情報通信のトップへ

インデックスへ 調査研究会


資料5−3 県域モデル実証実験の概要 社会福祉法人神奈川県社会福祉協議会


 

.本実証実験の目的
 障害者のIT利活用を促進するために、地域の中で、人的支援体制を構築し、その効果を実証する。

.実証実験実施主体
 社会福祉法人神奈川県社会福祉協議会がかながわ障害者IT支援ネットワークと協働で実施した。

.実施主体と協働機関との確認項目
 実証実験の実施に関する社会福祉法人とネットワークとの確認項目は、目的、事業の主体、事業の内容、対象者、役割分担と責務、費用の分担、事故等による損害、意見調整、個人情報の保護、有効期間、その他である。

.実施サービスと役割分担

4.1 訪問サポート事業
1) サポート内容
IT導入からメール操作、インターネットの閲覧など、IT初心者向け。
IT導入から文書作成、表計算、ホームページ作成までを想定した継続的なスキルアップ講習。
2) サポート場所
障害者の居宅
3) 対象者
身体障害者(肢体不自由、視覚障害、聴覚障害、内部障害)、知的障害者
4) 役割分担
神奈川県社協
受付、ネットワークの説明、個人情報に関する説明
かながわ障害者IT支援ネットワーク(スーパーバイズコーディネーター)
サポートの可否、支援計画書の作成、関係機関への相談、PC、および支援機器の購入相談、会員、関係者への引継ぎ、終了報告(神奈川県社協へ)ほか
かながわ障害者IT支援ネットワーク支援者
サポート実施、サポート終了報告(スーパーバイズコーディネーターへ)

4.2 IT活用支援講習
1) サポート内容
障害者がITを活用して就労可能な技能を身につけるための支援を行った。
文書作成、表計算、イラストレーター、ホームページ作成、視覚障害者上級コース4コースの講習を実施した。
2) サポート場所
県内社会福祉施設、企業各1ケ所(バリアフリー対応)
3) 対象者
身体障害者(肢体不自由、視覚障害、聴覚障害、内部障害)
4) 役割分担
神奈川県社協
実施場所の確保、募集、広報、受講者選定・決定(ネットワークと協働で行う)
ネットワーク
機器準備、支援実施

4.3 福祉情報技術研修(初級)
1) 講習内容
地域レベルでの普及啓発の担い手としてホームヘルパー、ケアマネージャー等福祉関係者に対して基礎的なIT支援、地域関係機関等に関する研修を行った。
2) 実施場所
神奈川県社会福祉協議会会議室
3) 対象者
ホームヘルーパー、ケアマネジャー等
4) 役割分担
神奈川県社協
実施場所の確保、募集、広報、受講者選定・決定(ネットワークと協働で行う)
ネットワーク
機器準備、研修実施にかかわる全般

4.4  福祉情報技術研修(上級)
1) 講習内容
コーディネーターになるべき人材を想定して、既存の福祉情報技術関連教材(1級相当)による研修に加え、障害者のIT支援に向けて実技を含んだ技術研修を行った。
2) 実施場所
神奈川県社会福祉協議会
3) 対象者
支援者・補助者として、原則すでにサポートに携わっている人
4) 役割分担
神奈川県社協
実施場所の確保、募集、広報、受講者選定・決定(ネットワークと協働で行う)
ネットワーク
機器準備、研修実施にかかわる全般

これらに付随して、かながわ障害者IT支援ネットワーク結成に関する取り組みと、地域リソースの有効活用(関係機関の連携)の試行として県立養護学校の支援を行い、上記事業に反映させた。

.実施状況
 各サービスの内容、実施時期、受講者等は以下のとおりである。

(1)訪問サポート事業
1) 対象者
身体障害者、視覚障害者
2) 支援の概要
下記コースを設定し、依頼者、あるいは相談の中でコースを選択してもらい、訪問した。
フリーコース
Word 基本コース
Word 応用コース
Excel 基本コース
Excel 応用コース
インターネットコース
ホームページ作成コース
年賀状作成コース
スクリンリーダー基本コース
スクリンリーダー応用コース
オペナビコース
3) 支援者の属性
かながわ障害者IT支援ネットワーク運営委員もしくは関係団体メンバー
支援計画書や実際の支援については、コーディネーターだけではなく、福祉情報技術コーディネーター1級資格者、リハビリ関係者、作業療法士の助言も受けて実施。
4) 利用料
8,000円(2,000円/3時間×かける4回)
5) 開催状況
上記コースを基本としながら、訪問して、依頼者の希望や操作レベルに応じたメニューを個別に設定して実施した。
6) 申込者
30名(身体障害15名、視覚障害15名)

