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資料7−2 障害者のIT利活用支援の在り方に関する研究会 報告書(案)


はじめに
 我が国の国家戦略であるe−Japan戦略が目標年次である2005年を迎え、ITが国民の生活にとって不可欠な新しい社会基盤となりつつある中、障害者をはじめ誰もがその価値や便益を享受できることが一層重要になっている。特に障害者にとっては、ITはより社会参加を容易にしてくれる道具であり、そのメリットは非常に大きい。しかしながら、依然として多くの障害者にとって、ITやITを通じて提供される各種サービスが十分に利活用できる環境にあるとはいえない。
 例えば、実際に障害者がITを利活用しようとする場合には、障害の内容や程度に応じて、機器やソフトウェア、補助具等の作業環境も含めた総合的な調整を行うといった支援が必要となるが、その支援の担い手となる人材の資質や人数の不足などに起因して十分な支援が得られていないといった問題が生じている。
 こうした課題認識の下、本研究会では、平成16年5月から7回にわたり会合を開催し、障害者がITを利活用するに当たり、身近な地域で信頼できる十分な支援が得られるよう、障害者のIT利活用を支援する人材に求められる資質の向上と育成の方策や、地域における障害者のIT利活用支援の体制のモデルについて検討を進めてきた。
 本報告書は、その検討の成果を取りまとめたものである。
(本研究会での検討項目)
 ・障害者のIT利活用支援の現状分析及び課題の抽出
 ・障害者のIT利活用支援を行う人材の資質向上と育成方策
 ・地域における障害者のIT利活用支援の体制モデル 等
 
目次
はじめに
1.障害者のIT利活用支援の現状と課題
 1.1 現状
 1.2 課題

2.障害者のIT利活用支援を行う人材の資質向上と育成方策
 2.1 求められる支援人材の資質
 2.2 支援人材の育成方策

3.地域における障害者のIT利活用支援体制モデル
3.1 支援のモデル
 3.2 地域リソースの有効活用

4.実証実験による検証
 4.1 実証実験の目的と支援モデル
 4.2 実施体制
 4.3 実証実験としての評価

5.障害者のIT利活用支援事業の具体化に向けた提言
 5.1 総合的な支援を行うために必要な機能
 5.2 支援事業の普及促進
 5.3 IT支援基盤の拡充

1.障害者のIT利活用支援の現状と課題
1.1 現状
 情報通信技術(IT)の進展により、電子技術や情報技術を活用した機器が生活分野のいたるところで利用されるようになった。その結果、ITを用いて効率的な情報収集、情報発信することが可能となり、ITはもはや経済活動の面でも必要不可欠なツールとなっている。特に、障害者にとっては、ITを利活用することにより在宅での就労や社会参加が可能となること、視覚や聴覚に障害があるためにアクセスすることができなかった様々な情報にアクセスできるようになることなど、より大きなメリットが期待される。ところが、現状では必ずしも障害者のIT利活用が進んでいるとは言えない状況である。
 障害者がITを活用し、より豊かで自立した生活を営めるような社会を築くためには、IT機器等に関する情報を得る段階から、機器を購入し、セッティングし、使い始め、使い続けるところまで多様な専門家による支援が必要となる。しかしながら、現状ではそのための情報を入手することすら難しく、また情報を得たとしても、自分の障害の状況にあったIT機器の環境を整えることは、時間的にも経済的にも負担が大きい。
 リハビリテーション、介護、生活支援、就労支援等については、公的サービス、民間サービス、ボランティアといった様々な形で障害者支援が実施されている。しかし、障害者のIT利活用支援(以下「IT支援」という。)については、基本的にはボランティアが中心となって進められており、障害者がITを利活用するに当り、支援人材の確保が難しいなどの理由により、身近な地域で信頼できる十分な支援が実施できていない場合も多い。また、現在IT支援を実施しているボランティア等にとっても技術向上を目ざす研修を受ける機会が必ずしも十分ではない。こうしたことに対応するため、いくつかの地域において障害者ITサポートセンター事業を実施しているが、これもボランティアによる支援を基本としており、現在のところ上記のような課題は解決できていない地域がほとんどとなっている。
 さらに、IT支援を行うには、本来、医療・リハビリ・介護等の専門家が対応すべき部分などについて十分に検討する必要があるが、現時点では十分な検討がなされておらず、支援体制も十分には構築されていない状況にある。

1.2 課題
 IT支援を実施する体制としては、大きく分けて、公的サービス、民間サービス、ボランティア活動の3つが考えられる(図表1)。


(図表1が掲載。内容は次のとおり。)
 図表1 人的支援体制の現状
 IT利活用支援は、リハビリ、介護、生活支援、就労支援等と異なり、公的サービス・民間サービスが対応できておらず、パソコンボランティア中心で対応していることを描いた概念図。

図表1の内容はここまで。


 
 公的サービスについては、対応できていない地方公共団体が多く、対応していたとしても、主にパソコンの基本的な使い方を習得することを目的とした初心者向けのパソコン講習に留まっている。これは、必要な施策と思われながらも予算確保が難しいことや、人材の不足が原因として考えられる。また、パソコン講習を実施している場合においても、全くパソコンを使ったことのなかった障害者のパソコンをはじめとするIT機器・ソフトウェア導入のきっかけにはなるが、そこからITを使いこなし、就労や生活の向上につながるようになるまでの体系的なサービスの活用にはなっていない。
 一方、民間サービスについては、リハビリや介護サービスのように医療保険・介護保険といった制度的な裏付けがある場合には、民間サービスとして成り立つものの、IT支援の場合には、民間サービスとして成り立たせるビジネスモデルの形成が非常に難しい。
 こうした中、IT支援に貢献しているボランティア(いわゆるパソコンボランティア(パソボラ))は、公的サービス、民間サービスを代替する形で支援活動を展開している。全国各地でパソコンの活用に特化したボランティア団体やNPOが設立され、パソコン講習や訪問サポート等を提供しており、公的サービスや民間サービスが十分な広がりを見せていない現状では、これらに代わるものとして障害当事者からのニーズが高い事業となっている。
 しかし、ボランティアのみでIT支援が行われる場合、ボランティアとして実施できる範囲にも限界があり、以下のような課題が挙げられている。
  
・適切な機器の選択や調整
 障害状況に合ったIT機器・ソフトウェアや、障害者がIT機器等を利用するための支援機器・ソフトウェアの選択やサポート方法の検討の際に、専門的な知識が不足することがある。特に医療的な見地からの専門的な知識なしには判断が下せない場合があり、困惑する。また、支援機器等についての商品知識が少なく、どれを薦めてよいのか迷う場合がある。
 
・サポート範囲と責任
 OSや支援ソフトウェア同士の相性などのシステム上の問題は、高度な技術的専門性を要するため十分な研修、経験が必要になる。また、パソコン、障害者向けソフトウェア、支援機器などは高額のため、その後の責任を考えると、購入に関わる助言が難しい。
 
・制度面
 障害者対象の給付・助成制度は、地方公共団体などが独自の制度を設けている場合があり、IT機器等の購入に際して正確な助言をすることが難しい。また、給付・助成の申請に当たって障害当事者の所得額などのプライバシーに立ち入ることが必要となるため、権利擁護の視点から代理申請は困難であるといった限界がある。また、日常生活用具給付や助成制度の活用、総合的な障害者自立支援の枠組の中での活動も想定され、最新の福祉制度、利用できる福祉サービスを総合的に理解し、調整する能力も必要になる。
 
・購入相談
 支援機器等の購入には、障害に対する知識と対応方法、機器や製品に対する知識や正確な情報を、総合的に判断する能力が必要となる。
 
 このように、IT支援とは、ITに関する知識だけでは解決のできない範囲までを求められることから、現行の環境のままでパソコンボランティアだけに依存することには限界がある。
 これらの課題の解決に向けては、こうした課題に対応できる専門的な人材の育成や、各種専門機関との連携を促進していく必要がある。このため、本研究会では、IT支援を1つの専門的な業務と捉えた上で、そこで求められる人材の資質とスキルを明らかにし、IT支援のための人材育成の方法、具体的な業務に対する支援体制等を検討した。


2.障害者のIT利活用支援を行う人材の資質向上と育成方策
2.1 求められる支援人材の資質
 IT支援を行う人材に求められる資質と、その役割分担について、以下のとおり整理した。
(1)支援人材に求められるスキルと資質
 IT支援では、支援人材はパソコン関連の知識のみならず、支援機器関連の知識、障害への対応能力、地域資源の活用能力を総合的に有することが重要となる。
 実際にサービスを提供する際には、障害者がITを導入するための動機付けをし、当事者の障害やITの利用目的にあった機器・ソフトウェアを実際に導入し、使ってみて、当事者が活用できるようになるまでの道筋をつけるための体系的な支援が求められる。その際支援人材に求められるのが、以下のスキルである(図表2)。
 
 ア.機器・ソフトウェア関連
 a.導入:IT機器・ソフトウェアの基礎的な使い方が教えられる
 自由に動き回れない、テレビ・ラジオや新聞を楽しめないといった状況下にあれば、誰でも社会からの孤立感を受けがちである。しかし、ベッドの上だけでしか動けなくても、IT機器の利活用を通じて、情報を手に入れ、自分から情報を送るなどして、効果的にコミュニケーションを取ることで社会参加が可能となり、自分の世界を広げることとなる。
 支援人材は、障害者がITを導入しようとしている際に、支援人材がコミュニケーション能力を高め、障害者の意見を聞き取り、当事者がどのようなことに興味を持っているか(もしくは持ちそうか)、また、何ができるようになりたいのかを見極め、導入する意義やIT利活用によって広がる世界について説明できなければならない。
 
 b.選定:IT機器の使い方にあった支援機器・ソフトウェアを選べる
 障害の種類、度合いによっては、そのままではIT機器が使いにくい場合があり、例えば、視覚障害者には読み上げソフトウェアを導入する、マウスを押せない肢体不自由な人には外付けスイッチ等の支援機器を用意するといったことが必要になる。そこで、支援人材は、当事者それぞれの障害や生活様式を理解し、それに合った支援機器・ソフトウェアを選定できなければならない。

(図表2が掲載。内容は次のとおり。)
 図表2 IT支援の内容とそのサービス水準(求められるスキルレベル)
 ※障害者に求められるサポートメニューは以下のとおり。
 (1)支援計画(以下含まれる具体的なサポートメニュー)
 ・ 事前相談(IT導入相談)、実態調査
 ・ 関連機関との調整も含む支援計画作成(地域コーディネート)
 ・ ITサポートに特化した詳細支援計画(サービスコーディネート)
 (2)IT支援(以下含まれる具体的なサポートメニュー)
 ・ パソコン・支援機器購入支援(電話サポート、メールサポート、体験コーナー、情報提供、訪問サポート)
 ・ パソコン・支援機器設置支援(訪問サポート)
 ・ 操作サポート(基本)(電話サポート、メールサポート、講習会、訪問サポート)
 ・ 操作サポート(応用)(講習会、訪問サポート)
 ・ 操作サポート(就労対応)(講習会、訪問サポート)
 ・ 機器トラブル(電話サポート、メールサポート、講習会、訪問サポート)
 (3)地域支援(以下含まれる具体的なサポートメニュー)
 ・ 関係機関との連携(情報の共有、サービスの連携、人の連携)

