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ユニバーサル・コミュニケーション技術に関する調査研究会(第4回)
議事要旨

  1. 日時
    平成17年6月22日(水) 15時30分〜17時40分

  2. 場所
    三田共用会議所 3階 A及びB会議室

  3. 出席者
    (1)  調査研究会構成員(50音順、敬称略)
    青井 孝敏(松下電器産業)、淺川 和雄(富士通研究所)、岩浪 剛太(インフォシティ)、
    榎並 和雅(日本放送協会)、大森 慎吾(情報通信研究機構)、春日井 眞一郎(東京放送)、
    後藤 幹雄(電通総研)、土井 美和子(東芝、代理:住田 一男)、
    東倉 洋一(国立情報学研究所)、所 眞理雄(ソニー)、原島 博(東京大学)、
    平田 康夫(KDDI研究所)、廣瀬 通孝(東京大学)、福永 泰(日立製作所)、
    畚野 信義(国際電気通信基礎技術研究所)、松山 隆嗣(京都大学)、
    三木 俊雄(NTTドコモ、代理:栄籐 稔)、村上 輝康(野村総合研究所)、
    山田 敬嗣(日本電気)
    (2)  事務局(総務省)
    鬼頭技術総括審議官、武井技術政策課長、竹内研究推進室長、河野課長補佐

  4. 配布資料
    資料4−1   第3回会合 議事概要(案)
    資料4−2   ユニバーサル・コミュニケーション技術の利用シーン(大森構成員)
    資料4−3   ユニバーサル・コミュニケーション技術の研究開発のあり方について
     (村上構成員)
    資料4−4   ユニバーサル・コミュニケーション技術に関する調査研究会
     中間報告書(案)(事務局)

  5. 議事
    (1)  開会
    (2)  配布資料の確認
    (3)  前回議事録(案)の確認
    (4)  議事
    1)  構成員からのプレゼンテーション
    ユニバーサル・コミュニケーション技術の利用シーンについて
     資料4−2に基づき、ユニバーサル・コミュニケーション技術の利用シーンについて、情報通信研究機構(以下「NICT」という。)の大森構成員及び渡辺克也氏から説明が行われた。
     主な質疑は、次のとおり。

    (所 構成員)各シーンについてどのような技術が必要となるか記載されているが、それらの技術を体系的に捉えると、基礎になる技術は長期的な研究が必要となり、ある程度進展している技術は開発的になる。単に網羅的に並べていくだけでは危険を伴うおそれがあるが、この次のステップでどのように進めていくのか。

    (渡 辺発表者)後ほど中間報告案の審議の中でも議論されると思うが、まず技術的な課題として体系的に並べて、かつその技術をどのようにロードマップに描くか。我々としては、今回の利用シーンのイメージも踏まえ、4つの技術分野の中でどういった技術がコアとなるのか、10年あるいは20年先にどこまで狙うべきか、技術の取捨選択も含めてシナリオづくりをしていきたい。

    (所 構成員)出口論的にピックアップできる技術と、シナリオに乗らず突然変異的に思っていない方向に進んでく技術がある。出口論だけで技術を語っていく危険性もあるので、その二つをともに許容していくことが重要。

    (原 島座長)報告書では使えないテクニックだが、プレゼンをするときは最後に白紙を入れておいて、「ここにあなた自身が思い描くシーンを書いてください。そうすれば自動的にあなたのシーンが出てきます。」というやり方もある。

    (原 島座長)私の個人的な印象だが、説明のあった10の活用シーンの中には、コミュニティ支援というのがあまり入っていないと感じる。個人の話だけでなくコミュニティ支援を含めるとよいのでは。
     本ポンチ絵はよくできているので、これを広く活用していければよいと思う。扱いとして、これは既にコピーライト付きとするか、それとも各自自由に進化させてくださいとするのか。

    (渡 辺発表者)NICTとして本資料を出しているが、研究会に報告したので、あとは総務省から出す報告に活かしていってほしい。国の報告書になれば、コミュニティ支援を盛り込むなどバージョンアップしながら、より良いものを作って頂きたいと思う。我々としては、次期中期計画に向けて、ここら辺までやるというコンセンサスのようなものを作っていきたいと思う。

