険、いろんな制度が変わってくると、なかなかできない。それから息子が、娘がいつも病院に連れていってくれればいいけど、なかなかそうもままならないというのも前提で、テレビカメラは17世帯ぐらい入っています。本当はもっと80世帯、90世帯、入れたかったんですが、テレビというのは違和感もある。家をのぞかれるのではないか、そういった違和感もあったので、なかなか拒否も多かったのも事実なんですね。ただ、プログラム的には強制的に役場からのぞくことができないプログラムにしていますから、プライバシーは守られているんですが。
今回、入れたアプリケーションの中で一番の悩みは、この福祉システムは、全国的に同じことが言えると思いますが、お年寄りが扱えないんです。ボタンがここに2つ、3つしかないんです。で、1、2、3で、ちゃんとシールまで張っているんです。だけど、「こうだよ。おじいちゃん、わかったね」。「うん、うん」って。次の日行ったら、「うーん、どうだったべ」。福祉の機械というのは簡単に扱える人の家には入れられないことになっている。扱いが大変と言うところにこそ必要な機械なんです。だから、そういう人でも扱えるものを開発したメーカーは大ヒットですね。飛ぶように売れると思います。これから福祉はまだまだ伸びますから、ボタンを自分が押すんじゃなくで、自分がこうしたいなといったらブッブッブッーと動いて、勝手に血圧でもとってくれるような機械をつくり出したら、もっと普及すると思う。これが悩みの種です。
それでうちがマルチメディアをやったときに、こういった問題をどうしていくんだといったら、ITサポートなんですね。ITサポートというのは、うちみたいに、やりたい人、手を挙げた人だけのサービスではなくて、みんなに入れているものだから、どうしたって支援部隊がいなきゃだめ。だから、電話が来たら、駆け足でそこに行くしかない。電話で、「このボタン押して」と言っても全然だめ、そんなのは。もう行くしかない。「行きますから」しかないんです。だから、これが3月オープンしたころは、毎日朝から晩まででした。毎日、職員が2人体制でダーッと出ていましたよ。そして何回も行かなきゃならない家もある。お年寄りの家なんかね。でも、そうすることによって、そこでまたちゃんとしたコミュニティーと……。どっちが勝つか負けるのか。粘り強くやれば。そうすれば全戸に入れたアプリケーションも生きてくる。せっかく何億もかけてやったものを、この村がない金をはたいてやったわけだから、それが死んじゃったら全く意味がない。
それの典型がLL教室だったんですね。LLというのは全国に配置されました。多分、1年ぐらいで死んだ機械……。うちもそうです。LLを教えられる先生がいなかったということです。もう転勤したら、次、来た先生はLLにさわれない。そうなったら、もうアウトなんですね。だから、最初からそうならないような枠づくりが地域で必要なんだと。
牛舎遠隔監視システム。これはテレビでよく出たシステムなんですが、単純です。このカメラが牛を見て自分でコントロールするものです。自分でコントロールすることによって、自分の見たい牛をターゲットできる。これは至って単純なんですが、昔、農家というのはこの辺に自分でビデオカメラをぶらさげたものです。ところが、牛がずれたらそれまでだった。コントロールができない。外れたら直しに行かなければならない。それをやっていたら意味がない。だから、最近は余りぶらさげている人はいない。でも、これは少し利口になって、家の中で自分で動かすことができる。村内ならどこでもできます。
そうすることで何が潤ったか。これで農家の収益があがったわけではありません。経済的な効果はほとんどないです。ただ、農家というのは、労働時間の大変さにも問題があります。花嫁対策、後継者育成問題。そういったときに、こういったものがあることによって、少しでも楽ができたり、少しでも行動範囲が変われば、仕事に対する姿勢が変わります。希望、そういったものが変わります。それを養える機械の1つになれないかということで、農家とみんな話してつくったものです。