 ※各サポートメニューに対応して必要と考えられるITスキルは以下のとおり。
 (1)「支援計画作成」 ・ 「事前相談(IT導入相談)、実態調査」、「関連機関との調整も含む支援計画作成(地域コーディネート)」、「ITサポートに特化した詳細支援計画(サービスコーディネート)」のそれぞれに必要なスキルレベルは以下のとおり。
 「パソコン関連」スキル(以下、必要なスキルを列挙)
 (導入)IT機器の楽しい使い方が教えられる
 (選定)IT機器の使い方にあった機器・ソフトを選べる
 (購入)機器・ソフト等の購入方法が分かる
 (設置)機器・ソフト等の導入・設置ができる
 (説明)機器、ソフト、用語、技術の概要を説明できる
 (操作基礎)機器・ソフト等の基礎的な使い方を教えられる
 (操作応用)機器・ソフト等の応用的な使い方を教えられる
 (操作専門)機器・ソフト等の専門的な知識を教えられる
 (活用基礎)有効で継続的な活用を支援することができる
 (活用発展)業務でIT機器をつかうことを支援できる
 「障害への対応」スキル(以下必要なスキルを列挙)
  障害が理解できる
  コミュニケーションが取れる
  人権・プライバシー等への配慮ができる
  支援機器等との組み合わせも支援できる
 「地域資源関連」スキル(以下、必要なスキルを列挙)
  既存のIT環境を有効活用できる
  制度の活用を支援できる
  周辺サービスとの連携を支援できる

 (2)「IT支援」
 ・「パソコン・支援機器購入支援」、「パソコン・支援機器設置支援」、「操作サポート(基本)」のそれぞれに必要なスキルは以下のとおり。
 「パソコン関連」スキル(以下、必要なスキルを列挙)
 (導入)IT機器の楽しい使い方が教えられる
 (選定)IT機器の使い方にあった機器・ソフトを選べる
 (購入)機器・ソフト等の購入方法が分かる
 (設置)機器・ソフト等の導入・設置ができる
 (説明)機器、ソフト、用語、技術の概要を説明できる
 (操作基礎)機器・ソフト等の基礎的な使い方を教えられる
 「障害への対応」スキル(以下必要なスキルを列挙)
  障害が理解できる
  コミュニケーションが取れる
  人権・プライバシー等への配慮ができる
  支援機器等との組み合わせも支援できる 

 ・「操作サポート(応用)」に必要なスキルは以下のとおり。
 「パソコン関連」スキル(以下、必要なスキルを列挙)
 (導入)IT機器の楽しい使い方が教えられる
 (選定)IT機器の使い方にあった機器・ソフトを選べる
 (購入)機器・ソフト等の購入方法が分かる
 (設置)機器・ソフト等の導入・設置ができる
 (説明)機器、ソフト、用語、技術の概要を説明できる
 (操作基礎)機器・ソフト等の基礎的な使い方を教えられる
 (操作応用)機器・ソフト等の応用的な使い方を教えられる
 (活用基礎)有効で継続的な活用を支援することができる
 「支援機器関連」スキル(以下、必要なスキルを列挙)
 (選定)障害に合った機器・ソフトを選べる
 (購入)機器・ソフト等の購入方法が分かる
 (設置)機器・ソフト等の導入・設置ができる
 (調整)継続して使い続けるための調整ができる
 (説明)機器、ソフト、用語、技術の概要を説明できる
 (操作基礎)機器・ソフト等の応用的な使い方を教えられる
 (操作応用)機器・ソフト等の応用的な使い方を教えられる
 「障害への対応」スキル(以下必要なスキルを列挙)
  障害が理解できる
  コミュニケーションが取れる
  人権・プライバシー等への配慮ができる
  支援機器等との組み合わせも支援できる

 ・「操作サポート(就労対応)」に必要なスキルは以下のとおり。
 「パソコン関連」スキル(以下、必要なスキルを列挙)
 (導入)IT機器の楽しい使い方が教えられる
 (選定)IT機器の使い方にあった機器・ソフトを選べる
 (購入)機器・ソフト等の購入方法が分かる
 (設置)機器・ソフト等の導入・設置ができる
 (説明)機器、ソフト、用語、技術の概要を説明できる
 (操作基礎)機器・ソフト等の基礎的な使い方を教えられる
 (操作応用)機器・ソフト等の応用的な使い方を教えられる
 (操作専門)機器・ソフト等の専門的な知識を教えられる
 (活用基礎)有効で継続的な活用を支援することができる
 (活用発展)業務でIT機器をつかうことを支援できる(就労支援機関との連携が必須)
 「障害への対応」スキル(以下必要なスキルを列挙)
  障害が理解できる
  コミュニケーションが取れる
  人権・プライバシー等への配慮ができる
  支援機器等との組み合わせも支援できる
 「地域資源関連」スキル(以下、必要なスキルを列挙)
  既存のIT環境を有効活用できる
  制度の活用を支援できる
  周辺サービスとの連携を支援できる

 ・「機器トラブル」に必要なスキルは以下のとおり。
 「パソコン関連」スキル(以下、必要なスキルを列挙)
 (導入)IT機器の楽しい使い方が教えられる
 (選定)IT機器の使い方にあった機器・ソフトを選べる
 (購入)機器・ソフト等の購入方法が分かる
 (設置)機器・ソフト等の導入・設置ができる
 (説明)機器、ソフト、用語、技術の概要を説明できる
 (操作基礎)機器・ソフト等の基礎的な使い方を教えられる
 (操作応用)機器・ソフト等の応用的な使い方を教えられる
 (操作専門)機器・ソフト等の専門的な知識を教えられる
 (活用基礎)有効で継続的な活用を支援することができる
 (活用発展)業務でIT機器をつかうことを支援できる
 「支援機器関連」スキル(以下、必要なスキルを列挙)
 (選定)障害に合った機器・ソフトを選べる
 (購入)機器・ソフト等の購入方法が分かる
 (設置)機器・ソフト等の導入・設置ができる
 (調整)継続して使い続けるための調整ができる
 (説明)機器、ソフト、用語、技術の概要を説明できる
 (操作基礎)機器・ソフト等の応用的な使い方を教えられる
 (操作応用)機器・ソフト等の応用的な使い方を教えられる
 (操作専門)機器・ソフト等の専門的な操作を教えられる
 「障害への対応」スキル(以下必要なスキルを列挙)
  障害が理解できる
  コミュニケーションが取れる
  人権・プライバシー等への配慮ができる
  支援機器等との組み合わせも支援できる
 「地域資源関連」スキル(以下、必要なスキルを列挙)
  既存のIT環境を有効活用できる
  制度の活用を支援できる
  周辺サービスとの連携を支援できる

 (3)地域支援
 ・「関係機関との連携」に必要なスキルは以下のとおり。
 「障害への対応」スキル(以下必要なスキルを列挙)
  障害が理解できる
  コミュニケーションが取れる
  人権・プライバシー等への配慮ができる
  支援機器等との組み合わせも支援できる
 「地域資源関連」スキル(以下、必要なスキルを列挙)
  既存のIT環境を有効活用できる(民生委員等との連携)
  制度の活用を支援できる(福祉事務所等市区町村行政との連携)
  周辺サービスとの連携を支援できる(医療・リハ・ケア施設等との連携)

図表2の内容はここまで。 

 c.購入:支援機器・ソフトウェア等の購入方法が分かる
 現在、パソコンをはじめとするIT機器・ソフトウェアは比較的容易に入手が可能であるが、支援機器・ソフトウェアについては取り扱っている販売店は多くなく、情報源も限られている。IT関連大手企業が作成している支援ソフトウェアもあるが、あらゆる障害に網羅的に対応しているものではなく、支援機器については数多くのメーカーが個々の障害に対応する独自の製品を開発し、個々に販売している場合が多い。
 そのため、障害者一人一人に対応する支援機器・ソフトウェアを用意するには、これらについての総合的な情報を持つことが重要となる。例えば、そのような場合に支援人材に役立つ情報源の一つとして「こころWEB(http://www.kokoroweb.org/)」がある。このサイトでは支援機器・ソフトウェアの紹介だけでなく、実際に使用した人の感想や相談ページ等もあり、支援機器・ソフトウェア情報の総合的な窓口となっている。
 支援人材は、このような総合的な情報源を確保し、最新の支援機器・ソフトウェアについて常に情報収集し、障害者に提供することが求められる。なお、あわせて、これらを設置・導入する際のリスク管理やクレームの処理等まで対応可能な能力を有することが望ましい。
 
 d.設置:機器・ソフトウェアの導入・設置ができる
 訪問支援だけでなく、障害当事者が来所する支援拠点で活動する支援人材についても、新しい機器(IT機器及び支援機器)の紹介や、ソフトウェアの導入ができることが求められる。また、セッティング・フィッテングに関する知識を有することが望ましい。
 
 e.説明:機器、ソフトウェア、用語、技術の概要を説明できる
 支援人材は機器・ソフトウェアの概要や説明書にある用語が説明できることが求められる。また、支援拠点においても、来所する障害者に対し、それぞれの機器やソフトウェアのメリット、デメリットを障害者が理解しやすい用語を用いて説明できることが求められる。
 
 f.操作基礎:機器・ソフトウェアの基礎的な使い方を教えられる
 支援人材は機器及びソフトウェアの使い方を障害者が理解しやすい用語を用いて説明できることが求められる。特に、支援機器・ソフトウェアには多くの種類があり、バージョンの新旧もあるため、これらすべてを把握するのは難しいが、少なくとも使い方や仕様についてどこを調べればよいかを把握しておく必要がある。
 
 g.操作応用:機器・ソフトウェアの応用的な使い方を教えられる
 支援人材は機器及びソフトウェアの応用的な使い方を障害者が理解しやすい用語を用いて説明することが求められる。特にソフトウェアについてはさまざまな機能があるため、障害種別の主要なソフトウェアについて、自分も体験し、何ができ、どのような応用が可能になるのかを把握する必要がある。
 
 h.操作専門:機器・ソフトウェアの専門的な知識を教えられる
 支援人材は機器及びソフトウェアの専門的な使い方を障害者が理解しやすい用語を用いて説明することが求められる。特に就労支援につながるIT支援を実施する場合においては、障害当事者にIT機器に関する高度な運用能力が求められるため、支援人材も、設置・導入した機器、ソフトウェアの内容を詳細に把握している必要がある。
 
 i.活用基礎:有効で継続的な活用を支援できる
 支援人材は障害者にとって使いやすい環境を設定するために、段階を経ながらパソコンのメニュー設定、機器やソフトウェアの設定を行うことが求められる。
 
 j.活用発展:業務でIT機器を使うことを支援できる
 支援人材は障害者が業務においてITを用いることが可能となるように支援することを求められる場合もある。こうした場合、当事者の働きやすさを考えて設定するだけではなく、テレワークや在宅勤務のような多様な就労スタイルについても対応し、障害者職業能力開発校や地域障害者職業センター、在宅就業支援団体等の外部の支援機関と連携した支援が必要となる。また、職場への配慮についても留意し、当事者が継続的に就労できる環境整備を支援することが求められる。

 
 イ.障害への対応
 a.障害が理解できる
 支援人材は障害を理解することに努めなければならない。法律上の分類、障害者手帳の種類、障害者福祉政策等の概要等の知識のほか、障害当事者の立場に立った視点で対応策を考えていく姿勢が必要である。
 
 b.コミュニケーションがとれる
 支援人材は支援しようとする障害者とコミュニケーションが取れなくてはならない。話すこと、聞くことが難しい障害者に対するIT支援の場合でも、表情、筆談、IT機器等を活用してコミュニケーションを密にし、IT活用の目的をどのように全うするか支援計画を作成し、確実に実施し、当事者に確認しながら見直していく能力が必要である。
 
 c.人権・プライバシー等への配慮ができる
 支援人材は支援しようとする障害者やその家族等に配慮し、人権やプライバシーに常に留意する必要がある。訪問支援時は私的な生活領域に入り込むことになるためこうしたことに気をつけることはもちろん、電子メールの内容や差出人を見てしまう、私的な文章の内容を見てしまうといった点にも留意が必要である。
 
 d.支援機器等との組み合わせも支援できる
 支援人材はIT支援関連機器以外の支援技術にもある程度対応できることが望まれる。例えば、視覚、聴覚ともに障害を併せ持つ障害者には、点字表示機器や発声支援機器がコミュニケーションに必要となる場合があり、支援を受ける障害当事者を十分理解し、IT支援に留まらず総合的に支援することが望まれる場合がある。
 