    ユニバーサル・コミュニケーション技術研究開発の推進について
     資料4−3に基づき、ユニバーサル・コミュニケーション技術研究開発の推進について村上構成員から説明が行われた。
     主な意見は、次のとおり。

    (所 構成員)資料p.22の「これからあるべきICT政策の姿」について。ICT政策の姿としては大変良いが、研究開発が利用者視点でできるのかは本質的な問題がある。モノになって初めてユーザは「是非欲しい」ということになる。それまでには長い時間(20〜30年)を要する。例えば、インターネットで言えば1969年、LinuxやUnixも同じ頃に基礎技術が出てきた。基礎的なのをしっかり研究するという考えと、利用者視点の考えとをあまり強力に結びつけてしまうと、5年でできない研究はやめてしまえという風になってしまう。行政として今ICT政策として何をやるのかは大変重要だが、研究開発に(政策を)直接持ち込むのはよく検討する必要がある。また、同じことが最後にp.25のところでも言える。米国では、センサーネットワークにしても、電子タグにしても、時間がかかる研究をきっちりやっている。そのような基礎研究をどうやって支援していくのか、支援していける制度をどう作っていくのかが、今、日本で重要ではないか。物理や化学については伝統的に時間をかけた研究開発ができるが、工学の分野では稀。どうしたら、このような工学の本質的なところにうまく資金が回るのか。文部科学省がピックアップしたテーマだけでなく、産業界でピックアップしたような重要なテーマ分野にどうやって基礎研究をしてもらうかが大変重要になっている。

    (村 上構成員)基礎研究についてもロードマッピングをして、どれくらい選択肢を狭め、どの程度その可能性を高めたか、このような情報発信を常にしっかりやり続けることが重要。持続的に研究を続けるために、研究開発をするサイドと、最終的な利用者の間の橋渡しを常々意識しておく必要がある。

    (所 構成員)ブレークスルーで出てくる本質的な研究テーマは、往々にして天才的な研究者でないとできず、周囲からも受け入れられない。面白く、独創的な研究というのは特に分かりにくい。分からないことを分からないからやめてしまうと将来はない。我々が分からないことをどのように育んでいくかという部分が基礎的、中長期的研究になる。また、産業界でどのようにして人を育てるかについても、文部科学省だけに任せておいてよいのか。特に工学の分野ではもう少し我々の声も強く言っていかねばならぬのでは。

    (原 島座長)今のご指摘、非常に重要なことだと思う。少なくとも今の大きな大学等に広がっている流れは長期的な研究を許さない。すぐ成果を出さなければならない、すぐベンチャーを立ち上げなければならない、そのような形になっている。一方で基礎研究というと、物理とか化学とかバイオばかりに行って、エンジニアリングの基礎研究は何かいう議論が失われつつある。その点きっちりとした配慮に期待したい。
     それから利用者視点の話について。研究者や技術者が、自分自身が一人の利用者であるという視点に立って、ひとり「海外で話題になっているから」というのではなく、自分は何が欲しいかという観点から研究することが重要なことだと思う。研究者自身が利用者としての視点を持ちながら、同時にプロフェッショナルとしての視点をしっかり持っているということが重要。

    (村 上構成員)ICT研究開発の評価として、インプットに対してアウトプットがバランスの取れたものか、アウトカムを出すものか、といった検討は我々の立場から見るとあまり行われていない。利用者視点というと、成果をしっかり想定したような施策というようなことだと思う。そういう視点を入れ続けることにより、施策が生まれてくるプロセスも変わってくるのではないかと思う。確かに、これを研究開発に杓子定規に当てはめるとミスリーディングになるかもしれない。

    (松 山構成員)利用者という言葉の解釈について。例えば、所構成員はカスタマー的なイメージでおっしゃったような感じがする。今の村上構成員の説明における利用者は、それを使う人という意味である。ユニバーサル・コミュニケーションについて、NICTの資料p.1で知識の制約等々とかいてあるのはすべて人間について語っている。つまり、多分ユニバーサル・コミュニケーションと言った場合には、元々、利用者という概念はない。そのシステムと人との関わり合いをいかに考えるかが研究の本質ではないか。システム自身が人間をどうシステムと融合させるかというところに視点がある。資料には人間の視点を踏まえた研究開発をすると書いてあるわけだから、それと利用者というものをちょっとすり合わせしておかないと話が非常にややこしくなってしまうのではないか。ここでユニバーサル・コミュニケーションというのは「何に使うのか」というような利用者の視点を重視していることを、報告書やいろいろな場面で説明するときに鮮明に言っておく必要がある。