(2)IT活用支援講習(就労支援研修)
1) 対象者
就労を希望している障害者でパソコンの利活用技術の向上を目指している人で、会場まで通える人
2) カリキュラムの概要
Webのアクセシビリティチェック、Webの製作、メール管理、ネットワーク管理、プログラムの利用など企業等で就労可能な実力の養成
講習テキストは、「よくわかるシリーズFOM出版 (富士通オフィス機器)」ほかを使用した。
下記研修を実施
ワード・エクセルの研修
イラストレーターの研修
ホームページの制作(ホームページビルダーの活用)
3) 講師の属性
これまでに就労支援にかかわった経験のある福祉施設、企業の職員
4) 受講料
10,000円
5) 開催状況
4コース×かける2会場 計8コースのうち、3コースのみ開催(その他は応募者なし)
ホームページ作成研修は2会場で開催
6) 受講者
ホームページ作成研修 2会場 計4名
視覚障害者コース   1会場 計1名

(3)福祉情報技術研修(初級)
1) 対象者
ホームヘルパー、ケアマネジャー、福祉施設職員など福祉専門職
2) カリキュラムの概要
カリキュラムは新規作成
ITの役割と障害者
支援技術基礎とその演習(実技研修を含む)
テキストは新規作成、既存テキスト(詳解福祉情報技術1(電子情報支援技術を学ぶ総論改訂版)、詳解福祉情報技術2(電子情報支援技術を学ぶ各論改訂版))を紹介して希望者に頒布
3) 講師の属性
障害者のIT支援、肢体不自由者支援:福祉情報技術コーディネーター1級資格者
視覚障害者支援:元盲学校教諭
4) 受講料
1,000円
5) 開催状況
第1回 平成16年11月13日 土曜日 13時から17時
第2回 平成17年2月19日 土曜日 13時から17時
6) 受講者
第1回は募集12名に対して受講8名
主任ホームヘルパー2名、障害者施設職員1名、その他
第2回は9名(2月9日現在)

(4)福祉情報技術研修(上級)
1) 対象者
就労を希望している障害者でパソコンの利活用技術の向上を目指している人で、会場まで通える人
2) カリキュラムの概要
カリキュラムは新規作成
テキストは既存(詳解福祉情報技術1(電子情報支援技術を学ぶ総論改訂版)、詳解福祉情報技術2(電子情報支援技術を学ぶ各論改訂版))と、講師作成の新規作成テキスト
障害基礎
視覚障害者支援(演習を含む)
障害者IT支援概論
肢体不自由者支援(演習を含む)
聴覚・知的障害者支援
試験対策演習
3) 講師の属性
障害基礎:神奈川県社会福祉事業団職員、専門学校非常勤講師
障害者のIT支援、肢体不自由者支援:福祉情報技術コーディネーター1級資格者
視覚障害者支援:元盲学校教諭
聴覚・知的障害者支援:福祉情報技術コーディネーター1級資格者
4) 受講料
10,000円+テキスト代3,780円
5) 開催状況
第1回 平成16年10月16日 土曜日 10時から17時30分
平成16年10月23日 土曜日 10時から17時30分
第2回 平成17年1月16日 日曜日 10時から17時30分
平成17年1月23日 日曜日 10時から17時30分
6) 受講者
第1回は募集18名に対して受講8名
第2回は募集18名に対して受講5名
男性が大半
障害者手帳所有者は1名、基本的なパソコン操作、支援ができる人
重度障害者施設職員の参加もあった

(5)養護学校教職員対象研修
1) 対象者
神奈川県立座間養護学校の教職員を対象に、基礎的なIT支援技術を学ぶことにより、生徒・児童の状況にあったより実践的な支援ができるようにする。
2) カリキュラムの概要
カリキュラムは新規作成
テキストは新規作成、既存テキスト(詳解福祉情報技術1(電子情報支援技術を学ぶ総論改訂版)、詳解福祉情報技術2(電子情報支援技術を学ぶ各論改訂版))を紹介した。
報告 座間養護学校の支援の展望 ( 支援から見えること、見えにくいこと )
基本編
障害児のIT利活用の可能性
IT利活用の支援技術を学ぶとは
3) 講師の属性
障害者のIT支援、肢体不自由者支援:福祉情報技術コーディネーター1級資格者
視覚障害者支援:元盲学校教諭
障害者へのIT支援:障害者施設職員
4) 受講料
1,000円
5) 開催状況
平成16年8月2日 月曜日 13時から16時
6) 受講者
募集10名に対して受講12名
支援機器に精通し講師を務めた経験のある教職員も複数いた。
類似した研修を受けた経験のある人は多数いた。
学校としてIT機器、支援機器の保有は十分とは言えない。パソコンそのものは整備されているが、古いものが多く十分ではない。