 
 ウ.地域資源関連
 a.既存のIT環境を有効活用できる
 一般的には、IT機器、支援機器、ソフトウェア等においては、新しい機種やバージョンが重用される傾向にあるが、IT支援においては、当事者に合うものであることが重要である。特に支援機器については、既存のものを工夫して入力装置等を作成し、使用している障害者も多い。そのため、支援人材は、当事者の環境を把握し、その有効活用を心がける必要がある。
 
 b.制度の活用を支援できる
 日常生活に支障がある障害や、知的な障害を持っている場合、身体障害者福祉法等に基づいて介護支援が行われていたり、介護保険制度を利用できたりすることがある。また、福祉用具や支援技術の関連用具についても、補装具や日常生活用具として、視覚障害者用ポータブルレコーダーや聴覚障害者用通信装置等が給付される制度がある。さらに、就学・就労の機会の拡大等でも制度が整備されている。こうした制度は、地方公共団体によって実施内容が違うため、支援者は障害当事者が住む地域の制度を把握し、あるいは地方公共団体担当者と密接な連携をとることにより、効果的な支援ができるような体制を整えることが必要となる。
 
 c.周辺サービスとの連携を支援できる
 障害者の周りには、ホームヘルパーや、作業療法士、医師といった日常生活を支援する専門家がいる。そのような専門家とも常に情報交換できる関係を築き、健康管理や介護等に関して協力が必要になった場合にはすぐに連携が取れる体制をとっておく必要がある。


(2)支援人材の役割分担
 支援人材に求められるスキルは、「IT機器・ソフトウェアの基礎的な使い方を教えられる」という基礎的なレベルから「制度の活用を支援できる」「周辺サービスとの連携を支援できる」といった高度なレベルまで幅広い。一方で、全ての支援人材がこれら全てのスキルを修得する必要はなく、高度なスキルについては一部の支援人材が修得し、必要に応じてこれらの人材が支援すれば足りる。このように考えると、高度なスキルを持つ支援人材とそうでない支援人材とで役割分担することは、IT支援を効率的・効果的に行う上で重要である。本研究会では、支援人材を(1)支援者、(2)支援統括者、(3)支援企画責任者の3つに分けて検討することとした。
 支援者は、支援統括者の下で、障害当事者に対して直接IT支援を行う担当者である。そのためには以下の知識とスキルが不可欠となる。
 ・ITの基礎知識
 ・障害の理解
 ・コミュニケーション技術
 ・生活支援の方法と道具
 ・IT機器処方に関する知識
 ・IT支援の心構え・ノウハウ
 支援統括者の役割は、各支援者のIT支援をとりまとめつつ、障害当事者にとって最適なIT支援を責任もって実践することである。そのためには支援者の知識やスキルに加えて、IT支援の個別事情への対応スキルが必要となる。
 ・IT支援実践スキル(最新技術を活用した個別事例への対応力)
 ・介護・コミュニケーション実践スキル
 支援企画責任者の役割は、様々な資源(人的資源や地域資源)を障害当事者にとって最適なIT支援環境となるよう配置・調整することである。そのためには、支援統括者の知識やスキルに加えて、IT支援を計画し、評価し、管理運営し、調整するスキルが必要となる。
 ・IT支援マネジメントスキル
 ・関連サービス・制度・法律等の知識
 ・地域資源の理解と調整スキル
 ・新しい取り組みへの提案スキル


2.2 支援人材の育成方策

 IT支援の位置づけと、3つの区分の人材それぞれの役割を明示したものが、図表3である。これをもとに、以下、具体的な支援人材の育成方策をまとめる。

図表3 IT支援の位置づけとIT支援人材の役割
(内容は次の(1)及び(2)のイメージ図)

(1)対象者と育成方法
 「支援者」の育成については、例えば、障害者ITサポートセンターやパソコンボランティア団体における取組や、民間機関等ですでに行っているものがいくつか存在する(例えば、財団法人全日本情報学習振興協会認定の「福祉情報技術コーディネーター」など。)。そこで、ここでは「支援統括者」と「支援企画責任者」を中心に、実践スキルとマネジメントスキルの習得を想定した人材育成の整理を行った。これらの人材育成にあたっては、多様な事例への対応力、新しい技術の活用、異なる専門領域との連携の知識や能力を身につけることができるような、実技及び実習を含む研修とした。
(2)既存専門職への浸透
 確実なスキルに裏付けされた人材を早期に育成するためには、周辺領域の専門職(リハビリテーション分野、福祉分野、教育分野、就労支援分野等)で働く専門職がIT支援に関するスキルを身につけ、現在の業務の中で支援の実践を始めることが効率的である。こうしたことから、既存の専門職の有資格者に関しては、IT支援に係るスキル等を容易に取得可能とするなどの方策も検討されるべきである。
(3)支援人材育成のカリキュラム案
 (1)(2)のような想定からスキルを習得するための学習項目を以下に整理した(図表4)。

(ここに図表4が掲載。内容は以下のとおり。)

図表4 支援者育成のカリキュラム案 
対象者:IT支援人材としてある程度以上のスキルと経験を有する者を対象
スキルアップコースの考え方:IT支援の知識等を有する者が実践スキルを身につけるために実施(認定試験ではない)

コース1 IT支援実践スキル習得コース
※ このコースの講座1及び講座2は、支援者、支援統括者、支援企画責任者のすべてに求められる資質の習得を目指すもの。

講座1 IT支援実践スキル(実習+実演+発表) *インターン含む
実習:ニーズの把握(相談・面談)
実習:機器・ソフトウェアの処方
実習:国内外の最新製品情報と現状 ※企業等による実演
実習:市販品でカバーできない場合の対処
発表:IT支援実践事例の報告

講座2 介護・コミュニケーションの実践スキル(講義+実習)
講義:障害・疾病等の理解
講義:障害者・高齢者の生活実態の理解
実習:実践的な介護・援助技術の基礎
実習:コミュニケーション技術 ※障害者・高齢者を相手に実習(視覚障害、肢体不自由、言語障害 等)

コース2 IT支援マネジメントコース
※ このコースは、基本的にIT支援実践スキル修得コース終了者が対象。また、このコースの講座1は、支援統括者、支援企画責任者に求められる資質の習得を目指すもの。講座2から4は、支援機各責任者に求められる資質の習得を目指すもの。

講座1 支援計画作成スキル基礎(講義+演習)
※ この講座は、支援統括者、支援企画責任者の両者に求められる資質の習得を目指すもの。
講義:IT支援全体像の流れ及び支援マネジメントの心構え・ノウハウの習得
演習:IT支援計画作成演習

講座2 支援計画作成スキル応用(講義+演習)
※ この講座は、支援企画責任者に求められる資質の習得を目指すもの。
講義:最新社会動向の習得
講義:最新支援事例の習得
講義:最新ノウハウ・手法等の習得
演習:IT支援マネジメント演習

講座3 地域資源の理解と調整スキル(グループワーク)
※ この講座は、支援企画責任者に求められる資質の習得を目指すもの。
グループワーク:具体的な連携方法の習得

講座4 新しい取り組みへの提案スキル(グループワーク)
※ この講座は、支援企画責任者に求められる資質の習得を目指すもの。
グループワーク:実践の成果を踏まえた改善提案

図表4の内容はここまで。

ア.IT支援実践スキル習得コース
・目的:支援人材としてのある程度のスキルと経験を有する者を対象に、IT支援実践スキルの高い人材を養成する。
・内容:最新機器・事例に基づくIT支援の実践とともに、介護やコミュニケーションの実践スキルを身につける。 
a.IT支援実践スキル(実習・実演・発表)
・目的:最新の製品・事例情報を基に、多様な事例に対応できるよう、多様なIT支援実践スキルを習得する。
・内容:製品・支援事例等における最新情報を身につけるとともに、実際の現場でインターンを行いながら、実践での応用力を養う。
・授業項目
 実習:ニーズの把握
     利用者への相談・面談の仕方
     − インターンとして、実践の中で、利用者ニーズの的確な把握を試みる。
     − 利用者の理解・共感的理解を行う。
 実習:機器・ソフトウェアの処方
     IT機器・支援機器やソフトウェアの選定、購入、設置、導入、調整等を実習する。
 実習:国内外の最新製品情報と現状
     機器・ソフトウェア製造企業等による最新の機器・ソフトウェアのデモと、その実習を実施する。
 実習:市販品でカバーできない場合の対処
     支援の現場での応用力を身につける。
 発表:IT支援実践事例の報告
     各自の実践事例を発表し、知識・経験の体系化と、積極的な情報発信を促す。
 
b.介護・コミュニケーションの実践スキル(講義+実習)
・目的:IT支援を実践するに当たって必要となる介護技術・コミュニケーション技術を習得する。
・内容:障害・疾病等の状況とこれを基にした生活実態の双方を理解しながら、それを支援する技術を実践的に身につける。
・授業内容
 講義:障害・疾病等の理解
     障害・疾病等による心身機能の状態・変化を理解する。
 講義:障害者・高齢者の生活実態の理解
     障害・疾病・加齢を基にした生活実態を理解する。
 実習:実践的な介護・援助技術の基礎
     生活支援の基礎を学習し、介護・ホームヘルプサービスを体験する。
 実習:コミュニケーション技術
     AAC(拡大代替コミュニケーション)※の知識と方法を学び、障害者(視覚障害、肢体不自由、言語障害等)や高齢者を相手に実習し、実践を体験する。
     ※重度障害者が有する残存能力を活用してコミュニケーションの成立を目指すコミュニケーション技法。また、その技法に関する学際的研究分野。
 
 イ.IT支援マネジメントコース
・目的:IT支援に関する計画・実行・評価までの全てについて責任を持って実践できる人材を養成する。
・内容:IT支援におけるマネジメントの方法を学ぶ。

a.支援計画作成スキル基礎(講義+演習)
  ・目的:IT支援の流れと、支援計画書作成を中心にしたマネジメントの基礎知識を身につける。
  ・内容:高齢者ケアマネジメントを手本として、IT支援における支援計画作成の在り方を学び、実践能力を身につける。
  ・授業内容
   講義:IT支援全体の流れ及び支援マネジメントの心構え・ノウハウの習得
      IT支援全体の流れと、以下のような各フェーズにおける作業の進め方を理解・習得する。
      − 支援案件の発見及びサービスの利用相談・面接
      − 事前のアセスメントと他機関との連絡・調整(関係機関・職能に関する機能・役割の理解を含む)
      − 契約、同意及びアセスメント
      − 総合支援計画(IT支援の開始から終了目標までの全体的な計画)の作成と支援担当者会議の開催
      − 個別支援計画(各回ごとの具体的なIT支援計画)の作成と支援実施・経過把握
      − モニタリング・評価 等
  演習:IT支援計画作成演習
     いくつかのモデル事例を設定して、IT支援計画作成の演習を行い、実践力を身につける。
 
b.支援計画作成スキル応用(講義+演習)
  ・目的:IT支援に関するマネジメントの応用力を身につける。
  ・内容:IT支援に関する最新動向及び周辺分野における最新動向を踏まえ、IT支援計画作成の実践スキルを磨く。
  ・授業内容
   講義:最新社会動向の習得
      直近数年間におけるIT支援に係る新しい組織・職能・法律・制度・機関等の動向を把握する。
   講義:最新支援事例の習得
      IT支援に関する最新支援事例(処方事例・臨床事例)の把握とノウハウの習得をする。
   講義:最新ノウハウ・手法等の習得
      支援結果の効果・評価を収集・蓄積し、分析する手法を学ぶ。
   演習:IT支援マネジメント演習
      最新動向を踏まえながら、IT支援マネジメントのケーススタディを行う。
 
c.地域資源の理解と調整スキル(グループワーク)
  ・目的:関係機関との調整能力を身につける。
  ・内容:個別の地域支援機関の機能・役割の理解、地域資源の活用・連携方法を学ぶ。
  ・授業内容
   グループワーク:具体的な連携方法の習得
   各職能(医師、保健師、教諭、OT、PT、ST、SW 等)に関する理解を深め、グループワークを通じて参加者同士がそれぞれの立場を理解しあい、人的ネットワークを構築する。

d.新しい取り組みへの提案スキル(グループワーク)
  ・目的:関係機関に新しい取り組みを提案していけるスキルを身につける。
  ・内容:他の関係機関に向けて積極的なアプローチをすることで、障害当事者のIT利活用の総合的な支援体制を形成する。
  ・授業内容
   グループワーク:IT支援実践の成果を踏まえた改善提案
           グループごとにテーマを設け、IT支援サービス・機器の提供者や関係機関等に対する改善提案を実際に作成し、相互評価を行う。