    2)  中間報告について
     資料4−4に基づき、ユニバーサル・コミュニケーション技術に関する調査研究会中間報告書(案)について事務局から説明が行われた。

    (原 島座長)確認しておきたいのだが、中間報告というのはパワーポイントで出すものなのか。文字で出すものなのか。このままこれを整備していけば、そのまま中間報告書になるのか、それとも文字化する作業が必要なのかお伺いしたい。

    (事 務局)我々としては、必ずしもすべてを文字にする必要はないと考えている。研究会の意志・主旨がきちんとパブリックに伝わるように文章に書き起こすべきことについてはきちんと文章にして報告した方が良いと思う。技術の進展イメージのようなロードマップ的な部分は、パワーポイントベースでも十分と考えている。

    (山 田構成員)この中間報告で説明頂いた内容で非常によく理解できるものとなっている。本研究会の目的にもよると思うが、落とし所として、今我が国が抱えている問題を解決するための技術開発という意図で記載されていたかと思うが、最初に提起されていた課題をこの技術開発を達成すれば解決できるのかという問題がもう一段残っているのでは。技術開発をした後、それを世の中に広めるとか国の中で国力として持って行くための施策に対する提言というのを研究会後半で議論するか、今後の検討課題という部分に入れておくのがよいのではないか。

    (事 務局)事務局としても是非そのようにお願いしたいと思っている。また、既に「早急に取り組むべき事項」として書けるものがもしあれば、追加記載をお願いしたい。

    (所 構成員)短時間で要点をきっちりとピックアップした良い中間報告案が出来ていると思う。一点だけ多少違和感がある。一番重要なところだと思うのだが、資料p.22の「ユニバーサル・コミュニケーションとは何か」というところで「異なる言語、文化、価値観、知識、経験身体能力を持つ人々が、これらの違いを障害とせずに」とあるが、ここを「違いを相互に理解した上で、障害とせずに」とすべきだと思う。相互に理解をしないで進めると、結局テクノロジーのためにケンカが起きたり、問題が大きくなったりするおそれがある。

    (原 島座長)非常に重要な視点だと思うので、ぜひ反映して頂きたい。

    (青 井構成員)p.3の「生活者の価値観の変化」の「時間価値の重視」というところだが、別の捉え方もあるのでは。例えば、価値創造というものが時間当たりで測れるのかどうかという、(価値創造)÷(時間)など。また、最近だとユビキタスということで、スペース的な空間における価値創造のボリュームというものがあってもいいと思う。(価値創造)÷(スペース、空間の広がり)など。こういった視点で価値観の変化という捉え方もあるのではないかと感じた。

    (平 田構成員)4章のp.67〜70について。標準化課題に関するところはよくまとめられていて非常に良いと思うが、標準化と言ったときに国内だけの標準化と、国際的な立場での標準化があると思う。どこまでやるかという問題もあり、やらない方が良いときもある。もう一歩進めた形で、どこで、どういった形で、国内か国際か、などいろいろな観点があると思う。そういったものをすべて報告書に書く必要はないと思うが、標準化課題を書くときにはそういう問題があることを整理しておかねばならない。例えば、本当に国際的にやっていかないといけない課題があれば、どこに持って行き、どのような形で進めていくかは少なくとも今後の検討課題で頭出ししておいて、次につなげるといった配慮が必要ではないか。

    (事 務局)ただいまの平田構成員の話はまったく同感。備考欄で書けるものについては、デジュールやデファクトも含めて若干記載させていただいているが、まだまだ絶対的にどういうところまでやっていけばよいか戦略的に決めかねているところが多々あるのが現状。そういった点については継続検討課題ということでお願いしたいと思う。