ですから、今若い夫婦なんかは、奥さんが家の中で子どもを見てパソコンを見ています。お父さんはトラクターで行っています。生まれそうだなといったときに、お父さんに携帯をかけるんです。うちは、田舎だけど、携帯はとりあえずあるんですね。「お父さん。生まれそうだよ」と。そうすると、お父さんはトラクターで帰ってくる。そういう利用の仕方もできる。ですから、農家はこういったものを自分の経営なりに生かしていける。そういったスタイルで自主管理しています。使い方のルールは何も決めていません。農家の使い勝手に任せています。
農業システムの中には気象も当然入れました。テレビで見れる気象とインターネットで取れる気象と両方入れています。気象は農家だけではなくて、みんなも天気というのは重要なコンテンツになっています。ところが、農家はこういったデータも必要なんです。温度だとかを数字として自分で蓄積して自分で加工するものも必要なんです。ですから、さっきのようなデータと両方取れる仕組みをつくっています。
農業簿記。農家の場合は経営をして幾らなので。今までは白色だとか、青色じゃない、申告形態でやっていたんですね。ところが、これからはそれは許されなくなったということで、今は全部青色にするんですけど、システムの中で組勘連動といって……。今、北海道の場合は全部の組勘データは契約をして札幌に集中しているんですね。それを全部西興部にフィードバックかけて、農協からそのデータを全部送り返して、各農家のクライアントに反映させる。そうすると、あとは自分で勝手に買ったもの、売ったもの、それだけを自分で打ち込めば申告書が出来上がる。
BSE問題を含めて、牛の個体管理が非常に騒がれました。西興部村はBSEとかなんとか別に出ていないんだけれども、風評というのはおっかないもので、北海道で出たとかどこで出たとなると、みんな出たと思っているんですね。そういうものを整理していくためには、牛1頭1頭をどうしていくんだという必要がある。今までの農家は、牛1頭1頭の管理をバラバラなデーターで管理していたため非常に非効率な管理になっているところがありました。今は、10桁化になった牛を1頭1頭管理する。その牛の生まれた日、疾病、乳の生産高、病歴、成分、全部をそれぞれの機関がいろいろ分割して整理しているんですね。それを今回は全部集約をかけました。それを個人がその牛に全部データとして張りつけられるようなものを開発することによって、みずからが1頭1頭を管理し経営に役立てていけるという形をつくりました。
ちょっと時間がないので、はしょって話して申しわけないんですが、うちは学校間交流サービスということで、このシステムを入れる前に職員室にLANケーブルを張って、LANを始めました。なぜか。先生全員がパソコンを扱えるようにするためです。先生がパソコンを使わざるを得ない環境をつくることがある意味生徒達の学習環境を生み出すことにつながると思います。
学校間交流施設というのは……。うちは小学校2校が10キロぐらい離れたところにあるんです。でも、中学校は1校だから、必ず中学校で一緒になるんです。ところが、年間の交流が少ないと、やっぱり一緒になってからとけ込むのに時間がかかります。それを解消するためには、いかに会わせるか。毎日なんか、なかなか会えませんから、会わせるために、年に数回、演奏会とか合同行事があるんですが、こういったものを使うことによって1つのコミュニケーションをこういうネットでつくり上げていく。そのためにこういった設備を入れたりしました。
IT講習も、当然、90歳近くまでの老人の方も来ています。西興部は、国が進めているIT講習はIT講習として、うちはこういう施設をつくったわけですから、IT講習があろうとなかろうと、うちはずっと教え続けるんですね。週4回ぐらい、淡々とやっています。かなりのお年寄りが毎週来る。僕が驚いたのは……。お年寄りは無理なんだろうと思っていたんです。ところが、1月から始まったんですが、今、お年寄りでちゃんとホームページをつくりますよ。お年寄りもちゃんと通えば、ホームページまでつくれるんです。これは自分たちがやっていて、ああ、これはやっぱり成果だなというのを非常に感じました。だから、うちは、お年寄り、子ども関係なく、どんどん参加してもらい覚えてもらうよう声かけをしています。
現在と今後の取り組みについて、ダッダッダーと書きました。現在進行中というところについては、センサーのシステムを今年度構築していますので、もう少しお年寄りの命を見守ってやれるシステムという中身で動いています。