3.地域における障害者のIT利活用支援体制モデル

3.1 支援のモデル
 
 前節で検討した支援人材の活躍の場を考えるとき、その活動内容や活動範囲によって、支援体制の在り方についても検討する必要がある。これについては、以下のように整理を行った。
 
(1)IT支援の活動内容
 ア.直接的なIT支援
   障害者に対する直接的なIT支援について、どのようなサービスをどのように提供するかという観点から考える。サービスの内容としては、次の2つの形態に大別される。
  ・特定の会場における講座の開催
   数名から十数名程度で機器操作やスキルアップを助ける集合講習講座を設け、障害者が特定の会場に来所してIT支援を受けるもの
  ・居宅等への訪問による指導、補助
   障害者の居宅等を訪問して個別に機器操作の習得、スキルアップを助けるもの

  集合講習講座の開催は、支援する側から見ると、IT機器・ソフトウェアの操作環境を整えやすい、講師、その他の支援者が集まって一定レベルの支援を効果的に提供できるなどのメリットがある。反面、障害者にとっては、決められた日時や会場に出向くこと自体に制約がある、一人一人の状況やニーズには必ずしも応えてもらえない可能性があるなどのデメリットがある。
  訪問による指導は、障害者と支援人材という個々の関係の中で実施するものであるため、支援する側には事故、その他の想定されるリスクに対して一段と厳しく対処することが求められることや、一人の障害者に対して一人又は複数の支援人材が対応する必要があるため人的コストがかかるといった困難さがある。しかし、障害当事者にとっては、個別のニーズや自分の機器のセッティングなどに具体的に応えてもらえるというメリットがある。
  IT支援は、障害者の日常生活の状況、支援ニーズや操作環境等の違いに大きく影響されるものであるため、個別対応型の訪問による支援に重点を置いた方が本来は望ましい。
 
 イ.支援人材の育成支援
   上記ア.のような支援を行う前提として、それを実践できる支援人材を育成する必要がある。支援人材には、関係機関との連携も含めて総合的な支援計画を作る支援企画責任者、障害者と直接接触して支援する支援統括者、支援者といった幅があるが、いずれもニーズに応じた適正な人数を適切な地域に配置できることがより良いサービスの提供に結びつく。そのため、どの種類の人材をどのようにして育成するかが重要な課題である。

(2)地域による役割分担
 実際には、高度なスキルを持った支援人材の人数は限られており、全ての地域に高度なスキルを持った支援人材を配置することは難しい。また、高度なスキルが必要とされる支援案件はそれほど多くないことから、高度なスキルを持った人材については、ある程度広域を担当することが現実的であるし、効率的である。したがって、高度なスキルを持った支援人材の育成についても、ある程度広域で育成した方が効率的である。逆に、直接IT支援に携わる支援者については、各地域の実情に根ざした人材を数多く育成することが重要となる。そこで、ここでは、大きく市区町村レベル(生活圏域)と県域レベル(広域)とに分けて、それぞれが担うべき役割を以下に整理する。
 
 ア.市区町村レベルで担うもの
 ここで言う市区町村レベルとは、生活圏に基づいた広さをIT支援の単位区域と考えるということであり、必ずしも行政単位による支援とは一致しない。
 
 a.訪問サポートに重点を置いたメニュー
 障害者が日常生活の中でIT機器・ソフトウェアやネットワークの利用に困った時にサポートを受けたいというニーズに適宜対応できるようにするためには、身近で、派遣がしやすい市区町村レベルに支援人材を配置することが望ましい。そうすることで、IT支援を受ける側にとっては素早く、柔軟に対応してもらえる可能性を広げ、IT支援を行う側にとっては経費的にも時間的にも効率がよく、提供回数の調整、地域性を踏まえた対応など、よりきめ細かな対応も可能となる。
 また、集合講習講座の開催についても、市区町村レベルで実施する場合には、会場まで比較的近いため、障害者が出かけやすいといったメリットが多い。
 ただし、障害当事者の中には顔見知りが多い身近な支援人材や団体からの支援を嫌う人もいることには留意が必要である。
 
 b.支援者育成を中心にした人材育成
 身近な市区町村レベルでIT支援を行うための体制として重要になるのは、地域の諸事情を踏まえて身軽に活動できる支援者と、個々の障害者のニーズや地域の実情に応じた支援計画を作成し、複数の支援者を統括する支援統括者を配置することである。
 このうち支援者は、地域に数多く養成し、細かな依頼に、素早く対応できるようにすることが望ましい。こうしたことから、支援者は市区町村レベルにおいて育成する人材として適当である。支援統括者については、IT支援の実践やスキルアップ研修を行いながら、支援者の中から育成することが可能な場合か、地域に在住・在勤の福祉分野の専門職の中から育成することが可能な場合には、市区町村レベルで育成することも考えられる。
 IT支援全体の統括者である支援企画責任者は、市区町村レベルにも配置できることが好ましいが、現状ではこれに見合う経験や能力を有する人材は数多くいるわけではなく、また市区町村レベルにおけるニーズはそれほど高くない。さらに、総合的な支援計画の策定、様々な障害対応、他機関との連携など、高度なスキルを要するものでもあるため、市区町村レベルでの支援を日々実践している中だけでは養成が難しい。このため、より広域での他の支援団体との連携体制を築いていく上で育成することが効率的であると考えられ、県域レベル以上の広域での育成を考えることが望ましい。

 イ.県域レベルで担うもの
 ここで言う県域レベルとは、都道府県レベルの広さをIT支援の単位区域としたものである。
 
 a.訪問サポートの調整
 県域レベルでは、市区町村レベルの場合と異なり、身近なサポートよりも、広域的なネットワークを活用したIT支援に重点を置く。現状では必ずしも市区町村レベルごとにIT支援の実施団体が形成されているわけではないため、県域レベルにおいても訪問サポートや集合講習講座を実施することも想定されるが、基本的にはこうした事業では上述の市区町村レベルでのIT支援の方が効率的かつ効果的であり、県域レベルでは、障害者からの依頼を受けて直接のサポートに携わる支援団体や支援統括者をコーディネートする役割を担うことが望ましい。
 例えば、障害者からIT支援の依頼があった場合、当該障害者の居住地を中心に考えて、当該地域あるいはその近隣で活動する支援団体を探し、その団体への橋渡しを行った上で、その団体が支援に当たる。
 こうしたコーディネートを実現するためには、県域レベルの団体において、どこにどのような支援団体があり、どのような人材がいるか、中核となり得る団体はあるかなどに関する情報を把握しながら、そうした団体間のネットワーク化を進めていくことが必要である。
 
 b.市区町村レベルへの支援を中心にした高度な人材の育成
 IT支援人材の育成については、高度なスキルを伴う業務を担える人材の育成に注力することが県域レベルの役割である。現状では、計画立案、重度障害対応、その他特殊な対応、関連機関との連携・調整等を担える高度なスキルを持った人材(支援企画責任者、支援統括者)は数が少なく、また活躍の場も県域レベルが主となることから、その育成は県域レベルで行うことが効率的である。そこでは、障害当事者から依頼を受け、支援内容や連携機関を決めていくために必要となる支援計画の立案を行い、高度な支援の実践や、最新のIT技術に関する情報の収集・提供等に関する具体的な研修を行い、支援企画責任者、支援統括者など、高度なスキルを持った人材育成にあたる。
 このためには、市区町村レベルの支援者や支援統括者を中期的に受け入れ、県域レベルの団体に属する支援企画責任者等と一緒に活動することにより、支援統括者や支援企画責任者に必要なスキルやネットワークを実践的に習得した後、市区町村レベルの支援団体に戻る、という方法などが考えられる。
 また、市区町村レベルの小さな支援団体では、継続的にIT支援していくために必須となる支援者の育成、スキルアップを独自には対応できないこともある。そうした団体向けには、支援者育成の研修を開催することも考えられる。そのほか、市区町村レベルの支援団体における具体的なIT支援を充実させ、実践しやすくするために、人材育成のほか、他の支援団体、行政、福祉分野等の専門機関など外部機関との連携を支援し、支援機器やIT機器に関する最新情報を提供することも県域レベルの団体の役割の一つとして求められる。したがって、県域レベルの団体には、外部の専門機関、行政、機器メーカー等との連携関係の確立、定期的な情報交換が不可欠となる。


3.2 地域リソースの有効活用
 
 障害者がITを利活用するのは、何らかの目的(外部とのコミュニケーションやリハビリテーション、在宅就労等)のためであり、その目的の達成に向けては、IT支援だけで対応できないことの方が多い。例えば、IT機器操作が日常生活と不可分なものとなっている場合、生活支援の一部としてIT支援を捉える必要もでてくる。そこで、IT支援の周辺で関わる生活支援、介護支援等については、障害者支援などを行う地域の専門機関と連携する必要がある(図表5)。

(ここに図表5が掲載。内容は次のとおり。)

図表5 ITサポート体制と既存地域資源
※支援分野の種類は以下のとおり
・リハビリ
・保健・医療
・就労・教育支援
・ITサポート
・ケア・生活支援

※各支援分野における既存地域資源は以下のとおり
・リハビリ
 リハセンター(担当する人の職業:OT、PT、ST、SW)
・保健・医療
 診断・治療・予防(担当する人の職業:医者、看護師)
 保健センター、保健所(担当する人の職業:保健師)
・就労・教育支援
 養護学校等(教諭)
 能力開発校
 小規模作業所
 小規模通所授産施設
 授産施設
 厚生施設
 福祉工場
 在宅就業支援団体
 地域障害者職業センター

・ITサポート
 ITサポートセンター等(詳細は後述)
・ケア・生活支援
 子ども支援センター等福祉施設
 保育園
 デイサービス施設(通所)
 地域生活支援センター

※ITサポートセンター等について
・実施主体
 都道府県あるいは市町村
・運営委託
 NPO
 社会福祉法人
 社会福祉協議会 等
・現状のメニュー(社会人対象)
 IT講習会
 ボランティア養成・派遣
 パソコンリサイクル
・ITサポートセンター等について今回の実証実験でモデル的に検証
 県と市区町村機能の切り分けや、関係機関との調整、社会人以外の障害者、重度障害者への対応等も含めて検討
 県域機能:総合支援計画作成、関係機関調整、ITサポート実践支援、高度人材育成
 市区域機能:窓口、個別支援計画作成、ITサポート実践、実践人材育成
・ITサポートセンター等と、リハビリ分野、保健・医療分野、就労・教育支援分野、ケア・生活支援分野、企業とは、相互に連携

図表5の内容はここまで。

(1)地域リソースとなり得る機関
 IT支援を行う機関が連携を必要とする分野としては、生活支援分野、保健・医療分野、リハビリテーション分野、就労支援・教育分野が考えられる。具体的に連携機関となり得るものとしては、次のものが挙げられる。
 ・行政機関(都道府県及び市区町村。また、その出先機関である福祉事務所等)
 ・介護支援センター
 ・リハビリテーション機関
 ・学校(初等・中等教育機関)
 ・就労支援機関
 このほか、県域レベルの団体等におけるIT機器等の最新動向に関する情報収集・提供等については、IT機器、支援機器のメーカー等と連携することも考えられる。