    (原 島座長)報告書のまとめ方だが、文章にしてもパワーポイントにしてもよいということであった。それぞれに良い点があり、文章はじっくり読んでいけば全体のシナリオが見える。パワーポイントは印象という形で表現できる。この報告書自体が説明なしで一人歩きする可能性がある点を考えると、それなりにきちんとした、少なくともそれぞれの図をどのように見てくださいというような説明がある方が良いと思う。また、最終的にパワーポイントだとしても100枚ほどの大変な量になる。それを考えるとすべて読まなくても分かる構成にすべきではないか。まず初めにその1枚を見れば全体像が分かるというものを1枚つくる。次に4〜5枚で全体が掴めるというものを作る。あとはある意味では付録のような形で細かいデータを並べていくという形にする。そうしないと全体の流れが分からない。要するにこちらが何を言いたいのかそれだけである程度分かるものを用意する、このような構成にしておくのがよいのではないか。今の大部分を活かす形でそれに追加する形で要約版を作っていくとよい。

    (榎 並構成員)多少細かくなってしまうが、p.52の「超臨場感コミュニケーション技術」において、国の役割として、3次元映像に関わる人のメカニズム、そういった辺りを研究しないと成果は出ないと書いてあるが、上の1)から5)のところにもそのような表現が入っているとよいと思う。

    (原 島座長)先ほどのNICT発表資料中、立体テレビの利用シーンのところで人が立体的に飛び出しているという例があったが、NHKさんとしてイメージが湧くか。ああいうのが立体テレビなのかという疑問があり、それには技術者の感覚が育たないとだめだと思う。イメージとしてはよくあるが、下手するとミスリーディングになる可能性もある。

    (榎 並構成員)何が立体テレビか、といったところは今後検討しないといけないと思う。

    (所 構成員)p.73の「早急に取り組むべき事項」で「1) 人の感覚・知覚メカニズム・・・・」というところは大変素晴らしいと思うが、4章の「超臨場感コミュニケーション技術」や「スーパーコミュニケーション」の部分に具体的な記述がない。ここにも具体例を入れると5章との整合性が取れると思う。また、p.73の「3) 優れた研究者のグローバルな・・・」とういところで、「絶対数が不足しており」と書いてあるが、「質・量ともに不足していて」と書いた方がよいのではないか。

    (岩 浪構成員)p.3の「生活者の価値観の変化」にも関係すると思うが、戦略委員会で発表させて頂いた際に、「ここ2年辺りのユーザの変化として、本格的なユーザ利用の時代に既に差し掛かっている」という点を述べた。誤解を恐れず言えば、e-Japanあるいはe-JapanII2においては、利用者像をあまりリテラシーがなく、利用支援すべきものとして想定していたように思う。しかし、この2〜3年の定額制ブロードバンドインターネットの普及により、実際のユーザの利用及び利用マインドは飛躍的に高まってきている。小・中学生などにしても相当利用スキルが上がってきており、プログなどを見るとユーザによる情報発信ニーズも非常に大きいものがあると考えられる。一方、デジタルディバイドを解消するという観点も引き続き重要であることは言うまでもないが、やはり両面を捉える必要があると思う。その意味で、利用者像の定義に関して転換点を迎えており、報告書にそのような観点が少し入っていてもよいと思う。

    (原 島座長)子供の発達するときにITが入ってきていて、子供の発育段階でどのようにIT教育をするのかも重要。それぞれの時期(年齢)に合ったITというものがあるはず。子供の発達があってITがあるならばよいが、その順序が逆になると、発達しなくなってしまう能力もあるのではないか。そういった視点も重要になってくると思う。

    (廣 瀬構成員)基本的に見ると100%ではないかも知れないが、よくまとまってきていると思う。技術開発が話題の研究会にコンテンツという言葉が盛り込まれたことは大変良いと思う。あと一息と感じるのは、コンテンツの研究は研究スタイル自体が変わって行かなければならないということ。従来の、技術があって、その後にコンテンツを創るというやり方では駄目で、新しいスタイルの研究推進の仕方を考えなければならないのでは。やはり、今後は量的ではなく質的に変わる部分があるのだという感じが含まれるとよいなと思う。

    3)  その他
     事務局より、以下の連絡があった。
    • 他に修正や意見がある場合は6月28日までに事務局まで連絡頂きたいこと。
    • 構成員のご意見を調整・反映した報告書最終案を各構成員に送付し、最終的に原島座長にご相談・了解を頂いた上で、7月中にHPに掲載する形で公表すること。
    • 次回会合は9月に開催予定であり、日時は別途調整すること 。
    (5)  総務省挨拶
     最後に、中間報告をまとめていただいたことに対して、総務省 鬼頭技術総括審議官より謝辞が述べられた。
    (6)  閉会
     


    (以上)







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