今後のことですね。一番今後のことが気がかりなんですが、SOHOですとか、いろんな部分に対する地域としての取り組みもうちも実際あります。今現在、三鷹のシニアSOHOさんなんかとも手を結びながら、西興部村の5分ぐらいの紹介のものをストリーミングで流せるようにしたりだとか、そんなことでうまく動画と地域情報とそういうコンテンツを結びつけていけるようにということで、いろいろやってはいるんですが、正直言ってそうそう進みません。きょう僕がしゃべれるのは、うちでやっている実態しかしゃべれませんので、今後、地域のコンテンツってこうあるべきだ、あるいはこうすべきだ、もうちょっと違うことを考えるべきだというところを、むしろ逆に皆様に教えていただきたいなと思っております。
時間が来てしまったので、ちょっとビデオのほうも入れたいので。今、お話ししたんですが、しょせん僕の話はつたないので、動画で見ると、ああ、さっき言っていたのはこういうイメージかということになるので、動画のほうをちょっと見ていただきたいと思います。
(ビデオ映写)
福祉と牛舎とVODのコンテンツを見ていただいたんですが、今、うちの村でこういう流れをくんで、今後どうしていったらいいのかと考えている部分が、ある意味、市町村合併問題です。これはうちのネットワークに非常に大きな問題があって、うちの村にはあるネットワークが、隣まちにないんですね。例えば合併をするようなことが仮にあれば、どういうことが起こるのかといったら、住民との地域格差が出てしまうんですね。特に大きな地域格差。インフラ的なこともそうですし。ですから、そういった部分を今後どうしていったらいいのかというのは、この動きがもう少し明確になってこないとわからないことですが、当然、地域として考えていかなければならない問題です。
今、西興部村だけのことをちょっと話させていただいたんですが、くっつけば新しい村か町か市になるわけですね。今は西興部村だけを取材して、村民がみんな見て、知ってる人でよかったんだけど、くっついて1つの町であるにもかかわらず、西興部地区だけの映画をやって、隣まちの映像、情報が入ってこないと、本当に1つのまちかというような問題が今度出てくるんだろうと思います。これはうちだけの問題じゃないですね。全国的に今やろうとしているわけだから。
だから、そういった意味で、1つの地域コンテンツというのを……。今回、もし合併が、本当に国が3,0001,000にしようとしたら、ほとんどみんなくっつくわけだから、そうしたときに、そういう地域コンテンツ、地域情報をどこの地区も考えざるを得ない。インターネットのベースを使うのか、CATVのベースを使うのか、それはわかりませんが、いずれにしても今の情報の中身、コンテンツ、それからインフラを含めて抜本的に再検討する、ある種そういうタイミングに逆になってくるのかなと。2年と言われていますから、もうたたき台ぐらいはつくっていかなければ間に合わない時代になってくるなというのを最近……。この事業はほぼ終わりに近づいてきたんですが、終わったんじゃなくて、今度また新たに始めていかなければならないというように、常にマルチメディアは生き物だなというのをつくづく感じます。
話があっちに行ったりこっち行ったりということで、全くまとめにもなりませんけれども、一応私の話はこの辺で終わらさせていただいて、あとは皆様のご意見なんかをぜひ聞かせていただきたいなと思います。どうも大変ありがとうございました。
【小林座長】  大変きめ細かいお話をしていただいて。どうも日本の地域情報化というのは、さっきのLL的あれが非常に多くて、装置を入れたけれど使い手がいないみたいな話がありますが、LLはちょっとうまくいかなかったようでありますが、今のお話を聞いていますと、やっぱり入れた装置が生きていると。私はエンコーダー装置がいろんな形で生きているというお話であったかと思います。