(2)連携業務と役割分担
 各機関との連携に当たっては、IT支援及びその周辺の生活支援等を実践する際の目標、役割分担、支援の手順等に対する合意形成が重要であり、その前提として、IT支援の目標と各機関のミッションとの整合性が不可欠である。
 
ア.行政機関
  市区町村レベルのIT支援団体においても県域レベルの団体においても、IT支援を一般に認識、普及させ、他の関連機関等と連携を築いていく上で、対象とする地域の行政機関との連携は不可欠である。
  具体的には、福祉分野施策におけるIT支援の位置づけの確認、IT支援に関わる役割分担、責任範囲、実施手順の設定等が検討課題となる。
 
イ.介護支援機関
  障害者等の介護と生活支援に当たる介護支援センター等においては、福祉の専門職である社会福祉士等が、障害者の相談に応じ、受けられるサービスに関する助言を行うなど、中核を担っている。そこで、こうした社会福祉士等との連携によって、IT支援計画の作成や、訪問サポートの実施の際に、個々の障害当事者に見合う介護状況等に基づいたIT支援について助言を得ることが可能となる。
 
ウ.リハビリテーション機関
  障害者等にとって、IT機器は社会参加のための道具として非常に大きな意味を持つものである。そこで、リハビリテーション機関と連携することで、リハビリテーション専門職の立場から、IT支援を受ける側の障害状況と生活環境の把握、支援方法について助言を得ることで、障害当事者が効率的かつ早期に社会参加できるようになることが期待される。
 
エ.就労支援・教育機関
  養護学校等の初等・中等教育機関においては、若い世代を対象にIT機器の操作、活用方法の習得に係る支援を行っていることから、効果的なITスキルの習得に繋がる。また、地域におけるIT支援の窓口としても、地域に所在する障害者やその家族のIT支援ニーズを把握するなどして、具体的な支援の起点となることが期待できる。
  また、障害者職業能力開発校においては、ITは就労支援に向けたツールとして考えられており、ITを活用した就労支援がカリキュラムに組み込まれている。さらに、障害者の就労支援の専門機関である地域障害者職業センターや在宅就業支援団体との連携により、在宅勤務、在宅就業を行う障害者に対する支援がより効果的に行われることが期待できる。

4.実証実験による検証

4.1 実証実験の目的と支援モデル

 本実証実験は、IT支援を促進するために、地域の中で、人的支援体制を構築し、その効果を実証することを目的として、平成16年7月から平成17年2月まで実施した。
 対象エリアとしては、市区町村レベルと県域レベルの2つを想定し、それぞれのエリアで実現すべき人的支援を継続して実施できる体制を考慮しながら実験的に展開した。市区町村モデルと県域モデルの想定は、次のような観点から行った(図表6)。
 ア.市区町村モデル
   町村レベルでは、IT支援を必要とする人が少ないことや、支援人材の不足のためにIT支援確立が難しいことから、当該エリアでIT支援を実施でき、かつ、継続的な実施が可能となるよう、本実証実験では比較的人口密度の高い都市型の市区町村モデルを選定した。
 イ.県域モデル
   市区町村レベルでの直接的なIT支援が効果的に実践可能となるよう市区町村レベルの各IT支援団体のネットワーク化を行うとともに、高度な支援人材の育成や福祉・教育分野等の既存専門職のスキルアップ等を実施し、市区町村レベル単独では実現しにくい人的支援体制をとるものとして県域モデルを想定した。

(図表6が掲載。内容は次のとおり。)
 図表6 想定した市区町村モデルと県域モデルのイメージ
(1)県域:障害者の支援申込を受け、県社協から県域レベル中核機関(かながわ障害者IT支援ネットワーク)に依頼。中核機関ではリハビリセンター等と適宜連携しつつ支援計画作成。特に市区域よりもレベルが高めのIT利活用のための講習を在宅において実施、また障害者の希望によっては就労支援機関と連携し、就労を視野に入れたIT活用講習を当該機関で実施。
さらに、福祉サービスとの連携を図るべく、ヘルパー等を対象にした福祉情報技術研修(初級)の実施、県域及び市区域におけるIT支援中核機関において指導者、中核的なコーディネーターになりうる人材の育成(福祉情報技術コーディネーター研修上級等)、地域教育機関等との連携を図る。
(2)市区域:障害者の支援申し込みを受け、練馬区から市区域レベル中核機関(練馬ぱそぼらん内の有資格者組織)に依頼。中核機関でリハビリセンター等と適宜連携しつつ支援計画作成。導入からメール、ホームページ閲覧程度の基本的なレベルについて在宅サポート、障害別の講習会を実施。
(3)機器メーカー等、リハビリテーション研究機関は、さまざまな情報提供や照会への回答等により、県域及び市区域中核機関をサポート。

図表6の内容はここまで。 

 なお、今回の実証実験では、支援人材の区分として、「支援企画責任者」「支援統括者」「支援者」に区分けした※。支援者以外は、支援をする上で必要となるスキルを有することを保障するため、こうした資格としては我が国では唯一の資格である財団法人全日本情報学習振興協会認定の「福祉情報技術コーディネーター」の有資格者を想定し、かつ、将来的には有料でサービス提供するレベルを想定した(図表7)。
 ※ここでは、本研究会の議論の経緯に従って、「支援企画責任者」「支援統括者」「支援者」と記載しているが、実証実験を実施した時点では、これらはそれぞれ「コーディネータ」「支援責任者」「支援者」という名称で検討していた。

(図表7が掲載。内容は次のとおり。)
図表7 本実証実験におけるIT支援人材の区分

支援企画責任者、支援統括者、支援者それぞれの要件と支援スキルを記載。

支援企画責任者
要件
 ・障害を理解し、当事者の状況に合わせたITサポートを1人で計画し、担務することが可能であること
 ・福祉情報技術コーディネーター1級相当の知識に加え、実技、支援計画策定などの研修を受けていること

支援スキル
 ・地域リソースを把握し、組織・人のコーディネートができる
 ・利用者に対する効果的なサービス・人のコーディネートができる
 ・支援計画書を作成できる

支援統括者
要件
 ・福祉情報技術コーディネーター1級相当の知識に加え、実技研修を受けていること

支援スキル
 ・IT支援の総合的な実践ができる

支援者
要件
 ・基本的な障害に対する理解(将来的に福祉情報技術コーディネーター3級相当の知識)及びITに関するスキルをみにつけていることが望ましい
 ※実証実験では、エントリレベルの支援者を特に「補助者」とよんでいる。

支援スキル
 ・基本的なIT支援ができる


図表7の内容はここまで。 

4.2 実施体制

(1)市区町村モデルの実施体制
 市区町村モデルとしての実証実験は、東京都練馬区の協力を得て、特定非営利活動法人練馬ぱそぼらん(以下、「練馬ぱそぼらん」という。)において協働実施した。
 実証実験の実施に当たっては、練馬ぱそぼらんと練馬区と協定書を取り交わした。協定書の基本合意項目は、目的、事業の主体、事業の内容、対象者、役割分担と責務、費用の分担、事故等による損害、意見調整、個人情報の保護、協定の有効期間等である。
 IT支援内容と役割分担は、以下のとおりである。

ア.訪問支援事業
 a.支援内容
  IT導入からメール操作、インターネットの閲覧等の操作(IT初心者向け)
 b.支援場所
  障害者の自宅
 c.対象者
   身体障害者(肢体不自由、視覚障害、聴覚障害、内部障害)、知的障害者
   ただし、知的障害者は、「障害者パソコン教室」受講修了者のみ受付※
   ※練馬ぱそぼらんは知的障害者に対する支援ノウハウが十分ではなく、リスクの判定が難しいため、本実証実験では知的障害者からの一般申込の受付は見合わせた。
 d.役割分担
   練馬区(総合福祉事務所):受付、障害者手帳・台帳確認、該当者に対する給付・助成等の説明、練馬ぱそぼらんの紹介、IT支援終了確認
   支援企画責任者:IT支援の受入の可否、支援計画書の作成、関係機関への相談、パソコン及び支援機器の購入相談、練馬ぱそぼらんへの引継ぎ、終了報告(総合福祉事務所へ)等
   練馬ぱそぼらん:IT支援実施、IT支援終了報告(支援企画責任者へ)
 
イ.集合講習事業
 障害の内容や度合いに応じた機器・ソフトウェアの紹介、これらの体験ができる常設IT体験コーナーの運営のほか、障害別(軽度・重度・知的・視覚障害)にメール操作やインターネット閲覧を中心とした簡単な操作の講習を実施。
 a.IT体験コーナー
   ・支援内容
     常設IT体験コーナーにおける障害に応じた機器やソフトウェアの紹介、予約制での操作説明支援
   ・設置場所
     練馬区施設内 障害者団体活動室(常設)
   ・対象者
     常設IT体験コーナーは特に対象者の制限なし。操作説明支援は、身体障害者(肢体不自由、視覚障害、聴覚障害、内部障害)を対象
   ・役割分担
     練馬区:設置場所の確保、設置機器の管理、障害者からの操作説明支援の申込受付、練馬ぱそぼらんへの連絡
     練馬ぱそぼらん:操作説明支援、機器やソフトウェアの説明、訪問支援等希望者には福祉事務所を紹介
 b.障害者パソコン教室
   ・支援内容
     パソコン操作基礎、メール操作、インターネット閲覧を主とした簡単な操作の講習
   ・実施場所
     練馬区職員研修所
   ・対象者
     身体障害者(肢体不自由、視覚障害、内部障害)、知的障害
   ・役割分担
     練馬区:区報での周知、受付事務、会場及び機器の確保、講習会当日の立会い
   練馬ぱそぼらん:受講者の選定、会場設営、支援機器の手配、講習等
 
ウ.支援人材養成講習
  このほか、支援者になることを希望する人への講習を実施。
 a.支援者養成講習
   ・講習内容
     現在ボランティアを実施している人を対象とした障害の理解に関する講習(IT支援についてある程度の知識を有した人を想定)
   ・実施場所
     練馬区施設内会議室
   ・対象者
     支援者・補助者として、すでにIT支援に携わっている人
   ・役割分担
     練馬区(障害者課):区報での周知、受付事務、会場確保
     練馬ぱそぼらん:受講者の選定、会場設営、機器の手配、講習等
 b.補助者養成講習
   ・講習内容
     支援企画責任者の計画に基づいてIT支援を行うための基礎講習(初心者を想定)
   ・実施場所
     練馬区施設内会議室
   ・対象者
     支援者・補助者をめざす人
   ・役割分担
     練馬区(障害者課):区報での周知、受付事務、会場確保
     練馬ぱそぼらん:受講者の選定、会場設営、機器の手配、講習等

(2)県域モデルの実施体制
  県域モデルとしての実証実験は、社会福祉法人神奈川県社会福祉協議会(以下、「神奈川県社協」という。)がかながわ障害者IT支援ネットワーク(神奈川県内のパソコンボランティア団体等の連携を目指した任意団体)と協働で実施した。
  実証実験の実施に当たっては、神奈川県社協とかながわ障害者IT支援ネットワークとの間で、目的、事業の主体、事業の内容、対象者、役割分担と責務、費用の分担、事故等による損害、意見調整、個人情報の保護、有効期間等を確認した。
  IT支援内容と役割分担は、以下のとおりである。

ア.訪問サポート事業
 a.サポート内容
   IT導入からメール操作、インターネットの閲覧等の操作(IT初心者向け)及び文書作成、表計算、ホームページ作成までを想定した継続的なスキルアップ講習
 b.サポート場所
   障害者の自宅
 c.対象者
   身体障害者(肢体不自由、視覚障害、聴覚障害、内部障害)、知的障害者
 d.役割分担
   神奈川県社協:受付、かながわ障害者IT支援ネットワークの説明、個人情報に関する説明
   かながわ障害者IT支援ネットワーク:IT支援の受入の可否、支援計画書の作成、関係機関への相談、パソコン及び支援機器の購入相談、会員及び関係者への引継ぎ、終了報告(神奈川県社会福祉協議会へ)
   かながわ障害者IT支援ネットワーク支援者:IT支援実施、IT支援終了報告(かながわ障害者IT支援ネットワークへ)