(6)養護学校家族対象研修
1) 対象者
児童生徒の家族
2) カリキュラムの概要
カリキュラム、テキストとも特になく、日常的な支援を行っている支援者が母親に支援の内容をわかりやすく伝え、IT利活用の大切さを伝える内容と変更実施した。
3) 講師の属性
障害者へのIT支援の経験のある障害者施設職員
4) 受講料
無料
5) 開催状況
第1回 平成16年11月18日 木曜日
第2回 平成16年11月24日 水曜日
6) 受講者
募集3名
第1回 3人(小学校5年生、中学校3年生、高校1年、筋ジストロフィー含む身体障害者)及びその家族
第2回 2人(高校3年生、脳性マヒ)及びその家族

.実証実験に関するコメント
1) 支援のあり方について=モデル化の困難さ
それぞれのコースの時間設定を一律に適用するのは無理がある。
例えば3時間連続して勉強することが身体的な状況から困難な障害者もいる。
また、内容によっては4日間では足らずに追加で実施したケースもある模様
およその目安程度としての提示が現実的であろう。

2) 費用負担について
支援者側、障害者側の意識の差がある。
低所得者等への対応は必要であるが、在宅の障害者側は低額であれば負担には抵抗がないと思われる。(施設入所者(とりわけ重度障害者)は、施設の費用徴収の動きもあり、料金設定に対してコメントをしたがらない傾向がある)
しかし、パソコンをどのように使えるようになるのかがイメージできず、事前に費用徴収することは困難と考える人もいる。
しかし、実際学んでみて手応えを感じると、支払う意思のあるものも多い。
セット料金ではなく、一日単価かける日数という方式の方が理解しやすく、支援者側もなじみやすいのではないか。一方、支援者側は若干であっても経費が出ることが研修参加意欲、継続的な支援への意欲につながるという評価をしている。

3) 就労支援に関する事業の困難さ
職業紹介まで一貫したメニュー提示が困難であった。
就労支援という語が誤解を与える場合もあるのではないかと思われる。
市町村域ではフラッシュなどの最新メディアの講座を行っているグループもあるが、就労支援を意図していても一般的な講座としての見せ方しかしていない。
訪問支援のなかで就労支援の要素を継続したい。

4) 市町村域支援に向けた広域的なネットワーク構築の大切さ
リハビリ関係者等へかかわっていくにはそれぞれの機関・団体の利用者としてかかわらないとコメントを求めることが困難である。
気軽に質問できる一次相談の場を県域で設置する大切さを感じた。
現状ではリハビリ関係者等の従事者は職務以外のかかわりが困難(費用、責任体制)なため、学識経験者にその役割を期待したい。
あわせて市町村域では用意しにくい短期貸し出し用の支援機器・ソフトが必要。

5) 質的な向上にむけての工夫
支援者の質的なレベルにかなり差があるのが実態と思われる。
受講意欲の問題もあると思われるが、研修受講だけではこの差を埋めることはなかなか困難である。
支援者の多くが参加できるだけの研修会を開催しにくいこともあるが、質的な向上にむけて最低限マスターすべき内容を盛り込んだ共通テキストを定める必要を感じた。

6) 参加しやすい研修
障害者IT支援に関して多くの福祉関係者が関心を持ちながらも、制度の変更等学ぶべきことが多い福祉関係者がIT支援に関して別途独自の研修に参加する余裕がないのも実情である。
他の研修の中に取り入れる工夫が必要である。

7) 演習のあり方
機器体験、パソコン操作は長時間の演習が必要であり、独自カリキュラムを設定する必要があることと、障害者に直接行う模擬演習が必要である。
また、技術を伝える「プレゼンテーション」に関する内容も必要である。

8) 保険
全員が保険に加入しているが、ボランティア保険であり、有償の活動にふさわしい保険ではなく、対象になっていない。
最近は行政が全市民対象に行政が経費負担し、保険加入させる場合が多く、免責事項についての理解が不十分なため確認をする必要がある。(社会福祉協議会の事業であれば低廉な「福祉サービス総合保障」に加入できる)





トップへ