ただ、先ほど日下さんもおっしゃいましたけれど、西興部で通用することがすべて全国で通用するかというと、例えば私は地域が地域として西興部のようにまとまっているかどうかということを考える指標として、先ほどの地元の方が亡くなったときのお悔やみが気になるとか、それからお祭りをやったときに、録音されている太鼓の音を使わないで太鼓のたたき手がいるかとか、あるいは地元の小学校の運動会に熱くなれるかとか……。東京あたりじゃ、子どもは運動会に行くけど、親は、「ええっ、そんなのあったの?」ぐらいのところで済んでしまうような傾向があるわけでして、恐らくそれはそれぞれの日本のエリアごとに、何がいわば目を凝らして見られるものかというのは、かなり違いがあるだろうと思いますが、さわさりながら西興部という場でメディアを使いこなしておられるお話、私は大変興味深く伺ったんですが、事務局から与えられております時間が余りないものですから、数人の方々のご発言にとどまるかと思いますが、ぜひこういうことを聞いてみたいとか、こういう感想を持ったのだがということでのお話がございましたら、お出しいただければと思いますが、いかがでございましょうか。
【石川構成員】  高知県の石川です。
大変興味深く聞かせていただきました。高知県も県全体の人口は80万人で、そのうちの30万人は高知市に集中しているというようなことで、山奥のほうの自治体はかなり似たような状況になっているんじゃないかなと思って聞いておりました。
お伺いしたいのはたくさんあるんですが、市町村合併の問題は我が県でも大変大きな課題になっておりまして、そのときに幾つか問題がありますとか、抜本的な見直しが必要ですとか、あるいはIPベースにするのか、CATVベースにするのかというお話があったわけですけれども、そのあたりもう少し今のお考えというか、問題意識をお聞かせいただけたらありがたいなと思ったんですが。
【日下】  技術的なレベルは全く考えていません。それは今の日進月歩ですから、やるときにはどうなっているかわからない。現にうちがマルチメディアをやったときに、計画のときはこう考えていたけれども、計画に2年かかったら、もう設備は変わっている。
ただ、合併をやったときに、必ずどこにどの役割を持たせるかという問題が出てくる。ネットワークでも必ず中心というのが出てくる。その中心をうちが取っていくのか、くっついた本庁所在地が取っていくのか。それぞれの地域の特性を持たせた運用が必要なんだろうと僕は思っているんですね。うちは人口1,000人ぐらいしかいないので、村なので、全部奪われがちなんだけれども、せっかくここまで設備をした環境だから、うちが今までのノウハウを含めて、くっついたあとも、うちが音頭を取って、新しい自治体としての情報化を推進していける、そういった部分の仕組みづくりをやっていけるような、餅屋は餅屋の中で生かしていける、そんな形をまずつくっていきたいなというのが自分の思いです。これは、別に合併したいという意味ではありませんが。
【小林座長】  合併のお話は何かにわかに出てきて、どこも大変いろいろな意味で悩んでおられるわけですね。ここは合併論をやる研究会ではありませんけれども、きょうのお話の文脈の中でも、なぜ合併なのかというのはよくわからない。必然性があるならやればいいだろうし、当然その必然性の中には今のような、要するに、まとまってよりよい社会になるなら、ネットワークの計画も、おのずからまたそこでですんなり出てくるんでしょうが、何となく合併だ合併だと言って、それに伴う問題、例えばネットワークをどうしようかという、何か合併の悩みばかり最近聞こえてくるような気がして、どうなっているんだろうかというような気がいたします。
これもまさにここの省のあれなんですが、コメントはつけませんが、何か期せずして合併の問題が出てきて、高知のほうでもそういう問題が情報化をやっていても出てくるというようなことはテイクノートしておいていいだろうと思います。
ほかにいかがでございましょうか。これでまた西興部見学のあれが幾つかできそうな。
【鈴木(稔)構成員】  今年の1024日に、在京民放キー局の幹部の方とNHKの幹部の方とご一緒にお邪魔いたしました。マルチメディア館の隣のホテルに行きますと、夜はどこにも出かけることのできないところですから、青くさい議論をしたんですが、そのときに2つのテレビ局の方がおっしゃったことは、共通するインフラは多分全国に幾つかできていくだろうと。問題は、さっき小林先生がお分けになった元気なところと元気でないところの格差が出ることについては何だろうと。非常に平凡で古典的な答えだったんですが、やっぱり人だろうという話に落ち着きました。地域メディアのコンテンツをこれから研究していく際に、やはり人の問題がとても大きいのかなと思ったんです。