イ.集合講習事業
  ・支援内容
   障害者がITを活用して就労可能な技能を身につけるための支援、文書作成、表計算、作図、ホームページ作成、視覚障害者上級コース4コースの講習
  ・実施場所
   県内社会福祉施設、企業各1ケ所(バリアフリー対応施設)
  ・対象者
   身体障害者(肢体不自由、視覚障害、聴覚障害、内部障害)
  ・役割分担
  神奈川県社協:実施場所の確保、募集、広報、受講者選定・決定(かながわ障害者IT支援ネットワークと協働で実施)
  かながわ障害者IT支援ネットワーク:機器準備、支援実施
 
ウ.福祉情報技術研修(初級)
 ・講習内容
  地域のIT支援に関する普及啓発の担い手となるホームヘルパー、ケアマネジャーなどの福祉関係者を対象とした基礎的なIT支援
 ・実施場所
  神奈川県社会福祉協議会会議室
 ・対象者
  ホームヘルパー、ケアマネジャー等
 ・役割分担
  神奈川県社会福祉協議会:実施場所の確保、募集、広報、受講者選定・決定(かながわ障害者IT支援ネットワークと協働で実施)
  かながわ障害者IT支援ネットワーク:機器準備、研修実施に関わる全般
 
エ.福祉情報技術研修(上級)
 ・講習内容
  支援企画責任者になる人材の育成を想定した研修及びIT支援に向けた実技を含んだ技術研修
 ・実施場所
  神奈川県社協
 ・対象者
  原則として既にIT支援に携わっている人
 ・役割分担
  神奈川県社協:実施場所の確保、募集、広報、受講者選定・決定(かながわ障害者IT支援ネットワークと協働で行う)
  かながわ障害者IT支援ネットワーク:機器準備、研修実施にかかわる全般

 その他、これら事業に付随して、県内のパソコンボランティア団体によるネットワーク組織(かながわ障害者IT支援ネットワーク)結成に向けた取り組みと、地域リソースの有効活用(関係機関との連携)の試行として県立養護学校の支援を実施。

4.3 実証実験としての評価

(1)評価方法
 実証実験としての評価は、市区町村モデル、県域モデルそれぞれにおいて実践されたIT支援の内容と状況を確認することを基本とした。また、IT支援の提供者と利用者の双方に対するアンケート及び本実証実験において支援企画責任者又は支援統括者の役割を担った人材へのヒアリングを実施し、その結果を考慮して分析した。
 アンケート及びヒアリングの回答者属性は、以下のとおりである。

ア.市区町村モデル
 a.アンケート
 ・利用者側:訪問サポート利用者(12名)、パソコン講座受講者(8名)、支援者養成講座受講者(入門15名、初級8名)
 ・支援者側:訪問サポート提供者(支援企画責任者(2名)、支援統括者(6名)、補助者(2名))
 b.ヒアリング
 ・支援企画責任者(1名)
 イ.県域モデル
 a.アンケート
 ・利用者側:訪問サポート利用者(14名)
 ・支援者側:訪問サポート提供者(25名)
 b.ヒアリング
 ・支援企画責任者(1名)、支援統括者(1名)

(2)実証実験の評価結果
 本実証実験については、県域モデルと市区町村モデルの設定の妥当性を検証し、今後実践可能なIT支援体制を検討するため、次の4つの視点から評価を行った。
ア.県域レベルと市区町村レベルの支援内容の設定が妥当か
イ.地域全体での連携、役割分担が妥当か
ウ.支援内容と対象者、支援者の資質の組み合わせが妥当か
エ.費用が妥当か
上記視点ごとの評価結果を以下に整理する。

ア.県域レベルと市区町村レベルの支援内容の設定が妥当か
 市区町村モデルにおける訪問サポート、集合講習を中心とする支援は、いずれについても利用者、提供者双方から目標を達成したと評価されている。IT支援提供者は、支援を受ける人の近隣で活動することで身近なサポートが可能になると考えている。また、そうした支援に要する費用、時間も、近隣であるために比較的低負担で済み、支援活動の継続的な実施に適していると認識されている。このようなことから、支援を受ける人にの個別のニーズに対応する支援を行う場合には、身近で、派遣がしやすく、費用的にも、時間的にも効率がよい市区町村レベルとするのが妥当である。
 支援人材について見ると、市区町村モデルにおける支援人材としては、地域の実情を知って活動できる支援者が多く必要となるため、その育成は市区町村モデルで育成するべきであると考えている。しかし、市区町村レベルには、高度なスキルを伴う業務(支援計画の作成、関連機関との連携・調整等)を担える支援企画責任者、支援統括者は少なく、また、市区町村レベルにおけるIT支援業務の中だけではこうした高度なスキルは習得しにくい。このため、高度なスキルを必要とする業務を担う人材は、県域レベルや、場合によってはさらに上の全国レベルで実施することが効率的、効果的であると考えられる。
 他方、県域モデルは、市区町村レベルのIT支援実施団体の質を確保・向上し、継続的な活動を促進するために、高度なスキルを有する支援人材の継続的なスキルアップに向けた研修を実施するほか、地域の他のIT支援実施団体や専門機関を橋渡しして連携させる機能、IT機器や支援機器等の利用環境が整った研修会場の貸し出しなどが求められる。
 そのほか、IT支援現場での新規事例や困難事例の対応に有用な既存対応事例やノウハウの収集・提供、機器や支援技術の最新動向等の情報提供といったIT支援事業全体の支援機能が求められている。

イ.地域全体での連携、役割分担が妥当か
 市区町村モデルでは、行政機関(練馬区の総合福祉事務所、障害者課、障害者施設課)との連携、県域モデルでは、かながわ障害者IT支援ネットワークに所属する専門職(リハビリ関係者、作業療法士等)との連携が実施され、それぞれ有益であることが実証された。
 実証実験の開始に当たっては、市区町村モデル、県域モデルとも連携先との調整が重要な意味を持っていた。市区町村モデルにおいては、目的、事業の主体、事業の内容、対象者、役割分担と責務、費用の分担、事故等による損害、意見調整、個人情報の保護、協定の有効期間等について練馬区と練馬ぱそぼらんが確認、合意して、それを協定書という形にまとめた。この作成過程で、双方が実証実験における具体的な事業内容、それに伴うそれぞれの役割、想定されるリスクとそれへの対策などを認識・共有することができた。
 県域モデルにおいても、神奈川県社協とかながわ障害者IT支援ネットワークとの協働を前提とすることで、同ネットワークに所属する専門職等との連携とその手順について確認が行われた。
 具体的な取組においては、市区町村モデルの訪問サポートにおける練馬区総合福祉事務所と練馬ぱそぼらんとの役割分担が明確であり、総合福祉事務所が依頼内容に応じた的確な割り振りができたことから、支援人材はIT支援業務に専念することができた。また、県域モデルの訪問サポートでも、支援企画責任者は、支援計画書や実際のサポート方法の策定において、リハビリテーション関係者、作業療法士といった専門家から介護や生活支援の観点からの的確な助言を受けることができ、支援内容の質を維持することができたと高く評価している。このことから、どちらのモデルにおいても、行政機関や専門職との連携は質の高いIT支援業務にとって有意義なものであった。
 ただし、IT支援を実施するのに当たっては、安全に実施することが最優先課題であり、そのための体制、外部機関との連携方法、連携機関との情報の共有の在り方などについては、引き続き検討が重要であるとの指摘があった。
 以上のことを総合すると、IT支援は、支援内容をIT分野に絞り、IT支援以外の生活支援、介護支援等については、各分野の専門機関、専門職といかに上手に連携するかということを考えていくことが望ましい。具体的な連携機関としては、地域の行政機関(都道府県、市区町村)、介護支援機関、リハビリテーション機関、教育機関、就労支援機関などが挙げられる。また連携の方策としては、IT支援に関する実施内容、役割分担等に関する合意形成及びリスク対策の検討が重要である。特に、個人情報保護、事故対策、苦情対応などのリスク対策には十分な配慮が必要であり、適切な運用ルールを作り、関係者に周知することが不可欠である。
 
ウ.支援内容と対象者、支援者の資質の組み合わせが妥当か
 初心者・初級者である障害者向けの集合講習(パソコン講座)については、講師及びテキストなどの教材に特に問題はなく、概ね目標を達成したと評価されている。ただし、IT機器操作の手本の見せ方、ネットワーク利用環境の不備など会場設備の制約に対しては、やや不満も見られた。また、講座終了後のフォローとして、定期的な講座の開催、パソコン初心者向けの困った時の相談窓口などの手助けが求められている。
 支援人材養成講習については、受講者側から、受講したことがどのように職業やIT支援業務に繋がるのか、実践の中でどう活かせるのかが見えず、受講した効果がわかりにくいという意見があった。提供側も、そうした点については明確な内容になっていなかったことを認識している。
 訪問サポートについては、支援人材側及び利用者側とも、目標は概ね達成したと考えている。市区町村モデル、県域モデルとも、支援企画責任者における支援計画の立案、あるいは関係機関との連携が的確になされたこと、その上でさらに、具体的な支援者を保有資格、スキルだけから選定するのではなく、過去の支援経験も加味して適切な支援者を割り当てられたことが、利用者からの良い評価に結びついたと考えられる。ただし、実施団体からは、現状では必ずしも支援人材が十分な人数いるわけではないため、通常は、一部の人材に偏らないように調整できないことも多いという指摘もされている。
 また、継続的な事業とするには、支援人材の育成、スキルアップが不可欠であるが、これについてはIT支援団体だけでは対応できないため、自団体に所属する意欲の高い人のスキルアップを支援する方策が求められている。
 以上のことから、実証実験においては、利用者の希望に合った支援内容を提供することができ、支援者そのものも受け入れられたと言える。ただし、そうした評価が得られる前提としては、IT支援団体において、利用者の状況や希望をよく聞き、的確な支援計画書を作成するスキル、支援計画に沿った的確な人材や機関を選定するスキル、そして具体的な支援を実践できるスキルを確保することが重要である。そして、支援業務の質を上げていくためには、支援企画責任者や支援統括者から支援者まで、業務の役割分担を明確にし、それぞれの業務に専念できるような体制を作ることが重要である。そのためには、優秀な支援企画責任者や支援統括者の育成が重要であり、その育成や業務の実践を支援する仕組みが必要である。
 
エ.費用が妥当か
 本実証実験においては、支援に対して利用者から徴収する利用料や、支援人材に支払う報酬は、過去の事例や連携機関との調整に基づいて暫定的に定めた。その上で、当該利用料や報酬について、その額が妥当であったかアンケート及びヒアリングで尋ねた。集合講習(パソコン講座)受講料については、利用者からは、1回あたり1,000円以内が妥当との評価が最も多く、5,000円を超えると高すぎるという評価が過半数を占める。訪問サポートについては、有料でも利用したいという意向が大勢を占めており、利用者が支払っても良いとする金額は1回2,000円程度となっている。
 支援人材養成講座に関しては、受講後の活動イメージが持てないことから、他の講座や訪問サポートに比べて受講者の満足度をやや下げ、受講料についても高すぎるとの評価が高かった。講師側からは、受講料をある程度の額に維持するためには、利用者側が強いインセンティブを持てる講習内容や、具体的な仕事への結びつきを提示することが必要という指摘があった。
 訪問サポート業務を担当した支援者においては、実証実験の報酬(交通費の実費支給かそれをやや超える程度)でも十分と考える人が大勢を占めるが、支援企画責任者は、今回の報酬では不十分であるとしている。その理由としては、本実証実験の支援者は通常パソコンボランティアとして活動している人が主体であったことから実費以上の報酬をあまり期待していなかったということがあった一方で、コーディネート業務は高いスキルが要求され、拘束時間も長く、成果に責任があることなどから、無償あるいは実費程度のボランティア活動としてできるようなものではないという考えの違い方が前提にあるものと考えられる。
 したがって、IT支援団体としては、相応の価値のあるIT支援を実施・維持していくためには、少なくとも高度なスキルを要するコーディネート業務等には相応の報酬を支払うことが必須となってくるものと思われる。ただし、現状においては、利用者側の費用負担に多くを期待できないことと、十分な報酬を支払えないために高度なスキルを有した人材が集まらず、そのために報酬を得られるほどにはIT支援の質が向上しないという悪循環が問題として認識されている。また、市区町村モデルの場合、行政との協働でIT支援を実施すると、行政サービスの一部として認識され、行政サービスと同水準、あるいは無償のサービスとせざるを得なくなることもあるとの指摘があった。
 以上のことから、本実証実験からは、利用者、支援企画責任者、支援者の間には、IT支援について妥当だと認識されている費用・金額には大きな乖離があることがわかる。そして、質の高いIT支援を実施するためには、高度なスキルを持った人材が、その能力に見合った報酬を得られる環境を整備する必要があることがわかる。しかしながら、受益者負担に対する抵抗が大きい現状では、支援人材の報酬を受益者負担のみでまかなうことは困難であると推測される。
 なお、本実証実験でIT支援を行うにあたって、どれだけの費用あるいは工数がかかったかを整理した(図表8)。直接経費(交通費、会場費、印刷費、会議費など)は、今回支払いを伴った費用の総額である。人件費の部分については、本実証実験では暫定的に定めた単価に基づいた額となっていることから、各レベルの人材の労働時間を基に整理した。有給が妥当であると考えられる支援企画責任者や支援統括者について、労働単価をどう設定するかについては、サービスの質が担保される仕組みがない現状では、容易には設定できるものではないが、少なくとも、1人の障害者に対して実施するIT支援においては、支援計画作成から、講習会の実施、訪問サポートの実施まで、各支援人材が相当の時間数を投じて支援しているのがわかる。また、今回の試算は、あくまでも実証実験環境での試算であり、練馬区あるいは神奈川県社協の職員の労働工数や、IT支援団体の管理費用も含まれておらず、本実証実験におけるIT支援に直接係る部分のコストしか算出していない点には留意が必要である。
 それらを踏まえた上で、IT支援人材の身分と報酬の在り方やIT支援団体の運営費等も含めた全体のコスト、それをどのような仕組みで誰が負担するかを、今後さらに検討する必要がある。

(図表8が掲載。内容は次のとおり。)
図表8 障害者のためのIT支援にかかるコスト試算の基礎資料
 留意事項1 サービス提供にかかった工数については、ボランティアの工数も含め算出。 
 留意事項2 相談・受付・計画作成については、1件(人)当たり。
 留意事項3 訪問サポートは、1回の訪問当たりの人・時で記載。
 留意事項4 講習会は、今回実施した講習会1回(1日)にかかった工数(準備作業を含む)を人・時で表現。
 留意事項5 サービス提供にかかわる基盤整備的な費用は、加算していない。たとえば、講習会用機器整備費、事務所整備費、団体運営費等

1.相談・受付、支援計画作成、関係機関との調整
・練馬ぱそぼらん
 取扱案件:23件(訪問サポート実施)
 支援企画責任者が実際にかかった工数の目安(稼働時間数×人数)は、1件あたり7人・時。練馬区が担当した部分については工数がカウントされていない。 
・神奈川県社会福祉協議会
 取扱件数:30件(訪問サポート実施)
 支援企画責任者が実際にかかった工数の目安(稼働時間数×人数)は、1件あたり4人・時。神奈川県社会福祉協議会職員が担当した部分については工数がカウントされていない。かかった費用合計は686,240円。内訳は広報にかかわるパンフレット作成費、HP作成費、案内発送費が中心。

2.訪問サポート
・練馬ぱそぼらん
 23件:無料
 実際にかかった工数の目安(稼働時間数×人数)は、支援企画責任者が1回あたり2人・時、支援統括者が1回あたり2人・時、支援者が1回あたり8人・時。
 かかった費用合計は57,720円。主な費用内訳は通信費、交通費。
・神奈川県社会福祉協議会
 30件:無料
 実際にかかった工数の目安(稼働時間数×人数)は、支援統括者が1回あたり5人・時、支援者が1回あたり26人・時。
 かかった費用合計は2,000円。主な費用内訳は資料コピー代で交通費含まず。

3.障害当事者支援IT講習会
・練馬ぱそぼらん
 基礎研修(メール・インターネット)12名:500円
 実際にかかった工数の目安(稼働時間数×人数)は準備を含め、 講習会講師が1回あたり10人・時、講習会アシスタントが1回あたり10人・時。
 かかった費用合計は79,832円。主な費用内訳は教材コピー代、保険、荷物運搬費。
・神奈川県社会福祉協議会
 HP作成研修 5名:10,000円
 実際にかかった工数の目安(稼働時間数×人数)は準備を含め、 講習会講師が1回あたり10人・時、講習会アシスタントが1回あたり20人・時。
 かかった費用合計は50,000円。主な費用内訳は案内発送、教材コピー代。

4.支援者養成講習会
・練馬ぱそぼらん
 初級:13名/2日/5,000円
 入門:28名/1日/無料
 実際にかかった工数の目安(稼働時間数×人数)は準備を含め、 講習会講師が1回あたり10人・時、講習会アシスタントが1回あたり20人・時。
 かかった費用合計は112,574円。主な費用内訳はテキスト印刷代、通信運搬費、消耗品費。
・神奈川県社会福祉協議会
 上級:13名/2日/10,000円+テキスト代
 初級:8名/1日/1,000円
 実際にかかった工数の目安(稼働時間数×人数)は準備を含め、 講習会講師が1回あたり10人・時、講習会アシスタントが1回あたり40人・時。
 かかった費用合計は99,140円。主な費用内訳は案内発送、資料コピー代。

図表8の内容はここまで。

5.障害者のIT利活用支援事業の具体化に向けた提言
5.1 総合的な支援を行うために必要な機能
 ここまでの検討や実証実験の成果を踏まえて検討すると、今後、継続的かつ効率的に総合的なIT支援を行うためには、いくつかのレベルで機能を整理する必要があると考えられる。これを設置レベルごとに切り分けることを考えると、厳密に区分できるものではないが、ここまで検討してきた県域レベル・市区町村レベルのほか、全国レベルを含めた3段階程度に分け、おおむね以下のような機能分化をすることが適当であると考えられる。

全国レベル:
・IT支援を実践する「支援企画責任者」「支援統括者」「支援者」の活動をサポートするIT支援基盤(支援に必要な各種データを集約・発信:臨床情報、リソース情報、評価エビデンス等)
・「支援企画責任者」の育成

県域レベル:
・「支援企画責任者」による相談、支援計画書作成、市区町村をまたがる調整
・市区町村で対応が困難なケースのフォロー
・IT支援に対するクレーム処理
・「支援統括者」の育成

市区町村レベル:
・窓口機能(相談、問い合わせ等)
・「支援統括者」による相談、支援計画にもとづく市区町村内の調整、実践の指導
・「支援者」によるエンドユーザーへの直接支援機能
・「支援者」の養成(市区町村の地域性を考慮した支援者の育成)

 まず、県域レベル、市区町村レベルでの機能分担の有効性は、実証実験で裏付けられた。加えて、実証実験などを通じて、これまで検討してきたあるべきIT支援を実践するためには、多くの関係者との調整や、幅広い知識、高度な実践スキル等が要求されることが明らかになってきた。そこで、総合的なIT支援を行うためには、支援人材が、常に最新の知識や支援ノウハウに基づいて支援できるよう、必要な情報(臨床情報、リソース情報、評価エビデンス等)を確実に入手できるIT支援基盤が必要となる。これら必要な情報は、1箇所に集まれば集まるほど提供する価値が高まり、また、地域的な差異があるものではないことから、県域レベルの機能とするよりも、全国レベルの機能としたほうが効率的である。さらに、支援企画責任者のような高度なスキルを必要とする人材についても、県域レベルでは多数の人材が必要とされないことから、全国レベルでの研修で育成する方が効率的であると思われる。

5.2 支援事業の普及促進
 将来的には、前述のような本研究会で整理したIT支援のあるべき姿を実現することが望ましいが、現状から直ちにあるべき姿に至ることは困難であることから、IT支援に関連する既存のリソース(機能、組織、人材等)をうまく活用し発展させていくことで、現状からあるべき姿へステップアップしていく道筋を整理する。
(1)IT支援専門機関の拡充
 今回の実証実験の結果から、障害者のIT支援は地域の関係機関との連携が必要であり、何らかの形で行政が関与していく必要があることが明らかとなった。
 現在、障害者のIT支援を目的として行政が関与している例としては「障害者ITサポートセンター」がある。地域ごとに取組の内容に差異はあるものの、地域にIT支援の周知を図っていくと同時に、IT支援を望む人たちにとって窓口としての機能を果たしてきている。
 今後は、パソコンボランティアや、リハビリテーション、介護、教育、就労支援等の多岐にわたる分野とも連携しながらIT支援を進めていくため、こうしたIT支援に関わる分野をコーディネートできる環境が各県に整備されていく必要がある。さらに、県域レベルに1箇所では訪問サポートのコーディネートなどがきめ細かく行えない可能性があることから、市区町村レベルでの拠点整備も検討する必要がある。
 将来的には、こうした行政が関与するIT支援専門機関が、パソコンボランティアとも協働するIT支援の地域中核拠点となり、他の専門機関と対等に連携できるような体制整備をし、IT支援に特化したノウハウを蓄積するとともに、IT支援については、他の分野の機関をサポートできるような環境を整備していくことで、今回取りまとめたあるべき姿の実現を目指すべきである。

(2)関係分野の活用
ア.リハビリテーション分野
 リハビリテーション分野の専門職である作業療法士(OT)、理学療法士(PT)、言語聴覚士(ST)等と、密接に連携しながら、IT支援を進めることは重要である。その中でも、IT支援を本来業務として進めやすいのが作業療法士である。すでに、作業療法士が、地域におけるIT支援の核になっているケースも多い。
 また、作業療法士が所属しているリハビリテーション関連組織(リハビリテーションセンター、各種病院、各種福祉施設等)そのものが、IT支援を業務の一環としてとらえることで、リハビリテーションの観点から、IT支援を進めることが可能である。この場合、業務の一環として位置づけることができるIT支援については、既存の医療保険、介護保険で対応可能であると考えられる。
 こうした取組を進めていくため、地方公共団体が進める地域リハビリテーション支援体制整備促進事業のリハビリテーション連携指針中にIT支援への取組を明確に位置づけ、保健・医療・福祉関係諸機関へ普及・啓発を行い、ITの活用に関する専門家(作業療法士等)への相談の仕組みなどを確立していくことが考えられる。
 また、作業療法士におけるIT支援対応を明確にするため、社団法人日本作業療法士協会で作成している福祉用具ガイドラインの中にIT活用のマニュアルを盛り込み、研修会等を通じて、IT支援の最新情報を習得できる環境を整備していくこと等が必要である。なお、同協会では、すでに、本研究会における検討動向を受け、協会員への研修計画の作成を開始している。
 ただし、作業療法士が、障害当事者の生活に密着してIT支援の実践そのものを担うことは、人員不足により困難であることから、IT支援を行う機関に対する専門的なアドバイス、支援機器・ソフトウェアの処方などについて、連携体制を整えていくことが重要になる。