もう一つ、私が思ったのは、きょうもそうですが、とにかく日下さんご自身の元気ですね。活気と元気。たまたま、ある在京キー局の中に現場活性会議というのができたんですね。この会議ができたことを内緒にしていらっしゃる。つまり、それはイコール現場が不活発だということになりますから。放送の世界を長らく見てきまして、30年前にあった活気が、今、テレビ放送局から失われつつあるという思いを大変に強くしています。そのときに日下さんの……。この間、2時間半お邪魔したときに、立ったまま、きょうのような話をいただいたんですが、極めて元気がある。それからもう1人、たまたま会う機会があって、サテライトコミュニケーションズネットワークの高橋さんのお話を聞いたんですが、これまた高橋さんも極めてピカピカ輝いて見えるわけですね。
今、映像とかテレビというと、何となく情報格差の沈んだ世界になって、地域メディアが非常に元気がいい。まるで足利尊氏が九州から都に攻め上ってくるような印象を受けているんですが、変な質問で申しわけないんですが、この元気のもとというのは、日下さん、ご自身では何だと思っておられますか。
【日下】  愛着じゃないですか、地域への。僕は例えば東京都のためにしゃべっているわけでは全然ないので。こんなこと言ったら失礼ですが、僕は西興部で生まれて、西興部が好きだから、西興部をどうしたい、西興部に住んでいる人がどうあってもらいたいって考えるから、おのずと熱くなるだけだと思いますよ。
【小林座長】  先ほどの日下さんの話で、1軒1軒の顔が見えてくるようなまとまりなわけですね。どうなんでしょうか。西興部村ぐらいの規模であると、当然、可能性としてはみんな1軒1軒の顔が見えてくるようなたたずまいなわけですけど、それはどこでも西興部的になっているんでしょうか。ある種のまとまりというか。小さくてバラバラみたいなところがあるような。要するに、規模がそうなればおのずとまとまってくるというような理屈は、どうも成り立たないような気がして、そこらもある意味では確かめてみたいところですね。今、鈴木さんがおっしゃったように、同じ規模でも何ゆえに勢いが出てくるところと、小さくてもバラバラというようなところもあるとすれば、それは何なのか。これもまた強く結びつけられませんけれども、やはり自治省的問題でもあると。コミュニティづくりみたいなことをやってきた中での格差が出てきたのはなぜかというような問題があるのかと思いますが。
もうお一方ぐらい。
【鈴木(祐)構成員】  同じような質問で恐縮でございますけれども、今、小林先生がおっしゃったとおり、規模だけでは説明できないと思うんですね。私も6月にお邪魔させていただいたときに、たまたま日下さんの個人的な強烈なキャラクターのためかというふうに思っていたところもあったんですけれども、きょうお話を伺っていてちょっと驚いたのは、福祉のところで120人ほどの入所者というのは、あれは恐らく村の人たちだけではなくて、誘致していると言ったら怒られますけれども、よそから入ってきて、そのために地元に雇用が発生しているみたいなことをきちっと設計した人が、多分村の中にいらっしゃったわけですね。ギターのところもそうですけれども、恐らく日下さん個人ではなくて、村全体に、村の中に何人かこういう知恵者がいて、情報も得ていて、しかも実行するだけのシステムといいますか、組織の柔軟性といいますか、そいうところまであると思うんですね。
ですから、個人的に日下さんの愛着はわかったんですけれども、首長のキャラクターもあるのかもしれませんが、もうちょっとプラスアルファーで多分この村に何かがあるんだろうなという気がしたんですけれども、その辺を教えていただければと思います。
【日下】  僕も西興部に生まれて育って、役場に二十何年いるので、何となく見えるんですが、さっき650戸見えたというように、これは非常に小さいところの特策なんですが、小さいだけに、こうやればこうなってこういくだろうというのが見えるんです。想像がある程度つくんですね。そういう意味では、首長や職員、住民が入ってプランを詰めて考えたらやっぱりそうなるんです。問題は、それをどう実現するかです。それは事業とか、あるいはその時代の政策的な部分がありますのでそこをちゃんと押さえればなる。だから、そういう部分のところはきちっと政策的には検討をちゃんとやってきています。極端なことを言ったら、行き当たりばったりでとりあえずやってみようかという、そういうスタイルではなく。だから、福祉は明らかに福祉の村づくりと位置づけして、次はこれだ、エリアをつくりましょうと、それぐらいみんなで詰めているわけです。