イ.福祉分野
 福祉サービスの一環としてIT支援を考える場合、「相談窓口におけるニーズ把握」と「介護現場における支援の実践」の2つの側面がある。
 「相談窓口におけるニーズ把握」としては、地域における福祉サービスの窓口拠点(福祉事務所、在宅介護支援センター、社会福祉協議会等)において、IT支援に関する項目を個別調査の段階で盛込むことができれば、IT支援のニーズを的確に拾い上げることができ、潜在的なIT支援のニーズも顕在化できるようになる。将来的には、地域包括支援センター等で、高齢者・障害者などの区別なく、介護や日常生活支援を総合的にコーディネートする際、効果的にIT支援のニーズが集約できることが望ましい。そのためには、IT支援のニーズ把握が何らかの制度上で福祉専門職の業務にきちんと位置づけられるかどうかも含めて検討することも必要である。こうしたことから、現在、社団法人日本社会福祉士会では、地域包括支援センター等における社会福祉士の役割等を見定めつつ、地域におけるIT支援への関わりを明確にしていくことを検討している。
 「介護現場における支援の実践」としては、施設介護と在宅介護があるが、現状では、制度に裏打ちされていないサービスであるIT支援を、あらたな業務として追加することは、人材的にも、財政的にも難しい。したがって、当面は、窓口でニーズを把握したあと、IT支援の実践に関しては、IT支援の実践機関にきちんと橋渡しし、実践できる環境を整備するとともに、現場の福祉専門職と連携してサービスを実践できる環境を整備することが必要である。
 なお、IT支援が当事者の生活に密接に関わるものであるために、同じく当事者の生活を支える福祉専門職にも、IT支援に関心をもってもらうため、その方法や効果を理解しやすいように、リソース(製品・サービス・実施機関・人材等)情報や、活用事例を効果的にわかりやすく伝えていく仕組みをつくることも検討すべきである。

ウ.教育分野
 すでに、盲・聾・養護学校においては、教育の観点から、IT支援も含めた地域のセンター的機能を有している。さらに、特別支援教育推進に伴い、特別支援学校への移行とともに、より統合的な地域センター機能が実現することになる。センター的機能の例としては、「特別支援教育等に関する相談・情報提供機能」や「道具を使う上での環境整備」等が「特別支援教育を推進するための制度の在り方について(中間報告)」(中央教育審議会)に示されており、その中で、IT支援に関する専門的な相談への対応が可能である。また、盲・聾・養護学校にはすでに、学習指導要領に基づいて、相談窓口が設けられている場合も多い。今後は、地域のIT支援拠点からのニーズに応じて専門的な観点からのアドバイスを行いやすいよう、インターネット等で広く宣伝するなど環境を整備していくことが重要である。
 一方で、教員向けには、IT支援に関するスキルアップを含むリーダー研修等の仕組みも整っており、専門的な知識をもった教員の計画的な育成が進んでいる。こうした教員が、都道府県や市町村の人材育成研修等に講師として派遣されている例も少なくない。今後は、地域におけるIT支援人材育成等においても、盲・聾・養護学校が指導的な役割を果たしやすい環境を整備することで、さらなる地域の支援人材育成における指導的な役割を果たすことが期待される。
 しかしながら、教員であるという制約から児童・生徒への対応は可能であるものの、地域の障害者全般からの相談を受け、教員自らがIT支援の実践そのものを担うことは難しい。そのため、他の専門職と同様に、IT支援を行う機関からの問い合わせに対する専門的なアドバイスや、IT機器等の教育的な観点からの活用方法などについて相談に応じられるような、連携体制を整えていくことが重要である。

エ.雇用・就業支援分野
 日常生活におけるIT活用だけでなく、雇用・就業に結びつくIT支援についても、障害者の就業支援の専門機関である障害者職業能力開発校において、IT技能習得のコースとして、すでに実施されている。また、民間機関を委託先とした障害者委託訓練においては、企業やNPO、民間教育訓練機関等を受け皿として、就業目標としたIT支援が機動的に実現できる。今後は、こうした場で、すでにIT支援のスキルを身につけたIT支援人材を有効に活用していくことが望まれる。
 また、従来、ITを活用して在宅就業を行う障害者に対して相談・支援を行う団体に対する助成が行われているところであるが、さらに今般、障害者雇用促進法が改正され、IT等を活用して在宅就業を行う障害者に対し、仕事の確保・提供や業務を適切に行うために必要な助言、職業講習や情報提供を行う「在宅就業支援団体」が制度上位置づけられたところであり、こうした団体におけるIT支援人材の育成を図っていくことが重要である。
 さらに、企業に雇用されている障害者がITを活用して在宅で勤務する場合、企業内の担当者がIT支援や労務管理を行うことになることから、在宅勤務の普及に向け、各企業が支援人材の確保・育成に積極的に取り組んでいくことが望まれる。

(3)行政における対応
 まず、IT支援を、今後の重要な情報化政策、医療政策、福祉政策、教育政策、労働政策に関わる重要な機能として、行政自身が担うべき機能の中に位置づける必要がある。今後、地方公共団体においては、障害者ITサポートセンター等のIT支援専門機関によるIT支援機能が、必要な行政サービスであると認識し、IT支援を効果的に実践できるよう、既存のリハビリテーション、介護、教育、就労支援機関と密接に連携できる体制を整えることが重要である。
 そのためには、地方公共団体に配置されている作業療法士や、福祉専門職等が核になって、リハビリテーション、介護、教育、就労支援とIT支援を横断的に実践できる環境を整備していくとともに、ITサポートセンターが他の専門機関と対等に連携できるよう、人材面での拡充を図ることが求められる。

(4)人材育成の環境整備
 障害をもつ人に対するIT支援を実施する人材としては、リハビリテーション専門職、福祉専門職、教員、企業のカスタマサポート等が考えられるが、これらはIT支援の職能として確立されたものではないため、実際にIT支援を実施している人がどこに、どれだけいるかは明確ではない。
 現在のところ、IT支援のスキルの有無を確認できる資格としては、民間資格しか存在しない。唯一の民間資格である「福祉情報技術コーディネーター」については、平成15年度から運用されており、16年度までに約1,000人が受検、500名ほどが資格を取得している。ただし、この資格についても、IT支援に関する知識の習得が中心になっているため、今回の研究会であるべき支援人材として明らかにした「支援企画責任者」「支援統括者」といった、IT支援のマネジメントと実践スキルが必要になる人材については、より実践的な人材育成プログラムを開発し、人材育成を早急にはじめる必要がある。なお、特定非営利活動法人e−AT利用促進協会では、本研究会における検討動向を受け、平成17年度より、「福祉情報技術コーディネーター」1・2級取得者を対象に、IT支援の実践スキル及びマネジメントスキルの習得を目的とした研修を開始している。
 今後の人材育成の実施主体としては、NPOや福祉専門職等の社団法人、福祉系大学が考えられる。また、これらの実施主体に対しては、行政からの助成にとどまらず、営利企業がCSRの一環として支援していくことも期待される。こうしたCSRの動きを促進するような施策も重要である。

5.3 IT支援基盤の拡充
 
 5.1で掲げた総合的な支援を行うために必要な機能のうち、全国レベルの機能であるIT支援基盤については、現状では全く存在していない。しかしながら、IT支援基盤は、本研究会で整理したIT支援のあるべき姿を実現していくためには必要不可欠のものであり、その実現に向けた取組を進めていくことが重要である。IT支援基盤としては、次のような情報の収集・提供機能の在り方が検討すべきである(図表9)。
(図表9が掲載。内容は次のとおり。)
図表9 IT支援基盤のあるべきイメージ
IT支援基盤に必要な機能は、次の6項目で構成する。
a. 技術・製品情報の収集・提供(国内・国外)
b. 関係組織・機関情報の収集・提供
c. 法律・制度情報の収集・提供
d. セミナー・イベント等スキルアップ情報の収集・提供
e. IT支援実践事例の収集・提供
f. IT支援効果の検証(将来的課題として検討)
以上のIT支援基盤に必要な機能は、行政機関・研究機関、機器・ソフト等関連企業、支援者、支援者の所属機関からの情報提供により構築され、これら関係者が主に利用するものであり、これにより障害当事者へのIT利活用支援に必要な基盤とする。

図表9の内容は、ここまで。

ア.IT支援関連情報の収集・提供
 IT支援基盤においては、次のような情報を収集し、全国のIT支援人材が常に最新情報を入手できるよう、適切に提供していくことが必要となる。
a.技術・製品情報
国内外のIT支援機器メーカーなどから、常に最新の製品情報等を収集・提供する。
b.関係組織・機関情報
IT支援機関・団体に関する情報などを収集・提供することにより、各地のIT支援に係る連携を促進する。
c.法律・制度情報
 IT支援に係る法律・制度等の最新情報を収集・提供する。
d.セミナー・イベント等スキルアップ情報
支援企画責任者や支援統括者といった専門的知識を必要とする人材の育成に資するスキルアップ情報を収集・提供する。
e.IT支援実践事例
IT支援機関・団体等におけるIT支援実践事例を収集し、これを整理・分析した上で提供し、支援計画の作成等に資するものとする。

イ.情報収集・提供の仕組みづくり
 効果的に上記の情報の収集・提供を実施するためには、IT支援基盤と、IT機器・支援機器メーカー等の民間企業や、行政機関、研究機関、IT支援人材・団体等との間における相互の連携が重要となる。
 技術・製品情報についてはIT支援機器メーカー等から最新の情報を提供してもらう連携体制が欠かせないものとなり、関係組織・機関情報、法律・制度情報、スキルアップ情報については行政機関や研究機関などの既存の専門組織からの情報提供が不可欠である。これまでも、こういった情報については、現時点でインターネット等を通じて入手できる情報も多い。しかしながら、現状では、各情報が散在しているため、利用者からすると必要な情報を見つけ出すことが難しいという問題が顕在化している。このような散在する情報に容易にアクセスできるようにするためには、一般的にポータルサイト(入り口となるウェブサイト)の構築が有用であるとされている。今後、早急にポータルサイトを立ち上げ、その有用性について実証評価することが必要である。
 IT支援実践事例情報の収集については、IT支援に直接携わるIT支援人材と、それをとりまとめる支援団体の協力が不可欠である。また、こうして収集された情報は、IT支援基盤から適切に、各協力者・協力団体に提供されることで、よりよいIT支援を可能とする相乗効果を生み出すことが期待される。これまで、こういった協力関係を構築して、広範囲に情報を収集・提供する仕組みは存在しなかったが、今回、本研究会の活動を通じ、全国各地の障害者ITサポートセンターや関係分野等との協力関係の構築が可能となったことから、具体的な協力体制を構築し、IT支援実践事例情報を取り込む形で前述のポータルサイト機能の充実を図り、実証評価を進めることが急務である。
 なお、今後、IT支援基盤が実証評価段階から実用化フェーズに進んでいく際には、できる限り多くの情報が一元的に収集・提供されることが、最も効率的かつ効果的であるという観点から、全国レベルで実現されることが望ましい。
 また、今後、ポータルサイトで提供される情報を活用し、効果的なIT支援を行うためには、IT支援人材・団体をはじめとする関係機関等の横断的な連携が重要であり、その検討を進めることが必要である。

ウ.IT支援効果の検証
 IT支援基盤のもう一つの機能としては、IT支援効果の検証が考えられる。これは、どのような障害者に対して、どのようなIT支援機器やIT支援を提供すれば最も効率的であるかということや、障害者にIT支援を行うことが障害者や社会全体にとってどのくらいの効果をもたらすか、といったことを実証的に検証することを意味する。こうした障害者のIT支援に関する社会的効果等の検証データ(エビデンス)の把握については、今までほとんど行われてきていないものの、IT支援効果を定量的に把握することは、費用対効果分析を可能にし、行政機関や民間企業等の取組を促進するという意味で非常に重要である。特に、行政機関の観点からは、事前・事後の政策評価が一般化する中、政策目標を定量的に設定することは、政策立案の場面で非常に重要な要素となる。
 こうした取組については、新たな手法の確立という困難さに加え、多くの障害者等の協力を得て実証調査を行うことが不可欠であることから、前述の各種情報と比べ非常に時間やコストがかかることが予測される。したがって、平成18年度以降、中期的に取り組むべき課題である。

以上




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