【小林座長】  ありがとうございました。
それでは、天野構成員、ちょっと時間が押していますので、手短にご質問いただければと思います。
【天野構成員】  質問がかぶるんですが、今のお話の中で、例えばエリアを組みかえるとか、全然前例にないことをやっていらっしゃるような印象ですけれども、それが可能になったというのは……。ほかのところは、例えば制度ですとか、あるいはさっきの割れるですとか、そういったお話があったと思うんですが、そこを前例にないことをクリエイティブにやっていけたというのは、問題解決のために制度とかをうまく利用するという形で、村の中でコンセンサスが取れたということなんでしょうか。
【日下】  そうです。田舎になればなるほど行政主導型になりがちです。行政主導が決していいわけじゃないと思う。僕も行政にいて、行政主導ではないほうがいいと思っている。
しかし、そうは言いながらも、行政が、議会が、こうしなかったら地域で働く職場がなくなるでしょうと。働いている人が困るでしょうと。何とかしましょうといったときに、やっぱり行政と議会が協力しリーダーシップを取って問題の解決に走る。たとえば土地を確保しましょうって。住民の方、売ってくださいって。これをやりたいんですって。そういう地域づくりの骨格なんですというお話をすると、地域の人も当然参画するし、行政も議会も含めて、それなりの中で、多少の紆余曲折があったとしても、ちゃんと落ち着くところに落ち着いて、そこに入っていける。小さいところの特権では確かにあると思うんですが、やっぱりそこら辺かなと思っています。
【小林座長】  ありがとうございました。
まだ、ご質問されたい向き、いろいろおありかと思いますが、かなり時間が押してしまいましたので、本日のところはここまでということで。
先ほど申し上げましたように、恐らく西興部というのは合併はやらないほうがいいんじゃないかなと、私は個人的には思っておりますと同時に、あと、そこらのきめ細かな立ち入ったお話は、ぜひ季節がよくなったら、流氷が去ったら、現地に行ってホテルに泊まってお金を落としながら、各自、見聞を深めていただきたいなと思います。
きょうはどうもありがとうございました。
それでは、本日の議事は以上でございますが、事務局より今後の予定等をお話しいただきたいと思います。
【梅村課長補佐】  それでは、説明いたします。
次回会合は2月中旬に開催予定しております。詳細なご案内は別途ご連絡申し上げます。次回以降も、さまざまな地域メディアコンテンツの制作・流通の取り組みを行っている方々から、また事例を紹介いただいて議論していきたいと思います。
また、先ほどアンケートの件も申し上げましたが、内容につきましては、メールで各構成員の方々に意見を照会しまして、最終的に座長の了解を得た後、アンケートを実施したいと思います。次回の研究会では事務局よりアンケートの実施要領等についてもご報告いたしたいと思います。
事務局からは以上でございます。
【小林座長】  ありがとうございました。
アンケートということ、きのう事務局とお話ししたんですが、よほどうまい工夫をしないと、冒頭に申し上げたような、ふつふつとわき上がってくる日本の状況みたいなものを、できるだけトータルに、そういうアンケートを通じて浮かび上がらせたいみたいなところもありますので、その点、また皆様方の知恵をいただきたいなと思っております。
私の不手際で、室長からは10分ぐらいまではいいというようにありましたが、さらに15分ほど経過してしまいまして、あとのお仕事に不都合が残った面もあるかと思いますが、お詫び申し上げたいと思います。
何か全体にわたりまして、ご意見等はございませんでしょうか。
それでは、本日はご多忙の中ご参集いただきまして、ありがとうございました。また、次回もよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。

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